「大腸CT」と「大腸カメラ」の違いをご存じですか? 検査の負担や精度・費用を徹底比較!

大腸がんは、早期に発見すれば高い確率で治療可能ですが、検査に対するハードルの高さから受診をためらう方も少なくありません。そこで今、「大腸CT」が注目されています。カメラを挿入せず、比較的負担の少ない方法で実施できる大腸CTは、精度・利便性ともに進化しています。今回は、大腸CTとはどのような検査なのか、大腸カメラとの違いやメリット・デメリットなどについて、九州大学大学院医学研究院 臨床放射線科学分野講師の鶴丸大介医師に詳しく解説していただきました。

監修医師:
鶴丸 大介(医師)
大腸CTとは?

編集部
はじめに、大腸CTとはどのような検査か教えてください。
鶴丸先生
大腸CTは、大腸に炭酸ガスを注入して拡張させた状態でCT撮影をおこない、大腸の内部を3次元画像として表示させる検査です。大腸カメラと同様の視点から大腸を観察できることから、「バーチャル内視鏡」とも呼ばれています。主に、大腸ポリープや大腸がんなどの病変を見つける目的で実施されます。
編集部
大腸カメラ(下部消化管内視鏡検査)と大腸CTの違いは何でしょうか?
鶴丸先生
大腸CTは、カメラを挿入せずに大腸の内部を観察できる検査である点が、大腸カメラとの大きな違いです。大腸を炭酸ガスで膨らませる必要はありますが、CTを撮影するだけで済むため、検査時間は非常に短く済みます。また、内服する下剤の量も、大腸カメラに比べて半分以下で済むため、身体的負担が少ない点も特長です。
編集部
大腸カメラと比較した大腸CTのメリット・デメリットを教えてください。
鶴丸先生
大腸CTのメリットは、負担が少なく手軽に受けられる点です。大腸カメラでは、大量の下剤の服用が必要だったり、検査中につらさを感じたりする方もいらっしゃいますが、そうした方には大腸CTが適しています。また、CT検査であるため、大腸以外の腹部臓器、たとえば肝臓や膵臓の様子も確認できる利点があります。一方で、大腸CTのデメリットとして、非常に小さなポリープや表面が平坦な病変は見つかりにくい傾向があります。また、実際にポリープなどが見つかった場合には、改めて大腸カメラを受け、病変の確認や処置をおこなう必要があります。
大腸CTが適応になる人や検査の流れ

編集部
大腸CTはどのような人が検査の適応になるのでしょうか?
鶴丸先生
大腸CTは、大腸カメラと同様に腹痛や下血などの症状があり、大腸に何らかの病変が疑われる場合に適応となります。また、特に症状がなくても、便潜血検査で陽性となった場合には、大腸の精密検査として大腸CTが選択されることもあります。
編集部
大腸CTを受けるときの検査の流れを教えてください。
鶴丸先生
検査前日には、便が残りにくい食事を摂り、タギング製剤と呼ばれる専用の薬を内服します。さらに、前日または当日に下剤を服用します(実施医療機関によって異なります)。ただし、大腸カメラのように大腸を完全に空にする必要はありません。 当日は、CT検査室で肛門から細いチューブを挿入し、炭酸ガスを注入して大腸を拡張させたうえでCT撮影をおこないます。通常は仰向けとうつ伏せの2つの体位でそれぞれ撮影しますが、撮影時間は各数十秒と短時間です。
編集部
大腸CTを受ける前に注意すべき点はありますか?
鶴丸先生
大腸内に大量の便が残っていると、画像の診断が困難になる可能性があります。そのため、検査前の食事では、便に残りやすい繊維質の多い食材(根菜類など)の摂取を控える必要があります。また、もともと便秘傾向のある方は、数日前から下剤を使用して便を出しておくなどの準備が求められます。
大腸CTの費用はどのくらい? 保険適用されるのか

編集部
検査中に痛みや不快感はありますか?
鶴丸先生
大腸CTでは、大腸を炭酸ガスで拡張させるため、腹部の膨満感や不快感を感じる場合があります。しかし、まったく無症状の方も多く、一般的には痛みが起こりにくく、比較的楽に受けられる検査です。
編集部
大腸CTで異常が見つかった場合、その後はどうなるのでしょうか?
鶴丸先生
大腸CTでポリープやがんなどの病変が見つかった場合には、改めて大腸カメラで確認をおこなう必要があります。ただし、6mm未満の小さなポリープについては、がんの可能性が非常に低いため、経過観察となるケースが一般的です。なお、大腸CTでは6mm以上のポリープに関しては、約9割の確率で検出できるとされています。
編集部
費用や保険適用の有無について教えてください。
鶴丸先生
人間ドックや健診など、自費で大腸CTを受ける場合の費用は、おおよそ2〜4万円程度が一般的です。一方で、腹痛や下血といった症状がある場合、あるいは便潜血検査で陽性となった場合には、大腸に病変(主に悪性腫瘍)が疑われるため、保険が適用されます。保険診療の適用となった場合、自己負担はおよそ6000円程度となります。
編集部まとめ
大腸CTは、従来の大腸カメラと比べて身体的・精神的な負担が少ないながらも、高い精度で病変を検出できる、注目度の高い検査です。とくに、「下剤を飲むのがつらい」「カメラに抵抗がある」という方にとっては、大腸CTが検査の選択肢を広げてくれるかもしれません。一方で、検査の特性や限界を理解したうえで活用することも大切です。






