「大腸カメラの前日」の食事で気をつけることをご存じですか? 当日・後日の注意事項を併せて医師が解説

大腸がん検診は、「便潜血検査」と「大腸カメラ」を中心におこなわれます。中でも、大腸カメラはがんやポリープをその場で発見・切除できる非常に有用な検査です。実際の検査の流れや前後の注意点をあらかじめ知っておくことで、安心して臨むことができるのではないでしょうか。そこで今回は、大腸がん検診の検査項目や流れ、前日・当日・後日の注意事項について、センター南消化器内科・内視鏡クリニック院長の中村大樹先生に詳しく解説していただきました。

監修医師:
中村 大樹(センター南消化器内科・内視鏡クリニック)
大腸がん検診の方法

編集部
はじめに大腸がん検診の検査項目について教えてください。
中村先生
日本の大腸がん検診では、主に「便潜血検査」と「大腸内視鏡検査(大腸カメラ)」の2つがおこなわれています。便潜血検査は、便に微量の血液が含まれていないかを調べるもので、比較的簡易に実施できる検査です。一方、欧米では便のDNAを調べる検査も導入されていますが、費用面のハードルが高く、まだ広く普及していません。また、血液検査による腫瘍マーカーのチェックもありますが、進行がんでも異常値が出ないケースがあるため、信頼性には限界があります。
編集部
便潜血検査は必ずおこなわなくてはならないのでしょうか?
中村先生
気になる症状がある場合は、便潜血検査を実施せずに内視鏡検査を受けるというのも良いかもしれません。ただし、保険適用で大腸カメラを受けられる人は症状のある人に限られるため、場合によっては自費で受ける必要があります。
編集部
大腸カメラ(大腸内視鏡検査)が推奨される理由を教えてください。
中村先生
大腸カメラは、がんやポリープなどの病変を直接観察できる検査であり、同時にその場でポリープを切除することも可能です。便潜血検査では反応が出ない小さな病変も発見できるため、精度が非常に高く予防的な意味でも非常に有効な検査です。一度しっかりと大腸カメラを受けておくことで、その後のリスク管理にもつながります。
大腸カメラの流れと注意事項

編集部
大腸カメラをおこなう前日に注意すべきことはありますか?
中村先生
検査前日は、腸内をきれいにするために消化のよい食事をとっていただくことが大切です。具体的には、海藻類やきのこ、野菜、こんにゃくなど繊維質の多い食材や脂っこいものは避け、うどんやお粥などを食べるようにしましょう。特に便秘傾向のある方では、前日だけでは不十分な場合もあり、数日前から便通を整えるための下剤を服用いただくケースもあります。
編集部
大腸カメラをおこなう当日の流れについて教えてください。
中村先生
当日は、朝から下剤を服用して腸を完全に空にします。服用の方法は医療機関によって異なりますが、一般的にはご自宅で1.5〜2リットルの下剤を3〜4時間かけてゆっくり飲んでいただきます。便の状態が透明になるまでしっかり出すことが重要です。検査当日は病院に来院後、体調や便の状態の最終確認をおこない、必要に応じて追加の処置をしてから検査を実施します。
編集部
大腸カメラをおこなう当日に注意すべきことはありますか?
中村先生
下剤の効果を確実にするため、指示された水分摂取と服薬スケジュールを守ることが大切です。また、血液をサラサラにする薬や糖尿病の薬を服用している方は、検査前に中止が必要な場合がありますので、必ず事前に医師の指示を受けてください。検査では鎮静剤を使用することもあるため、当日の運転は控えていただき、ご家族の付き添いなどをお願いするケースもあります。
編集部
大腸カメラをおこなった翌日以降は、すぐにいつも通りの生活が可能ですか?
中村先生
ポリープを切除しなかった場合は、検査後2〜3時間程度で食事を再開でき、翌日からは通常通りの生活が可能です。一方、ポリープを切除した場合には注意が必要です。検査後1週間ほどは、出血リスクを避けるために飲酒や激しい運動、旅行などは控えることが推奨されます。また、万一のために体調に変化があった際には、すぐに医療機関に相談できる環境を整えておくと安心です。
検査結果とその後の流れ

編集部
大腸カメラ当日に検査結果はわかるのでしょうか?
中村先生
ポリープを切除しない場合は、カメラでの観察結果をその場で説明できるため、当日に結果がわかります。ただし、ポリープを切除した場合には、切除した組織の「病理検査」が必要です。この検査では、がん細胞の有無や性質などを詳しく調べるため、結果が出るまでには通常2週間ほどかかります。多くの医療機関では、再度来院して直接説明を受ける流れとなっています。
編集部
もし検査で大腸がんが見つかった場合、追加の検査が必要になるのですか?
中村先生
病理検査の結果、ポリープががんだった場合でも、それが「早期がん」であり、かつ浅い部分までしか浸潤していない場合は、切除だけで治療が完結することが多いですね。しかし、がんが深くまで及んでいたり、リンパ管や血管への浸潤が疑われたりする場合は、追加でCTなどの画像検査が必要になります。必要に応じて大学病院などの専門施設での治療が検討されることもあります。最終的には、病理検査の内容と主治医の判断に基づいて決定されます。
編集部
大腸がんがなかった場合でも、毎年検査を受ける必要がありますか?
中村先生
一度大腸カメラを受けて異常がなかった場合でも、翌年の便潜血検査で陽性となった場合には、再度大腸カメラを受けていただくのが安全です。進行が早いタイプのがんもあるため、念のための確認が大切です。ただし、2年続けて検査を受けて問題がなかった場合は、その後は3年程度間隔を空けての検査でよいとされています。また、ポリープを切除した方については、その数や大きさ、組織の状態に応じて1年後や3年後など、個別に検査のタイミングが調整されます。医師の指示に従い、定期的なフォローアップを続けていただくことが重要です。
編集部まとめ
大腸がん検診は、便潜血検査や内視鏡検査などを通じて、がんの早期発見につながる重要な機会です。とくに内視鏡検査では、病変の発見だけでなくその場での治療が可能なことも多く、非常に有用な検査といえます。検査前後の注意点を理解し、適切な準備をおこなうことで、より安全で確実な検診が実現できます。本稿が読者の皆様にとって、大腸がん検診を前向きに受けてみようと思えるきっかけとなりましたら幸いです。
医院情報
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診療科目 | 内科、消化器内科 |