「下肢静脈瘤」の3つの症状はご存じですか? 放置リスク・タイプ別の治療法も医師が解説!

下肢静脈瘤は治療で改善することができるものの、下肢静脈瘤のタイプによって方法が変わることには注意が必要です。「自分のタイプは?」「どの治療法を選べばいいの?」など、判断基準が気になるところです。下肢静脈瘤のタイプ別の治療法について、「相模原町田血管外科クリニック」の大久保先生に解説していただきました。

監修医師:
大久保 博世(相模原町田血管外科クリニック)
下肢静脈瘤とは

編集部
まず、下肢静脈瘤について教えてください。
大久保先生
下肢静脈瘤は、足の静脈が拡張してコブのように浮き出てしまう疾患です。特にふくらはぎや太ももの表面に、青紫色の血管が蛇行して見えるのが特徴です。
編集部
下肢静脈瘤の原因はなんですか?
大久保先生
- 長時間の立ち仕事や座り仕事
- 妊娠や出産
- 加齢
- 遺伝的要因
編集部
どのような症状がみられるのですか?
大久保先生
- 足のだるさや重さ
- 足のむくみ
- 夜間のこむら返り
編集部
下肢静脈瘤を放置すると、どうなるのでしょうか?
大久保先生
「足に湿疹ができやすくなる」「かゆみなどの症状がみられる」「足にただれや潰瘍ができる」「足のケガが治りにくくなる」「色素沈着する」などの症状がみられるようになります。
下肢静脈瘤のタイプ分け

編集部
下肢静脈瘤には、どのようなタイプがあるのですか?
大久保先生
下肢静脈瘤は、どの部分に静脈の拡張や膨らみができるかによって、いくつかの種類に分けられます。まず、最も一般的なのが「伏在静脈瘤」です。太ももからふくらはぎの皮膚直下にある伏在静脈に発生するタイプで、下肢静脈瘤のうち7~8割は伏在静脈瘤だとされています。
編集部
そのほかには、どのようなタイプがあるのですか?
大久保先生
伏在静脈から枝分かれした静脈が膨らむ「側枝静脈瘤」というタイプもあります。また、皮膚の上から細く青い血管が透けて見える「網目状静脈瘤」という状態もあります。網目状静脈瘤の場合、皮下の浅い部分にある細い静脈が拡張しているように見えます。
編集部
タイプによって、症状の出方も違うのですね。
大久保先生
そうですね。そのほかにも「クモの巣状静脈瘤」という網目状静脈瘤よりさらに浅い部分にある真皮内静脈が拡張するタイプもあります。クモの巣状静脈瘤の場合、とても細い血管が放射状に広がって拡張するため、皮膚の上からクモの巣のように透けて見えます。
編集部
どのタイプかによって、治療法も異なるのですか?
大久保先生
はい。下肢静脈瘤の主な治療には「下肢静脈瘤血管内焼灼術」「ストリッピング手術」「血管内塞栓術」「硬化療法」などいくつか種類があり、それぞれにメリットやデメリットがあります。そのため、患者さんの状態やご希望に合わせて治療法を選択する必要があります。
下肢静脈瘤のタイプ別の治療法

編集部
まず、伏在静脈瘤はどのように治療するのですか?
大久保先生
現在では、レーザー治療・高周波治療などによる下肢静脈瘤血管内焼灼術が主流です。静脈瘤ができた血管内にカテーテルを通して、レーザーや高周波で血管内側から焼灼して根治を目指します。切開の必要がなく、痛みや術後の出血を起こす可能性もほとんどありません。体への負担も少なく安全で、傷跡もほとんど残らないため、現在の下肢静脈瘤治療ではこの手法が主流となっています。
編集部
ほかにも治療法はありますか?
大久保先生
皮膚を切開してストリッパーという特殊なワイヤーを使い、弁不全を起こしている静脈を抜去するストリッピング手術をおこなうこともあります。ただし手術後、約10%の人に神経障害がみられることもあるため、現在の主たる治療法は血管内焼灼術にシフトしています。
編集部
そのほかには、どのような治療法がありますか?
大久保先生
膨らんだ静脈に細いカテーテルを通して硬化剤という薬剤を注入し、血管を塞ぐ血管内塞栓術もあります。メスを使わず傷跡が小さいというメリットがありますが、しばしば血栓ができたり、化学性の静脈炎が起きたりといったリスクがあります。
編集部
そのほかのタイプについては、どのような治療をおこなうのですか?
大久保先生
側枝静脈瘤の場合には、症状の程度によって治療法が変わります。無症状の場合は経過観察をしたり、弾性ストッキングを用いた圧迫療法をおこなったりします。ただし、症状が強く見た目も気になる場合は、硬化療法がおこなわれます。
編集部
網目状静脈瘤やクモの巣状静脈瘤についてはいかがでしょうか?
大久保先生
症状が強かったり、「見た目が気になる」など美容面での悩みを抱えていたりする場合には硬化療法を検討します。
編集部
タイプによって様々な治療法を検討するのですね。
大久保先生
現在では、下肢静脈瘤の状態、進行状況、症状、ライフスタイルなどを考慮して、いくつかの治療法を適切に組み合わせることで、より効果的に治す方法が一般的です。例えば、血管内焼灼術をおこなう場合でも、同時に何カ所か皮膚を切開して静脈瘤を切除する医療機関もあります。より効果的に下肢静脈瘤を治療できるようになり、根治を期待することができるので、詳しくは医師にご相談ください。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
大久保先生
下肢静脈瘤は、100年以上前から血管外科が治療をすることが一般的でした。現在では、ほかの科目の医師が治療をするケースも増えてきましたが、注意すべきなのは正しく治療をおこなわないと再発のリスクが高いという点です。下肢静脈瘤の治療には専門的な知識や技術が必要となるため、血管外科の医師による治療を受けることが再発予防につながります。ぜひ、信頼のおける血管外科医による治療を受けてほしいと思います。
編集部まとめ
下肢静脈瘤は命に関わる疾患ではありませんが、足のだるさや重さなどの症状がみられたり、美容面での悩みが生じたりすることもあります。現在、下肢静脈瘤の治療を検討している人もいるかもしれませんが、その際には下肢静脈瘤のタイプをしっかり見極め、適切な治療法を提案してくれる医師を選びましょう。
医院情報

| 所在地 | 〒252-0303 神奈川県相模原市南区相模大野3-15-22 ロコス相模大野B棟2F |
| アクセス | 小田急線「相模大野駅」 徒歩9分 |
| 診療科目 | 内科、外科、血管外科 |




