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「骨粗しょう症に効果的な運動」と「見直すべき生活習慣」をご存じですか?【医師監修】

 公開日:2025/05/23
「骨粗しょう症に効果的な運動」と「見直すべき生活習慣」をご存じですか?【医師監修】

加齢とともに骨密度が低下し、骨がもろくなる「骨粗しょう症」。特に女性は閉経を迎えるとホルモンバランスの変化により、発症リスクが高まると言われています。自覚症状が少ないまま進行し、骨折や寝たきりを招くケースも少なくありません。今回は、骨粗しょう症の原因や検査・治療法のほか、運動療法を中心とした予防法について、つくる整形外科祐天寺駅前スポーツクリニック院長の中谷創医師に詳しく解説していただきました。

中谷 創

監修医師
中谷 創(つくる整形外科祐天寺駅前スポーツクリニック)

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防衛医科大学校病院や自衛隊中央病院などで医師としての経験を積み、自衛隊札幌病院 整形外科部長、自衛隊中央病院 整形外科医長などを経て、2022年12月、「つくる整形外科祐天寺駅前スポーツクリニック」を開院、院長となる。また、ラグビー日本代表チームドクターや、2021年東京オリンピック 七人制ラグビー 大会ドクターなど、スポーツドクターとしての経験も豊富。取得資格は、日本整形外科学会 整形外科専門医、日本整形外科学会 スポーツ医、日本整形外科学会 運動器リハビリテーション医、日本スポーツ協会 スポーツドクター、Prehospital immediate Care in Sports Level 2。

骨粗しょう症はどんな病気?

骨粗しょう症はどんな病気?

編集部編集部

はじめに、骨粗しょう症について教えてください。

中谷 創先生中谷先生

骨粗しょう症とは、年齢を重ねるにつれて骨密度が低下し、骨がもろくなる疾患です。加齢に伴う自然な変化の一つでもありますが、病的に進行すると日常生活に支障をきたす場合もあります。特に高齢の女性に多く見られ、背中が丸くなったり、ちょっとした転倒でも骨折を起こすリスクが高まったりするという特徴があり、結果として生活の質が著しく低下する恐れがあります。

編集部編集部

骨粗しょう症はどのようなことが原因で発症するのですか?

中谷 創先生中谷先生

骨は常に「壊す」と「作る」を繰り返して、骨の強度を維持していますが、このバランスが崩れることが原因で骨密度が低下し、骨粗しょう症を発症します。特に女性の場合、閉経による女性ホルモンの急激な減少がこのバランスの崩れに大きく関わります。さらに、カルシウムやビタミンD、ビタミンKなどの栄養不足、慢性の腎疾患やステロイド薬の長期使用などもリスクを高める要因になります。

編集部編集部

骨粗しょう症になりやすい人とはどのような人でしょうか?

中谷 創先生中谷先生

骨粗しょう症は、栄養状態が悪かったり、喫煙や過度な飲酒をしていたりする人に多く見られます。また、若い頃に極端なダイエットをおこなった人や運動不足だった人は、骨のピーク密度(最大骨量)が低く、将来的に骨粗しょう症のリスクが高くなります。女性では特に閉経後の人がなりやすく、家族に大腿骨や腰椎の骨折歴がある人は遺伝的な要因も影響する可能性があるため、注意が必要です。

骨粗しょう症の検査と治療方法

骨粗しょう症の検査と治療方法

編集部編集部

骨粗しょう症を放置するリスクについて教えてください。

中谷 創先生中谷先生

骨粗しょう症は「沈黙の病」ともいわれ、自覚症状のないまま進行することが少なくありません。放置すると、転倒など軽微な外力で骨折しやすくなり、寝たきりや要介護状態に陥るリスクが高まります。特に大腿骨や背骨(腰椎)の骨折は、生活の質を大きく下げるだけでなく、手術や入院が必要になることもあるため、本人だけでなく家族にも負担がかかってしまう場合があります。

編集部編集部

骨粗しょう症かどうかは一般的にどのような検査で判明するのでしょうか?

中谷 創先生中谷先生

骨粗しょう症の診断には「骨密度検査」が用いられます。中でも、最も精度が高いとされている方法が「DEXA(デキサ)法」です。腰椎と大腿骨で骨密度を測定することで、骨の強度を正確に評価できます。ほかにも、手の骨や踵の骨を使った超音波法など簡易的な検査もありますが、治療の判断材料とするにはDEXA法による骨密度の測定が推奨されます。

編集部編集部

骨粗しょう症を改善するための一般的な治療はどのような方法なのですか?

中谷 創先生中谷先生

治療は薬物療法と生活習慣の改善を組み合わせておこないます。薬物療法では、骨の吸収を抑える「ビスホスホネート製剤」や女性ホルモンのような作用を持つ薬剤「SERM(サーム)」、骨の形成を促す注射薬などがあります。特に骨密度が著しく低い場合には、注射薬を早期に使用し、その後に内服薬へ移行するケースも増えています。併せて、運動習慣の改善や栄養バランスを整えることも欠かせません。

骨粗しょう症の「予防」と「改善するための運動」

骨粗しょう症の「予防」と「改善するための運動」

編集部編集部

骨粗しょう症を改善するための運動はどのような種類、強度、頻度が効果的ですか?

中谷 創先生中谷先生

骨粗しょう症の改善には、骨に適度な刺激を与える運動が効果的です。骨を刺激する運動としては、踵に衝撃を与えるような運動(踵の上げ下げ、ジョギングなど)やウォーキング、スクワットなどが効果的です。これらにより、骨を強くするホルモンが分泌されると考えられています。また、体幹や下肢の筋力を強化することで、骨折の予防やバランス能力の向上にもつながります。週3回程度、1日6000〜8000歩のウォーキングが目安とされていますが、無理のない範囲で継続することが大切です。

編集部編集部

骨粗しょう症の人が運動する際に注意すべきことはありますか?

中谷 創先生中谷先生

運動をおこなう際は、「適度な負荷」が原則です。若い頃のように激しい運動を急に始めると、骨折や筋肉損傷のリスクが高まる恐れがあります。重いものを持ち上げる、ジャンプや急な方向転換を含む運動を避け、軽めの負荷で長時間(30〜40分程度)継続できる内容を選ぶことをおすすめします。継続可能で安全な運動メニューを選ぶことが予防と改善の第一歩です。

編集部編集部

骨粗しょう症を予防するために、日常生活において運動以外でできることはありますか?

中谷 創先生中谷先生

骨粗しょう症の予防には、バランスの良い食事と日光浴が重要です。カルシウム(乳製品など)、ビタミンD(鮭・キノコ類など)、ビタミンK(緑黄色野菜など)を意識的に摂取することが推奨されます。また、ビタミンDは日光を浴びると体内で合成されるため、1日10〜30分程度の屋外での活動も推奨されます。日差しをガラス越しに浴びても効果がないため、屋外で体の一部を日に当てることが大切です。

編集部まとめ

骨粗しょう症は、生活習慣や加齢によって誰にでも起こり得る疾患です。特に女性はホルモンバランスの変化により、知らぬ間に骨密度が低下していることもあります。進行すると骨折のリスクが高まり、QOLを著しく損なう可能性もあるようです。早期発見の重要性とともに、運動や栄養、日光浴など、日常生活で実践できる予防法も教えていただきました。本稿が読者の皆様にとって、骨粗しょう症の理解と予防への一歩となりましたら幸いです。

医院情報

つくる整形外科祐天寺駅前スポーツクリニック

つくる整形外科祐天寺駅前スポーツクリニック
所在地 〒153-0052 東京都目黒区祐天寺2-14-20 祐天寺駅前ビル3階
アクセス 東急東横線「祐天寺」駅東口2を出てすぐ
診療科目 整形外科・リハビリテーション科・スポーツ整形外科

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