アレは性病!? ほとんどの男性が経験する「性器のかゆみ・腫れ」の正体【医師解説】

男性の亀頭や包皮に炎症が起きる亀頭包皮炎。自然に治ることも多いとされていますが、「パートナーには感染しないのか?」「どうすれば予防できるのか?」など疑問を感じている人もいるかもしれません。そこで、亀頭包皮炎の原因や治療法について、KANDA NISHIGUCHI CLINIC院長の板東先生に聞きました。

監修医師:
板東 大晃(KANDA NISHIGUCHI CLINIC)
亀頭包皮炎とは? パートナーに感染する?

編集部
亀頭包皮炎とはどのような病気ですか?
板東先生
亀頭包皮炎は、男性の性器の先端である亀頭とそれを覆う「包皮」に炎症が起こる病気です。赤み、かゆみ、白いカス、腫れ、痛み、悪臭のある分泌物などの症状が出ることがあります。年齢を問わず起こる可能性があり、包茎の人には特に発症しやすい傾向にあります。放っておくと悪化することもあるので、早めの受診が大切です。
編集部
この病気はパートナーにうつる可能性はありますか?
板東先生
亀頭包皮炎自体は皮膚の汚れや摩擦、ストレス疲労などが原因で起きることが多いため、その場合はパートナーに感染することはありません。ただし、性感染症が原因で炎症が起きている場合は、性行為を通じてうつる可能性があります。原因に応じた判断が必要になります。
編集部
子どもでも亀頭包皮炎になりますか?
板東先生
小児でも起こることはよくあります。汚い手で触ることが原因になることもありますし、包茎の男児では、包皮の内側に汚れや尿がたまりやすく、それが原因で炎症を起こすケースが多いとされています。赤みや痛みで排尿を嫌がることもあるので、注意して観察することが必要です。清潔を保つことが第一ですが、繰り返す場合は小児科や泌尿器科への相談をおすすめします。
何が原因で起きるのか?

編集部
亀頭包皮炎になる主な原因は何ですか?
板東先生
原因はさまざまですが、ストレス疲労によるものと刺激によるものの2つで原因の90%を占めます。ストレス疲労によって免疫力が落ち、炎症が起きるのです。また洗い過ぎや自慰行為、性行為のし過ぎによる炎症もよく見られます。それ以外に細菌に伴うもの、カンジダ(真菌)に伴うもの、加齢に伴うもの、稀に慢性皮膚疾患に伴うものなどがあります。
編集部
細菌や真菌などが関係していることもあるのですね。
板東先生
はい。カンジダという真菌や、溶連菌など雑菌の一部が原因になることもあります。かゆみや白いカス、膿などが特徴で、きちんと検査して特定することが治療の第一歩です。
編集部
亀頭包皮炎は性病ですか?
板東先生
ストレスや疲労、刺激によるものは性病ではありません。つまり亀頭包皮炎の90%は性病ではありません。ただし、上記のカンジダや溶連菌の一部は性行為によってうつることがあります。その意味では性病と言えます。しかし、例えば風邪やインフルエンザ、コロナも性行為でうつりやすくなりますが、それらは性病とは言いません。どちらかというと性行為によってうつる亀頭包皮炎というのは、風邪など後者の考え方に近いです。
編集部
体質や生活習慣も影響しますか?
板東先生
はい。汗をかきやすい体質や通気性の悪い下着、長時間の座りっぱなしなども原因になりえます。また、免疫力が落ちているときや、糖尿病のある人、SGLT2阻害薬という糖尿病の治療薬を使用している場合は炎症が起こりやすく、慢性化することもあります。日々の清潔管理や衣服の選び方、体調管理、糖尿病のコントロールなどが予防にもつながります。
治療と予防法

編集部
亀頭包皮炎の治療はどのようにおこなうのですか?
板東先生
原因によって治療は異なりますが、一般的にはステロイドなど抗炎症の塗り薬を使用します。状況に応じて、抗菌薬や抗真菌薬の外用薬、また抗菌薬の内服薬を併用することもあります。自己判断で市販薬を使わず、医師の診断を受けてください。
編集部
治療期間はどれくらいですか?
板東先生
軽度であれば数日〜1週間程度で改善することが多いです。ただし、原因がカンジダや慢性炎症の場合は、治癒までに4週間以上かかることもあります。症状が治まっても自己判断で治療を中断せず、医師の指示どおりに続けることが大切です。再発を防ぐためにも、完治の確認までは通院を続けましょう。
編集部
どうすれば予防できるのですか?
板東先生
もっとも重要なのはストレス疲労を溜めず、洗い過ぎたり、自慰行為や性行為をしすぎたりしないことです。洗うことに関しては、普通に洗えば問題なく、清潔を意識しすぎる必要はありません。また、性行為の際にはコンドームを使用すること、通気性のよい下着を選ぶことも予防に役立ちます。ただそれでもストレス疲労は自分でコントロールできない部分も多く、その意味では亀頭包皮炎は予防できない面もあります。
編集部
繰り返す場合はどうすればよいでしょうか?
板東先生
何度も繰り返す場合は、包茎の有無や基礎疾患(糖尿病など)の有無を確認する必要があります。包茎が原因であれば、手術によって改善が見込めることもあります。また、体質的に炎症を起こしやすい人もいるので、定期的な通院やライフスタイルの見直しも重要です。再発を防ぐには、根本的な対処が欠かせません。
編集部
最後にメディカルドック読者へのメッセージがあれば。
板東先生
亀頭包皮炎はほとんどの男性が一度はなったことがあるかと思います。そして、部位が部位だけに、性病なのではないかと心配される人も多いのではないでしょうか。ですが、前述の通り、90%は性病ではありません。ストレスや疲労、刺激が原因となることがほとんどで、私はその場合の表現方法として、「おちんちんの風邪です」と伝えています。風邪は1年に何回かはかかるし、そのときだけ安静にして一時的に薬を使えばすぐによくなります。亀頭包皮炎も同じ考え方です。しかし、中にはドクターショッピングを繰り返し、治っているのにも関わらず延々と塗り薬を塗っている患者さんもいます。その原因のひとつとして、現在日本には亀頭包皮炎をマネジメントできる先生があまりいない、ということが挙げられます。ぜひ信頼できる専門医を訪ね、適切な治療を受けてほしいと思います。
編集部まとめ
誰にも相談できず、悩んでいる男性もいるかもしれません。市販の塗り薬などで対処しても、一時的には症状がよくなるかもしれませんが、根本的な解決は困難です。治療の近道は早めに専門医を訪ねること。このようなときのために、普段からかかりつけのメンズヘルスクリニックを見つけておくのもよいかもしれません。
医院情報

| 所在地 | 〒101-0047 東京都千代田区内神田3-12-4 第一岸ビル3階 |
| アクセス | JR「神田」駅西口より徒歩1分 |
| 診療科目 | 性感染症内科(性病科)、婦人科、泌尿器科、皮膚科、内科 |




