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「免疫力を上げる」の正体とは? 世間で見られる『注意が必要な“免疫情報”』も医師が解説

 公開日:2026/04/09
「免疫力を上げる」の正体とは? 世間で見られる『注意が必要な“免疫情報”』も医師が解説

「免疫力を上げれば風邪をひかなくなる」「免疫力が高い人は病気に強い」といった言葉を、日常生活の中で耳にすることは少なくありません。一方で、「免疫力を上げる」とは具体的にどういう状態なのか、どこまで病気を防げるのかは、意外と知られていない部分でもあります。そこで、「免疫」という言葉の基本的な考え方から、実際に病気との関係をどう捉えればよいのかなどを、品川ホヌクリニック院長の笠茂明音先生に聞きました。

笠茂 明音

監修医師
笠茂 明音(品川ホヌクリニック)

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2019年に日本大学医学部を卒業後、東京大学医学部附属病院、慶應義塾大学病院での勤務を経て、2023年より都内クリニックに勤務。2024年に医療法人信康会 瑞江篠崎えがおのクリニック理事長・院長に就任。2025年7月より現職。

「免疫力」とは何を指す?

「免疫力」とは何を指す?

編集部

「免疫力」という言葉はよく聞きますが、医学的にはどのような意味なのでしょうか?

笠茂 明音先生笠茂先生

一般的に「免疫」と言うと、体の中に侵入してきたウイルスや細菌などを見つけて排除し、体を守る仕組み全体を指します。具体的には、皮膚や粘膜のバリア、白血球などが担う自然免疫、抗体を作る獲得免疫など、複数のシステムが連携して働いています。単一の力ではなく、さまざまな防御機構がうまく機能している状態をまとめて表した言葉と考えるとわかりやすいと思います。

編集部

免疫力が「高い」「低い」という言い方もあります。

笠茂 明音先生笠茂先生

たしかにそうですが、免疫力は明確に「ここから高い」「ここから低い」と線を引けるものではありません。免疫の働きは年齢、基礎疾患、栄養状態、睡眠、ストレスなど多くの要因で変動しますし、同じ人でも日によってコンディションは変わります。そのため、免疫力を単純に高低で断定するより、「免疫が適切に働きやすい状態かどうか」「不調が続く背景がないか」といった視点で捉えるほうが実態に近いと思います。

編集部

健康な人であっても、免疫の働きは変わるのですか?

笠茂 明音先生笠茂先生

変わります。例えば睡眠不足が続く、強いストレスがかかる、疲労が蓄積するといった状況では、体の防御機能が十分に働きにくくなることがあります。逆に、休養が取れていて栄養状態も整っていると、免疫の仕組みが本来の力を発揮しやすくなります。ただし、免疫は強ければ強いほどよいというものではなく、必要な場面で適切に働き、不要な場面では過剰反応しないことが重要です。免疫が過剰に反応するとアレルギーや自己免疫疾患のような問題につながることもあります。

「免疫力を上げる」と病気にかかりにくくなる?

「免疫力を上げる」と病気にかかりにくくなる?

編集部

免疫やアレルギー、自己免疫疾患について、もう少し詳しく教えてください。

笠茂 明音先生笠茂先生

まずアレルギーについてですが、これは免疫が本来は無害なものに対して過剰に反応してしまう状態を指します。花粉や食べ物、ハウスダストなどは通常、体に害を与えるものではありませんが、アレルギー体質の人においては免疫がそれらを「敵」と誤認し、くしゃみや鼻水、かゆみ、皮疹などの症状を引き起こします。

編集部

では、自己免疫疾患についても教えてください。

笠茂 明音先生笠茂先生

自己免疫疾患は、免疫が自分自身の体の一部を異物と誤って認識し、攻撃してしまう病気です。免疫には本来、「自分」と「自分以外」を区別する仕組みがありますが、その調整がうまくいかなくなると、自分の組織に対し炎症反応を起こします。関節や皮膚、甲状腺、腸など、影響を受ける部位によって症状は異なりますが、共通しているのは免疫の働きが過剰、あるいは制御できていない状態である点です。このため、免疫は単純に強ければよいというものではなく、「働きを整える」ことが重要だといえます。

編集部

免疫の働きを整えることで、病気にかかりにくくなるのでしょうか?

笠茂 明音先生笠茂先生

免疫が適切に働きやすい状態であれば、感染症にかかりにくくなる可能性はありますし、感染しても症状が軽く済んだり、回復が早かったりすることは期待できます。ただし、どれだけ体調管理をしていても、ウイルスや細菌に接触する機会が多ければ感染することはあります。つまり「免疫を整えれば絶対に病気にならない」ではなく、「同じ環境でも発症しにくい、重症化しにくい方向に働くことがある」というように理解しておくとよいと思います。

編集部

感染症以外の病気とも、免疫は関係しているのでしょうか?

笠茂 明音先生笠茂先生

免疫は感染症への防御だけでなく、体内で起きた異常を監視する役割も担っています。ただし、すべての病気を免疫だけで防げるわけではありません。例えば生活習慣病は食事や運動、遺伝的要因など複数の要素も関与しますし、加齢に伴う変化の影響も避けられません。免疫は健康を支える重要な基盤ではありますが、「免疫さえ整えれば病気は防げる」という理解は危険で、病気の種類に応じた対策が必要です。

免疫と上手に付き合うために

免疫と上手に付き合うために

編集部

日常生活で、免疫の働きを整えるために意識するとよいことを教えてください。

笠茂 明音先生笠茂先生

基本は、睡眠、食事、運動、ストレスケアといった生活習慣の土台を整えることです。特別な方法よりも、免疫の仕組みが働きやすい環境を継続的に作ることが重要になります。例えば睡眠が不足すると回復力が落ちやすく、食事が偏ると必要な栄養素が不足しがちです。適度な運動は体調を整えるのに役立ちますが、やり過ぎは疲労につながることもあり、無理のない範囲で整える意識が現実的です。

編集部

「免疫力を上げる」とうたった情報は多いですが、あふれる情報をどう受け止めればよいですか?

笠茂 明音先生笠茂先生

「短期間で劇的に免疫が変わる」といった情報には注意が必要です。免疫は複雑な仕組みで、 1つの方法だけで大きく改善するケースは多くありませんので、効果を過度に期待し過ぎず、健康管理の一部として冷静に考えることが大切です。まずは生活習慣の土台を整えることが優先で、その上で必要に応じて専門家に相談すると安心だと思います。

編集部

体調不良が続く場合、「免疫」をどのように考えるとよいでしょうか?

笠茂 明音先生笠茂先生

「免疫力の問題かもしれない」と感じたとしても、自己判断で結論を出すのではなく、症状の経過や頻度を整理して考えることが重要です。例えば、発熱を繰り返す、だるさが長引く、感染症に何度もかかるといった場合、背景に別の病気が隠れている可能性もあります。「免疫を上げる」方向に意識が向き過ぎると、本来必要な検査や治療のタイミングを逃してしまうこともあります。症状が続くときは医療機関へ相談し、原因を確認することが大切です。

編集部

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

笠茂 明音先生笠茂先生

医療とは、病気を治療することにとどまらず、その人の暮らしや将来の健康を支えることだと考えています。免疫は生活習慣や睡眠、ストレス、食事と密接に関わり、日々の積み重ねが将来の健康に影響します。「免疫力を上げる」という言葉にとらわれ過ぎず、正しい知識のもとで体の仕組みを理解することが大切です。一人で悩まず、どんな小さな変化でも気軽に相談してください。

編集部まとめ

「免疫力」は単一の力ではなく、体を守る仕組みが適切に働いている状態を指す言葉として捉えることが大切です。体調管理をしていても感染症にかかることはありますが、生活習慣を整えることは、発症しにくさや回復のしやすさにつながる可能性があります。一方で、「免疫力を上げる」ことにとらわれ過ぎると、必要な受診や検査の機会を逃すこともあります。不調が続く場合は自己判断せず、医療機関に相談しましょう。

医院情報

品川ホヌクリニック
所在地 東京都品川区西大井5丁目8−2 ASビル2階
診療科目 一般内科、予防接種、訪問診療
診療時間 月・火・水・木・金:9:00〜12:00
月・火・水・木・金:14:00~18:00
休診日 土・日・祝日

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