日中の「耐えがたい眠気」は病気かも? 『ナルコレプシー』の症状とは?【医師解説】

理由もなく強烈な眠気に襲われる、感情が高ぶると急に力が抜けてしまう――。そんな不思議な症状の裏には、実は「ナルコレプシー」という病気が隠れていることがあります。眠りのクリニック神楽坂の伊東先生がセルフチェックのポイントを解説します。
※2025年12月取材。

監修医師:
伊東 若子(眠りのクリニック神楽坂)
ナルコレプシーとは?

編集部
そもそも、ナルコレプシーとはどのような病気ですか?
伊東先生
ナルコレプシーは、日中に強烈な眠気が襲ってくる睡眠障害で、覚醒を維持する脳の仕組みに異常が生じて起こると考えられています。単なる寝不足や疲労とは異なり、本人の努力ではコントロールできないのが特徴です。
編集部
誰でもなり得る可能性があるのですか?
伊東先生
はい、その通りです。また、発達障害の人の一部はナルコレプシーのような眠気の問題を持っていることがあります。
編集部
どのようなときに眠ってしまうのですか?
伊東先生
授業中、会議中、歩行中など、状況を選びません。10〜20代で発症しやすく完治することがないため、生活や学業、仕事に大きな影響が出る病気です。
編集部
夜に眠れないこともあるのでしょうか?
伊東先生
はい。夜間睡眠が浅くなり、何度も目が覚める睡眠の問題もよく見られます。
編集部
自力で治すことはできますか?
伊東先生
基本的に、意志や根性で眠気を抑えることは困難とされています。周囲から「怠けている」「集中力がない」と誤解されることがありますが、本人の努力不足とは無関係です。症状を改善するには、専門医による治療を受けることが必要です。
ナルコレプシーが疑われる症状とは? 見逃しやすい症状は?

編集部
ナルコレプシーが疑われる典型的な症状について教えてください。
伊東先生
最も特徴的なのは、日中に強烈な眠気が襲い、意図せず眠ってしまう「睡眠発作」です。数分〜20分眠ると回復するため、居眠り癖と勘違いされやすい点が特徴です。いったん回復してもすぐに眠くなるといった症状が一日中続きます。
編集部
ほかには、どのような症状がありますか?
伊東先生
笑ったり驚いたりした瞬間に力が抜けて倒れそうになる、「情動脱力発作(カタプレキシー)」ですね。該当する場合、ナルコレプシーを強く疑います。ほかにも、寝入りばなに金縛りが起きやすい、鮮明な幻覚を見るといった症状にも注意が必要です。ただし、情動脱力発作は必ず起こるわけではありません。
編集部
見逃されやすい症状もあるのでしょうか?
伊東先生
睡眠の分断、集中力低下などは、よくある症状として軽視されがちです。しかし、これらもナルコレプシーと関連があると考えられています。特に思春期においては見逃されやすく、授業態度の問題と誤解されることもあります。
編集部
強烈な眠気は、毎日起こるのですか?
伊東先生
個人差はありますが多くの場合、毎日症状が起こります。そのため、「大事なテストの時に眠ってしまった」「重要な会議で眠気に襲われた」など、日常生活に不便を感じている人が少なくありません。
ナルコレプシーかもしれないと思ったら、どうすればよいか?

編集部
もし自分が「ナルコレプシーかも?」と思ったら、何をすればよいのでしょうか?
伊東先生
まずは睡眠専門外来や、睡眠を扱う神経内科を受診してください。ナルコレプシーは自己判断が難しく、専門的な検査が必要です。代表的な検査は、夜間の睡眠状態を調べるポリソムノグラフィー(PSG)と、翌日に複数回行う日中の眠気検査(MSLT)ですね。これらを使い、ナルコレプシーにみられる特徴的な睡眠パターンを調べたり、生理的な眠気の強さを客観的に評価したりします。受診前に睡眠日誌を2週間以上付けておくと診断がスムーズです。
編集部
治療法はありますか?
伊東先生
あります。日中の眠気を抑える薬を使用する、規則正しい睡眠スケジュールを維持する、短時間の計画的な仮眠を取るといった方法を組み合わせながら、治療するのが一般的です。起きる時間や寝る時間を一定にする、夜間の睡眠をしっかり取るといったことを意識してもらいます。
編集部
治療で症状の改善は期待できますか?
伊東先生
適切な治療によって多くの人が症状をコントロールでき、生活の質が向上します。治療と同時に、職場や学校などには病気であることを説明し、短時間休息をさせてもらう、仕事を調整してもらうなど、協力体制を整えることも大切です。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
伊東先生
ナルコレプシーは思春期に発症することが多く、進学や将来の進路を左右する人生の大切な時期とちょうど重なります。発症すると、強い眠気のために授業中や試験で眠ってしまい、本来の力を発揮できないことも少なくありません。早期に治療を行い、本人が最大限のパフォーマンスを出せる環境を整えることが理想ですが、実際には受診が遅れ、社会人になってようやく診断されるケースも多く見られます。眠気や集中力低下が続く場合は、早めに専門医を受診してほしいですね。適切な治療を受けることで、日常生活や学業の質は大きく改善します。困ったことがあれば、睡眠の問題を中心に扱うクリニックに相談してください。
編集部まとめ
思春期の強い眠気は「成長期だから」「夜更かしのせい」と見過ごされがちですが、実はナルコレプシーが隠れていることもあります。進学や将来に直結する大事な時期だからこそ、本人の努力ではどうにもならない症状のせいで実力が発揮できなかったら、悔やみ切れません。眠気が続くときは、早めに専門医院を受診しましょう。
医院情報
| 所在地 | 東京都新宿区神楽坂6-66 宝生堂ビル3F |
| 診療科目 | 心療内科、精神科 |
| 診療時間 | 午前:火~金 10:00~13:00、土 9:00~13:00 午後:火~金 14:30~18:45、土 13:30~17:30 |
| 休診日 | 月・第2.4木・日・祝日 |




