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5年生存率に大きな差! 「膵臓がん」が“早期発見”にこだわるべき本当の理由を医師が解説

 公開日:2026/01/09
5年生存率に大きな差! 「膵臓がん」が“早期発見”にこだわるべき本当の理由を医師が解説

膵臓がんは「治りにくいがん」として知られていますが、早期発見できるかどうかで、その後の人生は大きく変わります。発見されたときのステージによって5年生存率に何倍もの差があり、治療の選択肢も全く異なります。症状が出にくいからこそ、リスクを理解して適切な検査を受けることが命を守るカギとなります。今回、膵臓がんの特徴とステージ分類、早期発見によって得られるメリット、そして見逃さないために私たちができることを、AIC八重洲クリニックの澤野先生に伺いました。

澤野 誠志

監修医師
澤野 誠志(AIC八重洲クリニック)

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日本医科大学を卒業後、放射線治療・がん診療に従事。日本医科大学付属病院において放射線医局長を務め、癌研究会付属病院(現・がん研究会有明病院)放射線診断科副部長を歴任。現在は 「AIC八重洲クリニック」院長・理事長。AIC画像検査センター理事長を兼任し、先進画像診断技術の臨床応用と普及に寄与している。MRI、CT、PET-CT、マンモグラフィなどのモダリティを用いたがんの早期発見、とりわけ膵臓・肝臓領域の画像診断に注力している。日本医学放射線学会放射線診断専門医の資格を有する。

膵臓がんの特徴と分類を知る

膵臓がんの特徴と分類を知る

編集部

はじめに、膵臓がんはどのような特徴をもつ病気なのでしょうか?

澤野 誠志先生澤野先生

膵臓がんは、膵臓の細胞から発生する悪性腫瘍で、約90%が膵液を作る細胞から発生する「膵管がん」です。最大の特徴は、初期症状がほとんどなく症状がないうちに静かに進行することです。膵臓は体の奥深くにあるため、がんが小さいうちは気づかれにくく、発見されたときにはすでに周りの臓器や血管に広がっていることが多いのです。また、膵臓の周囲には重要な血管や神経が密集しているため、がんが周辺に広がりやすく、転移もしやすいという性質があります。

編集部

ほかのがんに比べて「治りにくい」といわれる理由を教えてください。

澤野 誠志先生澤野先生

膵臓がん全体の5年生存率は約10%前後と、ほかの主要ながんに比べて極めて低い数字になっており、その理由は大きく3つあります。1つ目は「発見の遅れ」です。約60〜80%の患者さんが診断時にすでに進行した状態で見つかり、手術ができないケースが多いのです。2つ目は「進行の早さ」です。小さながんでも短期間で周囲に広がるため、発見したときはすでに局所進行あるいは遠隔転移を伴っているケースが少なくありません。とくに膵臓は後腹膜という深い位置にあり、腫瘍が成長しても自覚症状がほとんど出ないため、初期段階での診断が極めて難しいのが現状です。

編集部

3つ目の理由についても教えてください。

澤野 誠志先生澤野先生

3つ目は「抗がん剤の効きにくさ」です。膵臓がんの細胞は薬剤に対する抵抗性が強く、治療効果が限定的になりやすいのです。さらに、膵臓がんはほかの臓器のがんと異なり、腫瘍の周囲を血流の乏しい線維化した組織が取り囲み、十分な濃度の抗がん剤が癌細胞に届きにくいという特徴があります。また、がん細胞の遺伝子変異の点においても、有効な分子標的薬剤がまだ少ないのが現状で、治療効果を低下させる一因となっています。

編集部

膵臓がんはどのような段階(ステージ)で分類され、治療法はどう変わるのですか?

澤野 誠志先生澤野先生

膵臓がんはステージ0から4までの5段階に分類されます。ステージ0と1はがんが膵臓内にとどまっている状態で、手術による完全切除が可能です。ステージ2は周りのリンパ節への転移がある状態で、手術後に抗がん剤治療をおこないます。ステージ3は周囲の大きな血管にがんが食い込んでおり、手術が難しくなります。ステージ4は肝臓や肺など離れた臓器への転移があり、手術はできず抗がん剤治療が中心となります。つまり、ステージが進むほど治療の選択肢が狭まるのです。

早期発見で変わる治療と生存率の現実

早期発見で変わる治療と生存率の現実

編集部

ステージごとの5年生存率には、どのくらいの差があるのでしょうか?

澤野 誠志先生澤野先生

5年生存率はステージによって劇的に変わります。ステージ0や1の早期がんでは手術例で5年生存率が約50〜80%、手術で完全に取り切れた場合はさらに高くなることもあります。ステージ2では約20〜30%、ステージ3では10%程度に下がります。そしてステージ4の進行がんでは5%未満となってしまいます。つまり、早期に見つかった場合と進行してから見つかった場合では、5年後に生きている確率が10倍近く違うのです。この数字が早期発見の価値を物語っています。

編集部

早期に発見できた場合、どのような治療が可能になりますか?

澤野 誠志先生澤野先生

早期発見の最大のメリットは、手術でがんを完全に取り除ける可能性が高いことです。膵臓の一部または全部を切除する手術をおこない、がんが取り切れれば完治も期待できます。また、体への負担が比較的少ない段階で治療を始められるため、体力を保ちながら治療に臨めます。早期であれば入院期間も短く、手術後の社会復帰もスムーズです。何よりも治る可能性という希望を持って治療に取り組めることが、患者さんにとって大きな意味を持ちます。

編集部

進行してから見つかると、どのような制約やリスクが生じるのでしょうか?

澤野 誠志先生澤野先生

進行した状態で見つかると、まず手術ができないという大きな制約が生じます。がんが大きな血管を巻き込んでいたり、遠くの臓器に転移していたりすると、手術しても取り切れないからです。治療は抗がん剤が中心となり、がんを小さくして症状を和らげることが目標になります。また、進行がんでは黄疸や強い痛み、食欲不振、体重減少などのつらい症状が出やすく、生活の質が大きく低下します。さらに治療の副作用に耐える体力も落ちているため、十分な治療ができないこともあります。

膵臓がんを見逃さないためにできることとは

膵臓がんを見逃さないためにできることとは

編集部

膵臓がんの早期発見のために、日常で注意すべき変化について教えてください。

澤野 誠志先生澤野先生

膵臓がんの初期サインとして特に注意したいのが、50歳以降の突然の糖尿病発症や、既存の糖尿病の急激な悪化です。理由なく体重が1〜2カ月で数kg落ちる、食欲がないのに続く、脂っこい便が出る、背中や腰の鈍い痛みが続くといった症状は要注意です。また、皮膚や白目が黄色くなる黄疸、尿の色が濃い茶色になる、便が白っぽくなるなどの変化も見られます。これらは単独では別の病気の可能性もありますが、複数当てはまる場合は早めに消化器内科を受診しましょう。

編集部

膵臓がんのリスクが高い人(家族歴・高齢者など)は、どのような検査を受けるべきでしょうか?

澤野 誠志先生澤野先生

リスクが高い人は、通常の健康診断に加えて専門的な画像検査を定期的に受けることをおすすめします。具体的には、腹部超音波検査、造影CT検査、MRI検査(特にMRCPという膵管の詳しい検査)などです。血液検査では腫瘍マーカーも測定します。家族に膵臓がんの人が2人以上いる、慢性膵炎がある、膵臓に嚢胞があるといった高リスクの方は、半年から1年ごとの定期検査が望ましいでしょう。かかりつけ医に相談して、専門医療機関への紹介を受けることも大切です。

編集部

早期発見のために、医療機関を選ぶ際にどのような点を重視すべきでしょうか?

澤野 誠志先生澤野先生

膵臓がんの早期発見には、専門的な知識と経験を持つ医療機関の選択が重要です。まず、消化器内科や消化器外科の専門医がいること、膵臓疾患の診療実績が豊富な病院であることを確認しましょう。CTやMRIなどの高度な画像診断機器が揃っていること、内視鏡を使った精密検査(超音波内視鏡検査など)ができることもポイントです。また、万が一がんが見つかった場合に、すぐに適切な治療を受けられる体制があるかも重要です。地域のがん診療連携拠点病院や大学病院などが選択肢になります。

編集部まとめ

膵臓がんはたしかに厳しい病気ですが、早期発見できれば治る可能性は大きく上がります。ステージによる5年生存率の差は、「見つかった時期」がいかに重要かを示しています。リスクのある方は症状がなくても定期検査を、少しでも気になる症状があれば迷わず受診を心がけてください。本稿が読者の皆様にとって、膵臓がんへの理解と早期受診のきっかけとなりましたら幸いです。

医院情報

AIC八重洲クリニック

所在地 東京都中央区日本橋2-1-18
診療科目 放射線科
診療時間 月~土 8:40~21:00 
日・祝 8:40~18:00
※科目毎時間・曜日あり/要電話確認
休診日 日・祝

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