「胸の痛み」や「息切れ」があるとき『心臓』に何が起きているのかご存じですか?【専門医解説】

胸の痛みや息切れを感じたとき、「心臓の病気かもしれない」と不安になる一方で、様子を見てしまう人も少なくありません。しかし、心臓の異常は症状だけでは判断が難しく、検査によって初めて詳しい状態が分かるケースも少なくないようです。そこで、胸の痛みや息切れがあるとき、心臓にどんなことが起きている可能性があるのか詳細な状態を知るために行われる検査について、医療法人財団明理会 明理会中央総合病院院長 廣瀨瑞紀先生(日本循環器学会循環器専門医・指導医)に話を聞きました
※2026年2月取材。

監修医師:
廣瀨 瑞紀(医療法人財団明理会 明理会中央総合病院)
新東京病院循環器内科などでカテーテル治療を中心とした先進的な循環器診療に従事し、急性期治療および心血管インターベンション領域で研鑽を積む。2011年より明理会中央総合病院循環器内科部長、2022年より同院院長。
日本循環器学会循環器専門医・指導医、日本心血管インターベンション治療学会専門医、日本脈管学会専門医、日本内科学会総合内科専門医。地域に根ざした総合急性期医療の推進と、患者一人ひとりに寄り添うチーム医療の実践を重視している。
胸の痛みや息切れがあるとき、心臓では何が起きている?

編集部
胸の痛みや息切れがある場合、まずどのような疾患や状態にある可能性が疑われますか?
廣瀨先生
胸の痛みや息切れがあると、心臓の血流が一時的、あるいは持続的に低下している可能性を考えます。とくに冠動脈が狭くなると、心臓の筋肉に十分な酸素が届かず、痛みや呼吸の苦しさとして表れます。ただし、症状の出方には個人差が大きいため、より正確性の高い判断をするには検査が欠かせません。
編集部
胸の痛みといっても、感じ方はいろいろありそうですね。
廣瀨先生
はい。左胸の締め付けられるような痛みが典型ですが、胃の痛みや左肩、顎、歯の痛みとして感じる人もいます。本人は心臓の異常とは思わず、別の原因だと考えてしまうケースも少なくありません。そのため、症状の場所だけで心臓の病気を否定することはできません。
編集部
ほかに、心臓と関係がある症状にはどのようなものがありますか?
廣瀨先生
心臓の血流が急激に低下すると、自律神経の反応として冷や汗や吐き気、めまい、失神などの症状を伴う場合があります。冷や汗や吐き気などの症状が胸の違和感と同時に起きているようなら、心臓の異常が背景にある可能性もあるため、早めの受診が重要です。
編集部
20分以上続く胸の痛みは、要注意だと聞きました。
廣瀨先生
はい。20分以上持続する胸の痛みは、急性心筋梗塞の可能性があります。痛みが一時的に軽くなっても、完全に治まらない場合は安心せず、速やかに医療機関を受診するか、救急要請を検討する必要があります。
心臓の異常をどう見極める? 検査で分かる内容

編集部
医療機関を受診した場合、どのような検査を初めに行いますか?
廣瀨先生
最初に実施する検査は、心電図や血液検査です。心電図では心臓の電気的な異常を確認し、血液検査では心筋が痛んでいないかを調べます。両検査とも短時間で実施でき、緊急性の判断にも役立つ重要な検査です。
編集部
心電図だけで心臓の状態は分かるのでしょうか?
廣瀨先生
心電図は非常に重要ですが、すべてを把握できるわけではありません。発作が起きていない時間帯では、異常が出ないケースも多々あります。そのため、心電図の結果と症状、ほかの検査を組み合わせて総合的に判断します。
編集部
ほかの検査とはどのような検査でしょうか?
廣瀨先生
心エコー、つまり超音波検査によって、心臓の動きやポンプ機能を実際に見ながら評価します。血流が不足している部分では心筋の動きに偏りが出る場合があるため、心筋の動きから虚血の可能性を推測します。体への負担が少なく、心臓全体の状態を把握するために重要な検査です。ただし、心エコーも心電図と同様に、測定時に異常を示さないケースでは「正常」と判定される場合があるため、「ときどき症状が出る」という人は注意が必要です。
「様子見」で大丈夫? 次の一手を決めるための検査

編集部
「ときどき症状が出る」場合は、どのような検査が行われますか?
廣瀨先生
症状が一時的に出る場合には、運動負荷試験やホルター心電図の検査を行う場合があります。運動負荷試験は、文字通り負荷を与えたときの心臓の状態をみる検査で、ホルター心電図は24時間機器を装着し、異常な変化がないかを確認する検査です。運動時に心臓へ負荷がかかった際の変化や日常生活を通した変化を確認し、安静時には分からない異常を捉えます。さらに、心臓CTという画像検査によって、心臓に血液を送る血管がどの程度狭くなっているかを確認することもあります。検査結果から、動脈硬化の進み具合や、治療が必要かどうかを判断する材料が得られます。心臓CTは、次に「より詳しい検査」や治療が必要かを考えるための重要なステップです。
編集部
「より詳しい検査」にはどんな検査がありますか?
廣瀨先生
冠動脈の状態を直接確認するために行う検査が、心臓カテーテル検査です。入院のうえ局所麻酔を使い、手首や肘、足の付け根の動脈から細い管を心臓まで進めます。管から造影剤を注入して血管をX線撮影し、どこがどの程度狭くなっているかを詳細に評価します。
編集部
カテーテル検査は体への負担や入院が不安という方もいそうです。ほかに選択肢はありますか?
廣瀨先生
心臓の検査や治療は、日進月歩で進んでいます。従来、心臓の虚血評価は、冠動脈造影の際にガイドワイヤーを挿入し、FFR(冠血流予備量比)を直接測定する方法が一般的でした。しかし近年では、冠動脈CT画像からFFRを解析する技術(実施施設には基準が設けられています)が実用化されつつあります。この解析技術により、冠動脈狭窄(きょうさく)による心筋虚血が起こっているかを、カテーテルを挿入せずに評価できるようになりました。カテーテル検査に不安を感じる人や、できるだけ入院を避けたいと考える人にとっては、有効な選択肢の一つと言えるでしょう。
編集部
最後に、メディカルドック読者へのメッセージをお願いします。
廣瀨先生
胸の痛みや息切れは自己判断せず、早めに受診することが大切です。心臓の異常は症状の強さだけでは測れず、気づきにくい形で表れることもあります。少しでも不安を感じたら、無理せず循環器内科を標榜する医療機関へご相談ください。
編集部まとめ
胸の痛みや息切れは、必ずしも強い症状として表れるとは限らず、気づきにくいケースもあります。だからこそ、症状だけで判断せず、検査によって心臓の状態を詳しく把握することが推奨されます。不安を感じたときは我慢せず、医療機関で相談する姿勢が、安心へとつながります。
医院情報

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| 診療科目 | リウマチ科、リハビリテーション科、内科、呼吸器科、外科、婦人科、形成外科、循環器科、放射線科、整形外科、泌尿器科、消化器科、皮膚科、眼科、神経内科、肛門科、脳神経外科、麻酔科 |
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