健康診断で肝機能の「ALTが高い」と言われたら生活習慣の見直しを!
健康診断で肝機能のALTが高いと言われたらどうすべき?Medical DOC監修医が血液検査の見方や基準値・主な原因と病気のリスク・対処法などを解説します。
監修医師:
金 仁星(医師)
化粧品検定2級、英語発音指導士® 所有
目次 -INDEX-
健康診断・血液検査で「ALTが高い」と診断されたときに考えられる原因と対処法
健康診断や血液検査で「ALTが高い」と診断されたことはありませんか?ALTとは、肝臓の細胞に多く存在する酵素の一種で、肝臓の働きを反映する指標です。ALTが高いということは、肝臓の細胞が破壊されて血液中にALTが漏れ出している可能性があります。ALTが高い原因はさまざまで、脂肪肝や肝炎、薬やアルコールの影響などが考えられます。また、妊娠中や授乳中、筋トレなどでも一時的にALTが上昇することがあります。この記事では、健康診断や血液検査で「ALTが高い」と診断されたときに考えられる原因と対処法について、分かりやすく解説していきます。
ALTが高いと診断されたときに考えられる原因と病気のリスク・対処法
肝炎、脂肪肝、肝硬変、肝がんなどの肝臓の病気や、アルコールや薬物の過剰摂取、ストレスや過度な運動などの生活習慣の乱れが原因となることがあります。放置すると、肝臓の機能が低下し、黄疸や腹水などの重篤な合併症を引き起こす可能性があります。また、肝臓以外にも心筋梗塞や脳卒中などの循環器系の病気や、糖尿病やメタボリックシンドロームなどの代謝性の病気にもかかりやすくなります。
まずは、ALTが高い原因を特定するために、医師による精密検査を受けることが必要です。その上で、医師の指示に従って必要な治療を行います。また、日常生活では、アルコールや脂っこい食事を控える、適度な運動をする、ストレスを減らすなどの工夫をすることで、ALTの値を改善することができます。
お酒を飲まないのにALTが高いと診断されたときに考えられる原因と病気のリスク・対処法
お酒を飲まないのにALTが高い場合は、肝臓に何らかの異常がある可能性があります。考えられる病気は、脂肪肝、肝炎、肝硬変、肝臓がんなどです。これらの病気は、初期段階では自覚症状がないことが多いので、早期発見・早期治療が重要です。
ALTが高いと診断された場合は、まずは医師の指示に従って精密検査を受けることが必要です。精密検査では、肝臓の状態や病気の種類・程度を詳しく調べることができます。また、原因によっては、薬物治療や手術などの治療法が必要になる場合もあります。
ALTが高く中性脂肪が低いと診断されたときに考えられる原因と病気のリスク・対処法
ALTが高いということは、肝臓の細胞が傷ついていることを示しています。一方、中性脂肪は血液中に運ばれる脂肪の一種で、食事や運動などによって変動します。中性脂肪が低いということは、エネルギーの消費が多いか、摂取が少ないか、あるいは吸収や代謝に異常があることを示しています。
ALTが高く中性脂肪が低い場合、ウイルス性肝炎、自己免疫性肝炎、アルコール性肝炎、薬物性肝障害などが考えられます。ALTが高く中性脂肪が低い場合は、まず原因を特定するために精密検査を受ける必要があります。精密検査には、肝臓のエコー検査や肝生検、ウイルス性肝炎の血液検査などがあります。原因によって治療法は異なります。
ALTが高いと診断された場合は、重篤な病気の可能性があります。早期発見・早期治療が重要ですので、無視せずに医師の指示に従ってください。
20代でALTが高いと診断されたときに考えられる原因と病気のリスク・対処法
20代でALTが高いと診断された場合でも、肝臓に何らかの異常がある可能性が高いです。考えられる病気は、脂肪肝、ウイルス性肝炎、自己免疫性肝炎、薬物性肝障害などです。これらの病気は、放置すると肝硬変や肝臓がんに進行する危険性があります。
20代でALTが高いと診断された場合の対処法も、他の年代と同様に、まずは原因を特定することです。検査の流れ、種類はこれまでご紹介した通りです。
20代でALTが高いと診断された場合の日常生活で気を付けるポイントは、以下のようなものです。
- ・お酒やタバコを控える
- ・高カロリー・高脂肪・高塩分の食事を避ける
- ・野菜や果物などのビタミンや食物繊維を多く含む食事を摂る
- ・適度な運動をする
- ・ストレスを溜めない
- ・サプリメントや市販薬などを過剰に摂らない
20代でALTが高いと診断された場合は、早めに医師に相談しましょう。自己判断や無理な自己治療はせずに、専門家の指導に従って治療を受けることが大切です。
妊娠中にALTが高いと診断されたときに考えられる原因と病気のリスク・対処法
妊娠中にALTが高いと診断された場合も同様に、肝臓の炎症や損傷がある可能性があります。妊娠中にALTが高い原因には、妊娠性肝内胆汁うっ滞症(IHCP)、急性妊娠脂肪肝、ウイルス性肝炎などが考えられます。これらの病気は母体だけでなく胎児にも重大な影響を及ぼす可能性があるので、早期に医師の診察を受けることが必要です。
妊娠中にALTが高いと診断された場合の対処法は、原因となる病気によって異なります。自己判断せずに医師と相談しながら適切な治療を受けましょう。
産後や授乳中にALTが高いと診断されたときに考えられる原因と病気のリスク・対処法
産後や授乳中はホルモンバランスが大きく変化する時期です。そのため、肝臓の働きにも影響が出ることがあります。産後や授乳中にALTが高いと診断された場合、以下のような原因や病気が考えられます。
- ・妊娠中毒症やHELLP症候群などの妊娠合併症
- ・妊娠性肝内胆汁うっ滞症(IHCP)や急性脂肪肝などの妊娠特異的な肝障害
- ・ウイルス性肝炎や自己免疫性肝炎などの感染性や免疫性の肝炎
- ・薬剤性肝障害やアルコール性肝障害などの外因性の肝障害
- ・脂肪肝や非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)などの代謝性の肝障害
ALTが高いと診断された場合、まずは医師の指示に従って必要な検査を受けることが大切です。検査によって原因や重症度が判明し、適切な治療法が決められます。一般的には、原因に応じて抗ウイルス薬やステロイド薬などの薬物治療や、食事制限や運動などの生活指導が行われます。また、授乳中は母乳に影響が出る可能性があるため、医師と相談して授乳方法を決める必要があります。
産後や授乳中にALTが高いと診断された場合でも、パニックにならずに冷静に対処することが大切です。多くの場合は一時的なもので、治療や生活改善で正常化することができます。しかし、放置すると慢性化したり、重篤な合併症を引き起こしたりする恐れもあります。そのため、定期的に検査を受けて経過を見守り、医師の指示に従って治療や生活改善を行うことが必要です。
健康診断の「ALT」の見方と再検査が必要な「ALTが高い」に関する診断結果
ここまでは診断されたときの原因と対処法を紹介しました。
再検査・精密検査を受診した方が良い結果がいくつかあります。
以下のような診断結果の場合にはすぐに病院に受診しましょう。
健康診断・血液検査の「ALT」の基準値
ALTとは、肝臓の細胞に多く存在する酵素で、肝臓の状態を反映する指標の一つです。健康診断や血液検査でALTの数値が高いという結果が出た場合は、肝臓に何らかの異常や疾患が潜んでいる可能性があります。ALTの基準値は、一般的には10~40単位/Lとされていますが、検査機器や施設によって若干異なることがあります。そのため、基準値は必ず検査結果と一緒に確認してください。
ALT | |
---|---|
基準値 | 10~40 |
高値 | 41以上 |
肝硬変、肝臓がん | 41~150 |
脂肪肝、慢性肝炎 | 100~500 |
急性肝炎 | 500超 |
ALTの数値が基準値を超えている場合は、再検査を受ける必要があります。ALTの上昇度によって、考えられる病気の種類や重症度が異なります。
500単位以上の高度上昇が見られる場合は「急性肝炎」が疑われます。一方100~500単位程度の上昇であれば「脂肪肝やアルコール性肝障害、慢性肝炎」、逆に150単位以下の軽微な上昇であれば「肝硬変や肝臓がん」の可能性を考えます。
ALTの数値だけでは、肝臓の病気を確定的に診断することはできません。ALTが高い場合は、他の項目や精密検査と併せて判断する必要があります。また、ALTが高い原因は、ストレスや薬剤などによる一過性のものもあります。そのため、再検査を受けて数値の変化を見ることも大切です。
健康診断・血液検査で「ALTが高い」ときの数値と再検査内容
ALTが高い場合、原因を特定するために再検査や精密検査を行う可能性があります。再検査や精密検査は、医師の指示に従って行います。一般的には、ALTが基準値の2倍以上高い場合や、他の肝臓の酵素やビリルビンなども異常な場合は、再検査や精密検査を受けることが推奨されます。費用は検査内容によって異なりますが、数千円から数万円程度かかることが多いです。再検査や精密検査を受ける期間は、原因によって異なりますが、早めに受けることが望ましいです。再検査や精密検査の結果に応じて、治療方法も変わります。治療方法には、薬物療法や食事療法、生活習慣の改善などがあります。
健康診断・血液検査の「ALTが高い」診断で気をつけたい病気・疾患
ここではMedical DOC監修医が、「ALTが高い」に関する症状が特徴の病気を紹介します。
どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。
慢性肝炎
慢性肝炎とは、肝臓に炎症が長期間続く病気です。原因は、ウイルス感染や自己免疫異常、薬物などがあります。慢性肝炎が進行すると、肝硬変や肝がんになるリスクが高まります。ALTは肝臓の炎症を反映する数値で、基準値より高い場合は慢性肝炎の可能性があります。ALTが高いだけでは症状がないことも多いので、気づかないまま放置してしまう人もいますが、早期発見・早期治療が重要です。ALTが高い場合は、まずは内科や消化器科で精密検査を受ける必要があります。慢性肝炎の診断が確定したら、原因に応じた治療法を医師と相談します。治療法には、抗ウイルス薬や免疫抑制剤などの薬物治療や、生活習慣の改善などがあります。また、定期的に肝臓の機能やがんの有無をチェックすることも大切です。
ウイルス性肝炎
ウイルス性肝炎とは、ウイルスが肝臓に感染して炎症を起こす病気です。主なウイルスにはA型、B型、C型などがあります。ウイルス性肝炎は、食品や水、血液や体液などの接触によって感染します。ウイルス性肝炎の症状は、発熱や食欲不振、黄疸(おうだん)などです。一部の人は無症候性で気づかないこともあります。ウイルス性肝炎は、早期に発見して治療することが重要です。治療しないと、肝硬変や肝がんなどの重篤な合併症を引き起こす可能性があります。ウイルス性肝炎の治療法は、ウイルスの種類によって異なります。A型やE型は自然治癒することが多く、対症療法で経過を見守ります。B型やC型は抗ウイルス薬などの薬物治療が必要です。ALTが高いと健康診断で指摘された場合は、消化器内科や感染症科などの専門医に相談してください。血液検査でウイルスの有無や種類を調べることができます。
「ALTが高い」ときの正しい対処法・改善法は?
肝臓は体内の毒素を分解したり、血液をきれいにしたりする重要な役割を担っています。そのため、ALTが高い状態を放置すると、肝臓の機能が低下し、さまざまな病気のリスクが高まります。
肝臓に負担をかけるものとしては、お酒や脂っこい食べ物、薬などが挙げられます。これらを控えることで、肝臓に負担をかけないようにしましょう。ただし、処方されている薬に関しては自己判断で中止しないようにしましょう。また、水分やビタミンCを多く摂ることで、肝臓の働きをサポートすることができます。
また肝機能の低下に伴って、倦怠感や食欲不振、黄疸などの症状が出ることがありますが、これらの症状がある場合は、自己判断せずに医師に相談することが大切です。精密検査や治療法を受ける必要があるかもしれません。
ALTが高い場合は、肝臓に優しい食事を心がけましょう。具体的には、以下のようなものです。
- ・脂質や塩分の少ない食品
- ・ビタミンやミネラルなどの栄養素が豊富な食品
- ・抗酸化作用のある食品
例えば、白身魚や大豆製品、野菜や果物、玄米や全粒粉などです。また、水分やお茶などを十分に摂ることも重要です。ALTが高い場合は、肝臓の働きを助ける栄養素を積極的に摂りましょう。特におすすめなのは以下のものです。
- ・ビタミンC:肝臓の解毒作用を高める
- ・ビタミンE:肝細胞の老化を防ぐ
- ・ビタミンB群:肝臓の代謝を促進する
- ・亜鉛:肝臓の再生を促す
これらの栄養素はサプリメントで摂ることもできますが、過剰摂取は逆効果になることもあります。必ず医師に相談してから摂るようにしましょう。
その他、睡眠やストレス緩和やリラックスも大切です。睡眠不足やストレスは肝臓に悪影響を及ぼします。適度な運動や趣味などでストレスを発散しましょう。また、リラックス効果のあるアロマや音楽などを活用するのもおすすめです。
早く治したい場合には医療機関を受診して、原因を特定してもらいましょう。また、生活習慣の改善を指示された場合にも、焦らずにゆっくりと改善していくことが大切です。無理なダイエットや過度な運動は肝臓に負担をかけることがあります。また、市販の漢方薬や健康食品などを勝手に摂るのも危険です。必ず医師の指示に従って治療を行いましょう。
「ALTが高い」についてよくある質問
ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「ALTが高い」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
ALTが高いのはストレスが原因なのでしょうか?
金 仁星 医師
ストレスによって肝臓に負担がかかると、ALTの値が上昇することがあります。しかし、ストレスだけが原因ではなく、他にも肝臓に影響を与える要因が考えられます。例えば、ウイルス性の肝炎や脂肪肝、薬物やアルコールの過剰摂取などです。ALTが高い場合は、ストレスだけでなく、他の原因も考慮して精密検査を受けることをお勧めします。
ALTが高いのですが肝機能が低下しているのでしょうか?
金 仁星 医師
これまでご紹介したように、ALTの値が高いということは、肝臓の細胞が何らかの原因で傷ついている可能性があります。しかし、ALTの値だけでは肝機能の低下を判断することはできません。肝臓は多くの機能を持つ臓器であり、ALT以外にもアルブミンやプロトロンビンなどの指標が必要です。また、ALTの値は一時的に上昇することもあります。例えば、ストレスや筋トレなどで筋肉が疲労すると、筋肉からもALTが出てきます。そのため、ALTが高いからといってすぐに肝機能が低下しているとは言えません。精密検査を受けて、肝臓の状態を詳しく調べる必要があります。
ピルが原因でALTが高くなることはありますか?
金 仁星 医師
はい、ピルの服用によってALTが高くなることがあります。ピルに含まれる女性ホルモンは、肝臓で代謝されますが、その過程で肝細胞に負担がかかり、ALTの分泌が増える可能性があります。しかし、これは一時的な現象であり、ピルの服用を中止すれば通常は正常値に戻ります。もしALTが高い状態が長期間続く場合は、他の肝疾患の可能性も考えられますので、医師に相談してください。
血液検査のALTが高い場合ASTやγ-GTPの異常より危険でしょうか?
金 仁星 医師
血液検査のALTが高い場合、ASTやγ-GTPの異常より危険ということはありません。ALTは肝細胞の中に多く存在する酵素で、肝細胞が傷つくと血液中に漏れ出します。ASTやγ-GTPも肝細胞に含まれる酵素ですが、他の臓器にも分布しています。したがって、ALTが高い場合は肝臓の障害を示す可能性が高く、ASTやγ-GTPが高い場合は肝臓以外の原因も考えられます。ALTの高さは危険度ではなく肝臓へのダメージの程度を表していると考えてください。
ALTを下げるにはなにをすればいいでしょうか?
金 仁星 医師
ALTを下げるには、原因となる病気や生活習慣の改善が必要です。肝臓に負担をかけるお酒や脂っこい食べ物は控えましょう。適度な運動や水分摂取も効果的です。市販のサプリメントや漢方薬などはかえって数値を悪化させる可能性があります。ALTが高い場合は、肝臓の専門医に相談して、精密検査や治療の必要性を確認しましょう。
まとめ 健康診断で「ALTが高い」と言われたら精密検査を!
健康診断で「ALTが高い」と言われたからといって必ずしも肝臓に重大な問題があるとは限りません。ALTが高い原因はさまざまで、ストレスや薬の影響、妊娠や授乳などの生理的な変化、筋トレなどの運動などもあります。また、ALTの基準値は個人差がありますので、自分の平常時の値と比較することが大切です。
ALTが高い場合は、肝臓に負担をかけないように生活習慣を見直すことが必要です。お酒や脂っこい食事は控えましょう。また、精密検査を受けることで、肝臓の病気や炎症の有無を確認することができます。肝臓は再生能力が高い臓器ですので、早期に対処すれば改善する可能性があります。健康診断で「ALTが高い」と言われたら、早めに医師に相談するようにしましょう。
「ALTが高い」ときに考えられる病気
「ALTが高い」から医師が考えられる病気は5個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
消化器内科の病気
- 肝炎
- 肝硬変
- 肝腫瘍
上記以外の病気の可能性もあります。自己判断せず、医療機関を受診しましょう。