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【闘病】4歳娘を残し『死んでしまうかも…』 「乳がん」と「脳腫瘍」が発覚して

 更新日:2025/07/17
【闘病】「乳がん」と「脳腫瘍」が発覚 4歳娘を残し『死んでしまうかも…』

ふじこさん(仮称)は、乳がんと同時に脳腫瘍を告げられました。脳腫瘍に関してはまったく自覚症状がなかったそうですが、どのような経緯で2つの病気が判明したのでしょうか? 病気が判明する経緯から、治療内容までを詳しく教えてもらいました。

※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2024年12月取材。

ふじこさん

体験者プロフィール
ふじこ(仮称)

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埼玉県在住。1977年生まれ。家族は夫と6歳の娘(2024年12月当時)。妊娠中から専業主婦になり、育児に少し余裕が出てきたので、再就職活動をしていた2023年9月に左乳がんが発覚し、手術や化学療法を受ける。現在はホルモン治療を続けながら、経過観察をしている。

乳がんのPET-MRI検査で偶然見つかった脳腫瘍

乳がんのPET-MRI検査で偶然見つかった脳腫瘍

編集部編集部

病気が判明した経緯について教えてください。

ふじこさんふじこさん

左乳がんは、2023年8月に自分で胸に小さなしこりがあるのを発見したのがきっかけです。口コミで評価のよい乳腺科を探して、9月にそこを受診しました。女性の先生に、触診とエコー検査をおこなっていただき、「7割ぐらいの確率で悪性だと思うから、針生検をやりましょう」と言われ、針生検を受けました。約2週間後に結果が出て、ステージIaの乳がんと診断されました。

編集部編集部

脳腫瘍もこのときにわかったのですか?

ふじこさんふじこさん

乳がんと診断された病院で、「若いので、がんに特化した病院をお薦めします」と紹介状を書いていただき、大きな病院の乳腺外科を受診しました。そこで、転移やがんの広がりを調べるPET-MRI検査をしたときに、たまたま右の前頭葉に2、3cm程の脳腫瘍があることがわかり、脳神経外科の診察を受けました。ですが、こちらは経過観察をしながら、乳がんの治療が落ち着いた2024年3月に摘出手術を受けたところ、良性腫瘍と判明しました。

編集部編集部

そうだったのですね。それぞれに自覚症状などはあったのでしょうか?

ふじこさんふじこさん

乳がんに関しては先述の通り、ある日、左胸に小さなしこりがあるのに気がついたからです。「左胸にはあるのに、右胸にはない」それだけでした。脳腫瘍の自覚症状は、まったくありませんでした。

編集部編集部

どのように治療を進めていくと医師から説明がありましたか?

ふじこさんふじこさん

乳がんについては、最初は「部分切除の手術と放射線治療、ホルモン治療になると思う」と言われ、2023年12月に部分切除の手術を受けました。年明けに手術の病理検査の結果が出て、断端陽性(手術後に、切除した組織の断片やその周辺にがんが見つかった状態)で、がんが思ったより広い範囲にあったために取りきれていなかったことがわかりました。すると、放射線治療はせずに半年後に全摘の再手術をおこなうと告げられました。

編集部編集部

再手術を受けることになったのですね。

ふじこさんふじこさん

はい。2024年8月に左乳房全摘と、腹部からの遊離皮弁法で同時再建手術を受けました。そして、2025年中には乳頭再建手術を受ける予定になっています(取材時)。

編集部編集部

病気が判明したときの心境について教えてください。

ふじこさんふじこさん

自分は早く死んでしまうかも……。4歳(取材時)の娘はどうしよう」と思いました。そして、いつ死ぬか分からないから後悔のないように今を楽しもうとも思いました。

乳房再建手術に対して前向きな気持ちになった理由

乳房再建手術に対して前向きな気持ちになった理由

編集部編集部

初めは乳房再建手術に対して関心がなかったそうですが、乳房再建手術をおこなおうと思ったのはどうしてでしょうか?

ふじこさんふじこさん

入院したときに同部屋になった人たちが自分より年上の人だったのですが、多くの人が乳房再建手術を受けていたのです。それを見て、自分もやってみようかなという価値観に変わりました。乳房再建手術をおこなった結果、「片方の胸がないんだ……」と思う喪失感を感じることなく過ごせています。反対意見も多かったですが、やってよかったと思います。再手術をするなど、回り道はしたけれど、これがなかったら乳房再建手術はしていなかったでしょうし、結果的にはそれでよかったなと思います。

編集部編集部

発症後、生活にどのような変化がありましたか?

ふじこさんふじこさん

乳がんや脳腫瘍の原因は明確には分かりませんが、食べる物や睡眠、運動などの生活習慣が影響しているのではないかと思い、できるだけ自然の物を食べるように気を使うようになりました。また、ストレスや疲れも病気の原因だと思うので、無理をせずに休むことも大切だという考えに変わりました。また、育児や家事も以前より夫が手伝ってくれるようになりました。

編集部編集部

病に向き合う上で心の支えになっているものを教えてください。

ふじこさんふじこさん

子どもの存在、家族によるサポート、仲のよいママ友が私の心に寄り添って話を聴いてくれること。これらが、私の支えになりました。また、入院や通院の保障が付いたがん保険に加入していたので、医療費の心配があまりないことも助かっています。不謹慎な話ですが、この入院が終われば保険金がもらえるというのも、治療を頑張る原動力になりました。

編集部編集部

もし昔の自分に声をかけられたら、どんな助言をしますか?

ふじこさんふじこさん

「“自分はがんにはならない”と思っていたけれど、やはり食べ物や生活習慣はよい方がいい」と言ってあげたいです。また、「がん保険やもしものときの保障をしっかりやっておいた方がいい」とも助言したいですね。

編集部編集部

現在の体調や生活などの様子について教えてください。

ふじこさんふじこさん

現在は、乳房再建手術で腹部を大きく切除した傷痕がまだ痛いですが、基本的にはまるで病気のことがなかったかのように、元気に日常生活を送れています。ただ、脳腫瘍で開頭術をおこなったため、車の運転はドクターストップが出ており、不便だと感じることも多いです。現在はホルモン治療をおこなっています。これは、短期間に入退院を繰り返したことや、手術で全身麻酔を3回おこなったこと、また、入院中にホルモン剤の服用をストップしたことなどから、ホルモンバランスが乱れてしまい、月経不順になったからです。また、不正出血もあるので、定期的に婦人科を受診してホルモン治療もおこなっています。ホルモン治療に関しては、毎朝「タモキシフェン」というホルモン剤を1錠飲むだけなので、抗がん剤などに比べると副作用やしんどさはないと思います。

病気のことを理解して、納得のいく治療を選択することが大切

病気のことを理解して、納得のいく治療を選択することが大切

編集部編集部

医療従事者に望むことはありますか?

ふじこさんふじこさん

これからがん患者は増える時代になると思いますが、大きな病院でも診察や手術の待ち時間が減ることを望みます。

編集部編集部

同じ病気を抱える人へのメッセージをお願いします。

ふじこさんふじこさん

自分自身が自分の病気をしっかり理解して、納得のいく治療をすることが大切だと思います。周りの人のアドバイスを聞くのも大切ですが、最終的に自分自身で治療方法を選択することで、後悔なく前に進める気がします。インターネットで正確性のある情報を調べたり、医師が説明しているYouTube動画を見たりして理解を深め、わからないことや不安なことは主治医の先生や信頼できる先生から説明してもらって、納得できれば自信を持って治療に取り組むことができると思います。私の場合、乳がんの最初の診断では、6mmの小さな腫瘍で初期のステージIaだったわけですが、それがまさか全摘の再手術になるとは思わなかったので、納得できず、状況を理解するのに時間がかかりました。主治医の先生からの説明でよくわからない内容に関しては、紹介元の病院を何度も受診して、質問しやすい先生から状況説明などをしてもらいました。

編集部編集部

最後に、読者に向けてのメッセージをお願いします。

ふじこさんふじこさん

信頼できるかかりつけ医を持つことで、病気に対する恐怖や悩みを軽減することができると思います。私は、乳がんと診断された最初の病院の先生が、「大丈夫ですよ。初期だし、治りますから」と言ってくれたことや、紹介先の病院を一緒に考えてくれたことが大きな励みとなりました。また、乳房再建手術をおこなうかどうか悩んだときも、「綺麗に胸がつきますよ。傷は治りますからね」と言ってくれて、今まで出会った病院や医師の中で1番親切・親身になってくれたので、迷いなく治療を進めることができました。

 
寺田 満雄

記事監修医師
寺田 満雄(名古屋市立大学病院乳腺外科)
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。

編集部まとめ

乳がんと脳腫瘍がわかったとき、計り知れないほどの大きな不安に駆られたことと思います。ですが、そのような中でも病気のことをご自身でしっかりと調べ、わからないことは何度も医師に質問し、納得して治療を選択してきたふじこさんの姿勢からは、見習うべき点がたくさんあると感じました。体調不良で病院を受診した際などに、「先生(医師)の説明が難しい」と感じた経験がある人も少なくないと思います。ぜひふじこさんのように、わからないことをそのままにせず、納得した上で治療を進めていただきたいと切に願います。

なお、メディカルドックでは病気の認知拡大や定期検診の重要性を伝えるため、闘病者の方の声を募集しております。皆さまからのご応募お待ちしております。

この記事の監修医師