「ガミースマイル」の治し方を歯科医が解説 手術の種類や治療の流れ、術前・術後の注意点について

松尾先生

代表的な手術法に「歯冠長延長術ならびに歯槽骨整形術」と「上唇粘膜切除術」の大きく2つの方法があります。

松尾先生

上顎の骨が厚い、あるいは歯が短くてガミースマイルを生じるケースに対しておこなう術式です。まず、上顎の奥歯から前歯までの歯ぐきにメスを入れて切開し、骨を適正な大きさや厚みに整えます（歯槽骨整形術）。その後、歯ぐきを目立たないラインまで移動させて歯冠（歯の白い部分）の長さを調整し、縫合します（歯冠長延長術）。

松尾先生

笑ったときに上唇が上がりすぎてガミースマイルになってしまうケースに用いられる術式です。上唇と歯ぐきの間にある粘膜を一部切除し、そこを縫い合わせて上唇を上がりにくくします。上唇粘膜切除術のみでガミースマイルを改善できるケースもありますが、単独では改善が難しいケースについては患者さんと相談の上、ほかの治療法を併用することもあります。

松尾先生

はじめに、カウンセラーによる問診で患者さんのお悩みやご希望、これまでの治療経験（ガミースマイル治療や矯正治療の有無）などをお聞きします。その後、レントゲン検査やCT検査、口腔内スキャン、顔貌写真など必要な検査をおこない、検査結果をもとに今後の治療方針についてご説明していきます。

松尾先生

外科手術だけで改善が見込めるケースについては当日にその旨をお伝えし、手術日を決めることが可能です。ただし、歯並びに問題があるケースについては分析に1週間程度期間を要することもあるため、その場合は後日来院していただき、施術後に実現可能な状態を3Dでお見せします。

松尾先生

歯冠長延長術ならびに歯槽骨整形術で1時間～1時間半、上唇粘膜切除術で1時間程度です。いずれの手術も局所麻酔のみでおこないます。

松尾先生

いずれの術式も縫合している糸を取る処置（抜糸）が終わったら、施術自体は終了となります。抜糸の目安は、歯冠長延長術（＋歯槽骨整形術）で術後1週間～10日程度、上唇粘膜切除術で術後10日～2週間程度です。通院回数は初診（カウンセリング・検査）と手術、抜糸の3回、トータルの治療期間としては2～3週間程度となります。

松尾先生

歯冠長延長術ならびに歯槽骨整形は、痛みが出ても鎮痛剤で治まる程度で、3～4日で落ち着くのがほとんどです。一方、上唇粘膜切除術は切除するのが軟らかい粘膜なので、術後の痛みはほぼないと言っていいでしょう。ただし、内側の粘膜にメスを入れるため、術後4～5日ほどむくみが生じることがあります。治療スケジュールを立てる際は、その点を考慮して手術日を決めておくと安心です。

松尾先生

歯冠長延長術ではもともと歯の形や並びが悪かった場合、術後に歯と歯ぐきのすき間や歯並びの悪さがより顕著になることがあります。ただし、その点については術前の診査である程度想定ができるため、あらかじめ患者さんにお伝えして同意を得てから治療を開始します。

松尾先生

もともと骨が大きく前に出ているケースでは、術後しばらくして後戻りを起こす可能性があります。これも事前に患者さんに説明した上で、必要に応じてほかの治療法の併用も検討していきます。また、上唇粘膜切除術の場合は、上唇の上がり方がこれまでと変わってしまうため、慣れるまでは笑い方が不自然になってしまうことも少なくありません。今までの笑い方をリセットする必要があるため、慣れるまでに多少時間がかかることもあります。

松尾先生

ガミースマイル治療はどこに原因があるのか、それに対してどういうアプローチをしたらいいかという点にたどり着けないと、不本意な結果に至ってしまう可能性があります。例えば、歯並びと骨の両方に問題がある場合、矯正治療単独では歯並びが綺麗になっても肝心のガミースマイルは改善されません。したがって、矯正治療と外科治療の双方の引き出しを持っていて、ガミースマイルを専門的に治療できる歯科医院を選ぶことが大切です。

松尾先生

ガミースマイルの外科手術には今回ご紹介した2つの術式のほかに、上顎の骨を切って後方へ下げる「骨切り」という方法もあります。ただ、この施術を受けた患者さんの中には、笑ったときに歯が見えなくなる「逆ガミースマイル」になってご相談に来るケースも少なくありません。繰り返しになりますが、ガミースマイル治療は正確な原因の特定と、それに対する正確なアプローチが重要です。したがって、1カ所のみならず、2～3カ所の歯科医院でカウンセリングや検査を受けることをおすすめします。

松尾先生

ガミースマイル治療で来院する場合、専属のカウンセラーが常勤で在籍している歯科医院だと、落ち着いて話を聞いてもらいやすいと思います。現在の自身の状況を話したうえで、過去の治療の症例などを見せてもらうなど、できる限り多くの情報を与えてくれる歯科医院を選ぶと安心でしょう。