『腰部脊柱管狭窄症』の手術後の“後遺症”は改善できる?【医師に聞く】

腰部脊柱管狭窄症の手術を受けたのに、しびれや痛みが残っている……。それは手術の「後遺症」かもしれません。なぜ症状が続くのか、改善の可能性はあるのか? 手術後に気をつけたいポイントと、再び日常を取り戻すための対策について、リペアセルクリニック札幌院の黄金先生に聞きました。

監修医師:
黄金 勲矢(リペアセルクリニック札幌院)
腰部脊柱管狭窄症の手術はどのようにしておこなわれるのか?

編集部
腰部脊柱管狭窄症の手術は、どんな方法でおこなわれるのですか?
黄金先生
基本的には、神経を圧迫している骨や靱帯を削って脊柱管を広げる「除圧術」が中心です。場合によっては椎体同士を金具で固定する「固定術」を併用することもあります。最近では内視鏡を用いた低侵襲手術もおこなわれており、傷口が小さく、回復が早いという利点があります。ただし、患者さんの症状や体の状態により手術法は異なるため、医師とよく相談することが大切です。
編集部
手術の目的はどのようなものですか?
黄金先生
最大の目的は神経の圧迫を解除し、痛みやしびれなどの症状を改善することです。実際には歩行困難や強いしびれ、排尿障害など、日常生活を大きく妨げる症状を和らげるために手術がおこなわれます。ただし、全ての症状が完全に消えるわけではなく、特に長く神経が障害されていた場合は、回復に限界があることも理解する必要があります。
編集部
入院期間はどのくらい必要ですか?
黄金先生
従来の手術では2〜3週間程度、内視鏡を用いた低侵襲手術であれば1週間前後で退院できることが多いです。術後はリハビリテーション(以下、リハビリ)をおこないながら徐々に日常生活へ復帰していきます。個人差はありますが、歩行が安定するまでに数カ月かかるケースもありますので、焦らず回復を目指すことが大切です。
編集部
高齢者でも手術は受けられるのでしょうか?
黄金先生
高齢者でも、全身状態が安定していれば手術は可能です。むしろ、脊柱管狭窄症は高齢の人に多い病気なので、70代や80代で手術を受ける人は少なくありません。ただし、心臓や肺の持病がある場合はリスクが高くなるため、術前に精密検査をおこない、安全性を十分に確認した上で手術に臨むことが重要です。
後遺症とは? どのような症状がどれくらいの期間続くのか?

編集部
腰部脊柱管狭窄症の手術後に起こりうる後遺症とは何ですか?
黄金先生
後遺症には、手術で神経の圧迫を解除しても残るしびれや痛み、下肢の筋力低下などがあります。これは疾患により神経が長期間圧迫されていたために、回復が不十分となるケースです。場合によっては再び狭窄が起きて症状が戻る、いわゆる再発が起きることもあります。
編集部
後遺症と再発はどう違うのですか?
黄金先生
「後遺症」とは、手術後に症状が完全には改善せず、残ってしまった状態を指します。一方「再発」は、一度改善した症状が、時間の経過とともに再び悪化することです。原因も異なり、後遺症は神経の回復不足、再発は新たな狭窄や変形が原因となります。それぞれ対応方法も違うため、区別して理解することが大切です。
編集部
後遺症ではどんな症状がどのくらい続くのでしょうか?
黄金先生
多くの場合、術後数週間から数カ月で歩行能力やしびれは改善しますが、完全に消えるまでには半年から1年ほどかかることもあります。神経のダメージが大きかった場合は、しびれや感覚の鈍さが残ることもあります。回復の程度や期間には個人差が大きいのが特徴です。
編集部
後遺症が治らずに残ってしまうこともあるのですか?
黄金先生
一般的には、多くの人が症状の改善を実感しますが、なかには後遺症が残ってしまう場合もあります。特に長期間症状を放置していた人、重度の神経障害があった人は後遺症が残る可能性が高いです。
後遺症の改善方法

編集部
手術後の後遺症は改善できるのですか?
黄金先生
完全に消すことは難しい場合もありますが、多くの後遺症はリハビリや薬物治療によって軽減できます。神経は回復に時間がかかるため、粘り強く取り組むことが大切です。早期から適切なリハビリを始めることで、残存するしびれや筋力低下の改善につながります。
編集部
リハビリにはどんな内容が含まれるのですか?
黄金先生
主にストレッチ、筋力強化、歩行訓練などがおこなわれます。特に体幹や下肢の筋肉を鍛えることで、脊柱への負担を軽減し、神経症状の回復を助けます。また、姿勢や動作の指導を受けることで再発予防にもつながります。無理に動くのではなく、専門家のもとで計画的におこなうことが重要です。
編集部
薬で後遺症を改善することは可能ですか?
黄金先生
しびれや神経痛が残る場合、神経の修復を助けるビタミン剤や神経障害性疼痛に効く薬が使われることがあります。完全に症状を消すことは難しくても、痛みやしびれを和らげることで生活の質を高めることができます。薬だけに頼らず、リハビリと併用するのが効果的です。
編集部
日常生活で注意することはありますか?
黄金先生
術後は腰への負担を避けることが最も大切です。重い物を持たない、長時間同じ姿勢を続けない、正しい姿勢を意識するなどが基本です。また、ウォーキングなど無理のない有酸素運動を継続することで、筋力と持久力を回復させ、後遺症の改善にもつながります。
編集部
最後に、メディカルドック読者へのメッセージがあれば。
黄金先生
腰部脊柱管狭窄症の手術後の後遺症はリハビリ、薬物療法、注射などで症状の緩和を目指すのが基本ですが、新たな治療の選択肢として再生医療もあります。再生医療は、失われた組織や機能を体の細胞の力で修復・再生する医療技術です。もし興味がありましたら、再生医療を提供している専門施設で相談し、最新の情報を確認してみてください。
編集部まとめ
腰部脊柱管狭窄症の手術のあとに、後遺症としてしびれなどを残さないためには、ベストな時期を見極めて手術に踏み切ることが大切です。信頼できる医師と手術のタイミングを相談しながら、適切に治療を進めていきましょう。
医院情報

| 所在地 | 〒060-0042 北海道札幌市中央区大通西5丁目10 ザイマックス札幌大通ビルB1F |
| アクセス | 地下鉄南北線「大通」駅より徒歩4分 JR「札幌」駅南口より徒歩17分 |
| 診療科目 | 整形外科 |


