便潜血検査が“陽性”だったら「大腸がん」なの? 考えられる病気や対処法も医師が解説!

健康診断などで「便潜血検査が陽性です」と言われると、大腸がんを心配する人も多いでしょう。しかし、必ずしもがんとは限らず、痔や炎症性腸疾患など、ほかにも原因は様々です。そこで、「池袋ふくろう消化器内科・内視鏡クリニック 東京豊島院」の柏木先生に、便潜血検査が陽性だと見つかる可能性がある疾患について解説していただきました。

監修医師:
柏木 宏幸(池袋ふくろう消化器内科・内視鏡クリニック 東京豊島院)
便潜血検査が陽性になるってどういうこと?

編集部
まず、便潜血検査について教えてください。
柏木先生
便潜血検査とは、便の中に目に見えない程度の血液が混じっていないかを調べる検査のことです。大腸がん検診の一次スクリーニングとして、広くおこなわれています。
編集部
大腸がん検診としても用いられているのですね。
柏木先生
はい。一般にがん検診では、がんによる死亡率を低下させる科学的根拠のある検査が用いられますが、便潜血検査は大腸がんの死亡率を低下させることが明らかになっています。そのため、便潜血検査は大腸がん検診で用いられているのです。そのほか、体への負担が少ない、安価な検査方法ということも特徴です。
編集部
便潜血が陽性になるのはどういう意味ですか?
柏木先生
陽性とは、便に血液が混じっている可能性を示す結果です。ただし、出血の原因は様々であり、陽性だからといって必ずしも大腸がんというわけではありません。あくまでも陽性反応は、精密検査が必要なサインであるということです。
編集部
「陽性=異常」ということですか?
柏木先生
必ずしも異常とは限りません。女性を例に挙げると、生理中の採便などでも陽性になることがあります。そのため、結果だけで過度に心配せず、次の検査につなげることが大切です。
編集部
便潜血検査で陰性であれば安心していいのでしょうか?
柏木先生
陰性でも絶対に大腸がんではないとは言い切れません。出血を伴わないがんもありますし、がんの場所によっては血液を検出できないこともあるからです。早期の大腸がんの患者さんだと便潜血反応が陽性になるのは6~7割、進行した大腸がんの患者さんでも9割程度とされています。そのため、検出率を高めるために2日分の便を採取する「2日法」での検査が一般的です。陰性であったとしても、100%大丈夫ということではありません。だからこそ、定期的に受け続けることが大腸がんの発見につながるのです。
便潜血検査が陽性のとき、大腸がん以外に考えられる病気

編集部
便潜血検査が陽性でも、大腸がん以外の可能性はありますか?
柏木先生
はい。大腸がん以外にも大腸ポリープ、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎・クローン病)、虚血性大腸炎、感染性腸炎などが考えられます。いずれも出血を伴うことがあり、便潜血検査だけでははっきりしないので、精密検査で区別します。
編集部
痔でも便潜血検査が陽性になるのでしょうか?
柏木先生
痔は最もよくある原因の1つです。特にいぼ痔や切れ痔では、便と一緒に出血することが多いため、陽性になる可能性があります。ただし、痔だと思い込まず検査を受けることが重要です。実際に、「痔だろう」と自己判断してしまったけれど、後で検査したら進行がんだった、ということも多いのです。
編集部
炎症性腸疾患や感染性腸炎だと、どのような症状がありますか?
柏木先生
多くの場合、下痢や腹痛、発熱などの全身症状を伴います。潰瘍や炎症によって腸の粘膜が傷つき、便に血が混じります。放置すると病気のある部分ががん化したり、重篤な合併症を引き起こしたりすることもあります。症状が長引く場合は放置せず受診しましょう。
編集部
ポリープの場合は、どのように扱われるのですか?
柏木先生
ポリープは良性でも出血の原因になります。大腸がんの約9割は大腸ポリープが大きくなる過程でがん化して発生したものです。そのため、多くの場合は内視鏡検査で確認して、その場で切除します。
便潜血検査が陽性になったらどうすればいい? 必要な検査や治療は?

編集部
便潜血が陽性になったら、まず何をすべきですか?
柏木先生
必ず大腸内視鏡検査の設備のある内視鏡クリニックや消化器内科を受診し、精密検査を受けてください。最も確実なのは、大腸内視鏡検査です。腸全体を観察しながらポリープや病変をその場で処置できるのが利点です。
編集部
大腸内視鏡以外に検査はありますか?
柏木先生
場合によっては大腸CT(CTコロノグラフィー)や注腸X線検査などをおこなうこともあります。しかし、それらの検査で異常が認められた場合には、結局、大腸内視鏡検査での精密検査が必要となります。そのため、内視鏡検査を勧められない特別な理由がない限りは、診断と治療を同時におこなえる内視鏡検査が第一選択とされています。
編集部
陽性だからといって、すぐ大腸がんの治療が始まるわけではないのですよね。
柏木先生
便潜血検査が陽性だからといって、必ずしも大腸がんというわけではありません。実際にがんが見つかる割合は、2~4%程度です。ほとんどの場合は痔やポリープなどが原因です。便潜血陽性の場合、約50%にポリープが見つかるという報告もあります。まずは正確な診断を受けることが重要です。
編集部
便潜血はどれくらいの頻度で受けたらいいのでしょうか?
柏木先生
厚生労働省の「がん検診ガイドライン」では、40歳以上の男女を対象に「年1回の便潜血検査」を推奨しており、年に1度の定期的な検査をおこなうことが大切です。また、20~30代でも、「家族に大腸がんを発症した人がいる」「食生活が乱れている」「慢性的に運動不足である」などは大腸がん発症のリスクになるため、定期的に検査を受けることをおすすめします。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
柏木先生
日本人が一生のうちにがんと診断される確率は、男女ともに2人に1人です。そのうち、がんで亡くなる確率は、男性で4人に1人、女性で6人に1人とされています。大腸がんは、早期に発見し、適切に治療すれば治すことができる病気であるにもかかわらず、罹患数で男女計1位、死亡数でも男女計2位と、今なお増加傾向にあります。便潜血検査は大腸がん予防、早期治療のきっかけになる検査です。検査で引っかからない場合でも、大腸がんの家族歴がある場合や便通異常、腹部症状、体重減少などの症状がある場合には、ぜひ一度医療機関に相談することをおすすめします。判断の遅れが、時に病気の進行につながってしまうこともあります。手術が必要になれば、入院や術後の回復にも時間がかかります。何よりもご自身やご家族、大切な人との未来の時間を守るためにも、健康でいることは人生を豊かにする大切な土台だと感じています。一歩踏み出すことで、未来の安心につながります。
編集部まとめ
大腸がんは早期に見つかれば治療することができるがんです。便潜血検査は大腸がんを発見するための第一歩なので、年1回は必ず検査を受けましょう。そして異常が見つかったら自己判断せず、必ず精密検査を受けてくださいね。
医院情報

| 所在地 | 〒170-0013 東京都豊島区東池袋1-21-1 ラグーン池袋ビル6F |
| アクセス | 「池袋」駅35番出口より徒歩3分 「東池袋」駅2番出口より徒歩5分 |
| 診療科目 | 消化器内科、内視鏡内科、内科 |




