「乳がん検診はいつから」受けるべき?20代・30代でも受けた方がいい?医師が解説!
乳がん検診はいつから受けるべき?Medical DOC監修医が乳がん検診の種類や結果の見方・発見できる病気などを解説します。
監修医師:
山田 美紀(医師)
目次 -INDEX-
乳がん検診とは?
日本人女性がかかるがんの中で最も多いのが乳がんです。乳がん検診は乳がんで亡くなる人を減らすことを目的に行われます。検診を受けることで、早期に乳がんを発見し、早期に治療を行うことができます。
乳がん検診はいつから・何歳からどれくらいの頻度で受けるべき?
40歳から2年に一回、定期的に乳がん検診を受けましょう。日本人女性では45~49歳と60~64歳に乳がんになる方が多いため、40歳以上の女性に対して検診が推奨されています。
乳がん検診は20代・30代でも受けた方がいい?
乳がん検診は20代、30代の女性には推奨されません。20代、30代は乳がん罹患率が低く、検診によるデメリットが生じる可能性が高いためです。デメリットとして、偽陰性、偽陽性などがあります。偽陰性とは、がんがあるにもかかわらず、異常なしと判定されることです。偽陽性はがんがないにもかかわらず、要精密精査となることです。20代、30代であっても個人で受ける任意型検診は受けることができます。検診のメリットとデメリットのバランスを考えたうえで受診することが大切です。ご家族に乳がんや卵巣がんの患者さんがいる方は年齢にかかわらず検診を受けましょう。また、20代、30代であっても乳房のしこりなどの症状に気が付いた場合は、医療機関を受診しましょう。
産後・卒乳後からどれくらいで乳がん検診を受けられる?
妊娠中や授乳中であっても乳がん検診を受けることはできます。ただし、妊娠中や授乳中は乳腺が発達しているため、検査の診断精度が低下する可能性がある点に注意してください。特に、マンモグラフィは産後・授乳後6カ月以降に行うとよいでしょう。しかし、症状がある場合は妊娠中や授乳中であっても受診しましょう。
乳がん検診の種類
乳がん検診には大きく、対策型乳がん検診(住民検診)と任意型乳がん検診(人間ドック、職域検診)があります。対策型乳がん検診は税金を使用して、自治体から提供されるものです。一方、任意型検診は自費で行われます。対策型乳がん検診で行われるのはマンモグラフィのみです。任意型検診ではどの検査を行うか選ぶことができます。
視診
医師が目で見て診察をします。乳房の左右差はないか、えくぼ状の凹みはないか、赤みやただれはないかなどをチェックしています。
触診
医師が乳房や脇の下や鎖骨付近を触って診察をします。触診ではしこりが触れないかを確認します。しこりがある場合は場所、大きさ、硬さ、動きなどをチェックしています。また、脇の下や鎖骨のリンパ節の腫れがないかも診察しています。
乳房超音波(エコー)検査
仰向けに寝た状態で、乳房に超音波を当てて検査を行います。超音波検査では乳房にしこりがないかを診断できます。高濃度乳腺の場合、マンモグラフィではしこりを発見しづらいですが、超音波検査でしこりの有無を確認できます。
マンモグラフィ
マンモグラフィは乳房のX線撮影です。乳房を可能な限り引き出し、なるべく薄くなるように押し広げて検査をします。しこりや石灰化などの異常がないかを診断します。高濃度乳腺の場合は、しこりが分かりづらいことがあります。
乳がん検診の費用・保険適用の有無
対策型乳がん検診の費用は税金で補助されるため、ほぼ自己負担はありません。任意型乳がん検診の費用は全額自己負担です。ただし、職域検診では一部費用を職場が負担しています。自己負担の場合、医療機関ごとに差があるものの、マンモグラフィは約5000円、超音波検査は約3500~5000円です。
乳がん検診の結果の見方
乳がん検診では、「異常なし」、「良性」、「要経過観察」、「要精密検査」のいずれかの検診結果が返ってきます。結果の見方について、詳しくご紹介します。
乳がん検診の結果・判定・カテゴリーの見方
乳がんの診断カテゴリーはカテゴリー1~5に分類されます。カテゴリー1は「異常なし」、カテゴリー2は「良性」の判定であり、「異常なし」「良性」または「要経過観察」となります。カテゴリー3は「良性、しかし悪性を否定できず」、カテゴリー4は「悪性疑い」、カテゴリー5は「悪性」の判定です。カテゴリー3以上は乳がんの可能性があるため、「要精密検査」となります。
乳がん検診で要精密検査と診断されたら?
要精密検査という結果が返ってくると、不安に思われる方もいるでしょう。しかし、要精密精査となった人のうち、実際にがんが見つかる割合は約5.3%です。不安になりすぎずに必ず乳腺科を受診し、適切な診療をうけましょう。精密検査で行われる検査についてご紹介します。
細胞診
画像検査で良性か悪性かの判断が難しい病変が見つかった場合に細胞診を行います。エコーでしこりなどの位置を確認しながら、乳腺に細い針を刺して細胞を採取します。採取した細胞を顕微鏡で確認し、診断を行います。確定診断をするためには、さらに組織診が必要になります。
組織診
画像診断で良性か悪性かの判断が難しい病変や乳がんを疑う異常がある場合に、組織診を行います。エコーやマンモグラフィで異常のある部分の位置を確認しながら、太めの針を数回乳腺に刺して、組織を採取します。痛みを伴うため、局所麻酔をしっかり行います。採取した組織を顕微鏡で確認し、診断を行います。
摘出生検
多くの場合は組織診で確定診断をすることができます。組織診でも診断が難しい場合に、摘出生検が必要になることがあります。局所麻酔をして病変全体を摘出します。摘出生検は小手術であり、組織診と比べて傷が大きくなります。しかし、病変の全体を観察できるため、細胞診や組織診よりも診断確率が高くなります。
乳がん検診でわかる病気・疾患
ここではMedical DOC監修医が、「乳がん検診」で発見できる病気を紹介します。
どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。
乳がん
乳がんは乳腺に発生する悪性腫瘍です。乳房のしこり、血性乳頭分泌、乳房の変形などの症状があります。リンパ節に転移があると、脇のしこりに気が付く場合があります。女性ホルモン(エストロゲン)にさらされることが乳がんの発症に関係しています。月経のある期間が長い、出産歴や授乳歴がないなどが乳がん発症リスクになります。閉経後の肥満、飲酒や喫煙などの生活習慣も乳がん発症リスクを高めます。また、ご家族に乳がんの方がいる女性は乳がん発症リスクが高いです。遺伝性乳がんの多くでBRCA1/BRCA2遺伝子の病的バリアントがあることがわかっています。治療は乳がんの性質やステージによって、手術、放射線治療、薬物療法を組み合わせて行います。気になる症状がある場合は、早めに乳腺科を受診しましょう。
乳腺症
乳腺症は乳腺の良性変化の総称です。囊胞(のうほう)、乳管内乳頭腫、腺症などのさまざまな病態が含まれます。乳房のしこり、硬結、痛み、乳頭分泌などの症状を自覚することがあります。乳腺症は30~40歳代に多く、発症には女性ホルモンが関係しています。そのため、閉経すると症状が軽くなることが多いです。乳腺症は特に治療の必要はありません。乳腺症による硬結や痛みは月経前に増大し、月経後に縮小することが多いことが特徴です。症状がある場合は、早めに乳腺科を受診することをおすすめします。
乳腺炎
乳腺炎は乳房の炎症です。腫れ、赤み、痛み、しこりなどの症状があり、進行すると膿が出ることもあります。乳汁のうっ滞や細菌感染が原因です。「うっ滞性乳腺炎」は授乳中に母乳がたまり、炎症が起きている状態です。母乳の通りが良くなるようにマッサージで対処します。さらに、乳頭から細菌が入り、「化膿性乳腺炎」になると、抗生剤や切開して膿を出す処置が必要になることもあります。また、陥没乳頭があると、乳輪下に膿がたまる乳輪下膿瘍になることがあります。乳腺炎を繰り返す場合は手術を行うこともあります。乳腺炎は乳がんとは直接関係ありません。乳腺炎に似た赤みや腫れを伴う炎症性乳がんもあるため、症状があれば早めに乳腺科を受診しましょう。
「乳がん検診はいつから」についてよくある質問
ここまで乳がん検診はいつからかについて紹介しました。ここでは「乳がん検診はいつから」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
2年に1回、乳がん検診の受診を推奨するのはどうしてでしょうか?
山田 美紀 医師
乳がんの大半は進行がゆっくりであり、2年に1回の検診でも早期がんで発見することがほとんどです。2年ごとの検診であっても毎年の検診と同等の効果があることが示されています。対策型検診では限られた税金の中でより多くの人が受診できるように、2年に1回の乳がん検診を推奨しています。
まとめ 乳がん検診いつからが気になるときは乳腺科に相談!
対策型乳がん検診は40歳になってから2年に1回受けましょう。40歳未満の方は検診のメリット・デメリットのバランスを考えた上で、任意型乳がん検診を受けましょう。ご自身の乳房の変化に気が付いたら、年齢や検診時期を問わず、乳腺科を受診することをおすすめします。
「乳がん検診」の異常で考えられる病気
「乳がん検診」から医師が考えられる病気は5個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
乳がん検診では乳がんだけではなく、良性の乳腺疾患が指摘されることがあります。定期的な検査や治療が必要になることがあるため、乳腺科を受診しましょう。