「高カカオチョコレートは肝臓に悪い」これってウソ? ホント? 肝臓専門医が効果や注意点を解説

最近では健康志向の高まりとともに、高カカオチョコレートが注目を集めています。「高カカオチョコレートは身体にいいの?」「でも、具体的な効果や注意点は?」と気になる人も多いのではないでしょうか。そこで、高カカオチョコレートが肝臓に与える効果や注意点について「SUGAR」の佐藤先生に回答してもらいました。

監修医師:
佐藤 将人(SUGAR LLC)
高カカオチョコレートは肥満や肝疾患などを予防する

編集部
最近、高カカオチョコレートが健康に良いと話題になっていますが、カカオ含有量が高いと肝臓に負担をかけるのではないかと心配です。
佐藤先生
実は様々な研究から、「高カカオチョコレートは肝臓に良い影響を与える」と明らかにされています。とくに、ダークチョコレートやカカオ含有量の高いチョコレートを対象とした研究の多くで示されています。
編集部
具体的に、高カカオチョコレートは肝臓にどう良いのでしょうか?
佐藤先生
肝臓に脂肪がたまるのを防ぎ、肥満や肝疾患などを予防する可能性があるとされています。動物実験の結果ですが、ある研究ではチョコレートをラットに食べさせると、チョコレートを食べていないラットよりも肝臓への脂肪の蓄積が少ないことが報告されています(※1)。
編集部
病気を抱えている人が食べても、効果はあるのでしょうか?
佐藤先生
はい。基本的には、病気を抱える人にとっても高カカオチョコレートは健康に良い食べ物です。ただし、病気の種類や健康状態によっては医師や栄養士と相談する必要があるため、心配な人は確認することをおすすめします。また、高カカオチョコレートは低GI食品で血糖値が急上昇しにくい食品ですが、適量を守って食べすぎないように気をつけてください。
ポリフェノールが肝臓に良い効果を与える

編集部
ところで、なぜ高カカオチョコレートやココアは肝臓に良いのでしょうか?
佐藤先生
高カカオチョコレートに含まれるポリフェノールが、肝臓に良い影響を与えると考えられています。ポリフェノールは植物性食品に含まれる成分の一つで、特にカカオ豆には豊富に含まれています。中でもフラバノールと呼ばれる種類のポリフェノールは、肝臓の健康維持に重要な役割を果たすとされています。
編集部
そうなると高カカオチョコレートだけでなく、ポリフェノールを含む食べ物も肝臓に良いのでしょうか?
佐藤先生
そうなのです。ココアもポリフェノールを多く含むため、肝臓に良いとされています。検証の余地がありますが、ココアがアルコール性脂肪肝に与える影響を調べた研究では、アルコール性脂肪肝の治療に役立つ可能性があると報告されています(※2)。ほかにも、エタノールを摂取した後にポリフェノールを含むココアを摂取したラットは、肝臓へのダメージが少ないという報告もあります(※3)。
編集部
高カカオチョコレートやココアが肝臓に良いとは意外でした。しかし、どうしてポリフェノールが多く含むと健康にいいのでしょうか?
佐藤先生
高カカオチョコレートやココアを適量摂取すると肝臓に良い影響を与えるというのは意外ですよね。ポリフェノールには抗酸化作用があるため、肝臓を保護する働きがあります(※4)。ちなみに、肝臓の一つの機能は、私たちの身体にある様々な物質の解毒です。ポリフェノールは抗酸化作用によって、肝臓の解毒作業の負担を軽減しつつサポートしているため、健康に良い食品です。
高カカオチョコレートは1日3~5枚が適量

編集部
高カカオチョコレートを食べるときに、注意すべき点はあるのでしょうか?
佐藤先生
肝臓に良いからといって、食べ過ぎはいけません。おおよそ、高カカオチョコレートには100gあたり41.3gの脂質が含まれますので、食べ過ぎると脂質過多になる可能性があります(※5)。大学生を対象に4週間、20gの高カカオチョコレートを摂取し続けた研究では、体重やBMI、体脂肪などの増加は認められませんでした(※6)。1日30g以上のダークチョコレートを4~8週間摂取し続けたところ、体重とBMIが減少したという報告もあります(※7)。おおむね1日あたり20~30gを目安に摂取するとよいでしょう。
編集部
食べるタイミングはいつ頃が良いのでしょうか?
佐藤先生
高カカオチョコレートは、食前・食間に5gずつ食べるのがおすすめです。血糖値の急上昇を抑えながら、肝臓に脂肪がたまるのを防ぎます。また、適度な間隔を空けて少しずつ食べることで、より効果的にポリフェノールを摂取できます。
編集部
ほかにも注意すべき点はありますか?
佐藤先生
糖分や脂肪の多いミルクチョコレートではなく、カカオ含有量の高いダークチョコレートを選ぶことがおすすめです。カカオの含有量が多いほどポリフェノールの効果も高まりますが、苦味も強くなる傾向があります。最初は70%くらいのチョコレートから試してみて、徐々にカカオ含有量を上げてみてください。
参考文献:
※2: Saleh, A.A., & Sabahelkhier., M.K. (2017). Impact of raw cocoa and chocolate on lipid profile and l2iver function in alcohol-induced toxicity Wister rats. International Journal of Mathematics, 5, 254-259.
※3: McKim SE, Konno A, Gäbele E, et al. Cocoa extract protects against early alcohol-induced liver injury in the rat. Arch Biochem Biophys. 2002;406(1):40-46. doi:10.1016/s0003-9861(02)00425-3
※4: Kilicgun, H., & Altıner, D.S. (2009). The antioxidant activity of cocoa. Pharmacognosy Magazine, 5, 298-300.
※5: 日本食品標準成分表(八訂)増補2023年「菓子類/<チョコレート類>/スイートチョコレート/カカオ増量」
編集部まとめ
高カカオチョコレートには、肝臓に良い効果があることが多くの研究で報告されています。ポリフェノールの抗酸化作用により、肝臓の脂肪蓄積を防ぎ、肝疾患予防に役立つ可能性があるためです。同様の効果はココアにも見られ、アルコール性脂肪肝の改善にも期待できます。ただし、効果を得るには食べすぎないよう、適切な量を食べることが大切です。1日の目安は食前・食間に5gずつで、カカオ含有量70%以上のダークチョコレートがおすすめです。