【医師解説】“知らずに後悔”しないための「性感染症」 性病の放置が不妊につながるって本当？

馬場先生

性感染症は、主に性行為や粘膜同士の接触を介して感染する疾患の総称です。代表的なものには、クラミジア感染症、淋病、梅毒、HIV、性器ヘルペスなどがあり、いずれも誰にでも感染のリスクがあります。中には無症状のまま進行するものも多く、知らないうちに他人へ感染させてしまう危険もあるため、正しい知識と早期の対応が重要です。

馬場先生

まず、クラミジア感染症は自覚症状が出にくく、出たとしても男性では排尿時の違和感、女性ではおりものの変化や臭い程度なので、性病とは思わない人も多いのが特徴です。一方、淋病は男性の場合、尿道から膿が出るなど、クラミジア感染症と比較すると自覚症状があるのですが、それでも見逃されやすいことに変わりはないので注意が必要です。いずれも見逃されやすく、気づかぬうちに進行してしまうことがあるのが怖いところです。

馬場先生

無症状であっても体内では感染が進行しており、女性であれば子宮や卵管への炎症により不妊の原因となることがあります。男性も精巣炎などを引き起こすことで精子の通過障害や精子の質の低下を招く可能性があります。さらに、感染に気づかず性行為をおこなうことでパートナーにうつしてしまうリスクも大きく、社会的にも問題視されています。

馬場先生

とくに注意すべきは、クラミジア感染症および淋病です。これらは、女性では卵管炎、男性では精巣炎などの原因となり、炎症が長期化することで不妊症へとつながる可能性があります。また、性器ヘルペスやHPVも慢性的な炎症を引き起こすことがあり、不妊の原因になると考えられています。

馬場先生

クラミジア感染症や淋病などの感染が進行すると、子宮や卵管に炎症が広がり、癒着や閉塞を引き起こします。癒着とは、本来離れているはずの組織同士が炎症によりくっついてしまう状態であり、受精卵の通過が阻害され、自然妊娠が難しくなります。重症化する前に治療することが重要です。

馬場先生

男性においても、性感染症が原因で精巣や精巣上体に炎症が生じると、精子の質の低下や通過障害が起き、不妊の原因となる可能性があります。また、感染に気づかぬまま性行為をおこなうことで、パートナーへ感染を広げるリスクも大きくなります。妊活中や妊娠中のパートナーに感染が及ぶことで、胎児への影響や妊娠の継続に悪影響が出る可能性もあるため、注意が必要です。

馬場先生

性感染症が疑われる場合には、泌尿器科、婦人科、あるいは性病科を標榜する医療機関の受診が適しています。内科でも検査をおこなっている場合はありますが、最終的には専門的な対応が求められるため、症状に応じて専門科へ案内されることが一般的です。性器の違和感がある場合は、早めの受診を心がけましょう。

馬場先生

性感染症は自覚症状がないまま進行することが多いため、妊活を始める前や、性交渉のパートナーが変わったときなどは、検査を受けるタイミングとして適しています。また、不特定多数との接触や風俗利用後など、不安を感じた際も早期検査が望ましいです。年に1回程度の定期的な検査も、予防と早期発見の観点から有効です。

馬場先生

予防には、コンドームを正しく使用することが最も基本的で有効です。また、自分だけでなく、パートナーと一緒に検査を受けることや、不特定多数との接触を避けることが感染リスクを減らします。近年では、クラミジア感染症や淋病などの感染リスクを下げる予防内服薬も一部の医療機関で扱われており、感染不安のある人には一つの選択肢となります。