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腰痛の原因は?内蔵が原因のケース・症状・検査・治療法・予防方法についてご紹介します

 公開日:2023/12/14
腰痛の妊婦

日本で腰痛を抱える人の数は約3,000万人ともいわれていますが、一口に腰痛といっても、その原因はさまざまです。

腰痛の原因を分類すると、腰の神経に関する障害や内臓の疾患・また脊椎の病気などが挙げられます。

ところが、原因を特定できる腰痛は全体の約15%であり、約85%は原因を特定しにくい状況です。

この記事では、腰痛の原因・症状・治療・予防方法などについて詳しく解説します。

郷 正憲

監修医師
郷 正憲(徳島赤十字病院)

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徳島赤十字病院勤務。著書は「看護師と研修医のための全身管理の本」。日本麻酔科学会専門医、日本救急医学会ICLSコースディレクター、JB-POT。

腰痛の原因は?

腰のマッサージ
多くの人々が抱える腰痛ですが、腰痛は正式な病名ではなく、身体に出現する症状を総称する呼び名です。
腰そのものに原因がある場合だけでなく、職業や生活習慣、またストレスなどの様々な要因が複雑に絡んでいます。
このため、普段の日常生活における行動様式をしっかりと認識することが、腰痛の原因を探るポイントです。
なお、病気や怪我が原因となる自覚症状のうち、腰痛は男性で1位、女性でも2位を占めており、誰でも経験する身近な症状でもあります。

良くない姿勢

腰痛の原因として、良くない姿勢もあげられます。例えば猫背や腰が反っている場合などは、腰痛になりやすいです。
姿勢自体と腰痛に繋がりはありませんが、同じ姿勢を続けることにより筋肉が硬くなり、血流が悪くなって腰痛が起こります。
デスクワークがメインの方や、レジ打ちなど立ち仕事がメインの方などは座りっぱなしや立ちっぱなしで腰が痛くなったという経験があるのではないでしょうか。
定期的に姿勢を変えることにより腰痛を防げますので、休憩時間などにストレッチをするなどの対策を取るのをおすすめします。

激しい運動

激しい運動後に腰痛を訴える方も多いです。普段運動をされない方ほど、急激に運動したことにより筋肉疲労を起こし腰痛になる場合が多いです。
逆に運動のし過ぎによって起こる「腰椎分離症」の可能性もあります。腰椎にある椎弓が激しい運動の繰り返しなどで疲労骨折を起こしている状態です。
成長期の子供に発症しやすい病気ですが、年を重ねてから腰椎分離症を原因とする痛みを感じるようになる場合もあります。

椎間板ヘルニア

背骨と背骨の間に位置し、クッションの役割を果たすのが「椎間板」です。
椎間板は、外側に硬い線維輪と、内部に軟らかいゼリー状の髄核で構成されています。
加齢などの影響で、外側の線維輪が変性や断裂を起こして髄核の一部が飛び出し、脊髄神経根を圧迫すると痛みが発生します。
そして腰や臀部から下肢にわたってしびれや痛みが起こり、力が入らなくなります(座骨神経痛)。
この痛みは、長い距離を歩いたり重たい荷物などを持ったりすると強まりますが、この症状を椎間板ヘルニアと呼びます。
椎間板ヘルニアは、悪い姿勢で動作や作業をしたり、喫煙などでも起こりやすくなる状況です。

腰部脊柱管狭窄

腰が痛い女性
椎骨や椎間板が加齢などの影響で変性したり、異常な骨の突起(骨棘)が形成されたりすると、神経が通っている脊柱管が狭くなって脊髄神経根を圧迫します。
この状態では、少し歩くと痛みを感じ、その後前かがみになって休むとまた歩ける(間欠跛行)症状が特徴です。
また、臀部や足にしびれや痛みを感じる場合もあります。

腰椎圧迫骨折

腰椎圧迫骨折を患うと、急性期には寝返りや前かがみが出来ないほどの激痛に見舞われます。
また、寝ている姿勢から起き上がる際に鋭い痛みが発症する、体動時腰痛が特徴的です。
その後、一旦立ち上がれば、痛みも緩和されて通常の歩行も可能となります。
圧迫骨折を起こした部位は、突起が飛び出した形となり、その部分を叩くと激しい痛みが襲ってきます。
この状態は、胸椎と腰椎の移行部周辺にある椎体前の部分に多く出現するのです。
また、潰(つぶ)れた椎体が神経根を圧迫することで、ヘルニアや狭窄症に類似した下肢の痛みやしびれが起こる場合があります。
その他の症状としては、多発性に圧迫骨折が起きれば背中が丸まってしまう(円背)状況です。

内臓の疾患が原因のもの

腰に手を当てる女性
内臓の病気が原因で起こる腰痛もあります。
上記のとおり、脊椎に直接の疾患がなくても腰痛が起こる場合があるので、以下に述べる症状を確認したら早めに病院で検査を受けることが大切です。
まず、消化器系の病気が考えられます。胃・十二指腸潰瘍、胆石や胆嚢炎(たんのうえん)、また膵臓炎(すいぞうえん)などの場合にも腰痛が起こります。
その際には、腹痛や血便、また吐き気や嘔吐などを伴うことがあるので注意が必要です。
また、消化器系のがんによって痛みが起こる場合もあります。ただし、がんによって腰に痛みを感じるようになるのは症状が進行した場合です。
がんが神経に浸潤したり骨転移したりしていると痛みが起こります。

  • 婦人科系の病気:子宮内膜症や子宮がんなどを患った際にも腰痛が起こりがちで、おりものの量の増加や不正出血なども同時に生じる場合があります。
  • 泌尿器系の病気:腰痛を伴う泌尿器系などの病気として、尿路結石・腎結石・腎盂腎炎・前立腺がんなどが挙げられますが、排尿障害や血尿も特徴的です。

消化器系の病気以外にもこれらの病気が原因となり、腰痛が起こる場合もあります。

原因の特定が難しいもの

前述のとおり、多くの人々が腰痛を抱えていますが、そのうちのなんと約85%は原因がわかっていません。
腰が痛くて近くの病院で診察を受けたり、レントゲン検査をしたりする際にも、痛みを感じる腰の部位に異常が認められないことが多いのです。
現代医学の進歩がめざましいとしても、腰痛の原因が明確に特定できるのはわずか15%ほどとなります。
整形外科の検査などで原因を特定できる、15%の特異的腰痛における代表的な疾患は次のとおりです。

  • 椎間板ヘルニア
  • 脊柱管狭窄症
  • 背骨の骨折
  • 骨粗しょう症に伴う圧迫骨折

原因の特定が難しい腰痛には、次のような命に関わる「危険な」疾病も含まれます。

  • 胃潰瘍など消化器系の病気
  • 子宮筋腫など婦人科系の病気
  • 骨への細菌感染やがんの骨転移など

腰痛の原因には心因性のものも

腰
ヒトの体の痛みは、下記のとおり三つの種類に分けることが可能です。

  • 侵害受容性疼痛:物に身体の一部をぶつけたり、骨が折れたりした際に起こる痛み
  • 神経障害性疼痛:神経が障害された際に起こる、ジンジン・ビリビリとした痛み
  • 痛覚変調性疼痛:上記2つの異常がないのに、脳の変化によって起こる痛み

心因性のものとして、「痛覚変調性疼痛」が考えられます。痛みを感じる脳のネットワークが過敏となっているのが原因とされています。
しかしなぜ過敏になるのかはまだ解明されていません。
腰痛の原因として、ストレスなどの心因性のものも考えられます。MR検査などでは異常が見つけられないという特徴があります。
家庭内や職場での人間関係がうまくいっていないなどのトラブルがあり、疲労・ストレスなどから腰痛が起こる方も多いです。
昨今はストレス社会といわれており、心因性腰痛になる方は増えてきています。鬱の症状が見られる方もいます。

腰痛の症状は?

腰痛を訴える女性
腰痛に伴う、様々な症状について解説します。

腰部に激痛が走る

腰部に激痛が走るのは、腰の痛み全般に際して「魔女の一刺し」などとも呼ばれており、些細なことで激痛が起きて動けなくなることすらあるのです。
特に、腹部に痛みが響いたり、下肢にしびれや痛みがある場合は細心の注意が必要となります。

腰部に張り感がある

腰痛の際、腰部に張り感がある場合を経験した方も多いですが、この場合の張りとは、筋肉が「ピンと張った」感じです。
主な原因としては次の要素が挙げられます。

  • 筋肉が普段と比べて収縮している(運動、外傷など)
  • 筋肉に損傷がある(外傷など)
  • 筋肉の関節に損傷がある(関節のずれなど)

下肢に痺れが出る

腰痛の際、足(下肢)のしびれがあれば、坐骨神経痛の疑いがあります。
坐骨神経痛は腰痛や老化と密接な関係にあり、ヘルニア型や狭窄型などに分類されるのが一般的です。

腰痛の治療方法は?

腰を痛がる女性 
腰痛の治療方法としては、姿勢・生活環境・職場環境などを改善しながら痛みを緩和すべく治療を行うのが基本となります。
これは、手術を伴わない保存療法で、治療法は様々ですが、主なものは次のとおりです。

  • 薬物療法:非ステロイド系の消炎鎮痛薬や湿布薬・血流改善薬・筋弛緩薬、またビタミン薬などを処方
  • 温熱療法:血流をよくする目的で身体を温める
  • 牽引療法:筋肉を伸ばしてマッサージ効果を高める
  • 神経ブロック(硬膜外ブロック):激しい痛みに対して速効性のある治療で、脊髄の硬膜と脊柱管の間に薬剤を注入して痛みを除去する

その一方、手術が必要となる場合もあります。
強い痛みを継続して日常生活にも支障があり、排尿や排便にも影響のある神経障害を生じたり、神経が圧迫されて足の筋力低下がみられたりする場合が該当します。

腰痛が起こりやすい動作は?

ボディマッサージ
腰痛の原因としては色々と考えられますが、日頃の姿勢や生活習慣からくる筋疲労や、身体の「ゆがみ」も大きく関連するようです。
例えば、長時間にわたって同じ姿勢を続けると、腰の筋肉が緊張した状態が続いて筋疲労からの痛みを生じる場合があります。
また、無意識にいつも猫背になっていたり、座るときに足を組んで片足に重心をかけて立っているなどの習慣も問題です。
こうした習慣から来る身体のゆがみも、痛みを発生させる原因の一つとなります。
現役の労働世代では、労働環境と腰痛の関係が深く、また腰痛持ちが多い職種も存在しています。
腰痛が起こりやすい動作について、下記に解説するのでご参照ください。

同じ姿勢で長時間デスクワークをする

人々の身体は、物理的に重力の影響を受けています。
重力に逆らって行動する必要がある際には、個々の身体を支える筋力を活用して、負担の大きい姿勢をとることになります。
例えば椅子に座ったり立ち上がったり、また荷物を持ち上げるなど、普段無意識に行う動作は筋肉が支えているのです。
その際、同じ姿勢を長時間続けていると、筋肉が緊張したままになり、疲れや血行不良による腰痛が出現します。
同じ姿勢を続ける場合には、こまめに休息をとってストレッチをするなど、身体をケアすることが必要です。

重いものを持ち上げる

整体師の男性
重い荷物などを持ち上げたり運んだりする場合は、特に腰痛に気をつけることがポイントです。
膝を曲げずに重たい荷物を持ち上げると、瞬間的に腰に大きな負担がかかり、いわゆる「ぎっくり腰」に襲われることがあります。

激しいスポーツをする

激しいスポーツを行う際、一気に重い装置を持ったり無理な姿勢から繰り返し筋肉に負荷をかけたりすると、筋膜性疼痛症候群(筋筋膜性腰痛)という症状を招来します。
筋膜は筋肉などさまざまな臓器を包んでいる膜ですが、運動によってこの筋膜を損傷するので、細心の注意が必要です。
筋膜を損傷しても通常は数日で回復しますが、負荷が大きかったり寒さで血行が悪くなったりすると、強い痛みやしびれを生じるまで悪化する可能性があります。
この症状は肩や脚など全身で起きますが、腰で発症し、腰痛の原因となるのです。

前かがみで作業をする

台所での調理や洗い物、掃除機や洗顔などの動作で腰痛が生じる場合は、主に前かがみでの作業がその原因です。
立ったままでの前かがみに関する腰痛は、猫背や腰が丸まった状態で発症します。腰痛を防ぐためには、背中をピンと伸ばすことを意識することが大切です。

腰痛の予防方法は?

医療スタッフ
腰痛の予防方法としては、発症してつらい痛みに苦しむ前に、日常生活の中で遭遇する腰痛の原因を予(あらかじ)め除去することが重要となります。
特にデスクワーク中心で仕事をしている場合は、座る際の姿勢を改善し、腰に負担のかからないよう工夫することが大切です。
普段のちょっとしたすきま時間で体操やストレッチを行い、体の柔軟性を保つことを心がけましょう。
また、適度な運動を習慣にすることで、腰痛になりにくい体となるような努力が必要です。
具体的な予防方法としては、常に「よい姿勢」を保つことがポイントとなります。
よい基本姿勢を身につけて、常にその姿勢を保つよう意識することが大切です。
具体的な取り組みは次のとおりです。

  • あごをしっかりと引く
  • 背筋をピンと伸ばす
  • 腰と脚の付け根が直角になるように深く座る

普段の仕事の合間や自宅でできる腰痛予防として、ストレッチ体操なども取り入れて筋肉をしなやかにすることを心がけましょう。
色々なストレッチ体操があるので、是非研究してみてください。

危険な腰痛の見分け方は?

腰が痛い女性
腰痛の中でも特に危険な状態なのは、下半身の神経症状(足に力が入らない、排便・排尿時の感覚がない)を伴う腰痛や、胸痛・腹痛を伴う腰痛が挙げられます。
足のしびれや脱力感を伴ったり、排尿がしっかりと出来ずに残尿感がある場合や、排便の感覚がない場合には脊髄障害の可能性があります。
その主な原因としては、脊椎の圧迫骨折や脊髄の周囲の出血、また細菌による感染や脊髄腫瘍・癌の転移などを警戒すべきでしょう。
胸痛を伴う腰痛、中でも突然の発症で痛みの位置が移動する症状がある場合や、裂けるほどの激痛がある時は「急性大動脈解離」の可能性が疑われます。
また、これまで特に腰痛を感じたことのない中高年の方が突然の腹痛や立ちくらみを伴う腰痛が出現した場合は「腹部大動脈瘤破裂」の危険性も排除できません。
その他、発熱を伴う場合であれば、脊椎に何らかの感染がある場合や腎臓など臓器への感染症も可能性があって危険です。

常に痛いかどうか

腰が常に痛く、痛みが3ケ月以上続く状態を「慢性腰痛」と称します。
慢性腰痛には、腰に異常がないのに漫然と痛みが続く場合と、腰の異常が治ったのに痛みが続く場合があります。
また、腰の痛みがよくなったり悪くなったりといった状態を繰り返す場合も、慢性腰痛となるのです。
常に痛い場合、その程度はさまざまですが、激痛に見舞われる場合もあります。
慢性腰痛は小学生から高齢者まで幅広い年代に見られますが、特に30~50歳代の働き盛りに多く、中でも都会の事務職に多いとされています。
その大きな理由として考えられるのがストレスで、慢性腰痛になると悪循環が起きやすい状況にもなります。
具体的には、精神的要因かどうかはっきりしない状態で腰痛の治療を繰り返していると、治療への不満が増してストレスや不安が増える悪循環が起こるのです。

痛みが増していくかどうか

何もせずにじっとしていても姿勢を変えても痛む場合や、数ケ月単位で徐々に痛みが増していく場合は、脊椎の問題や内臓疾患が疑われます。
その場合は危険な状態なので、細心の注意が必要となります。

編集部まとめ

腰痛に悩む女性
腰痛の原因・症状・検査・治療法・予防方法などについて詳しく解説しました。

日本人の多くが発症する腰痛ですが、この記事を読んで腰痛に関する理解を深め、万全の対策を講じられることを期待します。

参考文献

この記事の監修医師