「過敏性腸症候群(IBS)」になりやすい人の特徴はご存じですか? 原因や治療法・予防法も医師が解説!

「過敏性腸症候群(IBS)」の患者数は近年増加傾向にあり、日本人の約10人に1人が罹患していると推定されています。特に若い世代や女性に多く、症状のせいで通勤や通学ができないなど、日常生活に支障が出ることも少なくありません。今回は、過敏性腸症候群の症状や原因、なりやすい人の特徴、治療法・予防法について、「池袋ふくろう消化器内科・内視鏡クリニック 東京豊島院」の柏木先生に解説していただきました。

監修医師:
柏木 宏幸(池袋ふくろう消化器内科・内視鏡クリニック 東京豊島院)
過敏性腸症候群(IBS)とは

編集部
まず、過敏性腸症候群について教えてください。
柏木先生
過敏性腸症候群は、腸に明らかな異常が見つからないのに、腹痛や下痢、便秘といった症状が繰り返し起こる慢性的な機能性疾患です。腸の働きが過敏に反応することで、生活の質に影響を及ぼすのが特徴です。
編集部
過敏性腸症候群の主な症状には、どのようなものがありますか?
柏木先生
代表的なのは「腹痛」と「便通異常」です。大きく分けて、下痢型、便秘型、下痢と便秘を交互に繰り返す混合型の3つがあります。また、腹部の膨満感やガスがたまる感じもよくみられ、症状はストレスや食事によって変動します。
編集部
過敏性腸症候群は、どのくらいの人にみられる病気でしょうか?
柏木先生
日本人の約10人に1人が罹患しているとされ、男女ともにみられます。特に20~40代の働き盛り世代に多く、日常生活や仕事のパフォーマンスに影響することが少なくありません。
編集部
働き盛りの世代に多くみられるのですね。
柏木先生
もちろん、10代など若い人でも発症することはありますし、50代や60代などでもみられます。全般的に、ストレスの多い環境にいる人が多く発症しています。
編集部
過敏性腸症候群は命に関わる病気なのでしょうか?
柏木先生
命に直結する病気ではありませんが、長く続く症状が強い不安やストレスを招き、生活の質を大きく下げる可能性があります。実際、トイレが気になって通勤や通学ができない、旅行に行けない、外出ができない、食事を普通に取れないなど、日常生活に支障が生じる場合も少なくありません。放置せず、専門医に相談して症状をコントロールすることが大切です。
過敏性腸症候群(IBS)の原因・なりやすい人の特徴

編集部
過敏性腸症候群の原因はなんですか?
柏木先生
はっきりした原因は特定されていませんが、腸の運動や感覚の異常、ストレスや自律神経の乱れ、腸内細菌のバランスなどが関与しているとされています。実際には、これら複数の要因が重なって発症すると考えられています。
編集部
過敏性腸症候群になりやすい人の特徴はありますか?
柏木先生
精神的なストレスを受けやすい人や、几帳面で緊張しやすい性格の人に多い傾向があります。また、夜更かしや不規則な食生活、飲酒やカフェインの過剰摂取など生活習慣の乱れも発症リスクを高めます。
編集部
ストレスや緊張なども関係しているのですね。
柏木先生
「脳腸相関」という言葉もある通り、脳と腸は密接に関係しています。そのため、強いストレスを感じたり、緊張したりすると腸の働きが乱れ、便通異常など様々な症状が生じるのです。
編集部
男女で症状の出方に差はありますか?
柏木先生
はい。女性は便秘型、男性は下痢型が多い傾向にあります。ホルモンの影響やストレス対処法の違いなども背景にあると考えられています。
編集部
遺伝や体質も関係しますか?
柏木先生
遺伝的な要因が関与していると考えられており、家族に過敏性腸症候群がいると発症しやすいという報告もあります。体質や生活習慣が似ていることも関連していると考えられます。
過敏性腸症候群(IBS)の治療法・予防法

編集部
過敏性腸症候群は、どのように治療するのでしょうか?
柏木先生
治療は薬物療法と生活習慣の改善が基本です。腸の運動を整える薬や便通を調整する薬に加え、プロバイオティクスなどの腸内環境を改善する薬を用いることもあります。そのほか、ストレスを軽減する心理療法を取り入れたり、場合によっては抗不安薬などの薬物療法をおこなったりすることもあります。このように、症状のタイプに応じて治療を組み合わせるのが一般的です。
編集部
生活するうえで気をつけることを教えてください。
柏木先生
規則正しい生活とバランスの取れた食事が大切です。過敏性腸症候群の症状をきたしやすいとされる食事内容は、脂っこいもの、カフェイン類、香辛料を多く含む食品とされています。脂っこいものや刺激物を控え、よく噛んで食べること、カフェイン類を含まない水分をしっかり摂ることも有効です。
編集部
そのほか、食生活で気をつけるべきことはありますか?
柏木先生
ミルクや乳製品は、乳糖不耐症の過敏性腸症候群の患者さんにとって下痢を誘発するリスクがあるため、身体に合わない場合は控えることをおすすめします。それから、欧米では食事療法として「低FODMAP食」が用いられ、日本でも浸透しています。
編集部
低FODMAP食とはなんですか?
柏木先生
「Fermentable(発酵性)、Oligosaccharides(オリゴ糖)、Disaccharides(二糖類)、Monosaccharide(単糖類)、And、 Polyols(ポリオール)」の頭文字をとったもので、FODMAPを多く含む食事を避けることで過敏性腸症候群の症状を抑えるという報告もあります。そのため、食事療法の参考にしてもいいと思います。また、多量の飲酒も下痢の原因となりやすいので注意が必要です。
編集部
ストレス対策も役立ちますか?
柏木先生
非常に重要です。特に、十分に睡眠をとることや適度な運動を継続することは自律神経の安定につながり、症状の改善に効果が期待できます。また、過敏性腸症候群はストレスと密接に関係しているため、リラックス法や趣味の時間を持つことが効果的です。必要に応じて専門医による心理療法やカウンセリングも役立ちます。
編集部
過敏性腸症候群を予防するために、普段から心がけることはありますか?
柏木先生
「無理をしすぎない」ことが最大の予防になります。過敏性腸症候群は完治を目指すというよりも、環境によって症状を繰り返す疾患です。そのため、規則正しい生活や腸に優しい食習慣、ストレスをためすぎない工夫を日常に取り入れることで、過敏性腸症候群の発症や再発を防ぎましょう。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
柏木先生
「こんなことで受診していいのかな」「ずっと症状があるけど、悪い病気じゃないか心配……」、そんな不安を抱えながら受診をためらっている人は少なくありません。しかし、一歩踏み出して医療機関を受診することで、病気が見つかることもあれば、症状を和らげる薬に出会えることもあります。また、腹痛や下痢が続く場合には、潰瘍性大腸炎や大腸がんなど、治療が必要な病気が隠れていることもあります。検査を受けることで不安が軽くなったり、日常生活で困っている症状の解決策が見つかったりすることもあります。もし気になる症状があるなら1人で抱え込まず、医療機関に相談してみてください。あなたに最適な治療や検査をご提案できるかもしれません。
編集部まとめ
過敏性腸症候群は命に関わる疾患ではないとはいえ、QOLを大きく低下させる一因であることは間違いありません。悩んでいることがあったら、まずは消化器内科をはじめとする専門医を受診しましょう。
医院情報

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| アクセス | 「池袋」駅35番出口より徒歩3分 「東池袋」駅2番出口より徒歩5分 |
| 診療科目 | 消化器内科、内視鏡内科、内科 |




