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「肝機能検査」で何がわかる?検査でわかる病気や数値について医師が徹底解説!

 更新日:2023/12/13
「肝機能検査」で何がわかる?検査でわかる病気や数値について医師が徹底解説!

肝機能検査とは?Medical DOC監修医が肝機能検査でわかる病気やAST/ALT/γ-GTP等検査結果の見方と数値、肝臓がんや肝硬変等を詳しく解説します。

中川 龍太郎

監修医師
中川 龍太郎(医療法人資生会 医員)

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奈良県立医科大学卒業。臨床研修を経て、医療法人やわらぎ会、医療法人資生会南川医院に勤務。生活習慣病や肥満治療、予防医学、ヘルスメンテナンスに注力すると同時に、訪問診療にも従事している。日本プライマリ・ケア連合学会、日本在宅医療連合学会、日本旅行医学会の各会員。オンライン診療研修受講。

肝臓の健康状態がわかる肝機能検査とは?

健康診断などで「肝機能が悪いですね」と指摘されたこと、また家族や友人、知人で「肝臓が悪くて」と言った話を聞いたことはないでしょうか。このような場合、正確に言えば「肝機能が低下している・肝機能が悪い」ということになります。では肝機能が悪いと具体的にどんな病気になるのか、という観点から、各病気について解説いたします。

肝機能検査とはどんな検査?

肝機能検査とは、多くの場合、健康診断などで血液検査から肝機能に関連した項目を調べる、という内容になっています。クリニックや病院などの医療機関で、すでに肝臓の病気が疑われる場合は、腹部エコーやCT・MRIなどの画像検査も同時に進める場合もあります。

肝機能検査で体の何がわかる?

肝機能検査で主にみる数値は、AST(GOT)、ALT(GPT)、γ-GTPです。ほかにもビリルビンやアルブミン、総蛋白などの値も見られますが、代表的なものとして前半3つが挙げられます。
AST・ALTはともに肝臓の細胞に多く存在する酵素の一種です。肝臓の細胞が傷つくと、AST・ALTが血液中に放出されるため、血液検査で基準値より高い値となります。そのため、AST・ALTの数値が肝臓の状態をある程度反映しており、肝臓に何らかの異常があることを示しています。
一方、γ-GTPは肝臓や胆道系(胆のう、胆管など)に存在する酵素の一つです。γ-GTPが上昇すると、肝臓や胆道系に何らかの異常がある可能性が出てきます。
AST・ALTは筋細胞にも含まれるため、AST・ALTの数値が高い状態からは、肝炎や肝硬変、肝臓がんなどの肝臓の病気だけでなく、筋肉の損傷や炎症などの筋肉の病気が考えられます。
γ-GTP値上昇からは、胆石症やアルコール性肝障害、肝炎などが疑われます。また、生活習慣の乱れ(特に過度なアルコール摂取や不健康な食生活)もγ-GTPの上昇を招くことが知られています。

肝機能検査の費用は?

肝機能検査の費用は、保険適用で3割負担の場合血液検査で1000〜2000円ほどです。腹部エコー検査の費用は1,500円ほどなので、どちらも行う場合は、医療機関によって若干の差はあるものの、大体3000円〜4000円程度で受けることができます。

肝機能検査前日や当日の注意点

検査を受けられる施設の基準によって幅はありますが、肝機能検査において少なくとも飲酒は前日からやめておきましょう。食事の影響ももちろん出ますが、それ以上にアルコールが肝機能に影響を及ぼす可能性が高いためです。

肝機能検査結果の見方とAST(GOT)/ALT(GPT)/γ-GTPの基準値・精密検査が必要な数値

ここまでは肝機能検査について基本的なことを紹介しました。
再検査・精密検査を受診した方が良い結果がいくつかあります。
以下のような診断結果の場合にはすぐに病院に受診しましょう。

肝機能検査結果の見方と主な所見(肝硬変・肝臓がん等)

基本的には血液検査の数値、AST/ALT/γ-GTPの値に注目しましょう。肝臓の病気がまだ初期段階で、徐々に肝臓へのダメージが出ている状態では、これらの数値が上昇してきます。
一方、肝硬変、肝臓がんなどは一定のラインを超えると、特にAST /ALTの上昇が起こらなくなります。この場合は、他の検査項目と合わせた総合的な評価が必要になります。

肝機能検査のAST(GOT)/ALT(GPT)/γ-GTPの異常値と精密検査内容

AST、ALTの基準値はともに30U/L以下、γ-GTPでは50U/L以下とされていますが、検査機関によって細かい数値は異なりますので、大体把握してくだされば問題ありません。基準値を数値がどれだけ上回ったかという点にあまり意味はありません。
重要なことは基準値を超えた場合に、肝臓の病気の可能性があるかもしれないと認識して、再検査・精密検査を受けることです。なお、日本肝臓学会は2023年6月15日、ALTの値が30を超えた場合を医療機関への受診指標とすると発表しています。
もしこのように健康診断などで再検査・精密検査を勧められた場合、まずは近隣の消化器内科や肝臓専門を標榜しているクリニック・診療所を受診してみましょう。再検査までの緊急度はまちまちですが、少なくとも2ヶ月以内には受診していただきたいところです。
検査内容は血液検査の再検査に加えて、腹部エコーや腹部CT・MRI撮影なども選択肢に加わることが多いです。

「肝機能検査」で発見できる病気・疾患

ここではMedical DOC監修医が、「肝機能検査」に関する症状が特徴の病気を紹介します。
どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。

肝硬変

肝硬変は、肝臓の細胞が何らかの原因で長期にわたって傷つき、その結果、健康な肝細胞が瘢痕組織に置き換わった状態を指します。この瘢痕組織は肝臓の通常構造を変え、機能を低下させることがあります。原因としては、長期間のアルコール過剰摂取によるアルコール性肝炎、アルコール摂取をしていなくても脂肪肝によって生じる非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、慢性的なB型やC型肝炎ウイルス感染などが代表的です。
肝臓は「沈黙の臓器」と言われるだけあって、初期では自覚症状はほとんどないか、非常に軽微であることが多いです。しかし状態が進行するにつれて、疲労感、食欲不振、体重減少、腹部の痛みや膨満感、黄疸(肌や目の白い部分が黄色くなること)、腹水(腹部に液体が溜まること)などの症状が現れることがあります。
診断は通常、患者の既往歴や身体診察、血液検査、画像検査(エコー、CT、MRI)を通じて行われます。肝臓の生検(組織の一部を採取して調べること)が行われることもあります。
治療は、病状の進行を遅らせることに焦点を当てながら、原因となる病気(例えば、アルコール依存症やウイルス性肝炎)の管理をすることが中心になります。進行した肝硬変の場合、完全に肝機能が回復するという可能性は非常に低いため、健康診断などで肝機能低下を指摘された場合は、早めに医療機関を受診しましょう。受診すべき診療科は消化器内科や肝臓専門医の在籍する医療機関です。

肝臓がん

肝臓がんとは、肝臓内の細胞が異常に増殖してできる悪性の腫瘍を指します。長期にわたる肝炎や肝硬変などの肝臓の病気がリスクとされており、早期発見が難しいのが特徴です。 主な症状としては、全身のだるさ、腹部の膨らみ、腹水、便通異常(便秘・下痢など)、吐き気、嘔吐、痛みなどが挙げられますが、これらはかなり肝臓がんが進行してしまった段階でみられます。 肝臓がんの診断は、肝臓のエコーや血液検査、CT、MRIなどの画像検査を用いて行います。 受診すべき診療科は消化器外科や消化器内科です。 診断結果を元に、治療の方針が決定されます。早期であれば、手術やラジオ波焼灼療法(穿刺局所療法)での治療が行われることが多いです。一方、病気が進行している場合や手術が難しい場合は、薬物療法や放射線治療が選択されることもあります。

肝不全

肝不全は、肝臓の機能が重度に損なわれ、体内の代謝や解毒のプロセスが正常に行われない状態を指します。肝硬変が進行した末に起こることが多く、生命を脅かす可能性があります。先述の肝硬変や肝臓がんに加え、急激な肝細胞の破壊を伴う急性肝炎や薬物による肝障害など、肝臓に負担をかける様々な状態が原因となり得ます。
肝不全の症状は非常に多岐にわたりますが、特に注目すべきは、意識障害や記憶障害などの精神神経症状です。これは脳へのアンモニアの毒性の影響が原因とされています(アンモニア脳症と言います)。その他には出血傾向、黄疸、腹水、全身のむくみなどが見られることがあります。
診断は、症状や血液検査の結果、画像診断や肝生検によって行われます。特に肝不全においては、肝臓の合成機能(体内に必要不可欠な物質を作り出す機能)を反映するアルブミンや、血液凝固に関わる血小板数などを測定します。このアルブミンが極端に低下すれば腹水や浮腫の原因に、血小板が極端に減少すると出血傾向(血が止まりにくい状態)を引き起こします。
治療に関しては、肝不全の原因を取り除くことが最優先となります。急性肝不全の場合には、入院しての集中治療が必要になることが多く、慢性肝不全の場合には肝移植が唯一の根治療法となる場合もあります。その他、栄養療法、薬物療法、感染症の予防と治療など、対症療法が行われます。
肝不全は非常に緊急性が高く、早急な治療介入が必要です。上記のような症状が現れたらすぐに消化器内科や救急外来を受診しましょう。

健康診断や血液検査の「肝機能検査」で引っかかる理由は?

普段の生活習慣や、薬剤、感染症などで肝臓に何らかの障害がある際に、肝機能検査で引っかかります。症状があればすぐに病院を受診する動機になるのですが、症状が出ないままに進行するのが肝臓の怖いところです。
症状が出ていないからまだ受診しなくていい、とは考えないでください。

「肝機能検査」についてよくある質問

ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「肝機能検査」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

健康診断以外で肝機能検査は何科の病院で受けることができますか?

中川 龍太郎中川 龍太郎 医師

一般的な内科のクリニックで受けることが可能です。

AST(GOT)/ALT(GPT)/γ-GTPなど肝機能検査の項目を教えてください。

中川 龍太郎中川 龍太郎 医師

AST(GOT)、ALT(GPT)、γ-GTP以外にもビリルビンやアルブミン、総蛋白などの値も肝機能の指標として確認します。

肝機能検査の正常値はいくつですか?ALTが45以上だと肝臓が悪いですか?

中川 龍太郎中川 龍太郎 医師

AST、ALTの正常値はともに30U/L以下、γ-GTPでは50U/L以下とされています。ALTが45以上は肝障害の可能性があり、医療機関受診対象です。

お酒を飲まない人でも肝機能検査に引っかかることはありますか?

中川 龍太郎中川 龍太郎 医師

あります。脂肪肝の患者さんでも引っかかることは多いです。

肝機能検査で数値の高さを指摘されたらどんな治療・改善方法がありますか?

中川 龍太郎中川 龍太郎 医師

禁酒、規則正しいバランスの取れた食習慣などです。ただし薬剤や感染症など、ご自身でどうにもならない場合もありますので、まずは病院を受診しましょう。

まとめ 「肝機能検査」で肝硬変を早期発見!

肝機能検査と、それからわかる病気について解説しました。肝臓は非常に自覚症状の出づらい臓器で、それゆえに「まだ症状がないから大丈夫」と、肝機能検査に引っかかっていても放置してしまう方が散見されます。
実際のところ、症状が出てからではもう取り返しがつかないパターンも多いので、肝機能検査で引っかかった場合は早めに医療機関を受診しましょう。

「肝機能検査」の異常で考えられる病気

「肝機能検査」から医師が考えられる病気は6個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

消化器系の病気

肝機能検査の異常値から考えられる疾患は上記が挙げられます。いずれも診断には専門的な判断が必要になりますので、肝機能検査で引っかかった場合は早めに受診しましょう。

この記事の監修医師