「2型糖尿病」の予防に“NGな行動”を医師が解説 食事でやりがちな3つの要注意行動とは

生活習慣病の一つである「糖尿病」は、食生活の乱れや運動不足、ストレスなど、私たちの日々の行動が関わっていると言われています。そこで、糖尿病やその治療法、予防のためにできることなどを、神楽坂やまもと内科クリニックの山本剛史先生に聞きました。
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監修医師:
山本 剛史(神楽坂やまもと内科クリニック)
糖尿病ってどんな病気?

編集部
糖尿病とはどのような病気ですか?
山本先生
糖尿病は、血液中のブドウ糖(血糖)が慢性的に高くなる病気です。通常、血糖は「インスリン」というホルモンの働きでコントロールされていますが、これがうまく働かなくなると血糖値が高い状態が続き、さまざまな合併症を引き起こす原因になります。
編集部
糖尿病にも種類があると聞きました。
山本先生
はい。主に「1型糖尿病」と「2型糖尿病」があります。1型糖尿病は、すい臓のインスリンを作る細胞が破壊されて起こるもので、子どもや若い人にも見られます。一方で、2型糖尿病はインスリンの働きが弱くなることで発症するもので、生活習慣が関係していると言われています。
編集部
どうして血糖値が高くなってしまうのでしょうか?
山本先生
インスリンの分泌が不十分だったり、うまく作用しなくなったりすることで、体の中で糖がうまく使われず、血中に残ってしまうからです。2型糖尿病はとくに、肥満や運動不足、加齢などの影響でインスリンの効きが悪くなる「インスリン抵抗性」が関係しています。
編集部
治療すれば治る病気なのですか?
山本先生
糖尿病は、適切な治療と生活習慣の改善でコントロールできる病気ですが、現時点では「 完治」する病気ではありません。一度発症しても、血糖値を良好に保つことで、合併症を防ぎながら健康な日常生活を送ることができますが、やはり予防が非常に大事だと言われています。
医師が解説 糖尿病を遠ざける生活習慣

編集部
糖尿病は予防できるのですか?
山本先生
そうですね。1型糖尿病を予防することは難しいのですが、2型糖尿病は日々の生活習慣の見直しによって予防できる可能性の高い病気です。
編集部
具体的にどんな生活習慣に気をつけるべきでしょうか?
山本先生
食事や睡眠、運動、ストレスなど、いわゆる基本的な「健康的な生活」を意識することがとても大事です。ほかには、健康診断などで定期的に健康状態をチェックし、少しでも異常があれば、先延ばしせず医療機関を受診することを心がけましょう。
編集部
たとえば食生活では、どのようなことに気をつけたらよいのですか?
山本先生
栄養バランスや食べる量を意識することはもちろんのこと、食べ方も大事なので、たとえば朝食抜きや早食いなどの生活習慣には注意してもらいたいです。
編集部
朝食を抜くとなぜよくないのですか?
山本先生
「朝食を抜く」と昼食後の血糖値が急上昇しやすくなるのです。また、空腹時間が長くなることでインスリンの働きが乱れ、血糖コントロールに悪影響を与えることがあります。また、朝食を食べるとGLP-1というホルモンが一日を通して分泌されやすくなります。GLP-1は、血糖値が高い場合にインスリンを分泌させる働きがありますので、食後の血糖値が下がりやすくなるのです。
編集部
では、早食いがよくないのはなぜですか?
山本先生
「食べるスピードが速い」と、脳の満腹中枢が満腹感を感じる前に多くの量を食べてしまいやすく、結果的に「食べすぎ」につながるからです。食べ過ぎると血糖値が急上昇し、すい臓から多量のインスリンが分泌されます。こうした状態が繰り返されると、次第にすい臓は疲弊し、インスリンの分泌が悪くなり、糖尿病のリスクが高まってしまいます。とくに日本人は、すい臓から分泌されるインスリン量が欧米人よりも少ないと言われているため、早食いをすると、そのスピードに応じたインスリン分泌が得られないことが多いのです。
編集部
そうなのですね。
山本先生
さらに、「よく噛まず」に早く食べると、消化吸収も乱れやすくなり、血糖値の急激な変動を引き起こすことも考えられます。血糖値の安定のためには、ゆっくり噛んで時間をかけて食べることが大切です。ゆっくりよく噛んで食べることで満腹中枢が刺激され、過剰な食事摂取を抑えてくれます。
もっと知りたい糖尿病を予防するためのOK・NG行動

編集部
糖尿病予防のための「OK行動」にはどんなものがありますか?
山本先生
運動習慣を身につけることが非常に重要です。特に、筋トレのような無酸素運動とウォーキングなどの有酸素運動をバランスよく組み合わせることで、より高い効果が期待できます。忙しくて運動の時間が取れない人は、まず「座っている時間を減らすこと」から始めてみてください。座っている時間が長いほど、糖尿病やがんなどのリスクが高まることがわかっています。こまめに立ち上がる、少しでも歩くといった意識だけでも、糖尿病の予防につながります。
編集部
では逆に、気をつけた方がよい「NG行動」とは?
山本先生
まず注意してもらいたいのは、清涼飲料水やエナジードリンクなどの「甘い飲み物」です。こうした液体は、固形の甘い食品よりも体内への吸収が早く、そのぶん血糖値も急激に上昇しやすくなります。ブドウ糖などの単純糖質は体重増加につながりやすいため、血糖値を下げるインスリンの働きを弱めてしまいます。また「睡眠不足」も要注意です。眠りが不十分だと、「アドレナリン」に代表されるカテコラミン系ホルモンが増加し、翌日の血糖値を押し上げる要因になります。ストレスがかかると分泌される「コルチゾール」も血糖値を上げる働きがあるため、ストレスが多い状態も血糖コントロールの観点では避けたい行動と言えるでしょう。
編集部
では、健康診断で「血糖値が高め」などと言われた場合、どうすればよいですか?
山本先生
まずはお近くの専門医に相談しましょう。糖尿病ではなくても「境界型糖尿病」と呼ばれる「糖尿病予備群」の場合もあります。この場合、糖尿病ではありませんが、糖尿病や動脈硬化のリスクが高い状態ですので、医師の指示に従い、生活習慣の改善から始めてください。
編集部
最後にメディカルドック読者へのメッセージをお願いします。
山本先生
生活習慣に気をつけることで、糖尿病の発症や進行を防ぐことは十分に可能です。ただし、すべてを一度に完璧にやろうとすると負担が大きく、継続が難しくなってしまいます。無理なく、できることから少しずつ取り組むのがポイントです。日頃から意識していれば、たまには羽目を外しても問題ありません。大切なのは、無理なく続けることです。また、「体重を減らさなければ」と思い詰めてしまうと、かえってそれがストレスになることもあります。最近では、肥満に対する治療薬も承認されていますので、体重管理に悩んでいる人は、お近くの医療機関に相談してみるのも一つの選択肢です。
編集部まとめ
糖尿病は、誰にとっても身近な疾患でありながら、日々の行動次第でリスクを減らすことが可能です。とくに2型糖尿病は、早めに生活習慣を見直すことで、発症そのものを防ぐことが期待できます。「朝食を抜かない」「ゆっくりよく噛んで食べる」「睡眠をきちんととる」といった、小さな工夫が大きな効果をもたらします。まずはできることから始めてみてはいかがでしょうか。
医院情報

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| アクセス | 「飯田橋」駅B3出口より徒歩2分 |
| 診療科目 | 内科、糖尿病内科、内分泌内科 |




