関節リウマチと「自分らしい暮らし」を続けるために知っておきたい『在宅医療』の活用法【医師解説】

「手指のこわばりで家事がつらい」「趣味の園芸が思うようにできない」。関節リウマチの症状は、数値では表せない日常生活の困りごととしても現れます。じつは今、病院での治療に加え、自宅で受けられる「在宅医療」を活用することで、患者さんの生活スタイルに合わせた治療とサポートが可能になっています。生物学的製剤の注射や点滴を在宅で受けながら、自分らしい生活を続けるための新しい選択肢を内田先生(医療法人社団貞栄会)に解説してもらいました。

監修医師:
内田 貞輔(医療法人社団貞栄会)
関節リウマチと在宅医療、まずはどうする?

編集部
関節リウマチとはどのような病気ですか?
内田先生
関節リウマチは、自分の免疫が誤って自分自身の関節を攻撃し、炎症を引き起こす病気です。まだ原因は明らかになっていませんが、放置すると関節が壊れて動かせなくなり、日常生活に大きな支障をきたします。完治は難しいとされているものの、適切な治療によって症状を抑え、進行を防ぐことができます。
編集部
そもそも、関節リウマチで在宅医療を受けられると知りませんでした。
内田先生
そういう人は多いと感じます。痛みをギリギリまで我慢しながら通院を続けている患者さんも少なくありません。とくに手指の痛みやこわばり、動かしにくさを我慢して、歩行が困難になってから初めて在宅医療を考えるようになる人が多いのが現状です。
編集部
在宅医療は、高齢者が受けるイメージがあります。
内田先生
在宅医療は主に介護保険で提供されていて、介護保険は基本的に65歳になってからの認定となるので、そういったイメージがあるのだと思います。しかし、関節リウマチなど特定の疾患がある場合、65歳未満でも介護保険を申請することができるのです。
編集部
そうなのですね。
内田先生
関節リウマチの患者さんは65歳未満の人も少なくありませんが、その年齢で介護保険を利用している人はまだ少ないと感じています。しかし、関節の症状が進めば日常生活に影響が出やすいため、早めに介護保険を導入することをおすすめします。訪問看護やヘルパーによる支援を組み合わせることで、家事や身の回りの動作が無理なく続けられ、生活の質を保つことができます。
関節リウマチ治療、病院と在宅の両方でおこなえる?

編集部
関節リウマチの治療について教えてください。
内田先生
関節リウマチの治療はこの十数年で大きく進歩しました。従来用いられているメトトレキサートに加え、生物学的製剤や分子標的薬といった新しい薬が登場し、関節の破壊を防ぎやすくなっています。その結果、以前は寝たきりになることも多かった患者さんでも、今では日常生活を続けられるようになってきています。
編集部
在宅医療を導入した場合、病院での治療はどうなるのですか?
内田先生
病院での治療も継続できます。病院の医師と在宅医療の両方が関わる「2人主治医制」を取り、病院でも検査や治療を受けつつ、在宅医療でより日常生活に密着した診療・治療を受けられるのです。両者が連携することで、治療の幅が広がり、より安心して生活を続けられるようになります。
編集部
実際、在宅医療ではどのような治療が可能なのでしょうか?
内田先生
ケースバイケースではありますが、基本的に、病院とほとんど変わらない治療を受けられます。飲み薬に加え、生物学的製剤の注射や点滴も在宅でおこなえるケースがあります。さらに、関節リウマチ治療は感染症などのリスクも高くなりますが、通院治療だけだと、感染に気づくのが遅くなったり、通院が負担となって少しの熱であれば我慢して様子を見てしまったりする患者さんも少なくありません。在宅医療を導入していれば、医師だけでなく看護師やリハビリテーションスタッフ、介護職が頻回に関わるため、感染症などの合併症にも早期に気づき、速やかに対応できます。
関節リウマチ、IADL・QOLを守るための在宅医療

編集部
そういったメリットがあるのですね。
内田先生
ほかにもメリットはあります。関節リウマチは手指などの小さな関節に症状が出やすく、家事や趣味など生活に直結する動作に影響が出やすい病気です。たとえ数値がよくても、ドアノブやペットボトルキャップが開けられないのでは意味がないですよね。在宅医療の医師が関節リウマチ診療に精通していれば、血液検査の数値だけでなく「料理は続けられているか」「趣味の編み物ができるようになってきたか」といった日常生活の視点で治療を考えられます。これにより、患者さんの生活の質に直結する、より個別性の高い、オーダーメイドの治療が可能になるのです。こういったIADL(手段的日常生活動作)やQOL(生活の質)といった視点もとても大事です。
編集部
通院の負担が軽減されるだけではないのですね。
内田先生
通院の負担が軽減されるのはもちろんですが、生活の場に医療が入り込むことで「暮らしに合った治療」が実現できます。当クリニックの患者さんでも「病院では『数値に問題なし』と言われたが、趣味の園芸はできなくなってしまった」「生活はできているが、ピアノが弾けたらもっとよいのに」という患者さんに対して薬の見直しなどをおこない、それらの悩みを解決した人もいます。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
内田先生
関節リウマチの症状は、家事動作や趣味・娯楽に大きな影響が出ます。治療は、炎症の数値や腫れを抑えるだけでなく、患者さんが家事や趣味を楽しめるかどうかに目を向けることで、IADLやQOLの維持・向上につなげることが大事です。在宅医療は「病気に対する医療」だけでなく「生活を支える医療」でもあります。在宅医療を導入して、より自分らしい生活を送れるようにしてみてはいかがでしょうか。
編集部まとめ
関節リウマチは長く付き合う病気ですが、在宅医療を導入することで治療の選択肢や生活のサポート体制が大きく広がります。関節リウマチの診断がついていれば、65歳未満であっても介護保険サービスの導入は可能とのことでした。自分らしい生活を続けるために、在宅医療という選択肢を検討してみてはいかがでしょうか。
医院情報
| 所在地 | 〒422-8041 静岡県静岡市駿河区中田4丁目6-1 |
| 診療科目 | 訪問診療、往診、在宅医療 |




