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「変形性膝関節症」の治し方はご存じですか? 再生医療の効果・治療後の経過も医師が解説!

 公開日:2025/04/12

膝の痛みの原因の1つである「変形性膝関節症」は、加齢や長年の負担によって関節の軟骨がすり減り、痛みや腫れを引き起こす疾患です。近年、自己修復力を活かした再生医療「PRP療法(多血小板血漿療法)」が、手術をせずに膝の痛みを和らげる治療法として注目されています。今回は、膝の痛みに対するPRP療法の治療後の経過や注意点について、「武蔵野アトラスターズ整形外科スポーツクリニック」の田島先生に解説していただきました。

田島 祐基

監修医師
田島 祐基(武蔵野アトラスターズ整形外科スポーツクリニック)

プロフィールをもっと見る
杏林大学医学部卒業。その後、杏林大学医学部整形外科学教室、久我山病院、小山記念病院、東大和病院で経験を積む。2021年、東京都武蔵野市に位置する「武蔵野アトラスターズ整形外科スポーツクリニック」の院長に就任。ラグビーチーム「横河武蔵野アトラスターズ/アルテミ・スターズ」チームドクター。日本整形外科学会専門医。

変形性膝関節症の治療法

変形性膝関節症の治療法

編集部編集部

まず、変形性膝関節症について教えてください。

田島 祐基先生田島先生

変形性膝関節症は、膝関節の軟骨がすり減ることで関節に炎症や痛みが生じる疾患です。中高年に多くみられ、初期は膝のこわばりや違和感くらいだったのが、進行すると歩行時に痛みなどが生じ、日常生活動作に支障をきたします。さらに悪化すると膝が変形してくるため、このような病名がついています。

編集部編集部

どのような治療法があるのでしょうか?

田島 祐基先生田島先生

症状の程度に応じて様々な方法があります。まず、痛みを和らげるために湿布や鎮痛薬を使ったり、運動療法やリハビリで筋力を強化して関節への負担を軽減したりすることが推奨されます。また、体重管理も重要で、特に過体重の人には適正体重を維持することが推奨されています。重症化した場合は、人工関節置換術などの手術が検討されます。最近では、PRP療法などの再生医療も選択肢の1つとなっています。

編集部編集部

PRP療法とは?

田島 祐基先生田島先生

PRP療法は多血小板血漿療法のことで、自分の血液から血小板を多く含む部分を抽出し、それを患部に注入する治療法です。血小板には組織を修復する成長因子が含まれており、自然治癒力を高めるのが特徴です。関節の痛みやスポーツ障害、慢性的な腱の炎症などに幅広く使われており、特に変形性膝関節症やテニス肘などに対する再生医療としての活用が注目されています。

編集部編集部

すぐに効果があるのですか?

田島 祐基先生田島先生

1回でも改善を実感する人は多いですが、症状によっては複数回受けることで効果が高まります。また、運動療法などのリハビリと組み合わせることで、より高い効果が得られるでしょう。

変形性膝関節症へのPRP療法

変形性膝関節症へのPRP療法

編集部編集部

具体的には、どのようなことをするのですか?

田島 祐基先生田島先生

まず採血をして、その血液を遠心分離機にかけて血小板を濃縮します。その後、患部に注射で注入します。施術自体は30分程度で終わり、入院も不要です。また、自分自身の血液を使うので拒絶反応やアレルギーのリスクがほぼありません。

編集部編集部

似たような治療法で「PFC-FD療法」という方法もあると聞きました。

田島 祐基先生田島先生

PFC-FD療法は、自己血液から血小板由来の成長因子(PFC)を抽出し、特殊な技術でさらに濃縮させて血小板を活性化させ、より多くの「成長因子」を取り出します。その血小板由来成長因子濃縮液を、関節内に注入します。

編集部編集部

通常のPRP療法とはどう違うのでしょうか?

田島 祐基先生田島先生

通常のPRP療法は血小板を濃縮してすぐに使うのに対し、PFC-FD療法は成長因子だけを取り出し、保存できる点が大きな違いです。そのため、好きなタイミングで治療が受けられます。

編集部編集部

変形性膝関節症の場合、どちらを選べばいいですか?

田島 祐基先生田島先生

症状や患者さんのニーズによって異なるので、まずは主治医に聞いてみてください。基本的にはどちらの方法も適応になりますが、医療機関によっては、施設基準の兼ね合いで注射する部位ごとに治療法が決まっていることもあります。

PRP療法の治療後の経過や注意点

PRP療法の治療後の経過や注意点

編集部編集部

治療後の経過についてもお教えください。

田島 祐基先生田島先生

基本的には、治療したその日から通常の生活が送れます。施術直後は軽い腫れや違和感があるかもしれませんが、数日で落ち着きます。効果は徐々に表れ、1〜3カ月で痛みの軽減や可動域の改善を実感する患者さんがほとんどです。個人差はありますが、最近のデータでは、効果は2年ほど持続すると報告されています。

編集部編集部

経過日数ごとの注意点などはありますか?

田島 祐基先生田島先生

腫れや熱感のある数日は、できるだけ安静にすることを心がけてください。その後の注意点は特にありません。むしろ積極的にリハビリすることをおすすめします。

編集部編集部

再生医療について、ほかにも知っておいた方がいいことはありますか?

田島 祐基先生田島先生

PRP療法やPFC-FD療法は日本では保険適用となっておらず、自費診療となっているため、費用面で注意が必要です。具体的な金額は医療機関によって異なるので、事前に確認してから施術することが大事です。また、効果が永続的ではないことや、人によっては効果を感じにくい場合もあることは知っておいていただけたらと思います。

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

田島 祐基先生田島先生

変形性膝関節症やそれ以外の整形外科的な痛み・違和感に悩んでいる人は、新しい選択肢としてPRP療法などの再生医療を検討してみるのも1つの方法です。興味のある人は、一度お近くの整形外科に相談してみてはいかがでしょうか。

編集部まとめ

PRP療法やPFC-FD療法などの再生医療について解説していただきました。再生医療を活用した膝の治療は、痛みの軽減や関節機能の改善に大きな期待が持てると言えるでしょう。気になる症状がある人は、早めに専門医に相談して自分に合った治療法を見つけてみてください。

医院情報

武蔵野アトラスターズ整形外科スポーツクリニック

武蔵野アトラスターズ整形外科スポーツクリニック
所在地 〒180-0006 東京都武蔵野市中町2-8-11横河診療センター1階
アクセス JR「三鷹駅」 徒歩7分
診療科目 整形外科、スポーツ整形外科

この記事の監修医師

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