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内臓脂肪が「糖尿病」を招く… 肥満を放置するリスクと対処法を医師が解説!

 更新日:2025/09/09

食べすぎや肥満など、食生活と深く関わりを持つ「2型糖尿病」。特に肥満との関係は深く、糖尿病を発症したらまずは厳しい体重コントロールが課されます。今回は糖尿病と肥満の関係性や糖尿病のリスクを改善する方法を、「いんざい糖尿病・甲状腺クリニック」の髙橋先生に解説していただきました。

髙橋 紘

監修医師
髙橋 紘(いんざい糖尿病・甲状腺クリニック)

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埼玉医科大学医学部医学科卒業、東京慈恵会医科大学大学院医学研究科修了。東京慈恵会医科大学附属病院、富士市立中央病院などで経験を積む。2024年、千葉県印西市に「いんざい糖尿病・甲状腺クリニック」を開院。医学博士。日本内科学会総合内科専門医、日本糖尿病学会糖尿病専門医・指導医、日本内分泌学会内分泌代謝科専門医・指導医、日本肥満学会肥満症専門医。難病指定医、小児慢性特定疾病指定医。

肥満が糖尿病を引き起こすメカニズム

肥満が糖尿病を引き起こすメカニズム

編集部編集部

そもそも、なぜ肥満が糖尿病を引き起こすのでしょうか?

髙橋 紘先生髙橋先生

肥満になると内臓脂肪が増加し、インスリンの働きが妨げられる「インスリン抵抗性」が生じやすくなります。この状態が長引くと血糖値を下げる力が弱まり、2型糖尿病の発症につながりやすくなるのです。

編集部編集部

内臓脂肪が増えるとインスリンが効きにくくなるのはなぜですか?

髙橋 紘先生髙橋先生

内臓脂肪は肥満でなければ特に問題ないのですが、内臓脂肪が増えすぎると炎症性物質や「アディポカイン」というホルモンが分泌され、これらがインスリンの作用を阻害します。また、血中の脂肪酸も増加して肝臓や筋肉においてインスリンの効きが悪くなり、血糖コントロールが困難になるのです。

編集部編集部

インスリンがきちんと分泌されていても、肥満だと糖尿病になりやすいということですね。

髙橋 紘先生髙橋先生

はい。肥満によって内臓脂肪が蓄積されることでインスリンの効き目が弱まると、体はさらに多くのインスリンを分泌します。しかし、その状態が長期間続くと、インスリンを分泌する膵臓のβ細胞が疲弊してインスリンの分泌量が不足し、結果として糖尿病に進行してしまうのです。

編集部編集部

肥満には内臓脂肪型や皮下脂肪型などありますが、特にリスクが高い肥満のタイプは「内臓脂肪型」ということですね。

髙橋 紘先生髙橋先生

そのとおりです。内臓脂肪型肥満、いわゆる「リンゴ型肥満」は糖尿病との強い関連があります。腹囲が大きい人は、見た目以上に健康障害が進んでいる可能性があるので、注意が必要です。また、内臓脂肪型は糖尿病だけでなく、高血圧や脂質異常症、脂肪肝などの要因にもなります。

肥満の人が糖尿病になるリスク

肥満の人が糖尿病になるリスク

編集部編集部

肥満で糖尿病を発症した場合、どんな健康リスクがありますか?

髙橋 紘先生髙橋先生

心筋梗塞や脳卒中といった、動脈硬化性疾患のリスクが上がります。また、腎臓病や視力障害、神経障害など、糖尿病特有の合併症も発症しやすくなります。症状がなくても進行していることがあるので、定期的に検査を受けましょう。

編集部編集部

肥満の場合、糖尿病の治療は難しくなるのでしょうか?

髙橋 紘先生髙橋先生

肥満がある人では、食事や運動をはじめとする生活習慣の改善がより厳格に求められます。しかし、それを継続することは簡単ではなく、体重管理が難航することで治療が複雑になる傾向があります。その反面、食事と運動を頑張ることで内臓脂肪を減らして体重を減らすことができれば、血糖コントロールは改善しやすくなります。

編集部編集部

糖尿病と肥満の組み合わせは、死亡率にも影響しますか?

髙橋 紘先生髙橋先生

糖尿病単独と比べて、肥満が併存すると心血管疾患や腎障害の進行が早まり、死亡率が高まることがわかっています。そのため、早期の介入が非常に重要です。

編集部編集部

ほかに、肥満と糖尿病が重なることで生じるリスクには、どのようなものがありますか?

髙橋 紘先生髙橋先生

メンタルヘルスに影響を与えることがあります。そもそも糖尿病と肥満は、どちらもうつ症状や自己肯定感の低下と深い関連があることも判明しています。実際に、うつ病などメンタルヘルスの問題が、糖尿病の危険因子になることが研究で報告されています。また、血糖管理が上手くいかないことがストレスになり、うつ症状が強くなって治療への意欲が低下するという悪循環が起きることもあります。

肥満の人が糖尿病を予防するために日常でできること

肥満の人が糖尿病を予防するために日常でできること

編集部編集部

肥満の人が糖尿病を予防するために、日常生活でできることはなんですか?

髙橋 紘先生髙橋先生

まずは体重管理が基本です。1日の摂取カロリーを見直し、適度な運動を継続することで、インスリンの働きを高め、糖尿病の予防につなげることができます。

編集部編集部

具体的には、どのような食事がいいのでしょうか?

髙橋 紘先生髙橋先生

野菜や食物繊維を多く取り、血糖値の急上昇を抑える食事を意識しましょう。炭水化物のドカ食いや糖分の多い飲料、お菓子などの間食を控える」「野菜から食べる(ベジファースト)」ということが大切です。また、「1日1食ではなくバランスのとれた食生活を心がける」「食後すぐに横にならない」といった対策も重要です。

編集部編集部

どのような運動で、糖尿病の予防効果が期待できるのでしょうか?

髙橋 紘先生髙橋先生

週に150分程度の中強度運動、具体的には早歩きや軽いジョギングなどが推奨されています。こうした運動を継続することでインスリン感受性が改善され、予防効果を得ることができます。高度肥満の人は膝への負担を考慮して、プールでのウォーキングもおすすめです。

編集部編集部

そのほか、生活習慣を見直すうえでの注意点はありますか?

髙橋 紘先生髙橋先生

無理な食事制限や過度な運動は、逆効果になることもあります。ストレスを溜めずに、継続できるレベルで生活習慣の改善を心がけることが、最も効果的な予防策です。ただし、食事療法と運動療法だけでの血糖コントロールが難しい場合は、薬物療法を用いることもあります。糖尿病治療が心配な肥満の人は、早めに医師に相談し、適切な対応をとりましょう。

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

髙橋 紘先生髙橋先生

近年、日本における糖尿病の患者さんは、肥満傾向が進んでいます。最も大切なのは食事療法や運動療法ですが、重要なのは短距離走のように、瞬発的に取り組むのではなく、マラソンのように生涯に渡り腰を据えて長く取り組むことです。治療にメリハリをつけ、モチベーションを高く維持しながら実践するようにしましょう。また、最近は高血圧や脂質異常症などの健康障害を伴う肥満症の人を対象に、肥満症治療薬での治療が“保険診療”で使用可能になりました。現在はまだ治療をおこなう医療機関の数は少ないものの、当院のように肥満症治療薬の処方が保険で処方できるところもあります。肥満症治療薬を希望する人や「糖尿病が気になる」という肥満の人は、一度相談してみることをおすすめします。

編集部まとめ

糖尿病と肥満は深く関係し、予防には健康的な生活習慣が不可欠です。バランスのとれた食事、適度な運動、ストレス管理を意識し、未来の健康を守りましょう。日々の積み重ねが、より良い人生へとつながります。

医院情報

いんざい糖尿病・甲状腺クリニック

いんざい糖尿病・甲状腺クリニック
所在地 〒270-1334 千葉県印西市西の原5-12-1 印西医療クリニックビル2F
アクセス 北総鉄道・京成電鉄「千葉ニュータウン中央駅」 車で9分
診療科目 内科、糖尿病内科、内分泌内科

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