飛行機で頭や鼻が痛くなる原因はご存じですか? なりやすい人の特徴・対処法も医師が解説!

飛行機に乗ると鼻や頭がズキズキ……。そんな経験はありませんか? これは気圧の変化による耳や副鼻腔のトラブルが原因ですが、ちょっとした工夫で予防や軽減ができるそうです。今回は、飛行機に搭乗した際に起こるトラブルの対処法について、「目黒本町耳鼻咽喉科」の小松﨑先生に解説していただきました。

監修医師:
小松﨑 敏光(目黒本町耳鼻咽喉科)
飛行機で鼻や頭が痛くなるメカニズム

編集部
なぜ、飛行機に乗ると鼻や頭が痛くなるのでしょうか?
小松﨑先生
主な原因は、急激な気圧の変化です。特に、飛行機の離着陸時には気圧が急激に変化し、空気を多く含んでいる副鼻腔や中耳との圧のバランスが崩れます。これにより鼻の奥や額、こめかみ周辺などに圧迫感や痛みが起こるのです。
編集部
具体的には、どのような症状が出ますか?
小松﨑先生
症状には個人差がありますが、頭の片側が激しく痛んだり、目の奥から前頭部にかけての痛みが生じたりします。「何かが突き刺すような、あるいは何かに殴られたような痛み」と表現する人もいます。ただし、症状自体は長く続かず、数分~30分程度で自然に消失することが多い傾向にあります。このような症状は「飛行機頭痛」と呼ばれています。飛行機頭痛は、高度変化によって副鼻腔や血管が影響を受け、急激に頭が痛くなる現象です。
編集部
気圧が変わるだけで、なぜこんなに頭や鼻が痛くなるのですか?
小松﨑先生
体内の空洞は、外の気圧と同じ圧力で保たれる必要がありますが、空気が出入りしにくい状態だと圧力差が残ってしまいます。この圧力差が神経を圧迫したり、粘膜を引き伸ばしたりして痛みを引き起こすのです。健康なときは自然に調整されますが、なんらかの異常によりこの仕組みがうまく働かないと痛みや不快感が出てしまいます。
飛行機で鼻や頭が痛くなりやすい人の特徴

編集部
飛行機で鼻や頭が痛くなりやすい人の特徴はありますか?
小松﨑先生
まず挙げられるのが「鼻づまりのある人」です。アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎があると、空気の通りが悪くなり、気圧の調整がしづらくなります。また、「片頭痛持ちの人」や「もともと気圧変化に敏感な体質の人」も影響を受けやすい傾向があります。加えて、「小さな子ども」や「高齢者」も症状が出やすいため、注意が必要です。
編集部
片頭痛とも関係があるのですね。
小松﨑先生
そもそも片頭痛の発作は、睡眠不足やストレスのほか、気圧の急激な変化でも誘発されることがあります。飛行機が上昇したり、下降したりするときにはまさにそのような変化が起こります。そのため、片頭痛を持っている人は予防薬を持参したり、体調を整えて搭乗したりすることが推奨されます。
編集部
風邪気味のときは悪化しやすいのでしょうか?
小松﨑先生
はい。風邪で鼻の通りが悪くなっていると、圧力差を調整できなくなり、飛行中に副鼻腔や中耳に強い圧がかかることがあります。鼻の奥が腫れていたり、粘膜が過敏になっていたりすることで、ちょっとした気圧変化でも痛みが出やすくなるのです。
編集部
小さい子どもにも症状が出ることもあるのですね。
小松﨑先生
子どもは耳管や副鼻腔の構造が未発達で、気圧の変化に対応しづらいため、痛みや不快感が出やすいのです。また、大人のように「唾を飲み込む」など、自分で耳抜きができなかったり、症状をうまく言葉で伝えられなかったりします。機内で子どもが泣いたり騒いだりするのはそのサインかもしれません。
飛行機で起こる頭痛や鼻の痛みを軽減するコツ・予防法

編集部
飛行機に乗っているときの頭痛や鼻の痛みを防ぐ方法はありますか?
小松﨑先生
一番大事なのは、事前に鼻の通りを確保することです。「搭乗前に市販の点鼻薬を使う」「抗アレルギー薬を服用する」といった準備が効果的です。また、「水分をしっかり取って粘膜を乾燥させない」「耳抜きやあくびをして圧を逃がす」といった簡単な方法でも予防効果があります。
編集部
離着陸時に機内でできる対策はありますか?
小松﨑先生
ガムを噛んだり、飲み物をこまめに飲んだりすることで唾液の分泌が促され、耳管が開きやすくなります。耳管が開くとそのタイミングで、耳の中にたまった空気を逃がしたり、外の気圧とバランスをとったりすることができるようになります。また、赤ちゃんには哺乳瓶やおしゃぶりを使うのが有効です。さらに、姿勢をまっすぐに保ち、深呼吸を意識することで、副鼻腔や中耳への負担を軽減できます。
編集部
薬で予防することも可能ですか?
小松﨑先生
鼻炎や副鼻腔炎がある人は、事前に抗アレルギー薬や点鼻ステロイドなど、鼻づまりを抑える薬を使うことで症状を軽減できます。また、片頭痛の既往がある人は、フライト前に予防目的で頭痛薬を飲むことで発作を防げる場合もあります。
編集部
症状が強いときは受診した方がいいのでしょうか?
小松﨑先生
はい。フライトのたびに強い頭痛や鼻の痛みが出る場合、慢性副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎などの持病が関係している可能性があります。耳鼻科での診察を受けることで、根本的な治療ができることもあるので、単なる気圧の影響と思わず、一度専門医に相談することをおすすめします。
編集部
症状が出ないようにするには、気をつけなければならないことがあるのですね。
小松﨑先生
一度症状が出たことがある人は、つらい記憶が強く残っているかもしれません。しかし現在では、気圧の変化がそこまで大きくない新型の飛行機もあります。多くの航空会社がWEBサイトなどで使用する機体を公表しているので、事前に機体を選べる場合はリスクを減らせるかもしれませんね。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
小松﨑先生
旅行や出張中に体調を崩すのは本当に残念ですし、ご本人にとってもつらいことだと思います。飛行機頭痛は気圧変化による不調の1つですが、じつは耳や鼻のトラブルも関係しています。もし症状に悩んでいたら我慢せず、早めに耳鼻科を受診してください。
編集部まとめ
飛行機での頭痛は見過ごされがちですが、じつは耳鼻科で対応できるケースもあるとのことでした。症状に気づいたら、ぜひ医師に相談してみましょう。
医院情報

| 所在地 | 〒152-0002 東京都目黒区目黒本町2-5-4 ウェルスクエアプラザ目黒本町3F |
| アクセス | 東急東横線「学芸大学駅」 徒歩13分 |
| 診療科目 | 耳鼻咽喉科、アレルギー科 |




