「眼科医はICLをやらない説」のウソ・ホント ICLのリスクや合併症、受ける上での注意点を解説

次世代の近視治療として現在、大きな注目を集めている「ICL」。しかし一方で、「手術に痛みが伴うのでは?」「失明のリスクは?」など、リスクが気になっている人も多いと思います。今回は、ICLを受けるにあたって知っておきたいリスクや注意点などを「きくな湯田眼科」の湯田先生に解説していただきました。
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監修医師:
湯田 健太郎(きくな湯田眼科)
ICLとは?

編集部
まず、ICLについて教えてください。
湯田先生
近視・遠視および乱視の矯正を目的に開発された治療法です。有水晶体眼内レンズとも呼ばれ、目の中にレンズを埋め込んで、近視などを矯正します。
編集部
「レンズを埋め込む」とはどういうことですか?
湯田先生
目の茶色い部分を「虹彩」と言い、目の奥にあるラグビーボールのような形をした透明な組織を「水晶体」と呼びます。ICLのレンズは、虹彩の裏側の後房という部分に固定します。後房は虹彩と水晶体に挟まれた部分であるため、外見的にはレンズを入れていることがわかりません。
編集部
手術は、どのようにしておこなわれるのですか?
湯田先生
点眼麻酔をおこなった後、角膜の縁を約3mm切開します。その部分から折りたたんだ状態のICLを入れ、レンズを固定します。手術は日帰りでおこなわれ、所要時間は片目5分ほどで終了します。一般に、入室から退室までは20分くらいが目安でしょう。
編集部
ICLは保険適用になるのですか?
湯田先生
保険適用外となるので、自費でおこなう必要があります。検査代やレンズ代、手術代、薬代などを含めた総額は、両目で約50〜80万円になると思います。もちろん、選択するレンズの種類によっても異なるので、詳しくは医療機関に確認してください。
ICLは痛くない? 失明リスクは?

編集部
ICLの手術で、痛みを感じることはありますか?
湯田先生
目の一部を切開すると聞いて、痛みの心配する人も多いと思いますが、実際は麻酔を使用するので手術中に痛みを感じることはほとんどありません。手術時間も短く、非常に安全性も高い手術なので安心してほしいと思います。
編集部
手術中に痛みを感じないと聞いて、ホッとしました。
湯田先生
ただし、強い光源を使用しながら手術をするため、術中、まぶしさを感じることはあるかもしれません。当院では、できるだけ顕微鏡の光源を落として手術をしており、まぶしさを軽減するように努力していますが、それでもまぶしく感じられるかもしれません。
編集部
手術後に痛みや違和感を覚えることはありますか?
湯田先生
術後の数日間は、コンタクトレンズを入れたときのように、ごろごろとした違和感を覚える人もいます。しかし多くの場合、こうした違和感は時間の経過とともに薄れてきます。また、術後に光がにじんで見えたり、光の周囲にリング状のもやがかかったりする「ハローグレア」が起きることもあります。しかし、半年くらい経つと徐々に改善していく人が大半です。
編集部
ICLに合併症リスクはありますか?
湯田先生
ほかの手術と同様、感染症のリスクはありますが、極めて稀です。ICLの手術は切開創が非常に小さいため、炎症が起きる確率は非常に低いとされています。ただし、手術後の炎症を予防するため、術後には点眼薬を使用することが必要です。
編集部
ほかに合併症のリスクは?
湯田先生
ICLの合併症としては、白内障のリスクがあります。若い人では稀ですが、45歳以上の人がICL手術を受けると、白内障のリスクは高まる可能性があります。そのため、一般的にICL手術の適応年齢は45歳以下とされています。ただし、白内障は手術で治療が可能であり、発症しても失明することはないのでご安心ください。
編集部
「ICLの治療が失敗すると失明する」という噂を聞くこともあります。
湯田先生
ICLの手術により失明するということは、ほとんどありません。可能性があるとすれば手術後に感染症が起こった場合ですが、衛生環境が整った医療機関で手術を受け、術後の点眼薬などを指示通りおこなえば感染症の心配はほとんどありません。ぜひ安心して受けてほしいと思います。
ICLの注意点

編集部
ICLを受ける上での注意点はありますか?
湯田先生
- 目をこすったり、かいたりしない
- 重いものを持ち上げるといった眼圧が上がるようなことを避ける
- ほこりや煙が多い場所を避ける
- 保護メガネを着用する
- うつ伏せではなく、なるべく仰向けで寝る
編集部
そのほかに気をつけることはありますか?
湯田先生
術後1カ月間は、温泉やサウナ、プールを控えてください。また、術後1週間は基本的に運動を避けましょう。1週間経ったら目に汗が入らない、目をぶつけないといったことに注意しながら徐々に運動を再開することができます。術後1カ月が経過すれば日常生活に制限はなくなります。
編集部
手術後は、すぐ見えるようになるのですか?
湯田先生
大半の患者さんが、翌日から数日以内に見えるようになります。手術当日はまだぼんやりしていることが多いので、目を休ませてください。
編集部
術後も検診が必要なのでしょうか?
湯田先生
医療機関によって異なりますが、当院の場合はまず、術後の翌日か翌々日に検診を受けていただきます。それから1週間後、1カ月後までは必須で検診を受けていただきます。その後は患者さんと相談しながら、ご希望があれば術後3カ月や半年にも検診をおこないます。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
湯田先生
ときどき「眼科医はICLを受けない」という言葉を耳にすることがあります。それだけ「ICLは危険」「怖い」というイメージを持たれている人が多いと言うことだと思いますが、そんなことはありません。実際、当院ではすでに3人の医師がICLを受けています。また、「ICLには感染症などのリスクがあるので怖い」という話も聞きますが、コンタクトレンズにもリスクはあります。コンタクトレンズによる感染症で失明する人もいます。それと比べたらICLは非常に安全性が高く、効果の高い治療法なので、ぜひ前向きに検討してほしいと思います。
編集部まとめ
ICLは日本ではまだ歴史の浅い治療法ですが、海外では豊富な治療実績を持っています。治療を考えているときには実績の豊富な医療機関を選ぶこと。そして不安や疑問を解消してから、治療に臨むようにしましょう。
医院情報

| 所在地 | 〒222-0011 神奈川県横浜市港北区菊名4-3-11 |
| アクセス | 東急東横線・JR横浜線「菊名駅」 徒歩1分 |
| 診療科目 | 眼科 |




