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【前編】内田春菊「痔だと思っていたら大腸がん」見逃しやすい初期症状と40代から受けるべき検査

 公開日:2026/04/20
内田春菊 痔だと思っていたら「大腸がん」見逃しやすい初期症状と40代から受けるべき検査とは

便秘や血便などの症状は、痔などの良性の病気でも見られる一方で、大腸がんのサインである可能性もあります。大腸がんは日本人に最も多いがんの一つで、早期に発見できれば治癒を目指すことができる病気です。漫画家・小説家・俳優の内田春菊さんは、痔だと思って受診したことをきっかけに2015年に大腸がんが見つかりました。本記事では、大腸がん発覚までの経緯や当時の症状、見逃してはいけない症状について、日本消化器外科学会消化器外科専門医の山本健人先生の解説とともにお伝えします。

※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2026年3月取材。

> 【写真あり】内田春菊「大腸がん」闘病中の姿

内田春菊さん

内田春菊(漫画家・小説家・俳優)

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漫画家・小説家・俳優。1984年『シーラカンスぶれいん』で漫画家としてデビュー。1993年に発表した小説『ファザーファッカー』はベストセラーとなる。近年では、がん体験を描いた『がんまんが~私たちは大病している~』、『すとまんが~がんまんが人工肛門編~』、『すとまとねことがんけんしん』などがある。執筆活動の傍ら、俳優としても国内外のテレビ・映画などで高い評価を得て活躍の場を広げている。また、仕事、子育て、闘病など、自身の体験に基づいた講演も行っている。
山本先生

山本 健人 医師(日本消化器外科学会消化器外科専門医・指導医)

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日本消化器外科学会消化器外科専門医。専門は大腸がん。京都大学卒業後、市中病院勤務を経て同大学院にて博士号を取得。消化器外科医として勤務する傍ら、医療情報の発信や執筆活動を精力的におこなう。現在は京都大学医学部附属病院消化管外科に勤務。日本外科学会外科専門医、日本消化器外科学会消化器外科専門医、日本消化器病学会消化器病専門医、内視鏡外科技術認定医、ロボット支援手術認定プロクターなど。

「内視鏡が入らなかった」内田春菊が経験した大腸がん発覚の経緯と衝撃

「内視鏡が入らなかった」内田春菊が経験した大腸がん発覚の経緯と衝撃

山本先生山本先生

現在の体調についてお聞かせください。

内田春菊さん内田さん

今年は大腸と胃のいずれも検診を受けないといけないなと思っていますが、どっちもまだです。別のところで甲状腺に腫瘍が見つかって生検までおこないましたが、問題ありませんでした。

山本先生山本先生

大腸がんが見つかる前、最初に異変を感じたのはいつ頃でしたか?

内田春菊さん内田さん

子どもが4人おり、入学式と卒業式が続いて、スーツが苦しいなと思って糖質制限を始めたんです。そうしたら便通がおかしくなって、出ないと思ったら突然たくさん出ることもあり、出血もするようになりました。痔になったのだと思って、痔の診療を専門にしている近所の病院に行ったのが最初です。

山本先生山本先生

ほかに気になる症状はありましたか?

内田春菊さん内田さん

4カ月で10kg痩せました。糖質制限をしていたから痩せたと思っていたのですが、後から考えれば違ったんですよね。

山本先生山本先生

4カ月で10kgの体重減少は、がんの症状として非常に重要なサインです。がんが進行すると体重が減少することがあり、ダイエットをしていないのに体重が減っている場合は注意が必要です。内田さんのように糖質制限と重なっている場合は、症状の見分けが難しいこともあります。内田さんはそれまで、健康診断や大腸の検査は受けていましたか?

内田春菊さん内田さん

大腸カメラは大腸がんと診断された後に初めて受けたくらいで、それまで一度も受けたことがありませんでした。

山本先生山本先生

大腸がん検診は、40歳以上を対象に自治体が実施している便潜血検査が基本となります。受診率は日本全体で約40〜50%程度といわれており、症状がなければ受けていない方も少なくありません。40歳になったら一度は受けていただきたい検査の一つです。どのような経緯で大きい病院へ行くことになりましたか?

内田春菊さん内田さん

痔の病院で内視鏡を入れようとしたのですが、入らなかったんです。肛門から1cmくらいのところに腫瘍があって。先生がだんだん目を見てくれなくなって、「大きい病院に行ってください」と紹介状を渡されました。

山本先生山本先生

大きな病院での検査はどのようなものでしたか?

内田春菊さん内田さん

ちょうどその時期に産婦人科の主治医とやりとりをしていて、状況を話したらすぐに来るように言われて、その日のうちに消化器外科の先生(のちに主治医)を呼んでくださり、CT検査を受けました。がんの可能性があるという前提で、検査や治療の話が進んでいきました。

山本先生山本先生

診断を受けたときはどのような説明がありましたか?

内田春菊さん内田さん

腫瘍がお尻のすぐ近くにあるので、このまま手術すると人工肛門になりますと、最初から言われました。「人工肛門ってサイボーグみたいになるの?」という気持ちになりましたね。とてもびっくりしました。

山本先生山本先生

ステージについてはどのような説明を受けましたか?

内田春菊さん内田さん

正確なステージは手術後に判明しました。転移はなかったと言われています。

山本先生山本先生

大腸がんのステージは、手術で取り出した組織を病理検査に出し、その結果で確定します。手術前に説明されるステージはあくまで予想で、確定するのは手術後です。ステージは0〜4に分類され、ステージ4は大腸以外の臓器に転移した状態を指します。

「痔があるから」と血便を油断する危険性。見逃せない初期症状と大腸がんの正しい知識

編集部

大腸がんが診断されるまでの流れについて、教えていただけますか?

山本先生山本先生

大腸がんは、検診を受けた人であれば便潜血検査を経て大腸内視鏡検査、何らかの症状がある場合は最初から大腸内視鏡検査を受け、その際の生検で診断されます。次に、転移の有無やがんの広がりを調べて病気の進行度(ステージ)を診断するためにCTやMRIをおこないます。

編集部

血便や便秘が続く場合、どんな病気が考えられるのでしょうか?

山本先生山本先生

血便については、大腸がんのほか、痔(痔核)や虚血性大腸炎、憩室出血、感染性腸炎、炎症性腸疾患など、さまざまな病気が考えられます。便秘についても、それだけで病気を特定することはできず、単に加齢が原因で便秘になることもあります。大腸がんは「この症状があれば必ず大腸がん」という特徴があるわけではないため、症状だけで見分けることは難しいのが実情です。

内田春菊さん内田さん

私は痔だと思い込んでいました。

山本先生山本先生

実際には、痔と大腸がんが同時にある人もいます。「痔があるから血便が出るのは当たり前」ということにはなりません。特に40歳以上で一度も大腸内視鏡検査を受けたことがない方に血便がみられた場合は、大腸内視鏡検査が推奨されます。注意が必要な症状としては、血便が続く、便が細くなった、便秘や下痢など排便習慣が変化した、体重が減った、原因のはっきりしない貧血がある、おなかが張る、などがあります。

編集部

便秘や温水洗浄便座が原因になることはあるのでしょうか?

山本先生山本先生

どちらも大腸がんの直接的な原因になるとは考えられていません。大腸がんは一つの原因で発症する病気ではなく、さまざまな要因が複雑に関わって発症します。喫煙や飲酒、加工肉や赤身肉、加齢などは、発症のリスクになります。肛門に近い場所にできたがんは血便として気づきやすい一方、大腸の上流にできたがんは血が便に混じっても見た目では気づきにくいことがあります。腫瘍が大きくなると腸が狭くなり、腸閉塞を起こすこともあります。

内田春菊さん内田さん

「詰まらなくてよかったね」と後から言われました。便が細くなっていたのは確かで、出ないと思ったら突然量が多くなるといったこともありました。

山本先生山本先生

ステージ1で発見できれば5年生存率が90%以上と高いのですが、ステージ4で他臓器へ転移している場合は20%台と大きく下がります。大腸がんは早期発見・治療ができれば、内視鏡治療や手術で治癒を目指すことができる病気です。40歳以上になったら大腸がん検診を毎年受けること、血便や便通の異常が続く場合は自己判断せず早めに受診することが重要です。

編集後記

「痔だと思っていた」という内田春菊さんの言葉は、多くの人にとって他人事ではないかもしれません。血便や便秘といった症状は身近であるがゆえに、様子を見てしまう人も少なくありません。一方で、初期症状は痔や便秘などの身近な症状と区別がつきにくいものが多くあります。大腸がんは、早期に発見できれば治癒を目指すことができるがんです。血便や便通の変化、原因のはっきりしない体重減少などの症状が続く場合は、自己判断せず医療機関を受診することが重要です。本稿が、体の異変に気づいたときに受診を考えるきっかけとなりましたら幸いです。

※後編は2026年4月30日に公開予定です。

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