「聴力検査の結果」はどう見れば良い?測定方法や疑われる病気について医師が解説!
更新日:2025/07/16

聴力検査の結果の見方とは?聴力検査の測定方法や疑われる病気・対処法について医師が徹底解説します。

監修医師:
木村 香菜(医師)
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名古屋大学医学部卒業。初期臨床研修修了後、大学病院や、がんセンターなどで放射線科一般・治療分野で勤務。その後、行政機関で、感染症対策等主査としても勤務。その際には、新型コロナウイルス感染症にも対応。現在は、主に健診クリニックで、人間ドックや健康診断の診察や説明、生活習慣指導を担当している。また放射線治療医として、がん治療にも携わっている。放射線治療専門医、日本医師会認定産業医。
目次 -INDEX-
聴力検査の測定方法
聴力検査にはいくつかの測定方法がありますが、ここでは主に健康診断で行われる会話法聴力と選別聴力検査についてご紹介します。会話法聴力
医師の問診中に、会話の聞き取りに支障がないかどうかを判断します。検査は問診中に自然に終了し、日常会話に問題がない場合は「所見なし」とされます。選別聴力検査
日常生活において聴力に支障がないかどうか調べる検査です。検査はオージオメーターと呼ばれる機械を用いて、防音室もしくは静かな部屋の中で行われます。 左右それぞれの耳について、30dBの1,000Hzの検査音、40dB(雇用時健診では30dB)の4,000Hzの検査音を聞き、聞こえているかどうか確認します。聞き取れた場合は「所見なし」、聞き取れなかった場合は「所見あり」と判断されます。聴力検査の結果の見方
会話法聴力、選別聴力検査では「所見なし」または「所見あり」として結果が記載されます。選別聴力検査では、4種類の音に対してそれぞれの結果が記載されます。聴力検査の基準値・正常値
正常値は「所見なし」です。または数字表記される場合に1000Hzでは30dB以下、4000Hzでは30dBもしくは40dB以下であれば正常値・基準範囲内となります。 正常聴力の定義は平均聴力レベルで25dB未満とされていますが、健診を行う環境も考慮して上記のように定められています。聴力検査の結果で「マイナス」表記されている理由
聴力検査を受けた時、検査の種類によっては聞き取れた音の大きさを表す「dB(デシベル)」の数値にマイナス表記されることがあります。これは聞き取れた音の大きさの最小値が表記されるためです。 「数値が小さいほど小さな音を聞き取れた」ということで、もし聴力検査の結果がマイナス表記の場合、かなり小さな音が聞き取れた、と解釈できます。聴力検査で疑われる病気
聴力検査で異常が指摘された場合に疑われる病気を以下にまとめました。聞こえが悪いということは難聴が疑われますが、難聴となる耳の病気には様々なものがあります。中耳炎
耳にある鼓膜の奥の中耳と呼ばれる場所で炎症が起きている状態です。鼻に存在する細菌やウイルスが耳管を通って中耳に入り、炎症が起こります。急性中耳炎では鼓膜が赤く腫れ、耳の激しい痛みや聞こえの悪さや耳が詰まる感じが症状として現れます。 一方、痛みがない滲出性中耳炎と呼ばれるものもあります。急性中耳炎の後などに鼓膜の内側に液体が残ったままとなり、鼓膜が振動しにくくなるために聞こえが悪くなります。 治療には抗菌薬の内服や鼓膜の切開などを行います。治りが悪い、症状を繰り返して治療に時間がかかることも多い病気です。外耳道の狭窄・閉塞
外耳道が狭窄・閉塞する先天性奇形や、外傷や交通事故による後天的な狭窄や閉塞が起こる場合もあります。狭窄や閉塞の程度によっては難聴の原因になる可能性があり、耳垢で外耳道が塞がる「耳垢栓塞」でも悪くなることがあります。鼓膜の損傷
何らかの理由で鼓膜に穴が開く、破れるなどした場合に音の振動が上手く伝わらずに難聴となることがあります。耳掃除や外傷、スポーツによって生じますが、経過観察しているうちに自然と鼓膜が塞がってきますが、感染を起こしている場合は抗菌薬を用いることがあります。耳管狭窄
鼻の奥と耳をつないでいる耳管が細菌・ウイルス感染によって腫れ、中耳の圧力の調整が上手くできない状態です。耳がつまったような感覚を覚え、中耳に空気を入れて圧力をかける耳管通気療法などで治療します。騒音性難聴
工場の機械音や交通機関などの騒音が聞こえる場に半年~1年といった長期間身を置くことで発症する難聴です。聞こえ方の左右差は少なく、許容基準を越す騒音職場では耳栓などの防音具の使用で難聴を予防することが推奨されています。メニエール病
内耳に存在するリンパ液が増え、内耳がむくんでいる状態です。めまいや吐気、耳鳴り、難聴、耳のつまった感じなどの症状が現れます。治療は薬物療法による対処療法となります。なぜメニエール病が起こるのかは未だ明らかになっていません。しかし、ストレスや心身の疲労によって発症すると言われているため、日常生活でリラックスするように心がけることが大切です。突発性難聴
突然発症した原因不明の難聴を「突発性難聴」と呼びます。他の急性難聴を生じる病気との鑑別が重要です。原因は未だに不明ですが、自己免疫疾患、ウイルス感染、循環障害といった様々な病態が重なっている可能性が考えられています。 通常はステロイドやビタミン製剤などの薬物療法を始めとした治療が行われますが、有効性が確立されたものはありません。 聴力回復のためには発症してからなるべく早く治療することが望ましいとされています。いきなり耳が聞こえない、といった症状が現れた場合はなるべく早く耳鼻咽喉科を受診して治療につなげましょう。老人性難聴
加齢に伴って難聴が起こることがあります。難聴が起こる年齢には個人差があり、両耳に起こるのが特徴的で気ではありませんが、聞こえにくいまま放置すると認知症などにつながる可能性もあります。必要に応じて補聴器を使用するなど、対策をとりましょう。先天性難聴
遺伝子異常や感染症、病気など様々な原因によって生じる先天的な難聴です。世界中1000の出生数に対して1人の割合で生じる最も多い先天性障害とされています。補聴器や人工内耳の使用によって聴覚を補って療育が行われます。聴力検査で疑われる病気の改善方法・治療法
難聴が起こる原因によって、適応となる治療法は異なります。以下は、主な難聴の治療法、予防法です。手術
鼓膜に開いた穴を塞ぐ「鼓膜形成術」は、患者さん本人の皮膚の下の組織を組織接着剤でくっつけて穴を閉鎖する手術です。鼓膜形成術だけでは不十分な場合は耳小骨を再建する「鼓室形成術」が合わせて行われることがあります。 また、耳小骨のうちアブミ骨が動かなくなって起こる難聴の改善には、アブミ骨の一部を人口耳小骨に交換する「アブミ骨手術」が有効です。人工内耳
聴覚障害があるものの、補聴器での装用効果が不十分である方に対する治療法です。手術で耳の奥などに埋め込む部分と、マイクで拾った音を耳に埋め込んだ部分に送る体外部によって成り立っています。どの程度聴覚が得られるかは個人差がありますが、術後にリハビリテーションを行うことで徐々に聞き取れるようになってきます。補聴器
「会話の声がはっきり聴きりにくい」「まわりの音が聴こえない」といった段階で検討されます。年齢や職業によって使い始めるタイミングは異なりますが、家族や友人から「最近耳が遠い」と指摘されることがあったら検討するとよいでしょう。ヘッドフォン・イヤホン対策
ヘッドフォンやイヤホンで長時間大きい音を聞いていると、徐々に聞こえにくくなる慢性音響外傷が起こることがあります。発症すると聴力は戻らないため、対策としてヘッドフォンやイヤホンを長時間使い過ぎない、大きすぎる音で聞くのはやめることを心がけましょう。耳垢の清掃
本来であれば耳垢は自然に排出されるため、特別な掃除は必要ありません。しかし、外耳道が塞がるほどの耳垢がある場合は取り除きましょう。清掃の際に外耳道や鼓膜を傷つけることがないように注意して下さい。「聴力検査の見方」についてよくある質問
ここまで聴力検査の見方について紹介しました。ここでは「聴力検査の見方」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
聴力検査の正常値はどれくらいですか?
木村 香菜 医師
所見なし、あるいは1000Hzでは30dB以下、4000Hzでは30dBもしくは40dB以下です。
聴力検査の表の見方について教えてください。
木村 香菜 医師
耳鼻科などで聴力検査を行った場合、「オージオグラム」と呼ばれるグラフのような表が結果として提示されることがあります。縦軸は音の大きさ(dB)、横軸は音の高さ(Hz)からなっており、どの高さの音でどれくらいの大きさが聞き取れたかを示したものです。右耳は○、左耳は✕で表されます。どの高さで聞こえにくいのか、左右差があるかどうか、といった情報が視覚的にわかりやすくなります。
まとめ 聴力検査の結果の正しい見方を知ろう
聴力検査の方法は様々ですが、結果の見方としては「所見なし」が正常となります。もし「所見あり」となった場合、そのままにせず耳鼻科を受診して詳しい検査を受けることをおすすめします。早めに治療を始めれば聴力が回復する可能性が高まるためです。また、自分で聞こえについて自覚症状がなくても、「最近耳が遠い」と周囲から指摘された場合も耳鼻科で相談するといいでしょう。「聴力検査」で考えられる病気と特徴
「聴力検査」から医師が考えられる病気は8個ほどあります。 各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。脳神経外科系の病気
- 聴神経腫瘍
- 脳梗塞




