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健康診断で「ヘマトクリット値が低い」と言われたら貧血の可能性?医師が解説!

 公開日:2023/11/11
健康診断で「ヘマトクリット値が低い」と言われたら貧血の可能性?医師が解説!

健康診断でヘマトクリットが低いと言われたら貧血?Medical DOC監修医が血液検査の見方や基準値・主な原因と病気のリスク・対処法などを解説します。

伊藤 陽子

監修医師
伊藤 陽子(医師)

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浜松医科大学医学部卒業。腎臓・高血圧内科を専門とし、病院勤務を経て2019年中央林間さくら内科開業。相談しやすいクリニックを目指し、生活習慣病、腎臓病を中心に診療を行っている。医学博士、産業医、日本内科学会総合内科専門医、日本腎臓学会腎臓専門医、日本透析医学会透析専門医、日本東洋医学会漢方専門医、日本医師会認定産業医、公認心理師。

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健康診断・血液検査で「ヘマトクリットが低い」と診断されたときに考えられる原因と対処法

ヘマトクリットとは、血液中に赤血球が占める割合(%)を示しています。このため、ヘマトクリット値が低い状態とは、赤血球の割合が少ないこと、あるいは、血液が薄くなっていることを示しており、貧血が考えられます。

ヘマトクリットが低いと診断されたときに考えられる原因と病気のリスク・対処法

貧血の原因としては、女性の方で多い鉄欠乏性貧血、男女とも起こりうる、消化管出血や血液疾患、慢性炎症、悪性疾患、腎不全などが考えられます。貧血がゆっくり進むと、症状はかなり進行するまで出ません。だるさ、運動をしたときの息切れ、動悸、下腿のむくみの症状が起こります。これらの症状が出現した際には、早めに内科を受診しましょう。

男性でヘマトクリットが低いと診断されたときに考えられる原因と病気のリスク・対処法

女性は病気がなくとも月経による出血が起こるため、貧血が起こりやすいです。一方、男性の貧血は、何かしらの病気が隠れている可能性が高く、注意が必要です。男性の場合には出血による貧血が考えやすく、消化管出血の存在の有無をまずは検査します。便に血が混ざっていたり、真っ黒い便が出たりする場合には、胃や大腸からの出血の可能性が高いため消化器内科を受診しましょう。血液疾患や慢性炎症、腎不全などさまざまな原因が考えられるため、明らかな下血、血便がなければ、内科を受診し、血液検査などで原因を調べましょう。

妊娠中にヘマトクリットが低いと診断されたときに考えられる原因と病気のリスク・対処法

妊娠中に起こりやすい貧血は、鉄欠乏性貧血と葉酸欠乏性貧血です。妊娠中には循環血液量が増えるため、相対的に希釈され貧血が起こりやすくなります。急激に貧血が進行し、重症貧血(Hb≦6.0mg/dL)では胎児死亡に至ることもあるため注意が必要です。また、妊娠中は胎児の鉄分需要が増えるため、母体に貯蔵されている鉄分が少なくなり、鉄欠乏性貧血も起こりやすくなります。妊娠中の貧血の8~9割は鉄欠乏性貧血と言われており、治療としては鉄剤の内服をします。また、鉄剤投与でも貧血の改善が乏しい場合には、葉酸欠乏性貧血を合併していることもあります。妊娠中は造血機能が亢進し、葉酸の需要が増えることで葉酸欠乏による貧血が起こると考えられています。治療としては葉酸の内服を行います。妊娠中の貧血は、通院中の産科での指示に従い治療をしましょう。

更年期にヘマトクリットが低いと診断されたときに考えられる原因と病気のリスク・対処法

更年期では、女性ホルモンの乱れから過多月経、過長月経、頻発月経など月経周期の乱れが起こりやすく、このため出血量が多いことで貧血となる方もいます。この場合の貧血は鉄欠乏性貧血を呈します。貧血に対しては鉄分の多い食事を取り入れ予防をしましょう。だるさや動悸、立ち眩みなど症状も出るようなら早めに内科を受診しましょう。また、月経量が多い場合には、婦人科に相談することも良いでしょう。

新生児でヘマトクリットが低いと診断されたときに考えられる原因と病気のリスク・対処法

新生児は出生し、自分で呼吸をするようになると胎児期のヘモグロビンから成人期のヘモグロビンへ切り替わります。出生時には一般的に成人よりヘモグロビンが高いです。しかし、赤血球の産生能が低下している状態や、赤血球の破壊が亢進している状態(溶血)、出血している状態では貧血となるため注意が必要です。これらの代表的な疾患は、出生前・分娩時の胎盤胎児間輸血、胎児母体間輸血、母体と新生児の血液型の違いによる溶血、生理的なものが挙げられます。診断のため、血液検査で貧血の程度、血液型、黄疸の程度を評価し、母体との血液型の違いの有無や母体の血液中への胎児血の混入の有無などを確認して治療を行います。

健康診断の「ヘマトクリット」の見方と再検査が必要な「ヘマトクリットが低い」診断結果

ここまでは診断されたときの原因と対処法を紹介しました。
再検査・精密検査を受診した方が良い結果がいくつかあります。
以下のような診断結果の場合にはすぐに病院に受診しましょう。

健康診断・血液検査の「ヘマトクリット」の基準値

基準値 異常値
男性 40~50% 40%未満、50%以上
女性 34~45% 34%未満、45%以上

ヘマトクリットが低い時には、貧血、高い時には多血症が考えられます。
多血症は脱水や喫煙などが影響している可能性もあります。ヘマトクリットが低くても、高くても原因を調べるために内科受診が必要です。

健康診断・血液検査で「ヘマトクリットが低い」ときの数値と再検査内容

まず採血で、末梢血液一般検査8項目「白血球数、赤血球数、ヘモグロビン、ヘマトクリット、MCV(赤血球1個当たりの大きさ)、MCH(赤血球1個当たりのヘモグロビン量)、MCHC(赤血球1個当たりの平均ヘモグロビン濃度)、血小板数」と、白血球分画、肝機能、腎機能、LDHを測定します。鉄欠乏性が疑われる場合には、血清鉄やフェリチンの検査も追加で確認されます。また、出血が疑われる場合には便潜血検査を行うこともあります。溶血性貧血、再生不良性貧血、白血病などの血液疾患が原因であれば、血液内科へ紹介され治療します。膠原病やがんに伴う貧血の場合には原因となる疾患の治療が優先されます。腎不全に伴う貧血の場合には、赤血球の産生を促すホルモンであるエリスロポエチンが不足していることが原因であるため、これを補う注射をします。

健康診断・血液検査の「ヘマトクリットが低い」診断で気をつけたい病気・疾患

ここではMedical DOC監修医が、「ヘマトクリットが低い」に関する症状が特徴の病気を紹介します。
どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。

貧血

貧血とは、血液中の赤血球数が減少している病態を言います。原因はさまざまです。赤血球のタイプにより

  • 赤血球が小さく、濃度が薄くなっている「小球性低色素性貧血」
  • 形は正常な「正球性正色素性貧血」
  • 形が大きく、濃度は正常な「大球性正色素性貧血」

に大きく分かれています。
①の代表は鉄欠乏性貧血です。また慢性炎症により起こることもあります。
②は腎不全による腎性貧血、血液疾患による貧血が多いです。
③は葉酸やビタミンB12の欠乏による貧血が含まれます。また、がんによる出血や栄養障害、慢性的な炎症が原因で貧血が起こっていることも少なくありません。高齢者では栄養不足による貧血も良く起こります。
貧血改善のためには、バランスの取れた食事を摂取することがとても重要です。貧血を放置せず、なぜ貧血が起こっているのか、原因をしっかり調べるために医療機関へ受診することが必要です。まず内科を受診しましょう。
重度の貧血となると、動悸や息切れがひどくなり、場合によっては心不全を合併することもあるので、早めに受診をしましょう。

心不全

心不全の患者さんは、貧血を合併することが非常に多いです。慢性心不全の急性増悪で入院となった患者さんの約6割に貧血の合併があったと報告されています。原因は、心不全による体液貯留により血液が薄まること、慢性腎不全を合併することにより腎性貧血が起こること、慢性炎症や鉄欠乏などが考えられています。治療としては、体液貯留が原因であれば、利尿剤を含めた体液の補正が必要です。また、そのほかの原因がある場合には、原因に沿った治療を行います。動悸や息切れが強い時には、心不全を考え、循環器内科を受診するのが良いでしょう。

「ヘマトクリットが低い」ときの正しい対処法・改善法は?

ヘマトクリットが低い時、貧血が考えられます。貧血の症状としては、だるさ、運動をしたときの息切れ、動悸、下腿のむくみなどですが、ゆっくり進行すると症状が出ないこともあり注意が必要です。だるさや運動時の息切れ、動悸が続く時には無理をせず、休息をとり、原因を調べるために早めに病院を受診しましょう。貧血の原因として、鉄欠乏性貧血が多く、この場合には鉄分を多く含む食べ物を摂取することで改善することもあります。また、ビタミンCは鉄分の吸収を良くするため、一緒に摂取することがお勧めです。逆に、タウリンを含むコーヒーや紅茶、緑茶は鉄分の吸収を悪くするため、食事と一緒に飲むことは避けた方が良いでしょう。

「ヘマトクリットが低い」についてよくある質問

ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「ヘマトクリットが低い」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

ヘマトクリットが低いのですががんなのでしょうか?

伊藤 陽子伊藤 陽子 医師

ヘマトクリットが低いからといって、がんとは限りません。大腸がんや胃がんなどで消化管出血があると貧血が起こり得ます。そのほかのがんでも、慢性的な炎症などにより貧血となることもあります。がんが貧血の原因の一つとなり得るため、放置せず原因を検査し、治療をしましょう。

ヘマトクリットが低い場合の改善方法を教えてください。

伊藤 陽子伊藤 陽子 医師

ヘマトクリットが低い場合、貧血を考えます。貧血の改善方法は、原因により異なります。まずは内科を受診し、原因を調べましょう。閉経前の女性では鉄欠乏性貧血の頻度が高いです。この場合には、鉄分を多く含む食事を心がけるのも良いでしょう。

ヘマトクリットが低いときにおすすめの食べ物はありますか?

伊藤 陽子伊藤 陽子 医師

ヘマトクリットが低い場合には、貧血が考えられます。貧血の原因の中で、女性では鉄欠乏性貧血が非常に多いです。鉄分の不足が原因と考えられるのであれば、鉄分が多く含まれる食べ物をお勧めします。吸収の良い動物性食品に多く含まれるヘム鉄はレバーやあさり、マグロ、牛ひれ肉、かきなどに多く含まれます。また、植物性食品に含まれる非ヘム鉄は納豆や小松菜、プルーン、ほうれん草、ひじきなどに含まれます。ヘム鉄の方が吸収は良いですが、バランスよく摂取することも大切です。ビタミンCを同時にとると吸収が良くなります。また、エネルギー、たんぱく質の摂取不足も貧血の原因となり得ます。十分なエネルギー、たんぱく摂取を心がけましょう。

まとめ 健康診断で「ヘマトクリットが低い」と言われたら貧血。原因をまず調べよう!

ヘマトクリットが低いと言われた場合には、貧血が考えられます。貧血は色々な原因が考えられ、その原因により治療法が異なります。女性では月経による鉄欠乏性貧血が多いです。しかし、女性でもほかの原因で貧血が起こることがあり注意が必要です。一方で、男性の場合は通常貧血になることはないため、貧血が認められた場合はその原因をしっかり調べる必要があります。貧血の原因の中には、血液疾患やがん、慢性腎不全などの重大な病気が含まれます。貧血を放置することで、動悸や息苦しさ、むくみなどが出現し、さらに進行すると心不全を合併することもあります。たかが貧血と侮らず、早めに医療機関を受診をしましょう。

「ヘマトクリットが低い」と判定されたら気をつけたい病気

「ヘマトクリットが低い」から医師が考えられる病気は10個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

循環器系の病気

腎泌尿器系の病気

消化器系の病気

  • 消化管出血(胃がん、大腸がん、胃潰瘍など)
  • 胃切除後、胃炎など(ビタミンB12欠乏)

婦人科系の病気

  • 月経過多(子宮内膜症、子宮筋腫など)

血液系の病気

内分泌系の病気

ヘマトクリットが低いことは貧血が原因であると考えられます。貧血の原因は、さまざまです。出血で起こる貧血、原料が不足することによる貧血、赤血球を作れないために起こる貧血があります。貧血の程度のみでは、原因がわかりません。軽度の貧血でもがんなどの重大な病気の初期症状の可能性もあります。貧血の症状がないからと言って放置せず、必ず原因を調べるための精密検査を受けましょう。

この記事の監修医師