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大桃美代子「緑内障」で失明までのカウントダウンに涙。静かに進む目の病の恐怖

 公開日:2025/09/29

痛みもかゆみもなく進行し、日本の失明原因の第1位とされる緑内障。大桃美代子さんは12年前、PM2.5や花粉症による目の不調だと考えて受診した際に緑内障と診断されました。当時、医師から「最終的には失明の可能性がある」と告げられ、涙が止まらなかったと言います。現在は定期検査を欠かさず、生活に工夫を取り入れながら前向きに日々を過ごしています。今回は大桃さんの体験談とともに、日本眼科学会認定眼科専門医の相原一先生に緑内障の特徴や治療、早期発見の重要性についてお話を伺いました。

> 【画像あり】失明までの緑内障の視界をリアル再現

大桃美代子さん

大桃美代子(タレント・農政ジャーナリスト)

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ニュースをはじめ、料理やクイズ、バラエティ、情報番組と幅広い分野で活躍。韓流にはまり、韓国に語学留学をするほどの韓国好き。「阪神・淡路大震災」を大阪滞在中に、「中越地震」を新潟県魚沼市の実家に帰省中に被災し、災害と復興について考えるきっかけに。風化させないことをテーマに情報発信や復興の為の地域活性化にも携わる。雑穀エキスパート、野菜ソムリエ、おさかなマイスター・アドバイザーの資格を取得するなど食育や農業に関心が高く、地元の新潟にて古代米作りをし『桃米』として販売する。地域活性化に取り組む団体を支援するため全国地方新聞と共同通信が設けた『地域再生大賞』選考委員を務め、視察や優れた取り組みを紹介するなど、地域の魅力を発信することに力を注いでいる。現在、文化放送『川合俊一と大桃美代子の「土曜日はトレンド・カフェへ」』などに出演中。一般社団法人国際SDGs推進協会名誉理事、新潟食料農業大学客員教授、魚沼市PRアンバサダーとしても活動している。

相原先生

相原一(日本眼科学会認定眼科専門医)

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東京大学医学部卒業後、カルフォルニア大学サンディエゴ校、四谷しらと眼科を経て東京大学眼科学教室で教授を務める。現在は東京大学名誉教授。眼科学一般、特に緑内障を専門としており、この分野における診療ならびに研究のトップランナー。患者さんの生活の質を少しでも向上できるような手術を目指し、診断においては少しでも無駄な治療をしないための慎重かつ注意深い診断をモットーとしている。

大桃美代子「緑内障」で失明までのカウントダウンに涙。静かに進む目の病の恐怖

相原先生相原先生

現在の体調はいかがですか?

大桃さん大桃さん

緑内障は極初期と言われ眼圧も高くないので、今は点眼薬を使わずに定期検査で緑内障の進行具合を見るために経過観察をしています。ただ最近、視力が少し落ちてきているので、注意して定期検査をしようと考えているところです。

相原先生相原先生

最初に受診されたきっかけを教えてください。

大桃さん大桃さん

約12年前PM2.5が話題になっていた時期に目がかゆく、強い粘り気のある目やにが出ました。不安になったので、すぐに眼科を受診しました。

相原先生相原先生

診断結果はどのような内容でしたか?

大桃さん大桃さん

目やには問題なかったのですが、意外にも緑内障と白内障があると告げられました。緑内障は最終的にどうなるのかを尋ねると「失明の可能性がある」と言われ、その夜は涙が止まらず大きな不安に包まれたことを覚えています。

相原先生相原先生

当時の検査ではどのような異常が見つかりましたか?

大桃さん大桃さん

視野検査では左目の下側に欠損があると言われましたが、自分ではまったく気づいていませんでした。左目は緑内障が強く、右目は白内障の影響が強いと説明されました。緑内障はどのような病気なのですか?

相原先生相原先生

視神経が障害され、徐々に視野が欠けていく病気です。40歳以上では20人に1人、70歳では10人に1人が発症しますが、日本の多治見市で調査したところ、緑内障なのに実際に治療を受けているのは全体の1割ほどにとどまっていました。自覚症状が末期までないために診断を受けていない人が多いことが問題です。

大桃さん大桃さん

なぜ多くの人が気づかないまま進行するのでしょうか?

相原先生相原先生

ほとんどの緑内障ではゆっくりと視野が両目の鼻側から欠けていくため左右の目が補い合い、日常生活では気づきにくいという特徴があります。霞んで見えるくらいで視力は良いままという場合もあり、脳の補正も働くため発見が遅れがちです。

大桃さん大桃さん

進行すると、どのような症状が出ますか?

相原先生相原先生

眼圧があまり高くない場合、視野の中心が霞むのは20〜30年かかるようですが、中心が霞んだ段階はすでに末期です。よく「人にぶつかる」という訴えがありますが、それはかなり進行した状態です。自覚してから受診しても手遅れの場合が多い疾患の一つです。大桃さんは治療で点眼薬は使用しましたか?

大桃さん大桃さん

使用していましたが、医師から「極初期で進行がまだわからないので、使わなくてもよい」と言われ、今は休薬しています。点眼中はまつ毛が伸びる一方で、目の下の色素沈着が生じ、使用をためらうこともありました。緑内障の一般的な治療について教えてください。

相原先生相原先生

緑内障の治療は眼圧を下げることしかありません。多くの緑内障のタイプでは点眼薬で眼圧を下げて進行を抑える治療をおこないます。ただ、眼圧が下がったことは自覚できないですし、点眼治療は効果の実感が乏しく、充血などの副作用や煩わしさ、不快感もでてくる治療です。過去には初めて点眼薬を出された患者さんが約半年で約4割の方が中断したというデータも報告されています。点眼薬で不十分な場合には手術をおこなうこともありますが、まずは点眼治療の継続が何より重要です。

大桃さん大桃さん

私の眼圧は正常と言われましたが、それでも緑内障なのでしょうか?

相原先生相原先生

大桃さんは正常眼圧緑内障だと思います。日本人は眼圧が正常でも発症する例が多く、統計的に正常な眼圧でもその人にとってはその眼圧が高すぎる場合があります。強度近視では視神経の目の出口である視神経乳頭が弱くて発症しやすい傾向があります。

大桃さん大桃さん

緑内障は、ほかにも種類がありますか?

相原先生相原先生

大きく分けて開放隅角緑内障と閉塞隅角緑内障があります。後者は眼圧が急激に上昇し、数日で失明の恐れがあります。全体の1割ほどで、中高年女性に多い病型です。

大桃さん大桃さん

その場合、どのような症状が出るのですすか?

相原先生相原先生

目の痛みや充血、頭痛、吐き気を伴い救急搬送されることもあります。急激な経過のため、早期に適切な手術や治療をおこなうことが欠かせません。

大桃さん大桃さん

緑内障はどのような検査で見つかりますか?

相原先生相原先生

緑内障でも、正常値を示すことが多い眼圧検査や末期にならないと低下しない視力検査だけでは検査が不十分なため、診断には眼底写真で視神経乳頭のくぼみを確認することが不可欠です。40歳を過ぎたら年に一度は眼科を受診し、眼底写真の撮影を含めた目の検査をおすすめします。

大桃さん大桃さん

緑内障は失明につながる病気と聞きますが、実際はいかがでしょうか?

相原先生相原先生

日本では緑内障が失明原因の第1位です。しかし、毎年緑内障が原因で身体障害者手帳を取得するのは約1500人に過ぎません。潜在患者数が500万人以上と推定される中で、適切に治療すれば失明に至る確率は極めて低いと言えるのです。大桃さんは日常生活で何か注意していることはありますか?

大桃さん大桃さん

夜間の車の運転は控え、定期検査を受け続けることが一番の安心につながっていると感じています。

相原先生相原先生

サプリメントは利用されていますか?

大桃さん大桃さん

ルテインなど抗酸化作用のあるサプリメントを飲んでいますが、治療の代わりにはならないので定期検査とあわせて補助的に取り入れるようにしています。

相原先生相原先生

大桃さんは、なぜご自身の病気を公表されたのですか?

大桃さん大桃さん

自分の経験を共有することで誰かの気づきになると思ったからです。ブログで公表すると多くの反響がありました。緑内障は痛くもかゆくもないため、気づきにくい病気ではありますが、定期検査を受ければ早期発見が可能です。もし検査で診断されてしまっても、治療は整っています。今見えていることに感謝し、前向きに生きることが大切だと感じています。

相原先生相原先生

その通りですね。緑内障は早期発見と治療継続で失明を防ぐことができ、現代は長く見える目を守れる時代でもあります。40歳を過ぎたら必ず一度は眼科を受診してください。

編集部まとめ

痛みもかゆみもなく、気づきにくいと言われる緑内障は、検査で早期発見が叶う病気です。大桃さんの体験談からも、定期的に眼科を受診することの大切さが伝わりました。発見が早ければ視力を守れる可能性は十分にあります。本稿が読者の皆様にとって、受診のきっかけとなりましたら幸いです。

この記事の監修医師