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もしかして「大腸がん」!? サインとなる“血便の特徴”や対処法を医師が解説

 更新日:2025/11/21
もしかしたら「大腸がん」かも!? サインとなる“血便の特徴”や対処法を医師が解説!

「排便時の便やトイレットペーパーに血がついていた」という経験はありませんか? こうした「血便」は、肛門のトラブルだけでなく、重大な消化器疾患のサインである可能性もあります。今回は、痔や大腸がんとの違い、血便の見分け方、そして受診の流れについて、「横浜あおば胃腸肛門内視鏡クリニック」の安西先生に解説してもらいました。

安西 紘幸

監修医師
安西 紘幸(横浜あおば胃腸肛門内視鏡クリニック)

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東北大学医学部卒業、東京大学大学院医学系研究科外科学専攻博士課程修了。国立病院機構 災害医療センターや日立総合病院、埼玉県立がんセンター、関東労災病院などで経験を積み、2025年3月、横浜市青葉区にある「こどもの国安西クリニック」の分院として「横浜あおば胃腸肛門内視鏡クリニック」を開院、院長となる。

血便とは

血便とは

編集部編集部

血便とは、どういう状態を指すのでしょうか?

安西 先生安西先生

排便時、便に血が混じっていたり、トイレットペーパーに血がついていたりすることを血便と言います。血の色も様々で、例えば「鮮やかな赤い血」がみられると肛門や直腸など比較的出口に近い部位からの出血で、「黒っぽい便」は胃や小腸など上部消化管からの出血の可能性が考えられます。いずれの場合も、体の異変を知らせる重要なサインです。

編集部編集部

血便の原因としては、どのような疾患が考えられますか?

安西 先生安西先生

血便の原因は様々ですが、最も多いのは痔核や裂肛といった肛門部のトラブルです。これらは良性疾患で命に関わることはありませんが、血便の原因はそれだけではありません。例えば、腸の血流が一時的に悪くなることで起こる虚血性腸炎や、慢性的に腸に炎症が起こる炎症性腸疾患(IBD:潰瘍性大腸炎やクローン病など)でも血便がみられます。さらに、注意が必要なのは大腸がんです。大腸がんは早期であれば内視鏡での治療が可能ですが、進行すると転移や再発のリスクが高まり、予後に大きく影響します。血便が「痔だろう」と自己判断して放置してしまうと、こうした重大な病気を見逃す可能性があります。血便が自然に消えたからといって、病気そのものが治ったと考えるのは非常に危険です。そのため、血便があった場合には、原因を大腸内視鏡検査で調べることをおすすめします。

編集部編集部

血便が自然におさまったときは、様子を見ても問題ないですか?

安西 先生安西先生

血便が自然に消えたからといって、病気そのものが治ったと考えるのは非常に危険です。たしかに、痔核など肛門のトラブルは排便状況によって一時的に軽快することがあります。しかし、炎症を繰り返すことで痔瘻(じろう)へと進展することもあります。また、炎症性腸疾患は症状が良くなったり悪化したりを繰り返しながら進行していく病気であり、特に潰瘍性大腸炎は大腸がんのリスク因子として知られています。さらに、大腸ポリープは一時的に出血しても自然に止まることがありますが、放置すると年単位でがん化のリスクが高まります。そして、大腸がん自体も初期は症状が出にくく、進行すると転移して命に関わることがあります。したがって、「血が止まったから大丈夫」と自己判断せず、一度でも血便が出たら医療機関を受診することが大切です。内視鏡検査をおこなうかどうかは、医師が症状やリスクを見ながら総合的に判断するので、まずは受診してご相談ください。

痔じゃなくて大腸がん!? 病院での検査は何をする?

痔じゃなくて大腸がん!? 病院での検査は何をする?

編集部編集部

血便で医療機関を受診したら、どのような検査をするのですか?

安西 先生安西先生

まずは問診で排便習慣や過去の病歴、家族歴などを伺います。そのうえで、症状に応じて直腸診や肛門鏡を用いて、肛門や直腸の粘膜の状態を観察します。痔が原因であれば、この時点で診断できることもあります。ただし、肛門鏡で観察できる範囲は、あくまで肛門部に限られます。たとえ肛門疾患による出血が疑われても、直腸より奥(口側)の腸管から出血している可能性も否定できません。特に直近で大腸内視鏡を受けていない人は、より奥の腸を調べる意味でも大腸内視鏡検査(大腸カメラ)をおすすめします。

編集部編集部

大腸内視鏡検査について詳しく教えてください。

安西 先生安西先生

大腸内視鏡検査は、血便の原因を調べる上で非常に有用な検査です。肛門から内視鏡を挿入し、大腸全体の粘膜をくまなく観察することで、ポリープやがん、炎症の有無を確認します。さらに、必要に応じてその場で組織を採取して病理検査をおこない、病気の確定診断もできますし、ポリープや早期がんが見つかった場合は、その場で切除することも可能です。血便があった場合には、大腸がんや炎症性腸疾患の可能性を除外するためにも、内視鏡検査の実施が強く推奨されます。

編集部編集部

大腸がんも内視鏡検査で切除できるのですか?

安西 先生安西先生

早期の大腸がんであれば切除可能です。具体的には、がんが粘膜の表層にとどまっていて、リンパ節への転移のリスクが低いと判断される場合には、切除することができます。早期に見つけることで、開腹手術を避けられるケースもあり、体への負担が少ないという大きな利点があります。ただし、進行度や病理の結果によっては追加の手術が必要になることもあるため、専門医の判断のもとで慎重に治療方針が決められます。

編集部編集部

内視鏡検査で切除できるなら安心ですね。

安西 先生安西先生

注意しておきたいのは、あくまでも「表層にとどまっている早期のがん」であれば切除可能ということです。この段階で、目視で気がつくほどの血便が出ることは非常に稀なので、「血便に気がついた時点で早期がんではない可能性がある」ということは知っておいてください。早期発見・早期治療のためには、症状がない段階での内視鏡検査を強くおすすめします。

血便が出たときの対処法

血便が出たときの対処法

編集部編集部

痔の場合は、どのような治療をおこないますか?

安西 先生安西先生

軽症の痔であれば、まずは生活習慣の見直しがおこなわれます。便秘や下痢といった排便習慣の乱れが原因となっている場合は、それらを改善することで症状の軽減が期待できます。まずは正しい排便習慣と正しい便の性状を目指しながら、必要に応じて軟膏や坐薬などの外用薬による治療をおこないます。一方、出血が繰り返される、疼痛が強いなどの重症例や、緊急性を伴う場合では、症状の程度に応じて手術や専門医療機関への紹介が検討されることもあります。

編集部編集部

では、内視鏡検査で切除できなかった大腸がんの治療はどのように進められるのでしょうか?

安西 先生安西先生

内視鏡で切除できなかった大腸がん、つまり進行がんや内視鏡治療の適応外と判断された場合には、手術による切除が基本となります。がんの位置や広がりに応じて、結腸や直腸の一部を切除し、周囲のリンパ節も一緒に取り除く「外科的切除」がおこなわれます。また、術後の病理結果やステージに応じて、補助的な化学療法が追加されることもあります。

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

安西 先生安西先生

痔は「恥ずかしいから……」と受診をためらう人も少なくありません。ですが、多くの場合、原因は排便習慣や便の性状の問題がある場合が多く、放っておくと悪化してしまうこともあります。裏を返せば、早めに対応することで悪化を防ぐことができるということです。また、便に血が混じる「血便・排便時出血」も、トイレットペーパーに少し血がつくだけの軽いものから、便器が赤く染まるような出血まで様々です。いずれの場合も、必ず何らかの原因があると考えられます。「そのうち治るだろう」「様子を見ていれば大丈夫」と自己判断してしまうと、思わぬ病気が隠れていた場合に発見が遅れてしまうこともあります。気になる症状があるときは、恥ずかしがらずに、早めの受診をおすすめします。

編集部まとめ

血便は、軽度の痔から進行した大腸がんまで、様々な原因で起こり得ます。出血の色や痛みの有無などで、ある程度の予測はできますが、最終的な判断には専門的な診察と検査が不可欠です。特に、便潜血検査で陽性が出た場合や、血便を認めた場合は、恥ずかしさや不安で先延ばしにせず、速やかに医療機関を受診し、必要に応じて大腸内視鏡検査を受けましょう。

医院情報

横浜あおば胃腸肛門内視鏡クリニック

横浜あおば胃腸肛門内視鏡クリニック
所在地 〒227-0038 神奈川県横浜市青葉区奈良1-3-7 横浜あおばメディカルガーデン2階
アクセス 東急こどもの国線「こどもの国駅」 徒歩2分
診療科目 消化器内科、肛門科

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