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「卵子凍結」をするなら何歳がいい? 妊娠する確率や費用は? 卵子凍結に関する疑問を医師が解決!

 公開日:2025/06/21

将来的な妊娠に備えて、卵子を凍らせて眠らせておく「卵子凍結」。ライフスタイルや価値観の多様化に伴い、卵子凍結を検討する女性も増えています。今回は、卵子凍結にまつわる代表的な質問をピックアップ。「田中レディスクリニック渋谷」の田中先生に解説していただきました。

田中 つるぎ

監修医師
田中 つるぎ(田中レディスクリニック渋谷)

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群馬大学医学部医学科卒業、東京大学大学院医学系研究科修了。関東労災病院、東京大学医学部附属病院、山梨大学医学部附属病院、国立国際医療研究センター病院、三井記念病院などで経験を積む。2024年より、東京都渋谷区に位置する「田中レディスクリニック渋谷」に勤務。日本産科婦人科学会産婦人科専門医、日本産科婦人科遺伝診療学会認定医。日本生殖医学会、日本女性医学学会、日本抗加齢医学会、日本人類遺伝学会の各会員。

卵子凍結とは?

卵子凍結とは?

編集部編集部

まず、卵子凍結について教えてください。

田中 つるぎ先生田中先生

健康な卵巣から卵子を体外に取り出し、未受精のまま凍結することを卵子凍結と言います。女性の卵子は年齢とともに数や質が低下し、特に35歳を過ぎると妊娠しにくくなったり、流産の可能性が高くなったりします。卵子を凍結保存しておくことで、加齢などによる卵子の質や卵巣機能の低下を回避することができ、妊娠の可能性を高めることができます。

編集部編集部

卵子凍結は、妊娠の可能性を高めるためにおこなうのですね。

田中 つるぎ先生田中先生

はい。卵子凍結は、2つの理由でおこなわれます。女性の「社会的理由」で、卵子凍結をおこなうというのが1つ目の理由です。これは、現在の仕事やパートナーの状況から今の妊娠は考えていないけれど、将来的に産みたいと考えている女性が、将来の妊娠に備えて卵子を凍結保存しておくことを意味します。

編集部編集部

もう1つは?

田中 つるぎ先生田中先生

医学的理由」でおこなうものです。例えば現在、がんなどの治療に取り組んでいる女性が「その治療によって卵巣機能が低下してしまうリスクがある場合、治療前の卵子を保存しておきたい」と考えて卵子凍結がおこなわれることもあります。

編集部編集部

具体的に、何歳くらいの女性がおこなうことが多いのですか?

田中 つるぎ先生田中先生

社会的理由でおこなう卵子凍結は、ライフプランがある程度定まった、20代後半〜30代前半の女性が多いですね。質のいい卵子、つまり妊娠につながりやすい健康な卵子を獲得しやすいのは35歳くらいまでなので、このあたりの年代の女性がおこなう傾向にあります。

卵子凍結は誰でもできる? 妊娠する確率は?

卵子凍結は誰でもできる? 妊娠する確率は?

編集部編集部

凍結した卵子は、どのようにして使うことができるのでしょうか?

田中 つるぎ先生田中先生

卵巣から採取された卵子は、-196度という超低温の液体窒素中で保存されます。そして、妊娠を希望するタイミングで凍結した卵子を融解し、卵子と精子を受精させます。しばらく受精卵を育てた後、子宮内に受精卵を移植します。その後、受精卵が着床していれば妊娠が確認されます。

編集部編集部

1回凍らせた卵子でも、その後に受精させることができるのですね。

田中 つるぎ先生田中先生

未受精の卵子は受精卵に比べて水分が多いため、凍結の影響を受けることが多いとされています。そのため、全ての卵子が受精できるわけではありませんが、卵子を融解した後に使える確率は90%前後と考えられています。また、受精が成功する卵子は凍結卵子の70〜80%とされています。

編集部編集部

その後、妊娠に至る確率はどれくらいですか?

田中 つるぎ先生田中先生

凍結卵子を受精させて子宮内に移植をおこなった場合、着床する確率は17〜41%とされています。さらに、その後の出生率は凍結卵子1個あたり4.5〜12.0%とされています。

編集部編集部

出産の確率を上げるには、卵子をいくつ凍結すればいいのでしょうか?

田中 つるぎ先生田中先生

35歳までの女性なら10〜15個程度の凍結卵子があれば、70〜80%程度の出産確率を見込むことができます。ただし、年齢が上がるにつれて妊娠率が低下するので、必要な凍結卵子数も増加します。個人差もあるため、詳しくは医師に相談するといいでしょう。

卵子凍結に対する素朴な疑問

卵子凍結に対する素朴な疑問

編集部編集部

卵子凍結は何歳までできるのですか?

田中 つるぎ先生田中先生

医学的には閉経前までであれば可能ですが、日本生殖医学会のガイドラインでは、卵子凍結の実施は39歳までにおこなうことが推奨されています。また、凍結卵子の利用は、子宮の状態などを考えて44歳までにおこなうことが推奨されています。医療機関によって考え方は異なりますが、妊娠したときの健康状態などを考えて、当院では健康な43歳未満の女性を対象に卵子凍結をおこなっています。

編集部編集部

保険は使えるのですか?

田中 つるぎ先生田中先生

卵子凍結は保険適用外となり、全額自己負担となります。一般に、卵子凍結にかかる費用としては初診時の検査、その後の検査、投薬費、採卵費、卵子凍結費などが発生し、さらに卵子を凍結保存するための費用もかかります。具体的な金額は、医療機関や卵子を保管する年数によっても変わります。なお、当院では採卵費、卵子凍結費、1年間の保管料を含め、初回の場合は33万円のプランをご用意しています。

編集部編集部

助成金は使えるのですか?

田中 つるぎ先生田中先生

自治体によっては、不妊治療費助成制度の対象となります。東京都を例に挙げると、一定の条件を満たすと採卵準備のための投薬・採卵・卵子凍結費用が助成されます。助成額は卵子凍結を実施した年度に上限20万円、次年度以降、保管更新時の調査に回答した際に1年ごとに一律2万円とされていますが、今後変更することも考えられます。卵子凍結に興味がある場合には、自治体の福祉保健局などに問合わせてみましょう。

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

田中 つるぎ先生田中先生

現代の女性のライフプランを考える上で、卵子凍結は大切な選択肢の1つとなります。卵子を凍結保存しておくことで、年齢などによる卵子の質や卵巣機能の低下を回避し、将来の妊娠率を上げることが期待されます。卵子凍結のメリットとデメリットを考慮し、ぜひ治療を検討してほしいです。

編集部まとめ

「今はまだパートナーが決まっていないけれど、将来的に子どもがほしい場合」や「今はまだ様々な事情で妊娠を望んでいないがいずれ妊娠出産したい場合」に、卵子凍結は非常に有効な手段となります。治療をおこなう上では一定の年齢制限があるので、迷っている人は一度、医療機関に相談してみてはいかがでしょうか。

医院情報

田中レディスクリニック渋谷

田中レディスクリニック渋谷
所在地 〒150-0042 東京都渋谷区宇田川町20-11 渋谷三葉ビル4F
アクセス JR・東京メトロ「渋谷駅」 徒歩2分
診療科目 婦人科、不妊治療

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