「便潜血検査」で「大腸がん」が見つかる確率はご存知ですか?医師が徹底解説!
便潜血検査とは?Medical DOC監修医が健康診断や消化器内科診察の便潜血検査で発見できる病気や検査結果の見方、陽性などの所見を詳しく解説します。
監修医師:
小正 晃裕(医師)
目次 -INDEX-
便潜血検査とは?
便潜血検査とは、便の中に隠れている(潜んでいる)血液を検出する検査です。通常、肉眼では見えない微量の血液が便に混じっているかを調べます。この検査は特に大腸がんの早期発見に有効で、定期的な健康診断や人間ドックで行われることが多いです。
検査は簡単で、自宅で便を採取し、医療機関や検査センターに送ることが一般的です。便に血液が混じっていると、大腸がんだけでなく、ポリープや炎症性腸疾患など他の病気の可能性もあるため、異常が見つかった場合には、さらなる検査が必要になります。
便潜血検査(検便)とはどんな検査?
便潜血検査(検便)は、便に微量の血液が混じっているかどうかを調べる検査です。検査の流れは簡単で、患者は自宅で便のサンプルを採取し、専用の検査キットを用いて医療機関に直接提出もしくは郵送します。採取方法は、便器に便をした後、専用のスパチュラ(小さな棒)を使って便の一部を採取し、検査キットに塗り付けます。このサンプルは、特定の試薬を用いて検査され、便中の隠れた血液成分を検出します。
通常2日間に分けて便を採取する2日法が一般的であり、検査結果は数日から一週間程度で出ます。陽性の場合、大腸がんやポリープなどの可能性があるため、医師は追加検査を勧めることがあります。この検査は非侵襲的で、病院に行かなくても自宅で簡単に行える点が特徴です。
便潜血検査で便の中の血液を調べると体の何がわかる?
便潜血検査によって便中の血液を調べることで、主に消化管の健康状態について知ることができ、主に大腸がんや大腸ポリープの初期発見に役立ちます。便に微量の血液が混じっている場合、大腸や胃などの消化器官に問題があることを示唆しており、大腸がんや大腸ポリープのほかにも、炎症性腸疾患、胃潰瘍、胃がんなどの病気が原因で血液が混じることがあります。また、便秘による肛門の小さな裂傷や痔からの出血も原因の一つです。
ただし、便潜血検査はスクリーニング検査であり、陽性結果が出た場合でも必ずしも重大な病気があるとは限りません。そのため、陽性の場合はさらに精密な検査を行うことで、大きな異常がないか確認することが大切です。
便潜血検査の費用は?
便潜血検査の費用は国や医療機関によって異なりますが、一般的には比較的低コストで実施されます。日本では、健康保険適用の場合、患者負担は数百円程度で受けられることが多いです。また、自治体が行う健康診断やがん検診の一環として無料で提供されることもあります。自費で行う場合や民間の検査キットを利用する場合の費用は多少高くなる可能性がありますが、それでも1,000~2,000円程度で受けることができます。この検査はコストパフォーマンスが高く、大腸がんなどの早期発見に有効な手段として広く利用されています。
便潜血検査前日や当日の注意点
便潜血検査を行う前日や当日には、いくつか注意すべき点があります。
検査の方法によっては、肉類・魚類・生野菜などの摂取で偽陽性となることもあるため、事前の指示をよく確認してください。他にも、ビタミンCや鉄剤の影響も受けることがあります。また、便器の水やトイレ洗浄剤などに触れないように便を採取する必要もあるので注意しましょう。
便の採取が完了したら提出日までは涼しいところに保管する必要があり、採取後長期保管すると偽陰性の可能性もあるため、採取後2~3日以内には提出してください。正確な結果を得るためには、便のサンプルは自然に排便されたものを使用し、検査キットの指示に従って正確に採取することが重要です。
便潜血検査は何歳からどのくらいの頻度で受けるべき?
便潜血検査を受けるべき年齢や頻度は、国や医療ガイドラインによっても異なりますが、大腸がん検診が40歳以上で対象となるため、40歳からは毎年定期的に受けることが推奨されます。一般的に年に一度の検査が推奨されますが、個人のリスク因子や医師の指示によっては、頻度が変わることもあります。高リスクの方、例えば家族歴がある場合や過去にポリープが見つかった場合は、より早い年齢から、またはより頻繁に検査を受けることが勧められます。低リスクの個人の場合、検査間隔を2年に1回にすることもあるため、自身の健康状態や家族歴に応じて医師と相談し、適切な検査計画を立てることが大切です。
便潜血検査の結果の見方と再検査が必要な診断結果・所見
ここまでは便潜血検査について基本的なことを紹介しました。
再検査・精密検査を受診した方が良い結果がいくつかあります。
以下のような診断結果の場合にはすぐに病院に受診しましょう。
便潜血検査の結果の見方・分類と主な所見
便潜血検査の結果は「陽性」と「陰性」の2つに分類されます。「陰性」は便中に血液が検出されなかったことを示し、一般的には大腸がんや他の消化器系の疾患のリスクが低いと考えられます。しかし、陰性であっても他に症状がある場合は医師の診察を受けることが重要です。
一方、「陽性」は便中に微量の血液が検出されたことを意味し、大腸がんやポリープ、炎症性腸疾患などの可能性があります。ただし陽性の場合、必ずしも重大な疾患があるわけではなく、偽陽性の可能性もあります。そのため、陽性の場合はさらに詳細な検査(例えば大腸内視鏡検査など)を行うことが一般的です。
結果の解釈には注意が必要で、正確な診断や治療方針を決定するためには、医師と相談し、必要に応じて追加検査を受けることが重要です。また、検査結果にはさまざまな要因が影響するため、食生活や服用薬、その他の健康状態を考慮する必要があります。
便潜血所見 | 判定 |
---|---|
全て陰性 | 出血は認められず 健診の場合は1年後の健診が推奨 |
1本以上陽性 | 悪性腫瘍、ポリープなどによる消化管出血の可能性あり 内視鏡などの精密検査が推奨 |
便潜血検査の結果で精密検査が必要な基準と内容(ポリープ・大腸がんなど)
便潜血検査で「陽性」と判断された場合には、精密検査の必要性が生じます。これには大腸内視鏡検査やCT検査などが含まれ、これらの検査を通じて大腸ポリープや大腸がんなどの詳細な診断を行います。
大腸内視鏡検査は、内視鏡を用いて大腸の内部を直接観察し、異常があればその場で組織のサンプルを採取(生検)することができます。この検査は精密で信頼性が高く、ポリープの切除も可能です。CT検査は大腸の画像を詳細に撮影し、異常のある部位を探します。これは非侵襲的な検査で、内視鏡検査に対する不安がある場合の選択肢となります。
検査費用は国や医療機関、自己負担割合によって異なりますが、大腸内視鏡検査は一般的に1万円~数万円程度、CT検査も同程度かかることがあります。健康保険の適用範囲内で行われることが多いですが、保険適用の有無や自己負担額は医療機関に確認することが重要です。
精密検査の緊急度は、全体的な健康状態によって異なりますが、大腸がんは早期発見・早期治療が重要であるため、なるべく早い段階で精密検査を受けることが推奨されます。
再検査の結果に基づき、治療計画が立てられます。例えば、ポリープが見つかった場合、それが良性か悪性かによって治療法が異なります。大腸がんが発見された場合、その進行度に応じて手術、化学療法、放射線療法などの治療が検討されます。精密検査は、地域の病院や専門の消化器病センターで受けることができます。
「便潜血検査」で発見できる病気・疾患
ここではMedical DOC監修医が、「便潜血検査」に関する症状が特徴の病気を紹介します。
どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。
大腸がん
便潜血検査で最も重要な発見対象の一つが大腸がんです。大腸がんは、大腸の内壁にできる悪性の腫瘍で、初期段階では症状が少ないことが特徴です。発症の原因は多岐にわたりますが、遺伝的要因、不適切な食生活(高脂肪・低繊維質の食事)、肥満、喫煙、運動不足などがリスク因子とされています。
治療法は、がんの進行度や位置によって異なりますが、手術による腫瘍の切除や化学療法、放射線療法などが一般的です。早期発見された大腸がんは治療成功率が高く、完治する可能性もあります。
症状としては、病状の進行と共に便の変化(便秘や下痢の交互発生)、便に血が混じる、腹痛、体重減少、持続的な疲労感などが認められることがあります。これらの症状がある場合や、便潜血検査で陽性反応が出た場合は、速やかに病院を受診することが重要です。
受診すべき科は、消化器内科や外科が適切です。これらの科でさらに詳細な検査が行われ、必要に応じて専門医による治療が開始されます。大腸がんの疑いがある場合、迅速な対応が重要で、早期発見・早期治療が予後を大きく左右するため、気になる症状があれば早めに専門医の診察を受けることをお勧めします。
大腸ポリープ
大腸ポリープは、大腸の内壁に生じる突起状の組織で、便潜血検査がきっかけに発見されることがあります。ポリープ自体は良性ですが、一部は時間とともに悪性化し大腸がんに進行するリスクがあります。ポリープの形状はさまざまで、大きさや数にも幅があります。
ポリープの原因は明確には分かっていませんが、遺伝的要因、不適切な食生活、肥満、飲酒・喫煙、運動不足などがリスク因子として考えられています。初期段階ではほとんど症状を示さないため、定期的な検査が重要です。
治療は、ポリープの大きさや数、形状によって異なります。小さなポリープは、大腸内視鏡検査中に切除することが可能です。これにより、がん化するリスクを減らすことができます。大きなポリープや複数のポリープがある場合は、外科手術が必要になることもあります。また、ポリープが見つかった場合には定期的なフォローアップも重要となります。
クローン病
クローン病は、10-20歳代の若年者に好発し、消化管に慢性的な炎症や潰瘍を引き起こす疾患で、便潜血検査により発見されることがあります。この病気は消化管のどの部分にも影響を及ぼす可能性がありますが、特に小腸と大腸が最も一般的な部位です。クローン病の原因は完全には理解されていませんが、遺伝的要因、感染症、免疫系の異常、環境的要因などが関与していると考えられています。
クローン病の症状には、腹痛や下痢、体重減少、疲労感、発熱などがあります。また、関節痛、皮膚の問題、目の炎症など、消化管以外の症状を伴うこともあります。
治療には、炎症を抑える薬物治療(ステロイドや免疫調節薬)、寛解を維持する薬物、場合によっては手術が含まれます。クローン病は完治する病気ではなく、寛解と再燃を繰り返す慢性疾患です。そのため、症状の管理と定期的な医療フォローアップが重要となります。
クローン病の疑いがある場合、消化器内科の受診が推奨されます。医師は大腸内視鏡検査、血液検査、画像診断などを行い、正確な診断を下します。早期診断と適切な治療により、症状の管理と日常生活の質の向上が期待できます。
痔
痔は、肛門に圧力がかかることで肛門周囲の静脈が拡張して炎症や出血を起こしたり、肛門が切れてしまって出血を起こす病態です。便潜血検査で血液が検出されることがあり、大腸がんや他の消化管疾患との鑑別が重要になります。痔は一般的に、いぼ痔(痔核)、きれ痔(裂肛)、痔瘻の3タイプに分類され、それぞれ症状や治療法が異なります。
痔の治療には、生活習慣の改善(食物繊維の多い食事、水分摂取の増加、運動)、局所的な薬物療法(塗り薬、坐薬)、場合によっては手術が含まれます。多くの場合、自宅でのケアや薬物治療で症状は改善しますが、症状が慢性化したり、重症化したりする場合は、外科的治療が必要になることもあります。
痔の症状が見られる場合、消化器科や外科、肛門科の受診が推奨されます。肛門の症状がある場合や便潜血検査で陽性が出た場合には、大腸がんなど他の病気の可能性も含めて、適切な診断を受けることが重要です。早期診断と治療により、症状の軽減と生活の質の向上が期待できます。
腸結核
腸結核とは、結核菌が主に小腸や大腸に感染することによって引き起こされる病態です。結核は肺に影響を与えることが最も一般的ですが、肺以外の器官に影響する場合もあり、その一つが腸結核です。便潜血検査で陽性反応が出ることもあり、他の消化管疾患との鑑別が重要になります。
腸結核の症状には、慢性的な腹痛、持続的な下痢、体重減少、疲労感、発熱などがあります。また、腸の一部が狭くなることによる腸閉塞の症状を示すこともあります。
診断には、大腸内視鏡検査や組織生検、血液検査、画像検査(CTやMRI)などが用いられ、結核菌の特定が重要となります。治療には、通常、複数の抗結核薬を組み合わせた長期間の薬物療法が必要です。適切な治療を行わないと、感染が拡大し重篤化するリスクがあります。
腸結核が疑われる場合、消化器科や感染症科の受診が推奨されます。医師は総合的な診断を行い、必要に応じて専門医への紹介を行います。早期診断と治療により、症状の改善と感染の拡大防止が期待できます。また、周囲への感染予防も重要な側面となります。
「便潜血検査」で引っかかる理由は?
便潜血検査で引っかかる、つまり「陽性」と判定される主な理由は、便中に微量の血液が含まれていることです。これは大腸がん、大腸ポリープ、炎症性腸疾患(クローン病や潰瘍性大腸炎)、腸結核、痔などの消化管疾患が原因である可能性が高いです。また、胃潰瘍や胃がんなど、消化管の他の部分の疾患によっても引き起こされることがあります。
しかし、陽性結果が出たからといって必ずしも重大な疾患があるわけではありません。食事の内容や特定の薬剤(非ステロイド性抗炎症薬など)、便秘による肛門の微小な傷など、他の原因で偽陽性となることもあります。
便潜血検査で陽性が出た場合、特に腹痛、便の変化(便秘や下痢)、体重減少、疲労感などの症状がある場合は注意が必要です。これらの症状がある場合、速やかに医療機関を受診し、さらなる検査を行うことが推奨されます。
「便潜血検査」についてよくある質問
ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「便潜血検査」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
便潜血検査は何科の病院で受けれますか?
小正 晃裕 医師
便潜血検査は、一般的に消化器科、内科、外科、肛門科などの診療科で受けることができます。また、健康診断やがん検診の一環として、多くの一般病院やクリニック、地域の保健所などでも提供されています。医療機関によっては、特に予約なしで検査キットを受け取り、自宅で採取したサンプルを郵送または持参で返送する形式のものもあります。検査を受ける際は、事前に医療機関に確認することが望ましいです。
便潜血検査で大腸がんが見つかる確率はどのくらいですか?
小正 晃裕 医師
便潜血検査は大腸がんのスクリーニングツールであり、陽性反応が出た場合でも、必ずしもがんがあるとは限りません。統計によると、便潜血検査で陽性と判定された人の中で、実際に大腸がんが確認される割合は数%程度と報告されています。この検査は大腸がんの早期発見に有効ですが、陽性結果が出た場合には、必ず追加の精密検査(大腸内視鏡検査など)を受けることが重要です。
便潜血検査が陽性の場合どんな診察・治療が必要ですか?
小正 晃裕 医師
便潜血検査が陽性の場合、まずは消化器内科や外科での精密検査が必要です。医師は患者の症状や健康状態を考慮し、大腸内視鏡検査やCTスキャンなどの追加検査を推奨することが多いです。これらの検査により、大腸がん、ポリープ、炎症性腸疾患などの原因を特定し、必要に応じた適切な治療を行います。治療は、発見された病気の種類と進行度に応じて、薬物療法、内視鏡による治療、手術などが含まれることがあります。
便潜血検査は生理中でも受けることができますか?
小正 晃裕 医師
生理血が便に混じると誤った陽性反応(偽陽性)を引き起こす可能性があります。そのため、生理中の女性は検査を避けるか、医師に相談することが推奨されます。もし生理期間中に検査を行う場合は、生理血が便に混入しないよう注意して採取する必要があります。最適なタイミングで検査を行うことで、より正確な結果を得ることができます。
便潜血検査で2回分検便が採取できないと正確な結果は出ませんか?
小正 晃裕 医師
便潜血検査では通常、異なる日に2回分の便サンプルを採取することが推奨されます。これは、便中の血液が一定でない場合があり、複数回のサンプルによって検査の精度を高めるためです。一回のみの採取では偽陰性や偽陽性のリスクが高まる可能性があり、正確な結果を得るためには2回分の検便が望ましいです。ただし、何らかの理由で2回分の採取が難しい場合は、医師と相談し、最善の方法を決定することが重要です。
まとめ 「便潜血検査」で大腸がんを早期発見!
便潜血検査は大腸がんやその他の消化器系疾患の早期発見に役立つ重要なスクリーニングツールです。この検査は、便中の微量な血液を検出し、大腸がん、ポリープ、炎症性腸疾患などの可能性を示唆します。ただし、陽性結果が出た場合でも必ずしも重大な疾患があるわけではなく、偽陽性の可能性もあるため、精密検査が必要になります。
この検査は40歳以上で年に一度受けることが推奨されますが、個々のリスクに応じて医師と相談することが大切です。症状がある場合や検査で異常が見られた場合は、早急に専門医の診察を受けることが重要です。早期発見と適切な治療により、多くの病気は治療が可能で、健康な生活を維持できる可能性が高まります。
「便潜血検査」で発見できる病気
「便潜血検査」から医師が発見できる病気は5個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
便潜血検査が陽性になる疾患は主に消化器系の病気となります。ただし、その種類は多く、また便潜血検査の偽陽性・偽陰性もあるため、検査結果は必ず医師から聞くようにして、適切な診察・診断を受けるようにしてください。