「大腸内視鏡検査」の費用や前日・当日の注意点はご存知ですか?医師が徹底解説!
大腸内視鏡検査とは?Medical DOC監修医が発見できる病気や健康診断や消化器内科診察での結果の見方と所見等を詳しく解説します。
監修医師:
和田 蔵人(わだ内科・胃と腸クリニック)
目次 -INDEX-
大腸内視鏡検査(大腸カメラ)とは?
大腸内視鏡検査(大腸カメラ)という言葉を一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。ただ、実際に検査を受けたことがある方はあまりいないかもしれません。今回は大腸内視鏡検査はどのような検査なのか、どんな事前準備をすると良いかについて解説します。
大腸内視鏡検査とはどんな検査?
大腸内視鏡検査について、検査の流れをご説明します。大腸内視鏡検査は、太さ約12mmの内視鏡を肛門から挿入します。検査は左側を下にして寝転がる形で始まります。その後内視鏡を大腸の一番奥の盲腸と呼ばれる部位まで挿入します。検査中は必要に応じて、仰向けや右向きへと体の向きを変えていただきます。盲腸まで内視鏡が到達したら、ゆっくり引き抜きながら大腸の粘膜の炎症やできもの(ポリープやがん)などがないか観察していきます。もし、検査中にポリープが見つかった場合にはその場で切除することもあります。またがんを疑う腫瘍や粘膜の炎症、その他の異常が見つかった場合には、必要に応じて組織を採取します。
検査の時間は、15~30分ほどですが、麻酔ありで検査した場合は検査後に少し休む必要があり、検査後1時間ほど休んでいただきます。当日朝から腸管洗浄剤を飲んで、腸がきれいになってからしか検査できませんので、検査は1日がかりと考えておくと良いでしょう。
検査結果に関しては観察だけで終わった場合は、たいてい検査終了後に結果を聞くことができます。大腸内視鏡の検査中に、検体を採取した場合は、結果が出るまでに2週間~3週間ほど時間がかかる場合があります。
検査後に少し水を飲んでみて問題なければ、検査後の食事は普段通り食べても問題ありません。ポリープを切除した場合は、検査後1週間ほどは消化のよいものを心がけて、刺激物を避けてください。辛いものだけでなく、カレー、脂っこい食事、アルコール、コーヒーなども控えるようにしましょう。また、1週間程は激しい運動も控える様にしましょう。
大腸内視鏡検査で体の何がわかる?
大腸内視鏡検査では大腸の炎症や腫瘍があるかがわかります。また、血便がみられた場合や腹痛、下痢、便秘などの原因を調べる時にも行われます。この検査によって大腸がん、大腸ポリープ、潰瘍性大腸炎、クローン病、大腸憩室炎、虚血性腸炎などの病気がわかります。
大腸内視鏡検査の費用は?
大腸内視鏡検査は、大腸の病気が疑われ、医師が検査を必要だと判断した場合に保険適用になります。人間ドックなどで大腸内視鏡検査を受けるときは全額自費になります。
自費では大腸の観察だけで15,000円から30,000円かかります。保険診療では診療報酬が1550点であり、1点が10円なので15,500円かかります。ここから自己負担割合に応じて3割なら4,650円、1割負担なら1,550円が自分の払う金額です。なお、検査の際に点滴や鎮静剤や鎮痛剤を使用した場合の費用は別途加算され、多少の幅があります。
ポリープの切除を行った場合は追加料金が発生します。ポリープを切除したときの診療報酬は5,000点(大きいものは7,000点)で、3割負担の方なら15,000円から21,000円かかります。切除したポリープが複数の場合には、自己負担額は個数に応じて増えます。
大腸内視鏡検査前日や当日の注意点
大腸内視鏡検査は、検査前に溜まった便をしっかり出して、大腸の中をきれいにしておくことが大切です。そのため、検査の前夜は消化の良いものを食べて下剤を服用し、検査当日は朝から腸管洗浄剤という腸をきれいにする液を飲みます。消化に影響する脂肪分やアルコール類は、できれば二日前や三日前から控えて下さい。何を食べていいか分からない人は、検査食という消化の良い食事セットを買って用意しましょう。夕食後にお腹が空くかもしれませんが、おやつなどは食べないようにしましょう。そして、検査前日の夜は忘れずに処方された下剤を服用してください。もし、下剤を飲んでお腹が痛い、お腹が張って苦しいなどの症状があれば、病院へ連絡して指示を仰いでください。下剤を飲んでも効かない、便が出ないという場合で痛みなどがなければ、様子をみましょう。
腸管洗浄剤を飲んで検査前に漏らしたらどうしようと心配される方もいるかもしせません。腸管洗浄剤は検査の5~6時間以上前に飲むため、便意をもよおさなくなってから落ち着いてお家を出発していただければ良いので、それほど心配いりません。もし心配なようでしたら、病院で飲んでいただくことも可能です。
検査当日は検査が終わるまで食事を摂れません。飲み物についても水やお茶を飲む程度に留めて、コーヒー・ジュース・牛乳などは控えてください。
持病や内服している薬があるならば、予約をするときに必ず伝えてください。大腸内視鏡検査を受けるときに飲んではいけない薬や中止してはいけない薬がありますので、自己判断で薬を飲んだり中止したりするのはやめましょう。
大腸内視鏡検査が受けられない人はどんな人?
大腸内視鏡検査は、前日や当日に守らなければならないことがいろいろあります。認知症の方、下剤や腸管洗浄剤がうまく内服できない方などは、希望しても検査を受けられないことがあります。また、心臓の病気をお持ちの方なども身体の状態によっては検査が受けられない可能性がありますので、まずは医師にご相談ください。女性の方は生理中に検査が受けられるのかを気にする方もいらっしゃるでしょう。生理中であっても大腸内視鏡検査には影響しませんので、ご安心ください。
大腸内視鏡検査は何歳からどのくらいの頻度で受けるべき?
統計によると、40歳を越えると大腸がんの罹患率(病気にかかる割合)が上昇します。40歳以上の方は、健診などでまず年1回の頻度で便潜血検査を受けることが推奨されています。便潜血検査で引っかかった方は、大腸内視鏡検査を受けた方がよいでしょう。初回の大腸内視鏡検査で下記のa.b.cに当てはまった方は、翌年も大腸内視鏡検査を受けた方がよいとされています。
- a. 大腸がんの内視鏡治療・外科治療を行った方
- b. 10個以上のポリープ(腺腫)を切除した方
- c. 20㎜以上の大きなポリープ(腺腫)の内視鏡治療を行った方
ポリープを取ったとしてもa.b.cに当てはまらなかった方は、次の大腸内視鏡検査は多くの場合2~3年後の施行が勧められています。ただし状況によっては、より短期間での検査が必要となる場合がございますので、担当の医師とご相談ください。また内視鏡検査で異常がなかった場合でも、年1回の便潜血検査は必ず受けるようにしましょう。
大腸内視鏡検査の結果の見方と再検査が必要な診断結果・所見
ここまでは大腸内視鏡検査について基本的なことを紹介しました。
再検査・精密検査を受診した方が良い結果がいくつかあります。
以下のような診断結果の場合にはすぐに病院に受診しましょう。
大腸内視鏡検査の結果の見方・分類と主な所見
大腸内視鏡検査の際に行った生検検査の結果は、説明の用紙と大腸粘膜の画像を合わせて、医師からの説明を受けます。検査結果から医師が診断し、以下の6グループに分類されます。
Group1 | 正常組織および非腫瘍性病変 |
Group2 | 腫瘍性か非腫瘍性か判断の困難な病変 |
Group3 | 腺腫 |
Group4 | がんが疑われる病変 |
Group5 | がん |
GroupX | 生検組織診断ができない不適材料 |
Group1は特に問題ありませんが、Group3の腺腫はがん化する場合もありますので、基本的に内視鏡治療が行われます。またGroup4はがんが疑われる、Group5はがんの診断となり、治療が必要です。その他Group2は腫瘍(腺腫またはがん)か非腫瘍か判断が困難な病変であり、再検査が推奨されます。
大腸内視鏡検査の結果で精密検査が必要な基準と内容(ポリープ・癌など)
大腸内視鏡検査でポリープやがんが疑われた場合、追加の検査や治療を受ける必要があります。腺腫と呼ばれる良性のポリープであればその場で切除する場合もありますが、がんが疑われる場合には生検といって腫瘍の一部から組織を採取します。またサイズの大きな腺腫の場合にはその場で切除せず、後日改めて内視鏡を行い切除する場合もあります。その他大腸の粘膜に異常がみられた場合にも、必要に応じて組織を採取し結果によって治療方針を検討します。
「大腸内視鏡検査」で発見できる病気・疾患
ここではMedical DOC監修医が、「大腸内視鏡検査」で発見できる病気を紹介します。
どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。
大腸がん
大腸がんは結腸や直腸と言われる部位に発生するがんです。腺腫と呼ばれる良性のポリープががん化する場合と、正常な粘膜からがんが発生する場合があります。大腸がんの発生には生活習慣が関わっており、飲酒や喫煙、肥満などによりがんが発生する危険性が高まるとされています。また、家族に大腸がんの方がいると、大腸がんになりやすいというデータもあります。
予防のためには、飲酒や喫煙は控え、食事のバランスを整えましょう。大腸がんの早期は症状がほぼありません。病気の悪化に伴って、血便(腫瘍からの出血)が見られます。40歳以上であれば、年1回の便潜血検査を受けるようにして、陽性の時には病院を受診してください。大腸がんは消化器の病気ですので、消化器内科を標榜している医療機関を選ぶとよいでしょう。
大腸ポリープ
大腸ポリープとは、大腸の内側に向かって局所的に隆起する(盛り上がった)病変を指し、良性か悪性は問わないとされています。腺腫と呼ばれる良性のポリープは、内視鏡検査中にその場で切除することがあります。ただしサイズの大きなものやがんが疑われる場合には、入院して治療を行う場合もあります。大腸ポリープはあまり症状の出ない病気ですので、健診などで便潜血検査が陽性だったときや、血便があれば、消化器内科を受診してください。
潰瘍性大腸炎
潰瘍性大腸炎とは、大腸の粘膜にびらんや潰瘍ができる原因不明の病気です。直腸と呼ばれるお尻の入り口の部分から連続して広がるのが特徴で、腹痛や下痢、血便などが特徴的な症状です。男女差はなく、20代に多く発生しますが、高齢者で発症することもあります。
薬による内科的治療が基本で、5-ASAと呼ばれる炎症をおさえる飲み薬を中心に症状や程度に応じてステロイド薬や生物学的製剤と呼ばれる薬剤の投与を行います。ただし内科的な治療で効果が無い場合は外科治療が行われることがあります。腹痛や血便、長く続く下痢などがあれば、消化器内科を受診してください。
「大腸内視鏡検査」で引っかかる理由はポリープ?癌?
大腸内視鏡検査で、腸内にポリープやがんなどのできものがあった場合や粘膜の異常を認めた場合は検査にひっかかります。検査に引っかかった場合は再検査となりますが腺腫と呼ばれる良性のポリープの場合にはその場で切除する場合があります。またがんが疑われる場合には、生検といって組織の一部を採取し、病理検査を行い、後日結果が報告されます。
「大腸内視鏡検査」についてよくある質問
ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「大腸内視鏡検査」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
大腸内視鏡検査の鎮静剤について教えてください。
和田 蔵人 医師
大腸内視鏡検査では、患者さんの苦痛を軽減するためにミダゾラムという鎮静剤を使用することがあります。鎮静剤には患者さんを眠らせる効果があるため、投与された患者さんは苦痛が少ない状態で検査を受けることができます。また鎮痛剤と呼ばれる痛み止めも一緒に使用することが多いです。
ただし、高齢者や体調が悪い方の場合、薬が効き過ぎてしまい、呼吸が浅くなったり血圧が下がったりすることがあります。鎮静剤使用についての詳細は検査を受ける施設に確認してください。
大腸内視鏡検査の翌日に仕事はできますか?
和田 蔵人 医師
大腸内視鏡検査の翌日には、基本的にいつも通り仕事をしていただいて問題ありません。もしポリープを切除した場合は、腸に圧力がかかるようなことがあるとポリープを切除した部位からの出血などの合併症を起こす可能性があるため、翌日はデスクワーク程度のお仕事に留めてください。力仕事やスポーツなどは念の為1〜2週間は控える必要があります。
大腸内視鏡検査は辛いですか?痛みを抑える方法はありますか?
和田 蔵人 医師
大腸内視鏡検査は検査中に送気(内視鏡を通して腸の中に空気を入れます)を行いながら挿入、観察を行います。そのため検査中にお腹の張り感や痛みを訴える方もいらっしゃいます。以前検査をした時に辛かった方や不安がある方は鎮静剤や鎮痛剤を使用して検査をしてもらうことを検討しましょう。
大腸内視鏡検査を受けた方がいいのはどんな人ですか?
和田 蔵人 医師
健診などで便潜血検査が陽性となった場合には必ず内視鏡検査を受けるようにしましょう。また血便がある、便が細くなった、便秘や下痢などの排便障害がみられた場合にも内視鏡検査を受けた方がよいでしょう。なお便潜血検査は健診で40歳以上を対象としており、年齢的には40歳が大腸内視鏡検査を受ける一つの目安となります。
大腸内視鏡検査をすると痩せますか?
和田 蔵人 医師
大腸内視鏡検査で痩せることはありません。検査前に内服する下剤や腸管洗浄剤で腸の中に溜まっていた便が排出され、一時的に体重が減ることはあります。
まとめ 「大腸内視鏡検査」で大腸がんを早期発見!
大腸にはいろいろな病気があり、大腸内視鏡検査で病気を見つけられることをお伝えしました。特に大腸がんは、早期に発見できれば、内視鏡での治療も可能です。ただし早期には症状がない場合がほとんどですので、40歳以上の方は健診などで年1回の便潜血検査を受けて、陽性であった場合には必ず内視鏡検査を受けるようにしましょう。その他血便がある、便が細い、腹痛や下痢を繰り返すといった症状が見られるときも、できるだけ早くに病院を受診して大腸内視鏡検査を受けましょう。
「大腸内視鏡検査」の異常で考えられる病気
「大腸内視鏡検査」の検査結果から医師が考えられる病気は8個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
大腸内視鏡検査では大腸がんだけではなく色々な大腸のトラブルの原因を調べることができます。40歳以上の方は一度検査を受けることを検討すると良いでしょう。
参考文献
- [日本消化器病学会]大腸ポリープ診療ガイドライン2020
- [日本消化器病学会]炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2020
- [国立がん研究センター]2019大腸がんの統計
- [日本消化器内視鏡学会]大腸内視鏡スクリーニングとサーベイランスガイドライン