大腸カメラは、大腸がん予防のために何歳から受けるべきかご存じですか? 医師が解説

近年、大腸がんの若年化が進み、30代や20代でもポリープやがんが見つかるケースが増えています。「自分はまだ大丈夫」と思っているうちに、がんが進行してしまうことも少なくありません。では、大腸がんの予防には何歳から検査を受けるべきなのでしょうか。また、どのような人が注意すべきなのでしょうか。今回は、大腸がんのリスクや大腸カメラ(大腸内視鏡)の受診タイミング、予防に役立つ生活習慣について大宮駅ささじま消化器内科・内視鏡クリニック院長の笹島圭太医師に詳しく解説してもらいました。

監修医師:
笹島 圭太(大宮駅ささじま消化器内科・内視鏡クリニック)
大腸がんが増えている? 今、知っておきたい背景

編集部
近年、大腸がんが増加しているというのは本当ですか?
笹島先生
はい、大腸がんは日本でも増加傾向にあります。40歳代から増え始め、50歳代から急増します。最近では30代、さらには20代の若年層でも大腸がんや腫瘍性ポリープが見つかるケースが増えています。生活習慣の変化や食生活の欧米化が一因とされております。このように、大腸がんの「若年化」が進んでいる点は、今あらためて注目すべき点です。
編集部
どのような人が大腸がんになりやすい傾向があるのでしょうか?
笹島先生
リスクが高いのは、牛肉、豚肉や羊肉などの赤肉やハム・ベーコン・ソーセージなどの加工肉の過量摂取、肥満、運動不足、アルコール摂取、喫煙が挙げられます。WHO(世界保健機関)及びIARC(国際がん研究機関)は2015年の時点で既に、赤肉および加工肉の摂取により大腸がんのリスクが増加するという声明を発表しております。WCRF(世界がん研究基金)によると週に3回で調理後重量にして350~500g未満に摂取量を抑えるように推奨されています。IARCは、加工肉を「発がん性のある十分な証拠がある」というグループ1に、赤肉を人間に対しておそらく発がん性があるというグループ2Aに該当するという分類も行っております。加工肉の摂取は、なるべく減少する方向で検討いただくのが望ましいでしょう。赤肉に関しては、重要なたんぱく源でもありますから徒にリスクを恐れるのではなく、年齢に応じた適正体重を鑑みて、お米・麺類・パンなどの炭水化物、肉・魚・卵・豆類などのたんぱく質、野菜、果物などをバランスよく摂取することが重要です。アルコール摂取に関しては23g/日を摂取している場合は、大腸がんのリスクが高まります。男性の場合は、10g/日増えるごとに大腸がんリスクが約10%増大するという報告があります。この結果はお酒を摂取して顔が赤くなるなどの遺伝的要因の解析がなされていないので注意が必要です。23gとはビール633ml(大瓶)、日本酒180ml(1合)、焼酎120ml、ワイン2杯(グラス換算)、ウイスキー60ml(ダブル)に相当します。また、血縁者に大腸がんの既往がある方は、一般の方よりリスクが高くなるといわれています。こうした背景を持つ方は、年齢にかかわらず早期から検査を検討すべきです。大腸がんは前兆が少なく進行することも多いため、リスク因子を自覚して早めの受診につなげることが重要です。
編集部
ポリープの段階で発見して切除することで、がんの予防になると聞きましたが本当ですか?
笹島先生
大腸がんは、ほとんどがポリープ(腫瘍性の良性病変)から始まり、5年から10年かけて徐々にがん化していくとされています。そのため、がん化する前のポリープの段階で内視鏡検査により発見・切除することで、がんになるのを未然に防ぐことが可能です。特に10mm以上の大きなポリープは、早めに切除することが望ましく、これが、大腸内視鏡検査(大腸カメラ)は予防につながると言われる理由です。ただし、頻度は少ないながらも陥凹型がんといって、10mm以下でもがん化したり、がんから発生して進行が速いものもあります。早期発見は難しいのでそのような病変に対する経験が豊富な内視鏡医の下で大腸カメラ検査を受けるのが望ましいといえます。
何歳から受ければいい? 大腸カメラ受診のタイミング

編集部
大腸カメラ(大腸内視鏡)は、何歳くらいから受け始めるのが理想ですか?
笹島先生
従来は40歳からの受診が推奨されてきましたが、最近では大腸がんの若年化が進んでおり、健康意識の高い方は30歳を過ぎたら検査を受け始めたほうが良いと考えられます。実際に、30代はもちろん、20代でも腫瘍性ポリープが見つかる例が増えており、若いうちからの予防が重要です。大腸がんは、ポリープが発生してから5年から10年を要するとされており、前駆病変の段階で発見・対処できれば、身体的・経済的負担も大幅に軽減できます。
編集部
より早く大腸カメラを受けるべきという人はいますか?
笹島先生
30代からの大腸カメラ受診が推奨されます。たとえば、前述したように肥満、アルコール摂取が23g/日を越える方、加工肉や赤身肉を多く食べる方、亜硝酸ナトリウムなどを含む食品を日常的に摂っている方、喫煙習慣のある方は特に注意が必要です。さらに、血縁に大腸がんの既往の方がいる場合は、発症リスクが高いとされており、より早い段階での検査が望まれます。
編集部
大腸カメラは、どのくらいの頻度で受けることが理想ですか?
笹島先生
一般的には、ポリープがなかった場合であれば、便潜血検査を逐年で受けて頂くことを前提に、3~5年に1回程度の大腸カメラ受診が推奨されます。一方、ポリープが見つかり切除した場合や、前回の内視鏡で異常が認められた方は、医師の指示に従って1〜3年ごとの定期検査が望まれます。また、リスク因子の多い方は、検査のタイミングや頻度を医師と相談の上で決めると安心です。
大腸がんを予防するための方法

編集部
健康診断の便潜血検査と大腸カメラの役割の違いについて教えてください。
笹島先生
便潜血検査は、便の中に血液が混じっているかを調べる簡易的なスクリーニング検査です。大腸がんやポリープからの微小な出血を検出することを目的としていますが、あくまで一次スクリーニングとしての検査に過ぎず、感度や精度には限界があります。便潜血検査は(偽)陰性がんといって、実際には大腸にがんがあるのに便潜血検査では陰性という結果になってしまうことがあります。進行がんであっても10~15%程度が便潜血検査で陰性となってしまうと報告されております。一方で大腸カメラ(大腸内視鏡検査)は、腸内を直接観察しながらポリープなどの病変を見つけ、必要であればその場で切除まで行える確定診断と治療を兼ねた検査です。便潜血検査が陽性となった場合には、大腸カメラによる精密検査を速やかに受けることが重要です。
編集部
便潜血検査や大腸カメラ以外にも検査する方法はありますか?
笹島先生
内視鏡が実施できない施設や人間ドックでは、大腸CT(CTコロノグラフィー)という選択肢が用いられることもあります。これは放射線を用いて腸内を画像で確認する検査で、自由診療が主体であるアメリカでは大腸がん検診のオプションとして推奨されています。アメリカでは、大腸カメラ検査の費用が、日本よりもかなり高額であることが背景にあります。注意点として、1回あたり5~7ミリシーベルトの被ばくを伴うとされており、毎年検診として使用するには適していないという報告もあります。また、実際にポリープが見つかった場合には、結局内視鏡での再検査・切除が必要になります。中には「CTコロノグラフィーよりも鎮静剤を使用した大腸カメラのほうが楽だった」と話す患者さんもおり、苦痛の程度は一概には言えないものの、内視鏡検査に過度な不安を感じて検査を拒まず、一度専門医による内視鏡検査を受けてみることが望ましいと考えます。
編集部
検診を行う以外に大腸がん予防において重要なことはありますか?
笹島先生
検診の受診とあわせて、日々の生活習慣を見直すことも、大腸がん予防には非常に有効です。近年の研究では、大腸がんの患者では血中ビタミンD濃度が有意に低い傾向があることが報告されており、ビタミンDの摂取が予防に寄与する可能性が示唆されています。青魚、サケ、マグロや紫外線を浴びて生育したキノコ類に含まれるビタミンDを積極的に摂取し、加えて紫外線カット効果の高い日焼け止めを塗る、紫外線カット対応の洋服を着るなどした上で有害紫外線を防ぎつつ、昼前後(午前10時~午後3次)に10分程度の日光浴を行うことで、体内で活性型ビタミンDが生成され、より効果的な予防につながる可能性があります。安易にサプリメントなどで、多く摂取しすぎると思わぬ合併症を招くことがあるので注意しましょう。また、肥満の改善や禁煙、過度な飲酒の制限、加工肉の摂取を控えることなども、発がんリスクの軽減に有効です。
編集部まとめ
大腸がんは、ポリープ(良性の腫瘍)の段階で見つけて切除することで、がん化を未然に防げる病気です。特に、リスク因子を持つ方にとって、大腸カメラは早期発見・予防のための重要な手段となります。便潜血検査と内視鏡の違いや検査を受けるべき年齢、日常生活でできる予防策を知ることで、がんのリスクを下げ、安心して生活するきっかけになるはずです。本稿が読者の皆様にとって、大腸がんの予防と早期発見につながる一助となりましたら幸いです。
医院情報

| 所在地 | 〒330-0854 埼玉県さいたま市大宮区桜木町1-398-1 アドグレイス大宮2F |
| アクセス | 「大宮」駅西口より徒歩5分 |
| 診療科目 | 内視鏡内科、胃腸内科、消化器内科、内科 |




