「顔のたるみ治療」に多いトラブル・失敗ケースとは? 回避するにはどうすれば?【医師解説】

美容医療によるリフトアップ治療にはさまざまな方法があり、高い効果が期待できますが、一方で、場合によってはトラブルや失敗を招くことがあります。そこで医師の名倉直彌先生(アンジークリニック)に、たるみ治療の種類やそれぞれのメリット、リスクや注意点などについて話を聞きました。

監修医師:
名倉 直彌(アンジークリニック)
顔のたるみ治療にはどんなものがある?

編集部
顔のたるみが気になります。美容医療で治療できるのでしょうか?
名倉先生
顔の輪郭は、第一印象に大きく影響するため、たるみが気になるという人は多いです。美容医療では、レーザー治療や注入治療、外科的治療まで、さまざまなリフトアップ手段があります。
編集部
もう少し詳しく教えてください。
名倉先生
侵襲(しんしゅう)の少ない治療法としては、肌の深部に熱を与えてコラーゲンの生成を促すレーザー治療や、超音波を使ってたるみを引き締める高密度焦点式超音波(HIFU)治療、高周波によって深部まで熱エネルギーを伝え、少ない痛みで深いところの脂肪を引き締める高周波治療(RF)などがあります。比較的手軽に行えるのが特徴です。
編集部
「侵襲がやや大きい治療法」というのもあるのですか?
名倉先生
「侵襲」とは、医療の分野でよく使われる言葉で、「体に与える物理的な負担」のことを指します。この侵襲がやや大きい治療法として、針を使って薬剤などを注入するタイプの施術があります。たとえば、たるみの原因となる筋肉の動きをボツリヌス菌の働きで抑える「ボトックス注射」や、ヒアルロン酸やコラーゲンを皮膚の下に注入してボリュームを補い、しわやたるみを目立たなくする「フィラー治療」などが代表的です。
編集部
それぞれの治療に向いている人・向いていない人はいますか?
名倉先生
そうですね。肌質・年齢・たるみの程度、個人のニーズや予算などによっても向き不向きがあります。たとえば、皮膚のたるみよりも脂肪による下垂が大きい人にはHIFUだけでは不十分なことがありますし、肌が薄い人には高出力のHIFUは不向きな場合もあります。また、より大きな効果や長期的な改善を求める人には、外科的な治療を提案することもあります。
たるみ治療、それぞれの特徴を医師が解説

編集部
外科的治療にはどんなものがありますか?
名倉先生
まず、「準外科的治療(低侵襲の外科的治療)」に位置づけられる方法の一つに、糸リフトがあります。これは、特殊な糸を皮膚の下に挿入し、たるんだ組織を引っかけて引き上げる治療です。糸のついた針を挿入し、針だけを抜き取る手技のため、メスを使った切開は不要で、ダウンタイムも比較的短いのが特徴です。ただし、皮下組織に直接アプローチするため、注入治療などに比べると侵襲はやや大きくなり、その分顔全体にしっかりとしたリフトアップ効果が期待できます。
編集部
糸リフトの効果はずっと続くのですか?
名倉先生
時間の経過とともに溶ける糸を使っているので、糸リフトの効果は永続的ではありません。吸収された後も一時的にコラーゲンの生成が促されるため、ある程度のハリや引き締め感は残りますが、リフトアップ効果は次第に弱まります。使う糸の種類や個々の肌の柔らかさなどによって個人差はありますが、目安としては、効果が続くのは6カ月〜3年くらいかと思います。
編集部
さらに長い効果を求める場合、どのような治療がありますか?
名倉先生
より長期間の効果を望む人には、たるんだ皮膚を切開して引き上げる「フェイスリフト」などの外科的手術も選択肢の一つです。重度のたるみに悩む人や、半永久的なリフトアップ効果を求める人には、こうした手術が適している場合もあります。
編集部
たくさん方法があるのですね。
名倉先生
そのため、どの治療を選ぶか迷うことも多いかと思います。だからこそ事前のカウンセリングが非常に重要です。希望する効果や持続期間、ダウンタイムの許容度、通院の頻度などを医師にしっかり共有しておかないと、仕上がりに対する認識のズレが生じ、トラブルにつながることがあります。治療前には、不安な点や疑問を遠慮なく相談することが大切です。
顔のたるみ治療、トラブルになることもある?

編集部
実際に、トラブルになってしまう事例もあるのですか?
名倉先生
実際に数としてはそれほど多くはありませんが、トラブルになった事例も、もちろんあります。クレームとして多いのは「期待した効果が得られなかった」というケースです。たとえば、「糸リフトをしても十分に引き上がらなかった」「ヒアルロン酸を入れたら、逆に顔がパンパンに見えてしまう」「思ったよりも効果の持続が短かった」などです。また、「治療後にひきつれが起こった」という事例もあります。
編集部
トラブルにならないために気を付けることはありますか?
名倉先生
ご自身の希望を明確にしたうえで、信頼できる美容皮膚科医や美容外科医にカウンセリングを受け、治療のメリット・デメリットを十分に理解したうえで治療を選択することが大切です。人によって骨格や筋肉、脂肪のつき方、皮膚の厚みややわらかさは異なり、治療の適応や効果にも個人差があります。こうした判断は自己判断では難しいため、専門的な視点が必要です。また、複数の治療法を組み合わせることで、より自然で効果的な結果が得られることもあります。
編集部
「信頼できる美容皮膚科医や美容外科医」は、どのように選んだらよいのでしょう?
名倉先生
まずカウンセリングで自分の状態をきちんと見てくれて、その人に合った治療を提案してくれるかどうかが大事です。治療を決める際、効果の目安や持続期間、リスクまでしっかり説明してくれる医師だと、さらに安心です。カウンセラーがそういった説明をしてくれるところもありますが、できれば医師が説明してくれるクリニックがよいと思います。最初に訪れたクリニックだけで決めず、自分が納得できるまでいくつか回って比較するのもおすすめです。
編集部
顔のたるみ治療について、ほかに知っておいた方がよいことはありますか?
名倉先生
近年は気軽に受けられる美容治療も増えていますが、その多くはれっきとした医療行為であり、一定のリスクを伴います。また、効果には個人差があるという点も理解しておくことが大切です。さらに、美容治療の多くは自由診療となるため、予算を明確にし、無理のない範囲で検討しましょう。
編集部
最後に、メディカルドック読者へのメッセージをお願いします。
名倉先生
たるみ治療にはさまざまな方法があり、選択肢はとても幅広くなっています。治療内容を選ぶことも大切ですが、それと同じくらい大切なのが医師やクリニック選びです。信頼できる先生かどうか、自分の状態をきちんと見てくれるかどうかがポイントになります。単に「たるみをなくす」ということだけでなく、自分のよさを残しつつ、予算やダウンタイムなどの希望に合わせて柔軟に「あなたにはこの治療です」と、提案してくれる先生を選ぶと安心だと思います。
編集部まとめ
たるみ治療にはHIFUや注入、糸リフトなど複数の方法があり、自分に合った治療を選ぶことが成功のカギとなります。気軽に受けられる治療も増えていますが、安易に決めてしまうと、治療後のトラブルにもなりかねません。安全で納得のいく治療を受けるためには、信頼できる医療機関で、経験豊富な医師による診察と丁寧なカウンセリングを受けることが重要です。
医院情報

| 所在地 | 〒150-0002 東京都渋谷区渋谷1-23-16 cocoti3F |
| アクセス | JR・東京メトロ「渋谷駅」 徒歩4分 |
| 診療科目 | 美容外科、美容皮膚科 |




