「心電図検査」で何がわかる?や再検査の内容や注意点など医師が徹底解説!
心電図検査とは?Medical DOC監修医が心電図検査で発見できる病気や検査結果の見方と主な所見、不整脈や狭心症・心筋梗塞等を詳しく解説します。
監修医師:
丸山 潤(医師)
【保有資格】
医師/医学博士/日本救急医学会救急科専門医/日本集中治療医学会集中治療専門医/DMAT隊員/日本航空医療学会認定指導者(ドクターヘリの指導者資格)/JATECインストラクター/ICLSインストラクター
目次 -INDEX-
心電図検査とは?
心電図検査とは、私たちの心臓の活動状態を調べるもっとも基本的な検査です。
心臓が鼓動する際に生じる微弱な電気信号を検出し、その波形を記録して心臓の状態を把握する目的があります。
職場などで実施される健康診断の項目に入っているため、毎年受けているという方も多いかと思います。
本記事では心電図検査についてわかることや検査時の注意点、また異常が見つかった場合の精密検査について解説します。
心電図検査とはどんな検査?
心電図検査には計測のやり方によっていくつかの種類があります。
安静時の心電図を調べる時は、ベッドに仰向けに寝て、胸に6箇所、両手足それぞれ4箇所の計10箇所に電極を付け、12の波形を記録し、正常な波形と比較して診断します。
12誘導心電図検査と呼ばれるこの方法は5分ほどの短い時間で終わり、痛みや苦しさもありません。
これに対して、運動により心臓に負荷を与え、心臓の筋肉の変化を観察する検査のことを運動負荷心電図検査といいます。
階段の昇降運動の前後で心電図変化を調べるマスター心電図、歩行運動中の心電図変化を見るトレッドミル検査、自転車のようなペダルを漕いで、その運動中の心電図変化を見るエルゴメーター検査があります。
他、胸にシール状の電極を貼り、小型装置を介して24時間の心電図を記録するホルター心電図があります。
心電図検査で体の何がわかる?
安静時の心電図では、リズムや波形の乱れから不整脈、心肥大、心筋梗塞などの鑑別診断がなされます。
狭心症のように、安静時には問題が出にくい心臓病の検査には負荷心電図検査が適しています。
24時間の記録を行うホルター心電図では、短時間の計測では捉えられない不整脈の出現頻度や虚血性心疾患の発見、人工ペースメーカーの機能判定に役立ちます。
動悸、息切れ、脈の乱れや胸痛、失神などの症状がある方は一度詳しい検査を受けることをお勧めします。
心電図検査の費用は?
心電図検査は保険の適用対象となります。安静時12誘導心電図で心電図のみ観察する場合、その検査にかかる料金は1割負担で約400円、3割負担で約1,200円です。
負荷心電図検査の場合、1割負担で1,500円~2,500円程度、3割負担で4,500円~7,500円程度です。
24時間計測のホルター心電図検査は、1割負担で約1,800円、3割負担で約5,400円となっています。
尚、人間ドックでの心電図検査は保険適用外であるため、費用はこの限りではありません。
心電図検査前日や当日の注意点
検査結果に悪影響が出る可能性があるため、心電図検査の前日は飲酒を控えるようにしましょう。
摂取したアルコールが体内で分解されるまで、350mlの缶ビールで3時間程度だと言われています。ですが、アルコールの分解は体調や体質によっても変わりますので、正しい検査結果を得るためには前日の飲酒は控えておくのが無難です。
また、各種検査は基本的に空腹時に行うことが指定されていますので、食事は前日の21時まで、あるいは検査の何時間前までに済ませるように医療機関から指示がありますので、守るようにしてください。
検査当日はアルコールのほか、運動もNGです。たばこ、コーヒーなどの刺激物も検査1時間前には控えるようにしてください。
ホルター心電図検査の場合、検査期間中はシャワー、入浴ができませんので、前日に済ませておくようにしましょう。
心電図検査の結果の見方と再検査が必要な診断結果・所見
ここまでは心電図検査について基本的なことを紹介しました。
再検査・精密検査を受診した方が良い結果がいくつかあります。
以下のような診断結果の場合にはすぐに病院に受診しましょう。
心電図検査結果の見方と主な所見(不整脈・狭心症・心筋梗塞等)
心電図には正常とされている波形があり、それに当てはまらなければ異常と判定されます。しかし、異常判定が出たからといって必ずしも病気であるとは言えません。
以下に心電図検査の主な所見と疑われる病気について解説していきます。
- 異常Q波:心筋梗塞や心肥大の可能性があります。しばしば健常者にもみられる所見です。
- QRS軸偏位:心室肥大や肺疾患による心臓への負担が疑われます。通常、この所見のみではあまり問題とされません。
- R波増高:左心室肥大の可能性もありますが、健常者、特にやせ形で身長の高い男性に見られがちな所見です。この所見のみではほとんど問題になりません。
- ST上昇/低下:心筋梗塞や狭心症、心肥大の際に見られます。重大な所見の場合もあり、胸痛などの自覚症状がある場合は早急に循環器科を受診してください。
- T波異常:心筋梗塞、心筋症で見られることのある所見です。詳しい原因を調べるため、循環器科での精密検査をおすすめする場合があります。
- 心房伝導障害:心臓での刺激の伝達に不具合が見られる場合に出ます。
動悸、めまい、失神などがある場合は循環器科を受診してください。 - 心室伝導障害:右脚ブロックという状態で、心室内にある刺激伝達路の異常が疑われます。高血圧などさまざまな原因があり、他の診断結果と併せて判断されます。
- 不整脈:不整脈にはさまざまな種類があります。このうち、期外収縮、心房細動、頻脈、徐脈が見られた場合は循環器科での精密検査をすすめられることが多いです。
- その他:緊急性が高いものとしては、ブルガダ型、やQT延長などがあります。検査担当医師の案内に従い、循環器科を受診してください。
心電図検査の再検査基準と内容
心電図検査で異常があると言われたら、再検査を受けていただくことをおすすめします。
再検査では基本的に健康診断の時と同じ心電図検査を行いますが、より詳しく調べるために負荷心電図検査やホルター心電図検査を行うこともあります。
また、必要に応じて心臓超音波検査、冠動脈CT検査、心臓シンチグラフィー、心臓カテーテル検査のような他の方法で心臓の検査を行う場合もあります。
再検査や精密検査の費用は、検査項目や方法、医療施設によっても異なります。詳細は受診予定の医療施設に確認してください。
再検査を依頼する場所は、初めに検査を受けた医療施設、かかりつけ医、総合病院や大学病院が候補となります。どこで受けるかは自由ですが、総合病院や大学病院へ行く際は紹介状が必要になることもありますので注意が必要です。
再検査・精密検査の緊急度は診断結果の判定欄などに記されています。再検査の所見が出た場合、検査結果を受け取る際に確認しましょう。
再検査の結果、心電図異常の原因が特定された場合、原因に応じた治療が必要となります。具体的な治療内容は、心拍・血圧の調整、血流改善のための薬物療法、ペースメーカーの埋め込みのほか、カテーテルアブレーション、冠動脈バイパス術などです。
「心電図検査」でわかる病気・疾患
ここではMedical DOC監修医が、「心電図検査」に関する症状が特徴の病気を紹介します。
どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。
不整脈
不整脈とは、心臓の鼓動が一定の正常なリズムではなく、速くなったり遅くなったり、乱れたりする状態です。動悸や息切れ、胸痛などの自覚症状が出たり、失神や心不全、中には突然死に至るものもあります。自覚症状が全く出ない不整脈もあります。
その原因はさまざまで、必ずしも心臓の病気によって起こるわけではありません。
心臓疾患以外の原因には、体質や遺伝、疲労、ストレス、飲酒、喫煙、特定の薬によるものなどが挙げられます。
危険性が低く、様子を見ることも多い反面、心房細動や心筋梗塞が原因で起こる不整脈に対しては早めの治療が求められます。
動悸や胸の不快感、胸痛、失神、めまいや立ちくらみ、夜に息が止まるほど胸が苦しくなる、などの自覚症状がある場合は速やかに循環器科で診察を受けてください。
不整脈の治療では、主に抗不整脈薬や抗凝固薬が用いられます。
他、心臓に電気刺激を与える装置を体内に埋め込むデバイス治療(ペースメーカー、植込み型除細動器)、不整脈を起こす部位を焼灼したり切除したりする治療法で対処することもあります。
狭心症
狭心症とは、心臓に酸素を送る冠動脈が何らかの原因で狭くなり、心臓の筋肉に十分な酸素や栄養分が届かなくなる病気です。胸の痛みや圧迫感が数分~15分ほど続くという特徴があります。
いつ、どのタイミングで発作が出るか、またそのパターンにより3つに分類されています。
力仕事や運動、心理的なストレスを受けた時に起こる「労作性狭心症」、痛みが強くなったり発作の回数が増えたりと、痛みや圧迫感のパターンが変化する「不安定狭心症」、就寝時や昼間の安静時に胸が苦しくなる「異型狭心症」があります。
狭心症の原因は、そのほとんどが動脈硬化です。動脈硬化とは、高血圧その他さまざまな要因で血管が柔軟性を失い、硬くなってしまった状態です。
治療にはニトログリセリン、抗血小板薬、抗凝固薬といった薬が用いられますが、ごく軽い狭心症を除いて薬だけでの軽快は難しく、カテーテル・インターベンションや冠動脈バイパス手術を選択する必要が出てきます。
症状が進むと後述の心筋梗塞へ進行することも考えられますので、胸の痛みや圧迫感を感じたことがある方は、早めに循環器内科を受診してください。
心筋梗塞
心筋梗塞は、心臓を動かす心筋に血液が届かなくなることで、激しい胸の痛みなどが起こる病気です。
前述の狭心症と合わせて虚血性心臓疾患と呼ばれ、がん、脳卒中と並んで日本人の三大死因とされています。
心筋梗塞では心臓に酸素と栄養分を運ぶ冠動脈が完全に詰まって血液が流れなくなり、心筋が壊死します。死んだ心臓の筋肉は再生せず、心臓から全身に十分な血液を送り出すことができなくなり、迅速に治療しないと死に至ります。
心筋梗塞のほとんどは血栓が急に形成される急性心筋梗塞です。
冠動脈が完全に詰まってしまい、30分以上も胸の痛みや圧迫感が続くのが特徴です。この段階では安静にしていても治まらず、救急薬のニトログリセリンも効果がありません。
まだいくらかは血流が保たれている狭心症と比較しても、心筋梗塞の方がより危険度が高いといえます。
原因は狭心症同様、その大部分が動脈硬化です。
動脈硬化は既に述べたように、血管が硬くなり、厚みを増すことで内径が狭くなる現象です。
心筋梗塞は、その硬化が進んだ血管の内壁に脂肪のコブ(アテローム血栓)ができることで発症します。
動脈硬化以外の原因には、冠動脈自体の炎症や痙攣、収縮によるもの、大動脈解離や心原性塞栓症などがあります。
心筋梗塞の前兆は胸の痛みや圧迫感ですが、実は予兆もなく発症するケースが全体の半分に上ります。糖尿病や高血圧の既往症がある方や高齢者などでは痛みの自覚が見られないこともあり、前兆がないからといって油断は禁物です。
不整脈、頻脈、徐脈、高血圧、糖尿病などをお持ちの方は、日頃から体調の変化に気を付け、気になることがあれば循環器科を受診してください。
「心電図検査」で引っかかる理由は?不整脈・狭心症・心筋梗塞等
心電図検査でひっかかる理由は、心臓の電気的な活動をあらわす波形に異常な形が見られることです。異常と言っても、健康な人でも見られる所見もたくさんあり、心電図だけですべての病気がわかるわけではありません。
しかし、心電図検査は不整脈や心筋の異常(狭心症、心筋梗塞、心筋炎など)を見つけるのに適しており、放置しても問題ない場合もあれば、命に関わる病気の場合もあります。
異常所見がみられ、かつ普段から胸の痛みや圧迫感、他の生活習慣病などがある方は速やかに精密検査を受けてください。
「心電図検査」についてよくある質問
ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「心電図検査」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
心電図検査で異常があると言われたら何科に行けばいいですか?
丸山 潤 医師
心電図検査で異常があると言われたら、循環器内科を受診してください。心臓の機能や血管の状態を詳しく調べることができます。もしお近くに循環器内科がない場合は、かかりつけ医に相談すれば適切な紹介先を教えてもらえます。
健康診断の心電図検査ではどんな心臓の病気を発見できますか?
丸山 潤 医師
健康診断の心電図検査では、不整脈のほか、狭心症、心筋梗塞などの心臓の異常が見つかりやすいです。ただし、健康診断では安静時の測定のため、弁膜症や先天性の心疾患などは、心電図だけではわかりにくいことも多いです。
妊娠中に心電図検査を受けても問題ないですか?
丸山 潤 医師
一般的には、女性が妊娠中に心電図検査を受けても問題はありません。身体の表面に電極を装着して心臓の波形を調べる検査のため、胎児への影響はありません。
心電図検査にはどのような服装で行くべきですか?
丸山 潤 医師
心電図検査では胸や手足に電極を装着するため、上下に分かれ、胸部や手首、足首を出しやすい服装がおすすめです。女性の場合、ストッキングは外していただくことになります。また、下着のワイヤーなど金属のパーツも電気信号に影響を与えかねないため、金具のないスポーツブラなどが望ましいです。
まとめ 「心電図検査」で心筋梗塞を早期発見!
比較的身近な心電図検査ですが、所見に並ぶ文言は専門的でどう見れば良いのかわからない、という方も多いのではないでしょうか。
特に問題のない所見も多いですが、中には心筋梗塞など生命に関わるものもあります。
心臓は命に関わる重要な臓器です。再検査や精密検査通知が届いた場合はしっかりと精密検査を受けておきましょう。もし心臓の病気が見つかった場合でも、早期に治療を開始することで重症化を防ぐことができます。
「心電図検査」でわかる病気
「心電図検査」から医師が考えられる病気は6個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
心電図検査で見つかる病気の中には、早めに対処すべきものもあります。普段から体調の変化に留意するとともに、検査で異常所見が出た場合は医師の指示に従い、必要に応じて精密検査を受けてください。