『大腸カメラ』の苦痛を減らす方法をご存じですか？ 「鎮静剤」とはどんなもの？【医師解説】

伊藤先生

大腸カメラは、肛門から内視鏡を挿入して、大腸内の状態を直接確認する検査です。ポリープやがん、炎症などを早期に発見するのに非常に有用です。

伊藤先生

大腸がんやポリープ、炎症性腸疾患（潰瘍性大腸炎やクローン病）、大腸憩室炎、虚血性腸炎などの疾患が診断できます。また、腸内の感染症なども大腸カメラで確認でき、早期の治療が可能となります。

伊藤先生

大腸カメラは、大腸の内部をカメラで直接確認することができ、バリウムなどの検査では識別困難であった大腸の色調変化や粘膜面の変化を捉えることもできます。また、ポリープやがんなどの疑わしい部位が見つかった場合は、生検のための採取が可能です。大腸がんは早期発見が非常に重要で、ポリープの段階で切除することが発症予防につながるため、大腸カメラは非常に重要なのです。

伊藤先生

便通異常（下痢や便秘、血便）を感じたときやお腹の不調が続く場合に、受けることをおすすめします。また、両親や兄弟に大腸がんの人がいる場合は、症状がなくてもまずは一度検査を受けることを推奨します。

伊藤先生

大腸は曲がりくねった構造をしており、大腸カメラはその中に入っていくため、通常は痛みやハリを感じるかと思いますが、程度としてはそこまで酷いものではありません。場合によっては、押されるような感じがあったり、じっとしていなければならない時間を「苦痛」と感じたりするかもしれません。しかし、不安の強い人は、鎮静剤を使用し、眠ったまま検査を受けることで、検査中の不安や痛みを軽減できます。

伊藤先生

鎮静剤は、リラックスさせる薬で、検査中の不安や痛みを和らげることができます。完全な麻酔とは異なり、検査中もある程度ご自身の感覚は保たれていますし、検査が終わってしばらくする頃には薬の効果が薄れ、覚醒することができます。

伊藤先生

鎮静剤は、比較的安全ですが、稀に血圧低下やアレルギー反応などが起こることがあります。検査前に医師に相談し、アレルギーや持病がある場合は必ず伝えてください。また、ごく稀に鎮静剤が体に合わず、検査後に気持ち悪くなったり、吐き気をもよおしたりする人もいますが、しばらく安静にしていると回復します。

伊藤先生

鎮静剤を使用した後は、薬の影響が完全に抜けるまで休息をとりましょう。当日、しばらくは激しい運動や重労働を避け、安静にしていることが推奨されます。検査後は、自動車や自転車の運転は避け、公共交通機関などで帰宅しましょう。

伊藤先生

「軸保持短縮法」という内視鏡の挿入方法があります。大腸は、クネクネと曲がりながら動いているため、カメラをそのまま進ませてしまうと腸管の粘膜が内側から押されて苦痛を感じます。こうした問題点を解決するのが軸保持短縮法で、腸管を極力伸ばさないようにカメラを進めていくので、より苦痛なく安全な内視鏡検査が可能です。

伊藤先生

近年注目されている挿入法に「浸水法（サブマリン法）」があります。従来の大腸カメラ検査では、腸内に二酸化炭素などのガスを注入して膨らませながらカメラを進めますが、浸水法では空気の代わりに水を注入することで、腸の伸展が少なく、体への負担も軽減でき、鎮静剤の使用量も少なくて済むと言われています。たとえば当院のように「浸水法」と「軸保持短縮法」を併用し、かつ鎮静剤を使うことで、検査時の苦痛が大きく軽減されると考えられます。

伊藤先生

従来は、検査前には消化管の中をきれいにするために、1〜2Lと大量の下剤を服用しますが、最近は下剤の選択肢も増え、医療機関によっては楽な下剤の服用ができることもあります。

伊藤先生

やはり内視鏡専門医のいる施設がよいと思います。医療機関のHPなどで「内視鏡専門医」がいるかを確認してから受診しましょう。専門医の中でも、内視鏡指導医であればさらに安心です。また、苦痛をできるだけ軽減したい人は、検査に鎮静剤が使えるか、「軸保持短縮法」および「浸水法」での検査ができるか、下剤の選択肢はあるか、などを確認するのもよいでしょう。

伊藤先生

大腸カメラは非常に重要な検査で、ごく早期のがんを含めると、約1割の人にがんが見つかったというデータもあります。がんになる前のポリープの段階で発見・切除することが、将来的な予防につながりますし、早期のがんであれば、ポリープと同じように検査中に切除することも可能です。がんが進行してしまうと、お腹を開いて腸を切除・再接合するような大がかりな手術が必要になることもありますので、とくに家族に大腸がんの既往がある人は、自覚症状がなくても定期的に大腸カメラを受けることが大切です。また、大腸は曲がりくねった構造のため、病変の発見には検査をおこなう医師の技術が大きく関わります。検査を受ける際は、医療機関選びにも注意しましょう。