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うつ病の患者に「頑張ろう」は禁句!? 身近な人がうつ病になったときの対応Q&A

 公開日:2026/04/22
うつ病の患者に「頑張ろう」は禁句!? 身近な人がうつ病になったときの対応Q&A

身近な人がうつ病になったとき、「励ます」つもりの言葉がかえって負担になることもあります。正しい声かけや接し方を知ることが、回復への大きな支えになります。どうやって接したらよいのか、五反田ストレスケアクリニックの片山先生に詳しく聞きました。

※2025年10月取材。

片山 渚

監修医師
片山 渚(五反田ストレスケアクリニック)

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2017年4月東京慈恵会医科大学附属病院初期臨床研修医。2019年4月同大学附属病院精神科後期研修医。同大学附属柏病院、光生会平川病院医員、東京慈恵会医科大学附属病院精神科助教、心癒会しのだの森ホスピタル医員などを経て、2025年6月五反田ストレスケアクリニック開設。精神保健指定医、日本医師会認定産業医、産業保健法務主任者(メンタルヘルス法務主任者)、健康経営アドバイザー。

なぜ、うつ病の患者に「頑張ろう」はいけないのか?

なぜ、うつ病の患者に「頑張ろう」はいけないのか?

編集部

なぜ『頑張ろう』という言葉が、うつ病の人にはよくないのですか?

片山 渚先生片山先生

かえって相手を追い詰めてしまう場合があるからです。 うつ病の人は自分を責めたり、『頑張れない自分』に強い罪悪感や絶望感を抱えていたりするケースが少なくありません。罪悪感を抱えている状態のときに『頑張って』と声をかけられると、『これ以上どう頑張ればよいの?』と感じてしまう人もいます。

編集部

『頑張ろう』という言葉で、さらに追い詰められたと感じるのですか?

片山 渚先生片山先生

はい、うつ病の人はもともと「自分には価値がない」「周囲に迷惑をかけている」といった自己否定的な考えを抱きやすい傾向にあります。そのため、励ましのつもりでかけた言葉が、自己否定的な思いをさらに強化してしまう場合もあるのです。

編集部

励ましの言葉が、無価値感などを強める要因になることもあるのですね。

片山 渚先生片山先生

その通りです。うつ病は「心の弱さ」や「やる気の問題」ではありません。脳の働きが低下し、意欲や感情を調整する機能が乱れている状態です。努力や気合でどうにかなるものではなく、治療と休養が必要な病気であるということを、周囲の人も理解する必要があります。

編集部

「頑張って」という言葉が症状を悪化させることもあるのですか?

片山 渚先生片山先生

「頑張って」という言葉をかけられると、相手の期待に応えられない自分を責めてしまい、かえって症状を悪化させることがあります。特に「自分ではどうにもできない」「友人や家族に負担をかけている」といった思いが強いときに励まされると、より孤立感が深まり、自分を傷つけるような考えにつながる恐れもあるようです。

編集部

それでは、何も言わないほうがよいのでしょうか?

片山 渚先生片山先生

沈黙が支えになることもありますが、全く何も言わないと相手を孤独にしてしまう場合もあります。大切なのは、「ここにいるよ」「一人ではないよ」と存在を伝えることです。社会的な支援を受けられる人ほど希死念慮(死にたいと願う気持ち)が軽減されるという報告もあり、温かいつながりは回復の力になります。

「頑張ろう」の代わりにどんな言葉をかける?

「頑張ろう」の代わりにどんな言葉をかける?

編集部

どんな言葉がうつ病の人を支えるのですか?

片山 渚先生片山先生

「大変だったね」「つらかったね」といった言葉で、まずは相手の気持ちを受け止めることが大切です。解決策を提示するよりも「あなたの気持ちを理解したい」という姿勢を示すほうが支えになります。このような共感の言葉や態度は相手の安心感を高め、快方へ向かうきっかけにもなります。

編集部

「自分に何かできることある?」と聞くのはどうですか?

片山 渚先生片山先生

場合によっては、「気を使わせてしまう」と相手が負担に感じたり、返答に窮したりすることもあるかもしれません。それよりも、「食事は済んだ?」「少し散歩しようか」など、具体的に提案をすると相手も答えやすく、安心感が生まれます。こうした働きかけは、医学的に「積極的カウンセリングスタイル」と呼ばれています。

編集部

励ましではなく“寄り添い”が大切ということですね。

片山 渚先生片山先生

はい。うつ病の人には、「頑張らなくても大丈夫」というメッセージが何よりも大切です。常に自己否定的な考えに陥りやすく「何かしなければ」「周囲に迷惑をかけている」と自分を追い込みがちなため、「できることだけでいい」「あなたはそのままで大丈夫」と伝えることが、回復への第一歩につながります。

編集部

会話が途切れて沈黙が続くときは、どう対応すればよいですか?

片山 渚先生片山先生

無理に話をさせようとしなくても問題ありません。静かにそばにいるだけで「一人じゃない」というメッセージは伝わり、相手にとっては十分な支えになります。言葉を交わさずとも、寄り添う気持ちが伝わればそれだけで大きな力になり得ます。

身近な人がうつ病になったら気をつけることは?

身近な人がうつ病になったら気をつけることは?

編集部

家族や友人がうつ病になったとき、まず何をすべきですか?

片山 渚先生片山先生

まずは医療機関を受診し、「治療を受けること」が最優先です。うつ病は放置すると悪化するリスクが高く、治療が遅れるほど回復にも時間を要します。本人が自力で動けない場合は、家族や周囲の人が受診をサポートしましょう。もし動ける状態であれば、付き添ってあげることが本人の安心感につながります。

編集部

どのように接すればよいですか?

片山 渚先生片山先生

うつ病の回復には時間がかかります。右肩上がりで順調によくなるわけではなく、途中に“踊り場”のような停滞期があるのが自然です。調子が悪くなる日もありますが、その不調も回復過程の一部と受け止め、焦らず見守る姿勢が大切です。回復には波があるという認識を持ち、よい日も悪い日も含めて支えていきましょう。

編集部

本人が拒絶的な態度をとるときはどうすればよいですか?

片山 渚先生片山先生

状況によっては、適切な距離を置くことも必要です。自傷行為など命に関わる深刻な状況では、ためらわず医師や専門機関に相談し、強制的な介入も検討してください。一方で、そこまで緊急性が高くない場合は、関係を断つのではなく「いつでも連絡してね」「あなたを気にかけているよ」といった緩やかなつながりを残しておくことが望ましいです。対応の仕方に迷うときは、医師や専門家に相談しながら進めることをおすすめします。

編集部

サポートする側が疲れてしまうときはどうすればよいですか?

片山 渚先生片山先生

支える側が共倒れにならないよう、自分自身のケアを忘れてはいけません。真面目な人ほど「自分が全て支えなければ」と抱え込みやすい傾向にあります。しかしその必死さがかえって本人に「迷惑をかけている」と感じさせ、本人の抑うつが強くなってしまう悪循環も起こり得ます。

編集部

サポートする側がメンタルヘルスを損なうこともあるのですか?

片山 渚先生片山先生

はい。場合によっては、そのようなケースもあります。サポートは「余力を残すくらい」の距離感が適切です。全身全霊で向き合いすぎると支える側が疲弊し、医学的に「感応性精神病」と呼ばれるような、共倒れの状態になることもあります。信頼できる友人や医療従事者に相談し、自身の休息を確保できる体制を整えることが大切です。

編集部

最後に、メディカルドック読者へのメッセージをお願いいたします。

片山 渚先生片山先生

「これってうつ病なのかな」と感じたときは、一人で抱え込まず専門家に相談してください。診断の結果、うつ病でなければ安心できますし、別の問題であればそれに見合った適切な解決策が見つかります。分からないまま悩み続けている状態そのものがストレスになるため、早めに医療機関を受診し、話を聞いてもらいましょう。

編集部まとめ

心の不調は、誰にでも起こり得るものです。「うつ病かもしれない」と感じたら、一人で悩まず専門家に相談しましょう。早めに受診して話を聞いてもらうことが、安心への第一歩となります。また、身近な人にうつ病と思われる症状が見られた場合も、早めに専門家へつなぐサポートを検討してみてください。

医院情報

五反田ストレスケアクリニック
所在地 東京都品川区東五反田3-20-17
診療科目 心療内科、精神科
診療時間 月火水金:12:00~16:00/17:00~20:00
土:10:30~18:00
休診日 木・日・祝

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