家族が『乳がん』と診断されたら? 遺伝する割合と自分でできる対策

母や姉妹など近親者が乳がんと診断されると、「自分も発症しやすいのでは?」と不安になる人は多いでしょう。そこで、遺伝との関係やリスクの考え方、検査や生活面で意識したい対策について、知っておくべきポイントを登戸ブレストケアクリニックの土屋先生に聞きました。
※2026年2月取材。

監修医師:
土屋 聖子(登戸ブレストケアクリニック)
近親者が乳がんに! 遺伝性は?

編集部
母や姉妹が乳がんだと、自分もなりやすいのでしょうか?
土屋先生
近親者に乳がんの人がいる場合、一般の人より発症リスクが高くなることが知られています。ただし、全ての乳がんが遺伝によるものではありません。乳がん全体のうち遺伝が明らかに関与する割合は5~10%とされていて、ほとんどの乳がんは環境や生活習慣、ホルモンの影響などが複合的に関係しています。家族歴があるからといって、必ずしも乳がんになるわけではないため、過度に心配する必要はありませんが、リスクを意識した行動は大切です。
編集部
“近親者”とは、具体的にどこまでを指すのでしょうか?
土屋先生
一般的に近親者とは、三親等以内の親族のことを指す言葉です。中でも乳がんの発症リスクが高くなるケースは、一親等(母親、娘)に乳がんの既往がある場合で、発症リスクは約2倍になります。二親等(祖母、叔母、姉妹)に乳がんの既往がある場合のリスク上昇は軽度で、影響は大きくありません。
編集部
家族に乳がん歴があっても、遺伝しないケースの方が多いのでしょうか?
土屋先生
はい。前述の通り、乳がんの約9割は遺伝性ではありません。ただし、家族で生活環境や体質を共有していることが、結果的にリスクを高めている場合もあります。「家族歴があるからといって、必ず遺伝するわけではない」という点を正しく理解した上で、日ごろから自身の乳房の変化に気を配り、乳がん検診を受けておくことがとても大切です。
編集部
男性の乳がんも、遺伝が関係しますか?
土屋先生
関係します。乳がん全体の1%とまれなものの、男性乳がんは遺伝が関係している可能性がより高くなります。父や兄弟など、男性の家族に乳がんの既往がある場合は、遺伝的な背景をより考慮して対応する必要があります。
遺伝性乳がんの仕組み

編集部
遺伝との関係について教えてください。
土屋先生
生まれつき特定の遺伝子に変異があることで発症する乳がんを「遺伝性乳がん」と呼びます。遺伝性乳がんの中で最も多い疾患が「遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC/Hereditary Breast and Ovarian Cancer)」です。BRCA1/BRCA2(ビーアールシーエーワン/ビーアールシーエーツー)という遺伝子の変異によって発症します。
編集部
BRCA1/BRCA2という遺伝子に変異があったら、必ず乳がんになるのでしょうか?
土屋先生
いえ。BRCA遺伝子に病的変異を持っていても、一生乳がんを発症しない人もいます。BRCA遺伝子に病的変異がある場合、70歳までに乳がんを発症する確率は、BRCA1で57%、BRCA2で49%といわれています。高い発症確率ではあるものの、必ず乳がんになるわけではありません。ただし、病的変異のない人が生涯で乳がんになる確率は約10.6%なので、BRCA遺伝子に病的変異のある女性は、病的変異がない女性に比べて、乳がん発症のリスクが5~6倍増加します。
編集部
遺伝性乳がん卵巣がん症候群は、その他の乳がんと異なる特徴があるのでしょうか?
土屋先生
はい。一般に、
・若くして乳がんを発症しやすい
・乳がんだけでなく卵巣がんも発症しやすい
・両側の乳房にがんを発症しやすい
・片方の乳房に複数回、乳がんを発症しやすい
・トリプルネガティブタイプ(女性ホルモンや特定のタンパク質の増殖シグナルを持たないタイプ)の乳がんが多い
・男性でも乳がんの発症リスクが高まる
という特徴があるとされています。
編集部
遺伝子検査は受けた方がよいのでしょうか?
土屋先生
全員が受ける必要はありません。自分の家族歴や乳がんの発症年齢などを踏まえ、専門医と相談した上で検討するとよいでしょう。検査結果が出たことにより、本人だけではなく家族にも影響を与える可能性があります。まずは遺伝性乳がんについて正しく知り、検査の意味を理解することが大切です。意味を理解した上で、検査を受けるか選択しましょう。
どんな対策が必要?

編集部
近親者に乳がん患者がいる場合、まず何をすべきですか?
土屋先生
まずは、家族歴を正確に把握することですね。家族歴のある場合は、乳がん検診を受ける際や乳腺外科を受診する際に、医師へ伝えましょう。その情報を基に、検診の時期や頻度、検査内容を個別に案内することが可能になります。
編集部
乳がんの発症リスクが高い場合、検診を開始する年齢や頻度は、一般の人と同じで大丈夫なのでしょうか?
土屋先生
乳がんの発症リスクが高い人は、一般的な検診よりも早い年齢から検査を始めたり、受診の間隔を短くしたりすることがあります。検査を実施する際は、マンモグラフィ検査や超音波検査、MRIなどを組み合わせて総合的に評価します。
編集部
日常生活で気を付けることはありますか?
土屋先生
閉経後の体重増加や運動不足、飲酒などは乳がん発症のリスクと関係しているといわれています。日々の生活習慣を見直すことにより、リスクを下げられる可能性があります。
編集部
セルフチェックも行った方がよいですか?
土屋先生
はい、ぜひ習慣にしてください。お風呂に入るときや着替えるときなど、定期的に乳房の形やしこり、皮膚や乳頭の変化を確認しましょう。小さな変化に気が付くことで早期発見につながります。一人で不安を抱えず、気になる点があれば早めに乳腺の専門機関に相談してください。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
土屋先生
自分の乳がんリスクを把握することはとても大切なので、日ごろから自分の乳房の状態を気にかけておきましょう。家族歴があっても過度に気にする必要はないものの、適切なタイミングで継続的な検診をぜひ心掛けてください。
編集部まとめ
乳がんは遺伝する可能性があることは間違いありません。ただし、乳がん全体の中で遺伝が関与している割合は約1割だけ。必要以上に不安になることはないものの、家族歴がある場合はほかの人よりも発症リスクが高まることは確かです。自分の状況を正しく理解し、適切な対策を講じていきましょう。
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