「バリウム検査」と胃カメラの違いは何?注意点や検査内容を医師が解説!
バリウム検査では何がわかる?Medical DOC監修医がバリウム検査で発見できる病気や検査結果の見方と所見、胃がんや食道がん等を詳しく解説します。
監修医師:
武田 美貴(医師)
目次 -INDEX-
バリウム検査とは?
職場の健康診断に組み込まれていることがある、バリウム検査。バリウムという造影剤を飲んで行う検査ですが、バリウムのドロっとした感じや、味などで苦手意識がある方も多いのではないでしょうか?
胃のバリウム検査は必要なのだろうか?胃カメラとなにが違うのだろうか?と疑問に思う方もいらっしゃると思います。ここではバリウム検査の流れや、検査の前後で気を付けることなどについて、解説していきます。
バリウム検査とはどんな検査?
バリウムとは、原子番号56の元素で、元素記号はBaです。銀白色の外観を有するアルカリ土類金属です。
バリウム検査は、正式には上部消化管造影検査といいます。バリウムというX線が透過しない薬を飲むことにより、バリウムが口の中から食道、胃、十二指腸へと流れていく様子を動画で見ることができる検査です。途中で発泡剤を飲みますが、発泡剤により胃を膨らませることにより、さらに胃粘膜を詳しく観察することができます。「ゲップを出さないでくださいね」と言われるのは、胃を膨らませる必要があるからです。
バリウム検査は、何歳からうけたらよいか迷うところですが、胃潰瘍や十二指腸潰瘍などの上部消化管の不調は、30代以上で見られることが多いため、30代になったら健診に組み込むことを考えましょう。
バリウム検査で体の何がわかる?
健康診断で行うバリウム検査の目的は、胃がんや食道がんの早期発見です。バリウムは、胃の粘膜にうっすら付着するので、胃の粘膜病変を観察することができます。検査台に乗ると、左右に方向を変えながら撮影していますが、検査台を動かすことによって、バリウムが胃粘膜を滑り落ちていくときに、粘膜病変がないか観察しています。
胃カメラとバリウム検査の違い
バリウム検査は、検診で行うことができる手軽な検査なので、初めての方でも簡単に受けられます。しかし、胃粘膜のわずかな変化や色の違いでしか分からない病変の描出が難しいという問題点があります。その点は胃カメラのほうが詳しく調べられますが、胃カメラは専門の医師が行わなければなりません。さらに管を飲み込むので、「苦しい」「痛い」というイメージを持たれている方もいらっしゃるかもしれません。最近は、細い管を鼻から入れるカメラや、眠くなる薬を使って寝ている間に検査できる医療機関もあります。
バリウム検査前日や当日の注意点
バリウム検査は、胃の検査です。検査前日から食事に気をつけないと、検査が受けられなくなることがあります。
前日の食事は、指定された時間まで(通常21時頃)に摂ってください。胃や腸に食べ物が残っていると、バリウム所見が異常なのかどうか区別ができなくなります。検査前の食事は、なるべく消化の良いものを、夜早いうちに済ませましょう。
アルコールは、胃粘液が増えて正確な画像が撮像できなくなります。したがって、アルコールは、摂取時間に関係なく、前日は禁酒してください。なお、ブラックコーヒーは前日であれば飲んでも構いません。検査当日は、他の検査(特に血液検査)に影響があるため、糖分の入ったコーヒーは避けてください。その他詳細は医療機関によって異なりますので、事前に確認するようにしましょう。
バリウム検査後の注意点
バリウム検査のあとは、飲んだバリウムを排泄する必要があります。そのために、バリウムを飲んだ後は下剤を服用することが一般的です。下剤は、多めの水で服用します。そのあとも、普段より多めに水分を摂取します。これによって便秘になることを避けられます。下剤は2日分程度を処方されることが多いですが、下剤を飲み切っても便が出ない場合は、医療機関を受診してください。逆に下痢になってしまった場合は、それ以上の下剤の服用は中止します。
バリウムを含んだ便は、トイレで流れないことがあります。これはバリウムにより便が固まってしまっているためで、ぬるいお湯を便器に入れると、バリウムが溶けて流れることがあります。便は1~2日で通常の色に近づいてきます。便の白い色が薄くなれば、ほとんどのバリウムは排泄されたと考えてよいでしょう。
下剤を飲んでもなかなか排便がなく、腹痛が出てきたら、早めに医療機関を受診してください。またバリウム検査の後、腹痛が起こることがあります。これはバリウムが腸のなかで硬くなってしまうためです。腹痛を感じたとき、いつまで我慢すればよいか不安になりますが、2~3日排便がなく腹痛が続く場合は、腸閉塞や消化管穿孔になっている可能性もありますので、医療機関を受診しましょう。
また検査後の食事ですが、普通通りの食事を早い時間に摂ってください。食事をすることにより排便が促され、便秘の予防にもなります。
バリウム検査の結果の見方と再検査が必要な診断結果・所見
ここまではバリウム検査について基本的なことを紹介しました。
再検査・精密検査を受診した方が良い結果がいくつかあります。
以下のような診断結果の場合にはすぐに病院に受診しましょう。
バリウム検査結果の見方と主な所見(胃がん・食道がん等)
- 前庭部狭小化:前庭部(胃と十二指腸の間)が発泡剤を飲んでも膨らまない所見。膨らまない原因には、硬化が考えられます。炎症や潰瘍を繰り返すことでも硬くなりますが、まれにがんであることもあります。
- 辺縁不整:胃壁の縁が、なめらかな曲線ではなくなること。潰瘍や粘膜の乱れを表します。まれにがんが原因であることもあります。
- 胃角の変形:胃炎・胃潰瘍の繰り返し、加齢の影響によることの多い所見。がんの可能性もあります。
- 集中像:治り始めた胃潰瘍の中心に、胃粘膜のひだが集中してできる影。まれにがんであることもあります。
これらの所見が見られたときは、胃内視鏡検査を受けることを視野に入れましょう。
バリウム検査の再検査基準と内容
バリウム検査で異常所見が認められた場合、消化器内科を受診して、胃カメラ検査の相談をしましょう。バリウム検査は、比較的大きな所見を捉える検査なので、バリウム検査で異常所見が認められた場合、直接病変を見て診断する、胃内視鏡検査(胃カメラ)が必要となります。
胃内視鏡検査は、痛い、苦しいなどのネガティブな印象がありますが、現在では鼻から細い管を入れて検査できる内視鏡や、眠くなる薬を使って寝ている(鎮静されている)間に検査を行える医療施設もあります。いずれも健康保険を使って、検査ができます。
実際に胃カメラで胃粘膜に異常が認められた場合、生検(組織を少し取って顕微鏡で検査すること)が行われます。
「バリウム検査」でわかる病気・疾患
ここではMedical DOC監修医が、「バリウム検査」に関する症状が特徴の病気を紹介します。
どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。
胃がん
胃がんは、日本人ではヘリコバクターピロリ菌の感染が主な原因です。胃内視鏡検査でピロリ菌の感染が疑われた場合は、生検をしてピロリ菌に感染しているかを確認します。感染が認められた場合は、抗生物質内服による除菌を行います。この治療は、保険診療で行えます。また、生検した組織にがん細胞が認められた場合は、CT検査などでがんの深達度や転移の有無を調べます。このような検査を行うには、胃内視鏡検査ができる消化器内科を受診します。
食道がん
口から胃までの間あいだにある、食べ物を胃に送る管を食道といいます。食道にがんができやすい生活習慣として、飲酒、喫煙、辛い物・熱い食べ物の摂取、野菜・果物不足などが挙げられます。最近、あまり食べられなくなった、飲み込みにくいなどの症状がある場合、胃内視鏡検査で食道の状態を調べてもらいましょう。
「バリウム検査」で引っかかる理由は?胃がん・食道がん等
過去に胃潰瘍などを繰り返していた場合、粘膜に瘢痕ができていることがあるので、バリウム検査で異常所見として指摘されることがあります。強い胃炎なども注意が必要です。胃がんなどでも、同様の異常所見を示すことがあります。バリウム検査で引っかかって、胃の痛みや胃の周りの不快感などを自覚する場合、早めに消化器内科を受診してください。
「バリウム検査」についてよくある質問
ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「バリウム検査」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
バリウム検査と胃カメラはどちらが楽ですか?
武田 美貴 医師
胃カメラは、管を体の中に入れるので、痛みや苦痛を伴うことが多く、リウム検査のほうが楽だ、とおっしゃる方が多いです。
バリウム検査は何歳から受けた方がいいですか?
武田 美貴 医師
バリウム検査は40歳以上からが対象となっています。バリウム検査は、年1回の検査が厚生労働省より推奨されています。
バリウム検査は辛いと聞くのですが楽に受けられるコツはありますか?
武田 美貴 医師
バリウム検査は、バリウムがドロドロしているので、飲みにくいと感じる方が少なくありません。しかしきちんと飲めないと、正確な診断ができないので、技師さんの合図に従って飲んでいきます。また発泡剤がうまく飲めない方がいます。発泡剤は、舌の奥に含み、口の中にためずに少量のバリウムで一気に飲み込むと、むせないで飲むことができます。
健康診断でバリウム検査が受けられない人はどんな人ですか?
武田 美貴 医師
バリウムにアレルギーがある方は検査を受けることができません。そのほか、消化管閉塞など消化管に異常がある方、大腸ポリープ切除から間もない方も、危険なので受けることができません。また放射線の被ばくがあるため、妊娠している方も検査を受けることができません。そのほか、バリウムは便秘になる副作用があるため、便秘症の方もバリウムによる便秘増悪の可能性があり検査を控えます。
まとめ 「バリウム検査」で胃の不調の原因を早期発見!
バリウム検査は、比較的大きな変化をとらえる検査ですが、胃カメラほど苦痛はなく、手軽な検査であると言えます。特に日本人は、ピロリ菌感染率が高いため、胃炎などの上部消化管の不調を感じやすいと言えます。またピロリ菌感染はがんの原因にもなりますので、バリウム検査での異常所見から見つかることもあります。
胃のあたりの不快感は、放置しておくと進行胃がんであったりするため、健診を受ける際は、バリウム検査も追加することをお勧めします。
「バリウム検査」でわかる病気
「バリウム検査」から医師が考えられる病気は6個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
バリウム検査では、悪性腫瘍の他に、繰り返す炎症性疾患も異常所見として見られます。胃炎や胃潰瘍などは、薬で治療することができますので、胃のあたりの不快感を自覚する方は、バリウム検査を受けてみるのもよいでしょう。