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出産後に「2型糖尿病」になる可能性のある『妊娠糖尿病』 どんな人がなりやすい?【医師解説】

 更新日:2025/09/04

妊娠中の健康管理で気をつけたい「妊娠糖尿病」。じつは、誰でもなる可能性がありますが、特にリスクが高い人には共通の特徴があります。体質や生活習慣、家族歴など、発症しやすいタイプを知っておくことで、早めの対策が可能になります。ゆめが丘内科・糖尿病甲状腺クリニックの原先生に聞きました。

原 洋史

監修医師
原 洋史(ゆめが丘内科・糖尿病甲状腺クリニック)

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横浜市立大学医学部医学科卒業。藤沢市民病院初期臨床研修医、藤沢市民病院糖尿病・内分泌内科、横浜医療センター糖尿病内分泌内科、アストラゼネカ(株)研究開発本部、ノバルティスファーマ(株)グローバル医薬品開発本部、ほしの内科クリニック(非常勤)、藤沢駅前糖尿病・甲状腺クリニック(非常勤)、柏厚生総合病院(非常勤)、瀬谷ふたつ橋病院(非常勤)。日本内科学会 認定内科医・総合内科専門医、日本糖尿病学会 糖尿病専門医、日本糖尿病協会 糖尿病認定医(療養指導医)、日本医師会認定産業医、神奈川県難病指定医。

妊娠糖尿病とは?

妊娠糖尿病とは?

編集部編集部

妊娠糖尿病とは、どういう病気ですか?

原 洋史先生原先生

妊娠糖尿病とは、妊娠中に初めて発見される糖代謝の異常のことをいいます。通常、妊娠すると胎盤から出るホルモンの影響でインスリンの効きが悪くなるため、血糖値が上がりやすくなります。この調整がうまくいかず、高血糖の状態が続くことで、妊娠糖尿病を発症することがあります。

編集部編集部

妊娠糖尿病になると、どんなリスクがあるのでしょうか?

原 洋史先生原先生

妊娠高血圧症候群や難産、帝王切開のリスクが高まります。また母体だけでなく、胎児にとっても巨大児や出生時の低血糖、呼吸障害などのリスクがあります。さらに、将来的に母子ともに2型糖尿病になりやすくなるという長期的なリスクもあります。一般には出産後に血糖値が正常化することが多いのですが、産後も注意が必要になります。

編集部編集部

症状は出るのでしょうか?

原 洋史先生原先生

妊娠糖尿病は初期にはほとんど自覚症状がありません。疲れやすい、のどが渇くなどの症状が出ることもありますが、妊娠に伴う変化と見分けがつきにくいため、気づかれないことが多いのです。そのため妊婦健診でのスクリーニング検査がとても重要になります。

編集部編集部

妊娠糖尿病と通常の糖尿病の違いは何ですか?

原 洋史先生原先生

最大の違いは発症のタイミングです。妊娠糖尿病は、妊娠中に初めて血糖異常が見つかる状態を指し、妊娠前から糖尿病である人は含みません。出産すれば血糖値が正常化する場合もありますが、場合によっては母子ともに2型糖尿病へ移行することもあるため、糖尿病の予備軍と言ってもよいかもしれません。

妊娠糖尿病になりやすいのはどんな人?

妊娠糖尿病になりやすいのはどんな人?

編集部編集部

妊娠糖尿病になりやすい体質などはありますか?

原 洋史先生原先生

遺伝的な要素が大きく、家族に糖尿病の人がいる場合、発症リスクが高まるとされています。また、過去に巨大児を出産した経験がある人や、前回の妊娠で妊娠糖尿病になったことがある人もリスクが高いと言われています。そのほか、肥満傾向の人もなりやすいとされています。

編集部編集部

年齢は関係ありますか?

原 洋史先生原先生

年齢が上がるとともにリスクが高まります。特に妊娠をしたときの年齢が35歳以上の人はリスクが高いことがわかっています。これは加齢とともにインスリンの働きが弱くなり、妊娠中のホルモン変化と重なることで、血糖値のマネジメントが難しくなるためです。

編集部編集部

肥満との関係は?

原 洋史先生原先生

妊娠前から肥満傾向にある人、BMIが25以上の人は妊娠糖尿病のリスクが高まります。なぜなら、体脂肪が多いとインスリンの効きが悪くなり、高血糖を招きやすくなるからです。また、妊娠中に急激に体重が増えた場合も要注意となります。

予防法と治療法

予防法と治療法

編集部編集部

妊娠糖尿病は予防できますか?

原 洋史先生原先生

リスクを減らすことは可能です。特に妊娠前の体重管理や日常的な運動習慣、バランスの取れた食事は非常に重要です。妊娠中も急激な体重増加を防ぐことがポイント。また、妊娠前から健康診断を受けて、普段の血糖値の傾向を知っておくことで、異常が軽度のうちに気づきやすくなるかもしれません。

編集部編集部

もし妊娠糖尿病と診断されたら、どう治療するのですか?

原 洋史先生原先生

食事療法と運動療法が治療の基本です。カロリーや糖質の摂取をコントロールしながら、無理のない範囲で日常生活にウォーキングなどを取り入れます。自己血糖測定やインスリン注射をおこなうこともありますが、経口薬は胎児への影響を考慮して使われません。

編集部編集部

具体的に、どのように食事療法をおこなったらよいのでしょうか?

原 洋史先生原先生

多くの患者さんに推奨しているのが、1日の食事を6回に分けて摂取する分割食です。これは1日の食べる量を変化させず、食事を6回に分けて取るもの。朝昼晩の食事のあと、2時間後にもう一回ずつ、合計6回食事をします。こうすることで血糖値の上昇が穏やかになり、食後の高血糖の改善につながります。

編集部編集部

出産後はどうなりますか?

原 洋史先生原先生

多くの人は出産とともに血糖値が正常に戻りますが、妊娠糖尿病だった女性のなかには、将来的に2型糖尿病を発症する人もいるため、油断は禁物です。出産後も定期的に血糖値のチェックを受け、生活習慣を見直すことが必要です。

編集部編集部

治療中でも健康な赤ちゃんを出産できるのでしょうか?

原 洋史先生原先生

妊娠糖尿病があっても健康な赤ちゃんを産むことは可能です。発見が早く、しっかりと血糖マネジメントができていれば、合併症のリスクを抑えることができます。妊娠前から健康診断などを定期的に受け、健康管理に気を配るようにしましょう。

編集部編集部

最後に、メディカルドック読者へのメッセージがあれば。

原 洋史先生原先生

血糖値が高いかどうかは、自覚症状がほぼないため検査しないとわからないというところがポイントだと思います。そのため医師の指示にしたがって必要な検査を受けましょう。適切な管理ができていれば、赤ちゃんへの影響も最小限にすることができます。また出産後は血糖値が改善することが多いですが、油断せずに定期的な検査をおすすめします。

編集部まとめ

妊娠糖尿病と診断されたら「健康な赤ちゃんを産めないのではないか」と不安になる人もいるかもしれません。しかし医師の指示に従って血糖を調整することで無事に出産することは可能です。まずは早期発見に努めることが大事ですね。

医院情報

ゆめが丘内科・糖尿病甲状腺クリニック

ゆめが丘内科・糖尿病甲状腺クリニック
所在地 〒245-0019 神奈川県横浜市泉区ゆめが丘41-6 KNOCKSゆめが丘1階
アクセス 相模鉄道いずみ野線「ゆめが丘」駅北口より徒歩2分 横浜市営地下鉄ブルーライン「下飯田」駅より徒歩4分
診療科目 内科、糖尿病内科、内分泌内科

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