寝る時に“コンタクトをつける”だけで近視が治る「オルソケラトロジー」とは?【医師解説】

眼鏡やコンタクトレンズなしでも快適に過ごしたいと考えている人に注目されている「オルソケラトロジー」。しかし、誰でも受けられるわけではなく、適応検査や正しい使用方法が重要なのだそうです。そこで、池袋東口アイクリニックの石塚匡彦先生に、オルソケラトロジー治療の流れや注意点について詳しく話を聞きました。

監修医師:
石塚 匡彦(池袋東口アイクリニック)
オルソケラトロジーってどんな治療?

編集部
オルソケラトロジーとはどのような治療法なのでしょうか?
石塚先生
オルソケラトロジーは、夜寝ている間に特殊なコンタクトレンズを装着することで角膜の形を矯正し、日中の視力が上がり、裸眼で生活できるようにする治療法です。眼鏡や通常のコンタクトレンズなしで視力補正ができるため、多くのメリットがあります。
編集部
どのような人にメリットがありますか?
石塚先生
眼鏡やコンタクトレンズなしでスポーツを楽しみたい人、特にダンスや球技、格闘技などのスポーツをされている人などに人気があります。また、日中のコンタクトレンズ着用によるゴロゴロ感や充血などが気になる人にも大きなメリットがあります。また、レーシック手術などと異なり、合わないと思ったら途中で辞められるのも大きなメリットです。
編集部
オルソケラトロジーはどのような視力の人に向いていますか?
石塚先生
軽度〜中等度の近視の人に適しています。特に仮性近視の人や角膜が柔らかい小学生〜中学生の若い世代で、進行する近視を抑えたいと考えている人に向いています。もちろん、20〜30代の人で受けられる人もいますし、強度近視でも治療可能な場合もありますので、まずは眼科医にご相談いただけたらと思います。
編集部
子どもにも使えるのですか?
石塚先生
はい。近年は、子どもの近視進行を抑える効果が注目されています。日本のオルソケラトロジーガイドラインの改正で、治療に年齢制限がなくなったこともあり、当院でも小学生以上であれば、きちんと説明させていただいた上で、保護者の管理の下で装用していただいています。ただし、すべての人に適応するわけではないので、事前の検査が非常に重要です。
編集部
子どもには、特にどのようなメリットがあるでしょうか?
石塚先生
通常のコンタクトレンズと異なり、自宅内のみでの着用となるので、学校でレンズをなくしたり、学校で外れてしまったりする心配がありません。着用するのが就寝前~起床時なので、親が着脱をしてあげられるというのも安心のポイントかと思います。実際は、ほとんどのお子さんが、徐々に自分で着脱できるようになっています。
オルソケラトロジーの適応検査と治療の流れを教えて!

編集部
治療を始めるにはどのような検査をおこないますか?
石塚先生
まず適応検査をおこない、角膜の形や厚み、目の健康状態などを詳しく確認します。これにより、オルソケラトロジーが安全におこなえるか判断します。安全基準が厳しいため、角膜形状や眼疾患、近視度数によっては使うことができないこともありますが、適応と判断されれば、トライアルレンズの装着を経て本格的な治療へと進みます。
編集部
検査後の流れについて、詳しく教えてください。
石塚先生
検査をして治療の適応と判断された場合、まずはトライアルレンズを装用していただきます。そこで満足いただけない場合は治療を継続しないこともできます。ただし、治療の継続を希望しても、目の状態などにより治療を続けられない場合もあります。治療継続となり、ご自身用のレンズを受け取ってからは、当院の場合だと1カ月後に検診に来院していただき、以降は3カ月ごとに受診していただきます。そこで視力の変化や角膜の状態に問題がないかを慎重に確認します。必要に応じてレンズの微調整をおこなうこともあります。
編集部
レンズはどのように決まるのでしょうか?
石塚先生
検査データに基づいて、角膜のカーブに合った専用レンズを選びます。患者さん一人ひとりに合わせたオーダーメイドの感覚で、適切なレンズをフィッティングしていきます。
オルソケラトロジーの注意点は?

編集部
オルソケラトロジー治療で注意することはありますか?
石塚先生
自費診療となるため、費用については事前に確認しておくことをお勧めします。また、通常のコンタクトレンズと同様、着脱には慣れが必要ですし、レンズの取り扱いには衛生管理も重要です。毎日の手入れを怠ると、角膜感染症などのリスクが高まるため、正しいケアを徹底していただく必要があります。
編集部
ほかには何かありますか?
石塚先生
夜間にまぶしかったり、にじんで見えたりする「ハロー・グレア」という状態になる可能性があります。また、視力が安定するまでは見え方が変動することがある点はご留意いただきたいです。
編集部
どのくらいで見え方が安定するのですか?
石塚先生
個人差はありますが、早い人では1〜2日で効果を実感でき、多くの場合、1週間ほどで日中の裸眼視力が安定してくることが多いです。ただし、安定するまでに時間がかかるケースもあるため、焦らず継続することが求められます。
編集部
オルソケラトロジーはどのくらい続けるものなのでしょうか?
石塚先生
オルソケラトロジーの効果は一時的なものです。レンズの装用を中止すると角膜の形は徐々に元に戻ってしまいます。そのため、効果を持続させるには、継続的な装用が必要です。また、レンズ自体もずっと使えるわけではなく、2~3年での交換が必要になります。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
石塚先生
オルソケラトロジーは、近視の進行を抑える効果があるため、視力が大きく低下する前の早い段階で始めるのが理想です。とくに、お子さんが学校の視力検査で指摘を受けた場合などは、できるだけ早めに眼科へ相談されることをおすすめします。
編集部まとめ
裸眼で快適に過ごしたい人にとって、オルソケラトロジーはメリットの大きい選択肢の一つとなりますが、治療には適応検査や適切な説明が必要なため、まずは専門医に相談し、自分に合った方法かどうかを確認することが大切です。興味のある方は、早めに専門医に相談してみることをお勧めします。
医院情報

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| アクセス | JR線・西武線・有楽町線・丸の内線「池袋」駅東口より徒歩1分 |
| 診療科目 | 眼科 |




