健康診断で「血圧が高め」の結果に… 高血圧による「狭心症」や「脳出血」のリスクを医師が解説

血圧は、血管にかかる圧力のことです。これは生活習慣や加齢によって変動し、高い血圧が長い期間続くと、さまざまな健康リスクを引き起こします。そこで、血圧が高いことによるリスクや正常値について、渡辺絵梨沙先生(白山内科外科クリニック)に解説してもらいました。

監修医師:
渡辺 絵梨沙(白山内科外科クリニック)
高血圧について医師が解説!

編集部
血圧はどのように決まるのでしょうか?
渡辺先生
血圧は、血管にかかる圧力のことで、心臓から拍出される血液量や血管の硬さによって変動します。自宅で測定した場合、115mmHg/75mmHg未満が正常値と言われており、これより高かったり、著しく低かったりするのがいわゆる「高血圧」「低血圧」です。
編集部
どのくらいだと高血圧になるのですか?
渡辺先生
基準は、昔と比べるとやや複雑になっています。日本高血圧学会の高血圧診断基準によれば、家庭で測定した場合、収縮期血圧(上の血圧)が135mmHg以上、または拡張期血圧(下の血圧)が85mmHg以上の場合を高血圧と診断します。診察室で測定した場合、収縮期血圧が140mmHg以上、または拡張期血圧が90mmHg以上の場合に高血圧と診断されます。
編集部
血圧が高いとどんな問題が起こるのでしょうか?
渡辺先生
血圧が高いと、血管へのダメージが強くなります。ダメージを受けた血管は硬くなり、いわゆる「動脈硬化」の状態となります。そうなると血管が広がりにくくなり、血圧がさらに上昇するという悪循環に陥ります。このような状態が続くと、全身の血管に血流障害が生じ、病気のリスクが高まるのです。
編集部
高血圧が引き起こす病気にはどのようなものがありますか?
渡辺先生
高血圧が引き起こす病気として、腎障害や心疾患が挙げられます。高血圧による腎障害は、透析が必要となる場合もあり、慢性腎不全を引き起こす原因の一つです。
まだまだある高血圧の影響

編集部
高血圧が心疾患を引き起こすこともあるのですか?
渡辺先生
はい。高血圧は心臓にも大きな負担をかけます。心臓は1日に約10万回も拍動しますが、血管が硬いと、その1回1回に負担がかかるのです。1回の負担がわずかであっても、長年続くことで心臓の筋肉が少しずつダメージを受けていきます。この負担が積み重なることで、最終的には高血圧性心疾患が発症することになります。血管の動脈硬化が進行すると狭心症にもなりやすくなり、高血圧性心疾患になると、循環不全から心不全を引き起こしやすくなります。
編集部
ほかにはどのような影響を与えるのでしょうか?
渡辺先生
高血圧は、脳にも大きな影響を与える可能性があります。高血圧が続くと、脳の血管が破れやすくなり、脳出血などを引き起こすリスクが高まります。脳出血を起こすと、麻痺や言語障害などさまざまな後遺症が残ることが多く、また、脳血管性認知症を引き起こす原因にもなるとされています。
編集部
血圧が高いと目にも影響があると聞きました。
渡辺先生
そうですね。長期間にわたり高血圧が続くと、網膜にある血管が傷つき、視力に障害が生じる可能性があります。これを「高血圧性網膜症」と呼び、進行すると失明にいたることもあります。
高血圧の予防法・治療法を教えて!

編集部
高血圧を予防するために最も大切なことは何ですか?
渡辺先生
高血圧を予防するためには、まずは生活習慣の見直しが最も大切です。塩分制限や適度な運動、健康的な食生活を維持することが基本となります。これらをおこなっていると、体重が多めの人は体重も落ちてくるという効果があります。また、定期的に血圧を測定し、高血圧の早期発見と早期治療をおこなうことも予防につながります。先ほどの正常値を参考に、ご家庭で血圧を測定する習慣をつけるとよいですね。
編集部
先ほどの正常値、上が110台というのは低すぎませんか?
渡辺先生
たしかに、血圧が110台というのは低すぎるように感じるかもしれませんが、血管が柔らかければ血液量が流れている状態でも血管にかかる圧はそれほど高くなりません。例えば赤ちゃんの血管は非常に柔らかいため、血圧は90-100mmHg台でも問題ありません。成人においては、血圧140mmHgは、流れる血液量が非常に多いか、血管が硬くなっていることが考えられます。
編集部
健康診断で「高め」や「境界線ギリギリ」と言われた場合、どうすればいいですか?
渡辺先生
高めの血圧や境界線ギリギリの場合、まずは生活習慣を見直すことが有効です。とくに塩分の摂取量を減らすことが、血圧を下げるのに役立つ場合があります。食事の見直しや適度な運動、体重コントロールを取り入れることで、薬を使わずに血圧を正常範囲に保つことができることもあるのです。しかし、しばらく気をつけても正常値とならない場合は、一度医療機関に相談することをおすすめします。
編集部
高血圧の治療方法について教えてください。
渡辺先生
別の病気などが原因ではない、いわゆる「本態性高血圧」の治療は、血管を拡張させる薬や、血圧を上げるホルモンを抑制する薬、心拍数をコントロールする薬などを組み合わせておこないます。軽症の場合は1〜2種類の薬で治療可能ですが、症状が進行している場合は複数の薬を組み合わせて治療することが必要です。別の病気が原因で起こる「二次性高血圧」の場合は、元の原因である病気を治療する必要があります。
編集部
最後にメディカルドック読者へのメッセージがあればお願いします。
渡辺先生
高血圧は、もっとも古くに発見された病気の1つです。歴史もあり、かつ身近な病態であるにもかかわらず、本当に適切な血圧の数値についてはいまだに研究が続けられており、その謎は多いといえます。しかし、高血圧がさまざまな病気の原因になることは明確です。高血圧は、直接的に病気に影響を与える因子ではありますが、症状が現れるまでに長い時間を要するため、日常的に血圧を測定し、早期に発見して治療をおこなうことが病気予防に繋がります。
編集部まとめ
高血圧は血管や心臓に長期的な負担をかけ、さまざまな疾患を引き起こす原因となります。定期的な血圧測定と生活習慣の見直しが予防に繋がります。早期発見と治療が健康を守るために重要であるため、高血圧が気になる人は早めに医療機関に相談しましょう。
医院情報

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