内視鏡検査の“見逃し”で大腸がんに… 「内視鏡後発見大腸がん」の原因・予防法を医師が解説!

大腸内視鏡検査後に発生した大腸がんを「内視鏡後発見大腸がん(PCCRC)」と言います。原因の約半数が検査での見逃しとされていますが、一体なぜそのようなことが起きるのでしょうか。防ぐためにはどうしたらいいのかも知っておきたい点です。「名古屋むらもと内視鏡クリニック栄院」の村元先生に解説していただきました。

監修医師:
村元 喬(名古屋むらもと内視鏡クリニック 栄院)
内視鏡後発見大腸がんとは

編集部
内視鏡後発見大腸がんについて教えてください。
村元先生
内視鏡後発見大腸がんとは、大腸内視鏡検査を受けた後、数年以内に見つかる大腸がんのことです。本来なら検査で見つかっているはずの病変が見落とされた、あるいは取り残されたことで、しばらくして進行がんとして発見されるケースを指します。現在、日本でも注目されている医療課題の1つです。
編集部
一般的な大腸がんとの違いはありますか?
村元先生
病気そのものとしては通常の大腸がんと変わりませんが、「本来であれば、予防できたかもしれないがん」という点で大きな違いがあります。特に、早期で見つかれば内視鏡で切除できたのに、そのタイミングを逃してしまい、進行がんとして発見されることが問題視されています。
編集部
内視鏡検査を受けても、がんを見逃すことがあるということでしょうか?
村元先生
基本的には、大腸内視鏡検査を受ければ問題ないと思います。大腸内視鏡検査は多くのポリープや早期がんを正確に発見・治療できる優れた方法です。ただし、大腸内視鏡検査に限らず、全ての検査は100%完璧ではありません。稀に見逃しもあるので、「1回検査を受けて問題なかったから大丈夫」と油断せず、定期的に検査を受け、医師の診断を受けることが大切なのです。
内視鏡後発見大腸がんの原因

編集部
なぜ、内視鏡検査で見逃されることがあるのでしょうか?
村元先生
「ポリープや腫瘍の位置や形が見えにくく、腸のひだの陰などカメラで映しにくい場所にある」「病変が平坦で目立たないタイプだった」「医師の経験や技術によって診断の精度に差がある」などが見逃しの理由として挙げられます。特に小さな病変や色の薄いポリープは、発見が困難です。
編集部
そうしたケースで見逃しが起きるのですね。
村元先生
検査前は下剤を飲んでもらい、腸内を綺麗にしてもらう必要があります。しかし、下剤の処置が不十分だと、病変を見落としてしまう可能性も考えられます。
編集部
ポリープを取り残すこともあるのですか?
村元先生
はい。ポリープを切除したつもりでも、わずかに取り残しがあった場合、それが数年かけてがん化するケースもあります。また、複数のポリープがある中で、一部しか取られておらず、完全に取りきれないことがあるのも事実です。
編集部
がんの進行が早いタイプもあるのでしょうか?
村元先生
一般的に大腸がんはゆっくり進行しますが、中には進行が早い「進行性腺腫」や、がん化しやすい特定のタイプのポリープも存在します。また、体質や生活習慣によってがんの進行速度に個人差があるため、「前回の検査では問題なかったのに、すぐにがんが見つかってしまった」ということもあり得るのです。
編集部
内視鏡検査の技術や精度の問題もあるのでしょうか?
村元先生
たしかに、検査機器の性能や医師の技術は見逃し率に影響するかもしれません。熟練した医師であれば内視鏡の操作がスムーズで、見落としも少なくなります。また、近年はAIによる支援や高解像度の内視鏡が普及しつつあり、これらを活用することで見逃しを減らす努力が進められています。そのため、検査を受ける医療機関選びも重要なポイントになります。
内視鏡後発見大腸がんの予防法

編集部
内視鏡後発見大腸がんを防ぐにはどうすればいいですか?
村元先生
最も大切なのは、定期的に内視鏡検査を受けることです。1回の検査で全ての病変を把握するのは難しいため、前回の検査結果に問題がなくても、数年ごとに検査を受けることが早期発見・予防につながります。また、検査中にポリープを切除した場合は、医師の指示に従って経過観察をおこない、定期的に検査を受けることも重要です。
編集部
検査の質を上げるためにできることはありますか?
村元先生
まず、下剤を飲むといった検査前の処置を正しくおこなうことが大切です。腸内が綺麗でないと、病変を見逃しやすくなります。また、信頼できる医療機関を選ぶこともポイントです。AI内視鏡検査を導入していたり、経験豊富な専門医がいたりする医療機関であれば、検査の精度が高まり、見逃しのリスクを下げることができるでしょう。
編集部
生活習慣の改善も役立ちますか?
村元先生
大腸がんの発症リスクを下げるには、検査だけでなく生活習慣の見直しも効果的です。「食物繊維を多く摂る」「脂身や赤身肉を控える」「適度な運動をする」などが基本です。また、喫煙や過度な飲酒もリスク因子となるため、これらの習慣を避けることが、がん予防につながります。
編集部
内視鏡検査を受けるタイミングはいつがいいですか?
村元先生
一般的には、40歳を過ぎたら定期的な検査が推奨されます。ただし、「家族に大腸がんの人がいる」「過去にポリープが見つかったことがある」「腹部の違和感や便に異常がある」といった場合は、できるだけ早めに検査を受けた方が安心でしょう。不安な場合は、かかりつけ医や消化器内科で相談するのがおすすめです。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
村元先生
一度の検査で安心せず、定期的に内視鏡検査を受け続けることが、病気のリスクを減らす最も効果的な方法です。検査を受ける医療機関を選ぶとき、医師の経歴だけで判断するのは難しい場合もあります。専門医資格の有無も大切ですが、最新の内視鏡機器やAIによる診断支援が導入されている医療機関であれば、より質の高い検査が期待できます。特にAIによる診断支援を取り入れた内視鏡検査は、医師の判断をAIがサポートしてくれるため見落としが少なく、精度が高いとされています。これから大腸内視鏡検査を受ける場合には、「AIの診断支援を取り入れているか」を基準に医療機関を選ぶのも1つだと思います。
編集部まとめ
大腸内視鏡検査後に発見される内視鏡後発見大腸がん(PCCRC)は、見逃しや取り残しによって進行してしまうケースが問題視されているとのことでした。予防するためには1回の検査に安心せず、数年ごとの再検査が不可欠です。また、生活習慣の見直しや信頼できる医療機関の選択も重要です。近年は、AI支援や高精度内視鏡の導入で改善が進んでいます。質の高い検査を受けることで大腸がんの見逃しリスクを下げ、早期発見につなげましょう。
医院情報

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| アクセス | 名古屋市営地下鉄東山線「新栄町駅」 徒歩2分 |
| 診療科目 | 内科、消化器内科、胃腸内科、内視鏡内科、肛門内科 |




