運動中の息苦しさは『アスリート喘息』のサイン? 原因と対策とは【医師解説】

運動中や運動後に咳や息苦しさを感じたことはありませんか? 体力の問題と考えられがちな咳や息苦しさには、喘息(ぜんそく)が関係している場合もあります。今回は、喘息の基本から運動に関係する喘息の特徴や対策について、医療法人サムグレイス 名古屋おもて内科・呼吸器内科クリニック院長の表先生に解説してもらいます。
※2026年4月取材。

監修医師:
表 紀仁(医療法人サムグレイス 名古屋おもて内科・呼吸器内科クリニック)
喘息ってどんな病気?

編集部
喘息とは、どのような病気でしょうか?
表先生
喘息は、主に気道にアレルギーによる慢性的な炎症が起こり、さまざまな刺激に対して過敏になることで発症する病気です。気道が一時的に狭くなることで、咳や喘鳴(ぜんめい/ゼーゼー、ヒューヒューという呼吸音)、息苦しさなどの症状が繰り返し表れます。症状の強さや頻度には個人差があります。
編集部
どのような症状が出ることが多いですか?
表先生
発作的な咳や息切れ、胸の圧迫感、ヒューヒューという呼吸音などが代表的です。夜間や早朝に悪化しやすい傾向があり、風邪をきっかけに症状が長引くケースや、慢性的な咳だけが続くケースもあります。
編集部
症状が出るきっかけについて教えてください。
表先生
アレルゲンや感染、気温差、ストレスなど、さまざまな要因が引き金になります。これらの刺激により気道が収縮し、空気の通りが悪くなることで症状が表れます。複数の要因が重なることで、さらに悪化・長期化することも少なくありません。
編集部
発症しやすい人の特徴はありますか?
表先生
アレルギー体質の人や家族歴がある人は発症しやすい傾向があります。また、喫煙や大気汚染、ペット、ダニ・ハウスダストなどの環境要因も影響します。アレルギー体質や環境要因などの背景が重なることで、気道の炎症が持続しやすくなり、症状につながります。
喘息にも種類がある? アスリートも喘息に!?

編集部
喘息には、いくつか種類があるのでしょうか?
表先生
はい、アレルギーが関与するタイプのほか、感染や気候変化をきっかけとするものなどがあります。また、小児期から続くものや成人発症のものなど、発症時期による違いもあります。原因や誘因によって分類されることが一般的です。やや特殊な例としては、「運動誘発性喘息」という病気があります。運動に関連して喘息の発作が起こるタイプで、オリンピック選手でも約8%に見られ、特にマラソンなどの持久競技をする人に多いと報告されています。「アスリート喘息」と呼ばれることもありますが、必ずしもアスリートレベルの運動でなくても起こり、部活動や体育の時間に症状が出る子どももいます。
編集部
運動誘発性喘息の症状について詳しく教えてください。
表先生
通常の喘息の発作と同様に、発作性の咳や息切れ、胸の圧迫感、うまく息が吸えないような症状が見られます。運動中だけでなく、運動後に遅れて症状が出ることもあり、見逃されやすいため注意が必要です。
編集部
症状が起こりやすいタイミングはありますか?
表先生
寒い季節や花粉の時期、空気が乾燥している環境などでは気道が刺激されやすく、症状が出やすいとされています。また、運動の強度が急に上がったときや、十分なウォーミングアップを行わずに運動を始めた場合にも、症状が出やすい傾向にあります。また、もともと喘息のコントロールが不十分な状態では、軽い運動でも症状が誘発されやすくなるため、普段からの意識・対策が重要です。
運動誘発性喘息は防げる? 対策と治療

編集部
運動誘発性喘息は、どのように診断されるのでしょうか?
表先生
通常の気管支拡張薬の前後で肺機能の変化を見る気道可逆性試験に加え、運動前後で、一秒量と呼ばれる「1秒間にどれだけ息を吐き出せるかを示す指標」の変化を確認すると診断が可能です。しかしながら、この方法はあまり現実的ではなく、行っている施設も限られます。実際は、運動前後の症状などの経過から診断することが一般的です。
編集部
治療や対策について教えてください。
表先生
運動前に気管支拡張薬を予防的に吸入する方法や、ロイコトリエン拮抗薬の内服が用いられます。運動時の発作の頻度が多い場合は、吸入ステロイドも使用します。また、運動前に10〜20分程度のウォーミングアップを行うことや、寒冷時にはマスクを着用することも予防につながるとされています。ただし、プロのアスリートでは一部の薬剤に使用制限があったり、使用可能であってもTUE(治療目的使用に係る除外措置)が必要となったりすることがあります。必ず医師やコーチなどと相談しながら、適切に管理することが重要です。
編集部
運動誘発性喘息と診断された場合、運動は控えた方がよいのでしょうか?
表先生
運動といっても内容や強度はさまざまで、どの程度で症状が出るかには個人差があるため、一律に運動を控える必要はありません。大切なのは、症状が出やすい条件を自身で見極めながら、無理のない範囲で続けていくことです。完全にやめてしまうのではなく、発症しない範囲で調整しながら運動を継続することをおすすめしています。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
表先生
運動で症状が出ると、「体質だから仕方ない」「運動は控えた方がいいのでは」と感じてしまう人も多いと思います。しかし、運動誘発性喘息は正しく治療すれば、多くの場合で症状をコントロールできます。大事なポイントは、無理に我慢することではなく、自分に合った予防と治療を取り入れることです。適切な吸入薬の使用やちょっとした工夫で、安心して運動を楽しめるようになります。
編集部まとめ
喘息にはさまざまなタイプがあり、運動をきっかけに症状が出る運動誘発性喘息もその一つです。体力の問題と見過ごされやすい症状の中にも、喘息が隠れている場合があります。特に、運動後に遅れて咳や息苦しさが出るケースは見逃されやすいため注意が必要です。気になる症状がある場合は、早めに医療機関へ相談することが大切です。
医院情報

| 所在地 | 愛知県名古屋市昭和区御器所通1-13 |
| 診療科目 | アレルギー科、内科、呼吸器内科、小児科 |
| 診療時間 | 月火水金 9:00~19:00 木 9:00~12:30、14:00~17:00 土 9:00~13:00 |
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