しわ治療の「ヒアルロン酸注入」の効果の持続期間はご存じですか? 注意点や費用も皮膚科医が解説!

年齢を重ねるにつれて、しわが気になってくる人は多いのではないでしょうか。近年、メスを使わず注射で改善を目指せる「ヒアルロン酸注入」が人気ですが、具体的にどのような治療で、どの程度効果があるのでしょうか。そこで今回は、ヒアルロン酸注入の治療や効果などについて、「今泉スキンクリニック」の今泉先生に解説していただきました。

監修医師:
今泉 明子(今泉スキンクリニック)
ヒアルロン酸注入によるしわ治療とは

編集部
そもそも、ヒアルロン酸とはどのような成分なのでしょうか?
今泉先生
ヒアルロン酸は人の体内に存在する成分で、肌や関節、眼球などに多く含まれています。保水力に優れており、肌のハリや弾力を保つ役割を担っています。この性質を利用して、化粧品や関節治療、そして美容医療にも用いられています。
編集部
美容医療にも使われるのですか?
今泉先生
そうですね。美容医療領域で使用されるヒアルロン酸は、高度管理医療機器(クラスIV)に分類されており、一般的に使用されるものとは異なります。ヒアルロン酸分子同士を接着剤のような役割を持つ架橋剤という化学物質で結合させている「架橋型ヒアルロン酸」と、架橋剤フリーの「非架橋型ヒアルロン酸」に大きく分けられます。架橋型ヒアルロン酸は、皮膚に注入することでしわやたるみを内側から持ち上げたり、ボリュームを出したりして、自然な若々しさを取り戻すために使われています。一方、非架橋ヒアルロン酸は、形を変えるヒアルロン酸とは異なり、肌内部(真皮)にあるコラーゲンやエラスチンの増生を目的としています。最近では、アミノ酸やペプチド、保湿成分であるグリセロールなどを含有している製剤もあり、肌の水分量や免疫力を上げることが可能になっています。
編集部
もう少し詳しく教えてください。
今泉先生
皮膚を内側から持ち上げることができるので、しわの改善はもちろん、ほうれい線や口元のマリオネットライン、目の下のくぼみなど、幅広い部位に使用されます。ここ数年では、靭帯の緩みをサポートしてリフトアップする方法も一般的になりつつあります。さらに、鼻やあごの形成、涙袋や唇のボリュームアップにも応用され、フェイスバランスを整えることにも役立ちます。ヒアルロン酸注入は、外科手術と比べてダウンタイムが少なく、気軽に受けやすい点も人気の理由です。
編集部
しわの部分にヒアルロン酸を入れるのでしょうか?
今泉先生
厳密に言うと、しわそのものに直接注入するのではなく、その原因となっているくぼみやたるみにアプローチします。どこにどのように注入するかは、それぞれのお悩みや理想、医師のアプローチ方法などによって決められます。例えば当院では、皮膚を“面で持ち上げる”ように注入するのが特徴です。これにより、単なるしわ改善にとどまらず、自然で調和のとれた仕上がりを目指すことが期待できます。
ヒアルロン酸注入によるしわ治療の注意点やリスク

編集部
ヒアルロン酸の注入は、どのようにおこなわれるのですか?
今泉先生
極細の針や先端が鈍針であるカニューレを用いて、必要な部位の真皮や皮下に透明なヒアルロン酸製剤を少量ずつ注入していきます。施術時間は部位によって異なりますが、多くの場合は外科的治療と比べて比較的短時間で終わります。それぞれの希望や状態を確認しながらバランスよく注入することで、自然な若返りを実現することができます。
編集部
ヒアルロン酸注入によるしわ治療の効果は、すぐに実感できますか?
今泉先生
ヒアルロン酸は透明なジェル状の製剤で、注入するとその場で皮膚を内側から持ち上げてシワやくぼみを改善します。そのため、鏡を見てすぐに「ふっくらした」「シワが浅くなった」と感じる人が多いのが特徴です。ただし、注入直後〜数日は、ヒアルロン酸がご自身の組織の水分を吸収するため、軽い腫れや赤みが出ることもあります。組織に馴染むまでは、一般的に2〜4週間かかると思います。
編集部
注入直後に腫れが出ることもあるのですね。
今泉先生
軽い腫れや内出血が出ることはありますが、多くは数日でおさまるので、過度に心配しなくても大丈夫です。施術当日は強いマッサージや激しい運動、飲酒などは控えていただきます。また、ごく稀ではありますが、患部の細菌感染などの合併症が起こることもあるため、経験豊富な医師のもとで受けることが大切です。
編集部
ヒアルロン酸の安全性について、もう少し教えていただけますか?
今泉先生
先ほども解説しましたが、ヒアルロン酸はもともと体内に存在する成分であるため、生体適合性が高く安全性に優れています。医療分野でも長年使用されており、信頼性の高い治療と言えます。腫れや内出血、感染なども、どちらかと言えば「注入」そのものに対する注意点という意味合いが強いと思います。ただし、れっきとした医療行為であるため、軽く考えず、適切な診断と技術を持つ医師のもとで施術をおこなうことが重要です。
編集部
アレルギーについても聞いたことがあります。
今泉先生
アレルギーは、「即時型」と「遅延型」に大別されます。遅延型アレルギーは、数カ月〜数年経過してから起こるという報告もあります。原因としては、「施術手技(Procedure)」「患者(Patients)」「製剤(Products)」の3つの要素(3P)が関与していると言われています。多因子性であることから対応方法も様々なので、すぐにヒアルロニダーゼ(溶解剤)で溶解するのでなく、正しい診断が付いてから正しい対処方法をおこなうことが望ましいでしょう。
ヒアルロン酸注入の効果はどのくらい持続する?

編集部
ヒアルロン酸を注入した後、効果はずっと続くのですか?
今泉先生
残念ながら、効果は永続的ではありません。ヒアルロン酸は体内に自然に吸収されていくため、効果が少しずつ薄れていき、徐々にボリュームやハリが減っていくのが一般的です。
編集部
具体的に、どのくらい効果が持続するのでしょうか?
今泉先生
個人差はありますが、一般的に6カ月〜1年は効果が持続します。ただし、使用するヒアルロン酸製剤の種類や注入部位、代謝のスピードによって持続期間は変わります。持続的な改善を希望される場合は、定期的なメンテナンス注入がおすすめです。繰り返し注入することで、肌のハリ感が維持されやすくなります。
編集部
ヒアルロン酸注入の費用についても気になります。
今泉先生
ヒアルロン酸注入は、保険が適用されない自由診療(自費診療)なので、医療機関によって費用は異なります。また、使用する製剤の種類や注入量、部位によっても費用は変動します。治療後に後悔しないためにも、事前のカウンセリングなどでしっかりと費用を確認しておくことが大事です。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
今泉先生
ヒアルロン酸を用いた注入治療は、外科治療よりもダウンタイムが少なく、即時型に変化を期待できるため人気な治療の1つです。しかし一方で、血流障害や塞栓、遅延型アレルギーなどの重篤な副作用につながる恐れがあります。最近では、ナチュラルな見た目を好む人も多くなっているので、術前の評価(アセスメント)をきちんとおこなったうえで適した製剤選択をして、正しい量を注入するのが望ましいでしょう。SNSなど流行に左右されずに、十分な知識・技術を備えた医師に診察・治療を受けるように心がけましょう。
編集部まとめ
ヒアルロン酸注入は、体に馴染みのある成分を利用した安全性の高い治療で、しわやたるみの改善だけでなく、顔全体のバランスを整える効果も期待できるとのことでした。ただし、自由診療であり、医師の経験や技術によって仕上がりが左右されることもあるので、信頼できる医師に相談し、納得したうえで治療を受けることが大切です。
医院情報

| 所在地 | 〒106-0032 東京都港区六本木7-18-8 第III大栄ビル6F |
| アクセス | 東京メトロ「六本木駅」 徒歩1分 |
| 診療科目 | 皮膚科、美容皮膚科、美容形成外科 |




