「子宮頸がん」の前触れとなる状態とは? 「子宮頸部異形成」の原因・治療法を医師が解説!

子宮頸がんの前段階として表れる「子宮頸部異形成」という状態をご存じでしょうか。がんではないものの、放置するとがん化する可能性もあるため、適切な対応が必要とされます。そこで今回は、子宮頸部異形成について「もぐさ園三沢台診療所」の戸澤先生に解説していただきました。

監修医師:
戸澤 晃子(もぐさ園三沢台診療所)
子宮頸部異形成とは

編集部
まず、子宮頸がんについて教えてください。
戸澤先生
子宮頸がんは、子宮の入口にあたる子宮頸部にできるがんです。若い世代の女性に多くみられ、初期にはほとんど自覚症状がないため、定期的な検診が特に重要とされています。
編集部
検診でよく聞く子宮頸部異形成とは、どのような状態を指すのでしょうか?
戸澤先生
子宮頸部異形成とは、子宮頸部の細胞が正常な状態から少しずつ変化し、がんに向かって進行する前段階のことです。がんそのものではありませんが、放置すると子宮頸がんに進行する可能性があるため、定期的な検査や経過観察が必要になります。
編集部
子宮頸部異形成の原因はなんですか?
戸澤先生
一番大きな要因は、HPV(ヒトパピローマウイルス)の感染です。HPVは性交渉によって感染することが多く、感染自体は特別なことではありませんが、持続感染すると細胞の異形成を引き起こす可能性があります。
編集部
HPVは誰でも感染する可能性があるのでしょうか?
戸澤先生
HPVは珍しいウイルスではなく、性行為を経験したことがある人の8割以上が生涯のうち一度は感染すると言われています。ほとんどの場合は自然に排除されますが、一部の人ではウイルスが体内に残り、異形成の原因になるのです。HPVそのものにネガティブなイメージを持たないでほしいですね。
子宮頸部異形成の治療法

編集部
異形成には段階があると聞きました。
戸澤先生
異形成は、軽度・中等度・高度の3段階に分類されます。軽度の場合は経過観察で自然に治ることが多い一方、中等度の一部と高度の場合はがん化のリスクが高くなります。そのため、蒸散術や円錐切除術などの手術が検討されることもあります。
編集部
全ての異形成が治療対象になるわけではないのですね。
戸澤先生
そのとおりです。特に若年層での軽度異形成は、自分の免疫力で治癒していくケースが多いため、多くの場合は2〜3年で自然に消退すると言われています。定期的な検査を通じて、進行していないかを慎重に見守ることが重要です。
編集部
子宮頸部異形成が進行すると、どのくらいの確率でがん化するのですか?
戸澤先生
異形成の程度によって差があります。例えば、軽度異形成は90%が正常に戻りますが、高度異形成だと20%くらいの人が、数年でがん化すると言われています。そのため、早めに治療することが多いですね。
編集部
治療が必要と判断された場合、どのような治療をするのでしょうか?
戸澤先生
病変部分を焼き飛ばす「レーザー蒸散術」や子宮の入り口を円錐状に切り取る「子宮頸部円錐切除術」という手術があります。医療機関によって日帰りだったり、入院が必要だったりしますが、子宮を残したまま治療ができる点が特徴です。
子宮頸部異形成の治療で不安にならないためには

編集部
手術をしても出産できるということでしょうか?
戸澤先生
はい。レーザー蒸散術は、出産に関するリスクがほとんどありません。その一方、円錐切除をおこなった場合は、早産のリスクがやや高まると言われていますが、全ての人に影響が出るわけではなく、むしろ通常と変わらない妊娠や出産が可能なケースが多いですね。もちろん、異変に早期に気づけるよう、産婦人科でしっかりと経過をみていくことが大切です。
編集部
頸部異形成と診断されると不安になります……。どのような心構えで向き合えばいいですか?
戸澤先生
「異形成=がん」と思ってしまう人も多いのですが、あくまでも「がんの前段階」であり、適切に対応することでがん化を防げる状態です。焦らずに医師と相談しながら、定期的に検査を受けていくことが大切です。
編集部
子宮頸がんの予防のためにできることはありますか?
戸澤先生
HPVワクチンの接種は、高い予防効果があります。さらに、定期的な子宮頸がん検診を受けることで、異形成を早期に見つけることができます。日本のがん検診で、唯一20歳以上を対象にしているのが子宮がん検診です。20歳を過ぎたら検診を受けるようにしましょう。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
戸澤先生
子宮頸がんの予防には、第一段階としてのワクチン接種、第二段階としての定期的な検診の両方が重要です。異形成はほとんどの場合で治療可能とはいえ、進行度によっては手術が必要になることもあり、出産への影響がないとは言い切れません。しかし、適切にワクチンを接種することで、異形成の発症自体を防げる可能性が高まります。子宮頸がんを防ぐためにも、この2つの予防をぜひ意識していただきたいと思います。
編集部まとめ
子宮頸部異形成は、「がんの手前の状態」として見過ごせない病変ですが、正しい検診と経過観察によって多くの場合がん化を防ぐことができます。また、HPVワクチン接種や定期的な検診などによる予防の重要性を改めて認識することが求められます。将来の健康のためにも、今からできることに目を向けていきましょう。
医院情報

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| アクセス | 京王線「百草園駅」 徒歩10分 |
| 診療科目 | 内科、婦人科、小児科、皮膚科、外科 |



