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「尿蛋白(タンパク尿)」について医師が徹底解説!腎機能が低下しているかも?

 公開日:2023/08/15
「尿蛋白(タンパク尿)」について医師が徹底解説!腎機能が低下しているかも?

尿蛋白(タンパク尿)とは?Medical DOC監修医が健康診断・尿検査の尿蛋白の数値の見方や基準値・主な原因と病気のリスク・対処法などを解説します。

中川 龍太郎

監修医師
中川 龍太郎(医療法人資生会 医員)

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奈良県立医科大学卒業。臨床研修を経て、医療法人やわらぎ会、医療法人資生会南川医院に勤務。生活習慣病や肥満治療、予防医学、ヘルスメンテナンスに注力すると同時に、訪問診療にも従事している。日本プライマリ・ケア連合学会、日本在宅医療連合学会、日本旅行医学会の各会員。オンライン診療研修受講。

尿蛋白(タンパク尿)とは?健康診断で尿蛋白を指摘されたら

尿蛋白とは、尿中に含まれるタンパク質のことを言います。人間の体にとって、タンパク質は必要不可欠な栄養分であり、健康な腎臓にはこのタンパク質が漏れ出て行かないようにするためのフィルターの役割があります。体内で必要なもの(たとえばタンパク質)は出さないように、逆に不要なもの(老廃物など)を排出するように機能するのが正常な腎臓の働きです。しかし、何らかの理由で腎臓が正しく機能しなくなると、タンパク質がフィルターを通過し、尿に混ざってしまいます。これが「尿蛋白」です。
尿蛋白が見つかると、それは腎臓に何らかの問題がある可能性を示しています。例えば、腎炎や腎臓病などです。しかし、一時的な尿蛋白は熱やストレス、運動などでも引き起こされることがあります。

尿蛋白(タンパク尿)で尿に蛋白が出る主な原因は?

一時的な尿蛋白は、熱やストレス、運動でも出ることがあります。一方で長期間に渡って繰り返し見られる場合は、腎炎や慢性腎臓病などの病気が原因になっている可能性があります。

尿蛋白のプラスマイナスとは?

尿蛋白のプラスマイナスとは、尿蛋白の量を示すために使われる検査の指標です。健康診断で行われるのは尿定性検査と言って、調べる対象(タンパクや血の成分、糖分など)
の有無、そして有る場合はざっくりした程度を示しています。一方、定量検査というのは、詳細な量、濃度を測定します。
健康診断で行われる尿検査(尿定性)でマイナスであれば尿中のタンパク質はほとんどないか、0という見方になります。
プラスにも程度があり、1+ 2+ 3+ と尿中のタンパク質量が多いほど数字が大きくなります。プラスマイナスという評価は、1+ほど出てないものの、マイナスよりは多いという「ちょっとだけタンパク尿が出ている」状態とされます。プラスマイナスという判定であれば病的な原因が隠れていることは少なく、経過観察で問題ないと考えられます。ただし次の健康診断でも注目しておく必要はあります。

尿蛋白がプラスだとどうなる?

前半で記載した通り、「尿蛋白がプラス」というのは「何らかの腎臓への障害」が反映された状態と考えられます。そのため、なぜプラスになっているのか原因を調べる必要があります。後に詳しく説明しますが、慢性腎臓病やネフローゼ症候群で引き起こされることや、起立性蛋白尿という生理的メカニズムからタンパク尿が出てしまうものもあります。

尿蛋白を下げる方法・対策方法は?

まずは検診で提出するのであれば、早朝尿を提出するようにしてみましょう。もし後述する起立性蛋白尿であれば、尿蛋白の値は下がる可能性があります。それでも改善がない場合は、検査結果にもよりますが一度受診することをお勧めします。

尿に蛋白が出やすい人はどんな人?

腎機能が低下している人は尿蛋白が出やすい傾向にあります。高血圧や糖尿病を長く患っている方は同じく腎機能低下も認めることがあり、これらの疾患でない健康な方よりは尿蛋白が出やすいと言えます。

健康診断の「尿蛋白」の見方と再検査が必要な「尿蛋白」に関する数値・結果

ここまでは診断されたときの原因と対処法を紹介しました。
再検査・精密検査を受診した方が良い結果がいくつかあります。
以下のような診断結果の場合にはすぐに病院に受診しましょう。

健康診断・尿検査の「尿蛋白」の基準値

健康診断で行われる尿検査の結果は−、±(プラスマイナス)、1+、2+、3+、4+に分かれています。健康な人は−で尿中タンパク質量が増えれば増えるほど数字が大きくなります。1+以上の場合、基本的に一度は医療機関受診を勧めます。

健康診断・尿検査の「尿蛋白」の再検査基準と内容

尿検査で「尿蛋白」が再検査となった場合、まずは再び尿検査が行われます。たとえば、脱水や過度の運動、風邪など一時的な状態で尿蛋白が出ることもあるため、初回の結果が一時的なものか、または誤った結果であった可能性を否定するためです。
再検査で再び尿蛋白が確認された場合は、その結果によって対応が決まります。尿蛋白と尿潜血(肉眼では分からないが顕微鏡で見ると血の成分が尿中にある状態)という項目がともに1+以上、もしくは尿蛋白のみでも2+以上であれば、腎臓内科という専門の診療科で精査することが推奨されています。
尿検査と並行して、血液検査で腎機能や糖尿病の有無をチェックしたり、腎臓の超音波検査が行われることもあります。
検査費用は自己負担割合と医療機関によって異なりますが、一番安価に済むのは最寄りのクリニックや診療所で一旦受診するパターンです。詳細はご自身のかかりつけや近隣の診療所・クリニックにお尋ねください。
夜間や休日に受診するほどの緊急性は当然ありませんが、ご自身の日程の中で出来るだけ早いタイミングで受診しましょう。健診を受けてから長くても3ヶ月以内には受診していただきたいと考えます。
再検査の結果、尿蛋白が持続的に確認された場合、その原因疾患によって治療が決定されます。例えば、糖尿病や高血圧などの疾患が原因であれば、それぞれに適した治療が開始されます。

健康診断・尿検査の「尿蛋白」で気をつけたい病気・疾患

ここではMedical DOC監修医が、「尿蛋白」に関する症状が特徴の病気を紹介します。
どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。

ネフローゼ症候群

ネフローゼ症候群とは、腎臓の糸球体という部分の障害によって大量のタンパク質が尿中に漏れ出し、体内のタンパク質量が低下する病気です。特に原因がなく腎臓の糸球体障害が生じてしまう一次性ネフローゼ症候群と、自己免疫疾患、代謝性疾患、 感染症、アレルギー過敏性疾患、腫瘍、薬剤、遺伝性疾患などが原因になる二次性ネフローゼ症候群に分類されます。
主な症状は浮腫です。血中タンパク質には水分を血管内に留めておく作用があるのですが、ネフローゼ症候群ではこのタンパク質が失われるため、水分が血管の外に漏れ出て組織に溜まってしまい、浮腫を引き起こします。
治療法は、まず二次性ネフローゼ症候群であれば、この原因となる疾患を治療することが重要になります。一次性ネフローゼ症候群の場合、腎生検という精密検査も踏まえてですが、ステロイドや免疫抑制薬を用いて治療されることが多いです。
検診で尿蛋白を指摘されたり、手足の著しい浮腫(靴下の跡がいつまでも消えない、手で掴むと跡が残るなど)がみられる際は、医療機関でしっかり調べましょう。
受診すべき診療科は一般内科や腎臓内科です。緊急性はないので日中に受診しましょう。

腎臓病

一般に言われる腎臓病とは、基本的に時間をかけて腎機能が低下した「慢性腎臓病」のことを指します。この病気は腎臓の機能が一部または完全に失われる状態で、時間の経過とともに進行することが一般的です。糖尿病や高血圧、薬剤、尿路障害、自己免疫性疾患などが原因となることがあります。
治療法は原因を特定して、その原因に対応することが重要です。また腎機能の低下の程度によっては、すぐに専門の医療機関で精査が必要になるケースもあります。
病院へ行くべき目安ですが、まず健診の尿検査項目で指摘された場合は受診しましょう。また浮腫や息切れを自覚される場合も受診してください。どちらも該当しなくても、長く健診を受けていない方は一度受診して、腎機能を調べておきましょう。これは腎機能低下の初期に全く自覚症状がないためです。
受診すべき診療科は一般内科や腎臓内科です。緊急性はないので日中に受診しましょう。

尿路結石

尿路結石とは、腎臓から尿管、膀胱、尿道という“尿路”の途中で石が詰まってしまい、激しい痛みを引き起こす疾患です。多くは尿管という細い管のところで詰まってしまうことが多く、男性に多いです。これは結石の成分となるシュウ酸を、男性ホルモンが増加させるためと考えられています。また尿の流れが滞るため(通過障害)、腎機能低下にも繋がります。
症状に対する対処法は、まずは痛み止めの内服です。お手持ちにロキソニンなど非ステロイド性抗炎症薬がある場合はそれを内服します。結石は10mm以下の場合は、基本的に痛み止めで対応して自然に排石されるのを待ちます。結石の大きさが10mmを超えるものは、体外衝撃波結石破砕術や経尿道的結石破砕術などを用いて、積極的に結石を除去することがあります。
これらの判断は専門の医師の診断が必須となりますので、速やかに医療機関を受診しましょう。受診すべき診療科は泌尿器科です。尿路結石だけでは緊急性はないため日中の受診でも構いません。ただし、発熱や悪寒戦慄が伴った場合は、結石の関与した複雑性尿路感染という状態に陥っており緊急性が高くなります。その際は夜間休日問わず医療機関を受診しましょう。

起立性タンパク尿

起立性タンパク尿とは、特定の体勢(起立した状態)でタンパク尿が出現し、仰向けなど寝ている状態ではタンパク尿が出ない、というもので、生理的な(病気ではない)タンパク尿に分類されます。学童期や思春期の痩せ型の子供に多く見られ、痩せているために腎臓が圧迫されやすいことが原因と考えられています。立っている状態や体を動かすとタンパク尿が見られ、一方で寝ている状態では腎臓も圧迫されないのでタンパク尿も見られません。そのため、朝起きた時にとった尿では蛋白が出ていないにもかかわらず、活動を始めてからは蛋白尿が陽性となります。
これは決して病気というわけではないため、特に治療の必要はありません。特別な対応も要らず、成長とともに自然に軽快すると考えられています。患者の年齢層から学校検診で引っかかることが多いですが、まずは提出する尿を早朝第一尿(朝起きてすぐにとる尿)に統一し、それでも尿蛋白が見られる場合は、医療機関を受診しましょう。
受診すべき診療科は一般内科や小児科、腎臓内科です。緊急性はないので日中に受診しましょう。

健康診断・尿検査で「尿蛋白」がプラスのときの正しい対処法・改善法は?

健康診断や尿検査を受けた時に、激しい運動をされていたり、風邪を引いていた、多大なストレスがかかっていた場合は、本来の検査結果でない可能性があります。再検査の際はこれらの状況がないように注意しましょう。
またこれらの要素は関係なく蛋白尿を改善する場合、一般的には高血圧や糖尿病にならないようにする生活習慣が推奨されます。無理のない運動習慣と、塩分と糖質を控えた食生活が重要です。

「尿蛋白」についてよくある質問

ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「尿蛋白」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

健康診断で尿蛋白2+を指摘されたらどんな病気の可能性がありますか?

中川 龍太郎中川 龍太郎 医師

先述の慢性腎臓病やネフローゼ症候群など、さまざまな疾患の可能性があります。一度再検査を受けることをお勧めします。

尿が泡出つのは尿蛋白・タンパク尿が原因でしょうか?

中川 龍太郎中川 龍太郎 医師

タンパク尿が原因のこともあります。タンパク尿であれば尿が泡立ちますが、それ以外の原因でも、尿の流出の速さなど泡立つ要因は数多くあります。絶対にタンパク尿だと断定はできません。
また尿の見た目でタンパク尿かどうか自己判断される方もおられます(濃い黄色だとタンパク尿など)が、見た目でタンパク尿の有無は判断がつきません。

尿蛋白を改善する食事を教えてください。

中川 龍太郎中川 龍太郎 医師

塩分と糖質を控えた食生活が重要です。要は高血圧や糖尿病にならないようにする食習慣が重要です。非常にヘルシーなレシピになることが多いですが、多少の改善は見込めるかもしれません。また脱水状態は腎臓への負担が強くなるので、水分摂取を増やすのも一つの方法です。水やノンカフェインの飲み物(利尿作用のないもの)の摂取を増やすと、改善が見られることもあります。

ストレスが原因で尿検査結果が尿蛋白プラスになることはありますか?

中川 龍太郎中川 龍太郎 医師

ストレスが直接腎臓機能に影響を及ぼすというわけではありませんが、高血圧を引き起こすことで腎臓に負担がかかり、尿蛋白プラスという可能性は0ではありません。

妊娠中の尿蛋白プラスは何が原因ですか?

中川 龍太郎中川 龍太郎 医師

妊娠中は胎児の分の血液も母体が担うので、総血液量が増加します。そのため腎臓への負担も増え、一時的に尿定性検査の結果、プラスマイナスやプラスに出ることがあります。とはいえ、これは妊娠中の自然な母体の変化に伴うものなので、腎臓の疾患だというわけではありません。多くの場合は自然に解消されていきます。

まとめ 尿蛋白は1+から注意!

尿蛋白の検査項目で指摘されても、自覚症状がないために再検査を受けない、受診をしない方がおられます。しかし腎機能低下というのはそもそも自覚症状が乏しく、自覚する頃には元通り回復できないレベルまで腎臓がダメージを負っていることも多いです。尿蛋白で1+以上指摘された方は、必ず再検査を受けてください。

「尿蛋白」で考えられる病気

「尿蛋白」から医師が考えられる病気は4個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

腎泌尿器系の病気

尿蛋白を指摘された場合、起立性タンパク尿をはじめとして病的ではないことも多いですが、慢性腎臓病やネフローゼ症候群の発見につながることもしばしばあります。自己判断せずに医療機関で再検査を受けましょう。

この記事の監修医師