｢下肢静脈瘤｣が疑われる症状をご存じですか? “知られざる症状”も医師が解説

黒澤先生

足のむくみの原因はさまざまです。もちろん体質や体調などによることもありますが、病気が隠れている場合もあります。考えられる病名のひとつが下肢静脈瘤です。特に夕方になると症状が強くなる場合は、下肢静脈瘤の可能性が高くなります。

黒澤先生

足の静脈にある弁が壊れることで血液が逆流し、血管が膨らんでしまう病気です。正常な静脈は、心臓へ血液を戻す役割を持っていますが、弁がうまく働かなくなると血液が停滞し、血管がボコボコと浮き出てしまいます。しかし、初期の段階では無症状のことも多いため、気づかずに進行してしまうことも少なくありません。

黒澤先生

下肢静脈瘤というと、足の血管がボコボコと浮き出ている状態を思い浮かべるのではないでしょうか？ それも典型的な症状ですが、そのほかにも「足がむくみやすい」「だるさや重さを感じる」「夜間に足がつりやすい（こむら返り）」「皮膚が茶色く変色する」といったことも下肢静脈瘤の症状です。逆にそれらに該当する人は、血管の膨らみが目立たないこともあります。さらに、「毛細血管拡張のような細かい血管が目立つ」のも下肢静脈瘤による静脈うっ滞が原因であることがあります。

黒澤先生

下肢静脈瘤は長時間の立ち仕事やデスクワークをしている人、妊娠・出産を経験した女性、肥満の人、家族に下肢静脈瘤の人がいる人など、さまざまな要因が関与します。加齢とともに発症リスクが高まるため、40代以降の人は特に注意が必要です。

黒澤先生

下肢静脈瘤はむくみや見た目だけの問題ではありません。初期の段階では気にならなくても、進行すると血流がさらに悪化し、痛みや皮膚の炎症による色素沈着、潰瘍などを引き起こすことがあります。放置すると症状が悪化し、治療が長引くことになるため、気になる症状がある場合は、早めに医師に相談しましょう。

黒澤先生

下肢静脈瘤の診断には、視診・触診に加え、超音波検査（エコー）が用いられます。超音波検査では、静脈の弁が正常に機能しているか、血液の逆流が起こっていないかを詳しく確認できます。検査は痛みもなく、短時間で終わるので、気軽に受けられます。

黒澤先生

治療法は大きく分けて「保存療法」と「手術療法」の2種類があります。保存療法では、弾性ストッキングの着用や生活習慣の改善が中心となります。手術療法にはさまざまな術式があり、進行度や症状に応じて適した治療法が選択されます。

黒澤先生

軽症の場合は、弾性ストッキングの着用や生活習慣の改善で症状をある程度コントロールし、進行を抑えることができます。ただし、保存療法で根治することは難しく、常時、弾性ストッキングを着用する必要もあります。すでに静脈が拡張し、静脈弁の機能が失われてしまった場合（静脈弁不全）、根治するためには手術治療が必要になります。

黒澤先生

主な手術法には、血管内焼灼術（レーザー・高周波治療）、血管内塞栓術（グルー治療）、ストリッピング手術などがあります。それぞれにメリット・デメリットがありますが、最近では、傷が小さいため、体への負担が少ない血管内焼灼術や血管内塞栓術が主流となっています。

黒澤先生

ほとんどの手術は日帰りが可能です。局所麻酔でおこなうため、術後すぐに歩くこともでき、仕事や日常生活への影響も少ないのが特徴です。ストリッピング手術の場合は、通常は入院が必要になります。血管内焼灼術が保険適用となってからは、選択されることは少なくなっています。

黒澤先生

術後は弾性ストッキングを一定期間着用する必要がありますが、多くの人が短期間で通常の生活に戻ることができます。傷も小さく、痛みも軽度なため、負担の少ない治療法です。そのため、高齢者やさまざまな併存疾患を持つ人でも多くの場合、治療を受けることができます。術後のチェックは、当院では、翌日と1カ月後に受診していただいています。

黒澤先生

もちろん大丈夫です。特に、むくみやすさに加え、「だるさやこむら返りが頻繁に起こる」「足の血管が浮き出ている」「皮膚が変色してきた」「左右差がある」などの症状がある場合は、血管病変の可能性が高く、早めの受診をおすすめします。

黒澤先生

下肢静脈瘤は血管の膨らみだけでなく、むくみ、こむら返り、皮膚炎などさまざまな症状を引き起こします。日本では推定1000万人以上が患っているという調査結果もある、多くの人が抱えている病気です。血管外科が古くから専門としてきた病気で、早期の診断と適切な治療によって症状を改善させることができますので、気になる症状がありましたら、血管外科へ相談してみてください。